旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第46話:探し人発見

 

 

 洞窟を抜けた先の寂れた草原にて、魔導士の霊から新たなミッションを託されたサチ達一行は、不意に視界に映った影を追って走り出す。

 

 ダッシュで距離を詰め、密かに後を付ける事に成功した。

 

 それは小さな体の小悪魔系の魔物だ。

 赤と紫の派手な体をしているのに、小刻みに動くためその姿が残像となってぼやけてしまう。

 

 

「あれはバアルゼブブだわ。動きが素早いから見失わないように!」

 

「すでに視界に映ってるのか分からねえ!」

「残像を追うしかなさそうだわね」

「目がおかしくなる!」

 

「目だけじゃなく気配を探ってみて」

「ああそっか、その手があったわね」

「さすがサチだね!」

 

 

「なあ、アイツ、何か大荷物持ってるよな?」

「やっぱり?アタシもそんなのが見えた」

 

 

 

 追って行くと、急に辺りが薄暗くなり断崖絶壁が姿を現した。

 小悪魔は岩にできた隙間に消えた。

 

 

「あそこから中に入れるみたい」

「何か怖いなぁ」

「ここに一人で待たされるよりはいいだろ、行くぞ!」

 

 

 ボシュがアイミーの手を引いて中に入る。

 続いてサチとリリも身を屈めて何とか入った。

 

 

「良かった、中は案外広いわ」

「アイツだ!何か捨ててるよ…」

 

 

 担いでいた大きな袋から、穴の中にドサリと荷を投げ入れている。

 

 

「何だ?あれは」

「ひ、人っ、人だったよ、絶対!」

 

 アイミーの悲鳴交じりの声が意外と響いてしまった。

 

 

 魔物がギロリとこちらを見た。

 

「見ーたーなー…。オマエ達、ニンゲンだな。なぜここにいる?」

 

 

「今そこに捨てたのは何?」

「そんな溌剌とした声でしゃべって増々おかしい。魂を抜かれてないのか?仕事はどうした、早く戻って仕事しろ!」

「私達は魔物を退治しに来た。だけどお前はまだ殺さない。そこに捨てたのは何!教えなさい!」

 

 サチの凛とした声が響き渡る。

 口を挟む余地もなく、3人はただ見守る。

 

 

「何って死体さ。使い物にならなくなったから捨てに来たんだ。ここももう一杯だ、また穴掘らなきゃなぁ。鬼面道士はどこ行った?またサボってるな、アイツ!」

 

 

「人間をゴミみたいに…。許さない。出でよっ…」

「待て待て!たんま!」

「そうね、ゴメン、ついイラ立って」

 

「ここは私にやらせて。落陽!そしてフォースブレイクに追撃レインボー!」

 

 

 いつもの巨大な火の塊が去るや、持ちこたえていた小悪魔の体が謎の光に包まれる。

 そこへ立て続けに降って来た二度目の攻撃に、さすがのスピード自慢も逃れられず。

 

 

「うわ~~…サイアク。って、鬼面道士のジジイよ、今出て来ても遅いって…あとは任せた」

 

 

 一難去ってまた一難。今度も小人ながら2体。今回の魔物は梅干色で地味だ。

 呼び名通りの老人で、杖を持っているところから呪文使いのようだ。

 

 

「もう話は聞かなくていいだろ、一気にやっていいか?」

「だからボシュ、アンタは一番手厳禁でしょ」

 

「一番手は私!ジャッジパラライズ!」

 

 キンっと音が鳴り響き、斜めに閃光が走る。

 よろけた杖老人だが倒れない。

 

 

「じゃあ次私ね。今度はざざん波~!そんでもってまたまたレインボー!」

 

「…まだだ。よし、ようやく出番か?」

「まだみたいよ!イオラっ!」

 

 

 まだ倒れず。老人が杖を振り回して反撃してくる。

 透かさずボシュがガードし、すぐに攻撃態勢に入る。

 

「今度こそ俺だな。食らえ、ギガ空裂斬!」

 

 

「オオトリっていうのもカッコいいじゃない?お見事ボシュ。またしてもガードありがとう」

「皆、回復はしなくていい?いつでも言って!」

「今の体制、最強だね!お兄ちゃんがガードしてくれるし、リリ姉が元気くれる。私楽しい!」

 

「おお…アイミーが戦いを楽しんでるよ」

「俺も嬉しいぜっ、アイミー!立派に戦士だ」

 

 

 えへへっ、と笑うアイミーは、変わらない屈託のない笑顔を皆に向けた。

 

