旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第9章 失われた輝石
第43話:お供え物の中身


 

 

 村長という人種はどこの村も似通ってしまうのであろうか。

 

 

「にしたって似すぎてねーか?」

「う~ん。確かに似てるよね」

「この年代の男性って皆こんなモンなんじゃない?」

 

 

 サチ達が訪れているのは、山三つも越えた先の全く別の村落。

 

 なのだが、今対面している人物は先日会った村長に瓜二つなのである。

 

 

「そんな事言われたってワシャ知らん。そんな遠くに親戚なんぞおらん!」

「済みません、そうですよね。もうやめよう皆。魔物が化けてる訳でもなさそうだし」

 

「んなっ、失敬な!」

 

 

「サチ…。とどめ刺したな」

「「済みません!」」

 

 今度はリリとアイミーが揃って頭を下げる。

 

 

 

 フォローし合う姿は微笑ましい、と影から見守るのはジョニーだ。

 あまり人間の前に姿を現すのは良くないという事で、今回は距離を置いている。

 

 にもかかわらず、結局先方の機嫌を損ねている一行であった。

 

 

 

 ダーマの試練を経て、サチはレンジャーとなった。

 武器はそのままに、海賊ターバン帽から濃いグレーのベレー帽。

 毛皮ベストをやめ革製のベストにお色直し。

 

 アイミーは魔法戦士となり、ロングスカートからまたもミニスカに。

 今回は赤のマントと白の前垂れ付きで、白のニーハイブーツ着用だ。

 賢者から一転、全体的に赤でまとめて気合が感じられる。

 

 一方のパラディンとなったボシュは、そのままのスタイルを維持。

 今回の職は通過点でしかないという考えだ。

 

 皆武器はそのまま継続で使う事となる中、スーパースター続行中のリリだけが新たな水晶という武器となっている。

 

 

 見た目は結局のところ以前として統一感ゼロのパーティ。

 

 

 

 村長と名乗る老齢の男は、一行をじっくりと眺めてから言い放つ。

 

「失礼を詫びたいというなら、頼み事を聞いてはくれぬか、若く麗しき旅芸人達よ」

 

 

「「「た、旅芸人?!」」」

 

「もちろんです、魔物退治でも何でもします」

「って、否定しろよリーダー…!今回旅芸の設定なのか?」

「まあ、若く麗しいのは間違ってないわ」

 

 満更でもなさそうなリリに加え、アイミーは小首を傾げて微笑む。少しでも印象を良くしようと努めているのだ。

 呆れるボシュだが、さらなる口出しは控えた。

 サチが魔物と口にした時の、村長の表情の変化に気づいたからだ。

 

 初めから疑ってかかっているだけに、今回の一行は観察眼が鋭くなっている。

 

 

「それで頼み事って何ですか?」

 

「村の外れにある山奥のほこらに、お供え物をして来てほしいのじゃ」

「何だ、それだけか?」

「お前さんが若いからそう言えるのじゃ!若い衆がおらんので困っておった。行ってはくれんか。礼は弾む」

「お詫びのために行くのに、お礼なんていりません!だよね?サチ」

 

「もちろんです。何をお供えすれば?」

 

 

 村長は懐から小さな包みを取り出しサチに持たせる。

 

 受け取った品を3人が覗き込む。

 

 

「ちっさ…」

「全然重労働でもなさそうだ。これならじいさんでも行けそうなもんだが?」

 

「ゴホン」

 

「あっ!お年寄りにはいろいろありますよね!」

「それをほこらに。場所はあっちの方じゃ。行けば分かる。では頼んだ」

 

 

 言い終えるや、村長はそそくさと立ち去った。

 

 

 

「なーんか引っかかるな」

 

「もうっ、お兄ちゃんたら面と向かってあんな事言うんだもん。やんなっちゃう!」

「あ?だって本当の事だろ」

「まー、年取ると体もあちこち痛くなるだろうし。動くのがおっくうなんじゃない?」

「それは置いとくとしても、その薄っぺらい供えモンはどうだよ!」

 

「お供え物の大きさは関係ないよ。大事なのは敬う気持ち」

 

