旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第45話:水晶の使い方

 

 

 洞窟内では音が大きく反響している。さらに何やら話し声も聞こえて来る。

 

 

「アタシのスライムレーダーが反応してるっ」

「何だよそのレーダー」

「って事はスライム系の魔物がいるって事ね」

 

「普通に受け入れんなよっ」

 

 

「あっ、見て、あのぼんやり光ってるクラゲみたいなの魔物だよ!」

「ベホイムスライム!やばッ」

 

「そうだよ、アイツやばいよ。気を付けて、麻痺攻撃してくるから」

「クラゲだけに痺れさせるのが得意技か」

「あと、あの足で回転しながら蹴って来る」

「ムチみたいで痛そう!」

 

 

 まだ魔物はサチ達には気づいていない様子。

 

 光の先の何者かが岩を掘っている。

 

 

「硬い。何という硬さ!これでこそ修行。易々と達成しては意味なし、ほい、てやーとりゃー!」

 

 自らを奮い立たせるかのようなセリフと共に、カキーン、カキーンと金属音が鳴り響く。

 

 

「これの音だったんだね」

「しかし途方もない作業だわよ?全然掘れてないし!」

「修行ってのはな、コツコツやるもんだ。何か気持ち分かるぜ…」

「魔物と気持ち通わせてどうすんのさっ」

 

 

「ねえオジサン!村の人達はどこ?」

 

「おいサチっ、またかよ…」

「全くやり方がブレないね。逆に関心するわ」

 

 

「ムム!何ヤツ!いつの間に背後にっ」

 

 

「いたぜ、割と前からな」

「なぜベホイムが反応せなんだ?」

「それはキングスライムの心掴んでるリリ姉がここにいるからでしょ」

 

 ベホイムはユラユラと宙を漂いながら、丸い目をさらに丸くさせリリを見ているばかり。

 

 

「触らぬ何とかにたたりなし…。どうかあのムチにだけは当たりませんようにっ」

 

 若干肌の露出が増えたため、アイミーはそれが気がかりだ。

 

 

「これより先は我らが聖域。岩の前にお前らを斬ってやる!」

 

「オッサン、岩を斬る修行中断させて悪いな」

「謝る必要ある?お兄ちゃん」

「ヤダわ~この妙な連帯感。一方的だけど!一緒に修行始めないでね~」

 

 

「我が名はキラーアーマー。この赤銅色の甲冑に懸けて、この先には通さん!」

 

「あなた、ジョニーの背に乗ってる甲冑騎士に似てるけど、親戚?」

「ジョニーとは誰じゃ。そんな奴は知らん。まずはお前から斬ってやる!とりゃー!」

 

 

 先ほどまで岩に向かっていた剣の切っ先がサチに向く。

 振りかぶり鋭い一撃が降って来た。

 

 サチがそれを短剣で受ける。再び洞窟内に金属音が鳴り響いた。

 

 

「リリ姉、ベホイムの方、お願いしてもいい?」

「もち!任せて」

「くれぐれも情を掛けたらダメよ!全部倒して!」

 

「分かってるって。ムチでシバかれる変な趣味はないから安心して」

「ええ…そっち?」

 

 

 思わぬ発言に戸惑うアイミーをよそに、リリは意気揚々と神秘の水晶を掲げる。

 

 

「それの使い方分かったのか?」

「分かんなーい。でも出しといた方がいいかなって」

 

 ボシュ兄妹がコケる音が聞こえそうな肩透かしを食らった。

 

 

 その間もサチとキラーアーマーの戦いは続く。

 

 

「俺はあっちに加勢してくる。こっち頼んだ。アイミー、気を付けろよ!」

「プラチナトレイで返り討ちにするから大丈夫!」

 

 こんな返しに、改めて妹がたくましくなった事を実感する兄であった。

 

 

 

 魔物を相手取り、二手に分かれた戦いが繰り広げられる。

 

 サチ&ボシュ組は金属音を響かせ、掛け声も盛んに飛び賑やかな一方。

 リリ&アイミー組は敵のスライムも無言のため静かな戦いとなっている。

 

 

「サチ、この洞窟でドラゴーンはなしだぞ?この奥に連れ去られた人達がいるかもしれない」

「え~残念。やろうとしてたのにっ」

「マジかよっ。言っといて良かったぜ…」

「でもコイツ、結構強いよ。どうする?」

 

 

 こんな会話の最中も、サチに向けられた攻撃をボシュが代わりに受け止めている。

 

「…っ、ありがと。パラディンガード、役に立つね」

 

 

「俺にやらせろ。ギガブレードだ」

「でも、バトルマスターの時みたいな力はなくなってるよ?大丈夫?」

「何を心配してる?」

「ボシュの体に決まってる!今だってこんなに私の代わりに攻撃を受けまくってるのよ?」

 

 またもパラディンガードが発動した。

 

 

「…ああそうだ。長期戦になったらもたない。だから今すぐやらせろ!今だ、ギガブレード!」

 

 