 

「よし。この調子で村の人達を探そう」

「待って!さっき穴に落とされた人、生きてるかも!」

 

 穴の中を覗き込んでアイミーが叫ぶ。

 

 

「マジか、引っ張り上げるぞ。掴まれ!」

 

 穴に腕を伸ばしてボシュが引き上げた。

 

 

「…助かりました、ここでもう死ぬのだと覚悟していたのですが。あなた方は?」

「私達は魔物退治をしています。ここに連れ去られた人達がいると聞いて助けに来たんです」

「そうでしたか。アイツらを、倒せたんですか?それは凄い、お強いですね!」

 

「ねえ!その首に掛かってるの、良く見せて!」

 

 リリは懐から預かったペンダントを取り出す。

 

 

「あ、もしかしてトゥルナのペンダントと同じ?」

「トゥルナをご存じなのですか?妹を!」

 

 シモンと名乗ったその青年は、まさにそのペンダントを着けていた。

 

「探す手間が省けたな。生きてて良かったぜ」

「でもあの魔物が言うには、死体を運んでるって。よく生きてたね…ってゴメンなさい」

「いいんです。自分でも不思議です」

 

「きっとそのペンダントの効果よ」

「お守りって言ってたもんね」

「それに他の人達は皆魂を抜かれていて会話もできないんです。僕だけがそのままで…」

「何にせよ良かったじゃねえか。で、他の奴らはどこにいる?」

 

「ここから少し戻った、滝の裏の洞窟にいます。どうか皆を助けてください!僕だけ村に帰る訳には行きません」

 

 

 説明するそばから、リリが神秘の水晶を使って傷ついたシモンを手当てする。

 

 

 

 元気を取り戻したシモンと共に囚われの人々の元へ向かう一行。

 

 

 滝を抜けた先の洞窟では、人々が精気の抜けた顔でひたすら重労働を強いられていた。

 何の道具も与えられず、素手で岩を掴みそれを使って掘る。

 

 

「見つけた…魂の輝石…。これで村に帰れる…」

 

 一人がそうつぶやいた時、別の威勢の良い声がした。

 

 

「よくやった!褒美としてお前の魂をこの輝石に最初に封印してやる。第一号だぞ、喜べ!」

 

 姿を現したのは腕が4本あり、それぞれに武器を持った水色の鎧の魔物。

 

 

「あれはボーンファイター。物理攻撃が危険なヤツよ」

「ねえ、あの下で動いてるの、手じゃない?」

「ボシュの嫌いな手!マッドフィンガー!」

「魔物はどれも嫌いだ。増えるのがウザいだけ!」

 

 こんな会話が魔物の耳にも入ってしまう。

 

 

「誰だ!なぜそんなに元気にしゃべる事ができる?」

 

「またそれかよ。俺達は魂健在なの!」

「うぬぬ。先にお前達が餌食だ!」

 

「それはこっちのセリフ!今度こそ、出でよ、ドラゴーン!」

 

 

「大丈夫、人間の私達には危害は加わらない」

 

 リリがその場に立ちすくむ村人達に向かって説明する。

 だが、聞こえているのかいないのか反応はない。

 

 

 ドラゴーンの津波でマッドフィンガーはあっという間に流された。

 だがボーンファイターは未だ仁王立ち状態。

 ところが良く見れば、その体は何かに縛られているようだ。

 

 

「ぐぬぬ。どうした事か、体が動かんっ」

 

 

「出たな、レンジャーの影縛り!今なら反撃されない。今のうちだ、アイミー止め刺せ!」

「分かった、も一回鉄砲水攻撃!え~い、ざざん波!念のため追撃レインボー!」

 

 

 またもやって来た濁流に、必死に掴んでいた物が魔物の手から零れ落ちた。

 

「しまった!うぎゃー!やられた…」

 

 

 コロコロと転がって来た何かは、吸い寄せられるようにリリの足元で止まる。

 

 

「これが輝石…まだ魂が入ってないからか透明だわね。はい、サチ」

「リリ姉が持ってて」

「え?でも…」

「その石、リリ姉を選んだみたいに見えた。だから」

 

「良く分かんないけど、分かったわ」

「それと、村人達の体力を回復させてほしい」

「もち!すぐにやるね」

 

 

「よし、それが済んだらさっさと村に帰ろうぜ!」

「トゥルナが待ってますよ、シモンさん」

 

 

「はい、早く会いたいです!」

 

 

 

 

 

 

 

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