「うんうん、間違ってないよ、アイミーは。だけどこれマジで何が入ってんの?あの雑な説明とか、確かに怪しすぎ!ホントに行くの?サチ」

「引き受けちゃったからには行くしかないよ」

 

「何でもいい、もうさっさと済ませようぜ」

 

 

 

 

 

 早々に頼み事を終わらせるべく、村の外れにある山を目指す一行。

 

 

 麓に差し掛かった時、誰かが追い駆けて来た。

 

「おーい!待って!」

 

 

 

「ねえ、誰か来たよ」

 

 息を切らせてやって来たのは子供のようだ。

 

 

「この先は山だから、一人で来ちゃ危ないよ」

「お姉さん達を追い駆けて来たの!一人でこんな所怖くて来れないもん。この村からすぐに出て行った方がいいよ!」

「それを言うためにわざわざ来たのか?この怖い場所に一人で」

「そんなに慌ててね。何かあるんだね」

 

「これ以上旅の人達が犠牲になるのを、黙って見てられなくて…っ」

 

「どういう事か、詳しく教えてくれるかな」

 

 

 昼だというのに辺りはすでに薄暗い。

 もう山に足を踏み入れてしまったようだ。

 目前に見えるのは山というより小高い丘程度だが、不穏な空気を漂わせている。

 

 

 その薄暗い中から、青白い光が一つ二つと近づいて来る。

 

 

「ほら来た!もうダメだっ、お兄ちゃん…ゴメン」

 

「下がってろ。何が出たって俺が退治してやる」

「ボシュ、あなたは今パラディンよ。役目が違う。下がって」

「…そうだった、クソっ」

 

 

 代わって前に出たサチが短剣を構える。

 

 そして現われたのは青白い人魂だ。

 

 

「人魂にしてはデカくない?」

「目と口が付いてるっ」

「気を付けろサチ、アイツ何かしゃべるぞ!」

 

 

「ヒッヒッヒ、やっと供え物が届いたか。今度はどんな味だ?」

 

「お前に供える物など持ってない!ハードラックラッシュ!」

 

 

 サチは短剣で素早く二度三度と斬りつけた。

 

 

「おお!レンジャーならではの動きか、素早いな」

「ちょっと試してみたかったのっ」

「油断しないで、まだいっぱいいるよ!」

「そうね。やっぱ全体攻撃の技にすれば良かったー」

 

「平気、私が一気にやる。え~い、落陽!」

 

 青の光は、アイミーの放った巨大な火の塊に飲み込まれた。

 

 

「ありがとアイミー。魔法戦士になっても健在ね」

「えへへっ」

「むしろちょっと力付いたんじゃない?」

「うん、そうなの。まだまだ行けそうだよ」

 

 

「…良かったぁ。お姉さん達、強いんだね」

 

 

「なあ、お前さっきお兄ちゃんとか口走ってたが」

「私にはお兄ちゃんがいるの。…今はいないけど。あ、私はトゥルナだよ!」

「トゥルナね。私はサチでこっちはボシュ、それから…」

「私はアイミー」

「リリよん♪お兄さん、どこへ行ったの?」

 

「魔物に連れて行かれちゃったの。村の若い人達皆だよ」

 

 

「それであの村長が、若い衆はいないって言ってたんだな」

「村長さんは、お姉さん達をお供え物にする気だったんだよ」 

「まあ酷いっ」

「そうやって旅の人達が犠牲になってたんだね…」

 

 

 

 

 

 村に戻ると、一番に村長に直訴に向かう。

 

 

「いけにえを出さんと村が襲われるのじゃ。ここんところ誰も通りかからんでな」

 

「それは分かりますが、せめて言ってくれれば」

「てっきり旅芸人一行かと…」

「ホントに強かったよ、サチさんとアイミーさん。ボシュさんとリリさんはもっと強いよ!」

 

 

「ヤバ、もっと強いって。どうする?否定しとく?」

「リリ姉は否定した方がいいかもな!俺の方は事実だから必要ないが」

「そうかな~今のボシュ君は分かんないよ~?」

 

「そっ、そんな事はない!…はずだ」

 

 尻すぼみになったボシュが珍しくて、リリがさらなるちょっかいを出そうとした時。

 

 

 村長が事のほか大きな声を出した。

 