 技の体勢に入った事に気づき、サチが一歩下がって援護の体勢となる。

 

 ボシュの一撃は見事キラーアーマーに直撃。

 甲冑がガシャンと音を立てて崩れ落ちた。

 

 

「やった!凄い、…ボシュ!大丈夫?しっかり!」

「倒しはしたが…やっぱキツイか。前だって結構キツかったもんなぁ」

 

 サチの肩に腕を回して何とか立っていられる状態のボシュ。

 

「お前はケガないか?」

「うん。ボシュが全部引き受けてくれたお陰」

「そりゃ何より。あの岩を斬る修行をオッサンが達成してたら、俺達も真っ二つだったかもな」

「そうかもね…」

 

 

 入口寄りのスペースで繰り広げられていたもう一つの戦いも、無事に終わったようだ。

 

「お兄ちゃん!大丈夫?ケガしたの?」

「いいや。体力を消耗しすぎただけだ」

 

「そうよ、こういう時に使うのよ、これは!癒しの占術!」

 

 不意にリリが玉を掲げて、華麗にクルリと一回転した。

 すると一帯にまばゆい光が降り注ぎ、ボシュのみならずその場にいた者達を包み込む。

 

 

「おおスゲぇ!疲れが吹き飛んで力がみなぎって来た!これがそいつの力か」

「私も元気いっぱい!」

「私も!リリ姉、それ凄いね!」

「どんなもんだいっ。もっと褒めてっ」

 

 

 思わぬ効果で元の活力を取り戻した一行は、頷き合うと先を急ぐ。

 

 

 

 

 進んで行くと、壁面はキラキラした鍾乳洞に変わった。

 

 

「キレイ!これどこまで続くのかな」

「見て、外の光が見えて来た。出口かもしれない」

 

 

 

 光の先には草原が広がっていた。

 

 外に出た一行の前に現れたのは、またも実体のない亡霊だ。

 

 

『おぬしらを待っておった』

 

 

「きゃあ!お化け怖いっ…」

 

 幽霊の類いが苦手なアイミーはたまらずリリにしがみ付く。

 こんなシーンに何度か直面しているため、慣れて来た他のメンバーも普通に話しかける。

 

「よしよし…。ちょっと?いきなり驚かさないでくれる?ウチの可愛いアイミーが怖がってるじゃない!」

『それは済まん事をした…ワシは生前魔導士であった。こんな技を使う日が来るとは…自分でも思わなんだ』

「そりゃそうだろう。しかし霊体の分際で、太陽の下にも出られるんだな!」

 

『強い執着さえあれば、どこであれ行けるさ』

「それで魔導士の亡霊さん、用件は?」

 

 

『今は見る影もないが、ここはかつて我々の隠れ里であった…』

 

 

 この言葉を受け、視線は目前に広がる寂しい草原に向く。

 

 亡霊の話によれば、里にあった魂の輝石と呼ばれる宝を魔物が探しているらしい。

 

 

『あの石があれば人の魂を封じ込める事ができる』

 

「えーっと。そんな水晶、どっかにあったよね?」

「ああ。サチの光の玉だろ?今は浄化されてるが」

「そうだよそれ!あの強欲商人からアタシがキングに返したヤツも!」

 

『ほう。あの水晶を知っておるか。だが輝石は水晶の何十倍、いや何万倍も凄いのじゃ!それが魔物に渡ればマジぴえんっ…どころではないぞ!』

 

 

「ん?今ギャル語みたいなのが聞こえた気が…」

「気っ、気のせいじゃない?…ねえアイミー」

「そうだよ。何年も前に亡くなったお爺さんがそういう言葉知ってる訳ないよ」

 

 

「それは大変、マジぴえん!」

 

 両手を頬に当ててそう繰り返したサチを見た3人。

 気のせいではなかったとショックを受けたのだった。

 

 

『これを伝えるために待っていた。ではこの時代の頼もしき若者達よ、よろしく頼む』

 

 

「おい待て!なんでピエンとか知ってんのか説明してけ!消化不良もはなはだしい」

「ボシュ、諦めな。もう消えてるよ」

「あんな言葉私でも使わないのに…。ホント、どこで覚えたんだろうね」

「ほら、執着強ければどこへでも行けるとか言ってたじゃん、ギャルが好きなんじゃ?」

 

 こんなリリのコメントに、漏れなく浮かんで来た人物が一名。

 

 

「けっ!ジジイ共と来たらどうなってんだ?エロ具合半端ねえや。世も末だぜ…」

「お兄ちゃんの方が老人みたい」

 

 

 嘆く妹にも気づく様子はなく、ボシュは天を仰いだ視線を降ろした。

 

 そして人影が横切るのに気づく。

 

 

「ん?あっちで何かが動いた気が…」

「あれは…魔物みたい。後を付けてみよう!」

「きっと村の人達が向こうにいるのよ!アイミー、気を取り直して行くよ!」

 

「うん。そうだね!行こう!」

 

 

 

 

 

 

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