「そんなに強いとはワシの目は節穴じゃ!誠に、ま、こ、と、に!済まんかったっ。初めから助けを求めれば良かったわい」

 

「そうだよ、サチが初めに言ったろ、魔物退治でも何でもするって?そこで気づけよ」

「お兄ちゃんっ」

「よいよい。その通りじゃ。これでもちょっとは考えたんじゃよ…?」

 

「あーゴメン!アタシのせいだわ、旅芸人!」

「違うよ、きっと私だよ。気合い入りすぎだよね、このマントとかさ…」

「それ言ったら私のもコスプレっぽ?」

 

「まともなのは俺だけか~!」

 

 

 どこか自慢げにボシュが続くも、村長からは何のコメントもなく。

 

「そっ、そんな事より、ちゃんと説明しろ、ちゃんと!」

 

 

「もちろんじゃとも。話を始めてもよろしいか?お嬢さん方」

 

 どうぞ!と3人娘の声が揃う。

 

 

「べっぴん3姉妹じゃな。羨ましい限りだよ、青年!」

「何を言ってる?めんどくせぇだけだよ!あと、一人は俺の妹だ!いいからさっさと話せ!」

 

 

「ボシュったらメチャ照れてる」

「顔真っ赤」

「はーぁ。お兄ちゃん…」

 

 

「トゥルナ、お前の兄も魔物に連れて行かれたのだったな」

「どういう事なの?村長さん」

「突然じゃ。一人、また一人といなくなり、いつの間にか子供と老人しかおらん村になった」

「魔物の姿を見た人は?誰か気づかなかったの?」

「唯一トゥルナじゃ。話しておやり」

 

「うん。一緒にいる時に、お兄ちゃんだけ連れて行かれたの。子供には用はないって」

「若者だけが必要ってどういう事だろ?」

「魔物が言ってた。子供は力仕事には向かない、どうせすぐ死ぬって」

 

「連れ去ってどこかで力仕事をさせてるってか。人間をこき使って何を企んでやがる?」

 

 パラディンとなっても怒りで青筋が立つのは変わらない。

 

 

「すぐに村の人達を連れ戻そう。お兄さんもね」

「サチさん、皆さん、どうか助けて!私にはお兄ちゃんしかいないの…」

「両親はいないのか?」

「病気で死んじゃったんだ」

「アタシの両親も死んだよ、事故で。一緒だね」

 

 リリが腰を屈めて目線を合わせ、優しく頭を撫でる。

 

 こらえ切れずトゥルナはリリの足元にしがみ付いて泣き出した。

 

 

「よしよし…。絶対に連れて帰るから。もう泣くな」

「…うん。あの!これ、持って行って」

「ん?」

 

 

 トゥルナが差し出したのは、自分が首から下げていたペンダントだ。

 

 

「これお守り。お兄ちゃんも同じの付けてる。目印になると思うの」

「そっか。じゃあ借りてくね」

 

「それで村長さん、他に何か分かっている事は?」

「奴らは岩を掘削して何かを掘り出そうとしているようじゃ。夜な夜なカツーン、カツーンという音がここまで響いて来る」

「この辺りでも宝石とか採れるんですか?」

 

 前回の村がそうであっただけに、こんな発想が生まれたのだが。

 

「いいや。そんな話は聞いた事もない。そんなモンが採れればこの村はもっと栄えておる」

「ですよね…済みません」

「では、その音のする方に行けばいいのね」

「よし、耳澄まして待つか!」

 

 

 

 

 旅の一行と距離を置き、村長はポツリと言う。

 

「…あの者達もどうせもう戻らん。魔物に魂を抜かれて、永遠に岩を叩き続ける。哀れな事じゃ」

「いいえ。私は信じる。サチさん達はきっと戻って来る。だって、あのペンダントを渡したんだもの」

 

「そう言えばお前達兄妹はいつもあれを着けていたな。あれは何なんじゃ?」

「両親がくれたお守り。…魔物からお兄ちゃんを守ってはくれなかったけど。でもきっと生きてる。絶対にまた会える。神様がサチさん達を呼んでくれたのよ。だから私は諦めない!」

 

 

「子供は希望の星とよく言うが、その通りじゃな。ワシも共に祈ろう」

 

 

 

 

 

 

 

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