旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第47話:輝石のゆくえ

 

 

 洞窟から村人達を救出し、無事に村へと送り届けた一行。

 

 トゥルナとシモンの感動的な再会も束の間、少し先から村人の悲鳴が聞こえて来た。

 

 

「何事だ?」

「火事、とかかな…」

「待って、何か凄い瘴気感じる…こっちに向かって来てる!」

 

 

「魔物が暴れてるんだわ。二人は逃げて、アイツらここに来る気よ!」

 

「はいっ、トゥルナ行こう!」

「皆さん、気を付けて!」

 

 

 

 サチの言葉に頷いたシモンが、トゥルナを抱き上げて駆け出した直後。

 

 

 物凄いスピードで現われたのは2体の魔物だ。

 そのうちの茶色の大きな巻き角を持った、黄色い体躯に紫の毛を背に流したバッファロンが唸るように声を出す。

 

 

「バリゲーン様に献上する品を返してもらおう」

「勝手に持ち去るとは不届き者め!」

 

 続けて薄紫の体躯に赤いモヒカンが目に付く、その名もモヒカントが叫ぶ。

 

 

「派手な獣共だな」

「これは渡さない。村人達をこんなに苦しめて、不届き者はどっち?マール・デ・ドラゴーン!こいつらを懲らしめて!」

 

 

 掛け声と共に、ドドーンと波が押し寄せる音が響いて海賊船が姿を現す。

 すっかり慣れた様子でサチが乗り込むと、陣頭指揮を執る。

 

「全速前進!」

 

 

 どうにか踏ん張って堪えた魔物達だが、2番手はアイミーのざざん波が待っている。

 立て続けの水攻めを乗り越えると、次はリリの呪文攻撃だ。

 こちらは残念ながら以前ほどの威力がなく、魔物達も余裕の表情となる。

 

 

「これで終わりか?ならばこちらが」

 

「わあっ、しまった!」

「サチ!」

 

 サチが転ばされてしまった。

 バッファロンはこうして転ばせるのが得意技だ。

 こうなると容易に体勢を立て直せず攻撃できない。

 

 

「油断した、ゴメン。ボシュ!もう一人転ばされたら負ける、角の獣から倒して!」

「よっしゃ任せろ。ギガブレード!」

 

 2体共大分弱っていたお陰で、今のボシュの攻撃力でも1体は倒せた。

 

 

「よし!あと1体!」

「サチ、大丈夫、私に任せて。力が足りないから落陽だけど!そんでもって追撃レインボー!」

 

 

 皆へとへとになりながらどうにか倒せた。

 

 

「皆大丈夫?ゴメン、アタシだけ攻撃力なくて」

「いいのよ。リリ姉は回復役なんだから。私達パーティの要だよ?」

「すぐに役目を果たすね。癒しの占術ー!」

 

 神秘の水晶効果は伊達ではない。

 ボロボロだった3人はたちまち元気を取り戻した。

 

 

 

 水晶を収めて、改めて今回問題となっている輝石を手にするリリ。

 

「これどうする?」

 

 

 すると頭の中に聞き覚えのある声が響いて来た。

 

『そんな物騒な石は、前みたいに捨ててしまった方がいいと思うんですケド』

 

 

「あっ、この声、あの時の妖精さん?」

「私も聞こえた」

「私も!」

「俺も…」

 

 

 

 そしてまたしても新たな人物が割って入る。

 

「待て、早まるな!それにはまだ使い道がある」

 

 

 

「っ!お前、どっから湧いて出た?」

 

 現われたのは黒尽ずくめの謎の騎士。

 

「今はここまでしか言えんが、お前らは然るべき時に備えて己を鍛えておく事だ」

「どうしてオジサンがここにいるの?」

「オジ…。だから、今は言えんと言ってるだろう。これは俺が持っていよう。ではさらばだ」

 

「おい待て!また持ち逃げかよ!オッサン!」

 

 すでにその姿はなく、ボシュの呼びかけは風に乗って消えた。

 

 

「また同じ展開?あの人一体何なの?でもさ、ちょっとイケボよね、アイツ」

「リリ姉も思った?私も思ってた!渋いよね」

「趣味合うじゃん!アイミーは?」

「私は…別に普通かな」

 

 戸惑い気味に答えるアイミーを兄が擁護する。

 

「普通に決まってんだろ。何浮かれてんだよオジン相手に?しかもアイツ、人じゃない可能性だってあんだぜ?」

「人じゃなかったら何なの?ゆ…っ」

「まあ…実体がなかったとしたら、付き合うのは難しいね」

「だねぇ」

 

「でも、心だけなら通い合えるよ」

 

 

「あらまっ。純だね~青春だね~」

「だね~」

「ってサチ、アンタまだ年齢的にあっち側でしょ」

「あっちでもこっちでもないよ」

 

 

「オジンの野郎、早々に消えて正解だぜ。あー、ずりィな~、俺も今だけ消えてぇ」

 

 こんな女子トークに入れる余地もなく。一人輪から外れたボシュであった。

 

 

 

・・・

 

 

 

 無事にトラブルを解決して、次の目的地を目指す一行。

 

 

「それにしても本当に驚いた。同族の魔物ってどれも同じ姿なんだね」

「でも性格は様々よ」

「賢いのからエロいのまでね~」

「ジョニーのじじいは明らかにエロだな!」

 

 

 こんな会話になったのは、あのアイミー行方不明事件の真相が明らかになったためだ。

 あの日アイミーは、こっそりとジョニーに良く似た魔物に呼び寄せられて森に入った。

 

 それはもちろん、皆の役に立つために。

 

 アイミーは村長に失言をした事や、いつも自分の力不足ゆえに皆に負担がかかっている事など諸々を挽回しようと、躍起になっていたのだ。

 

 

「で?どこで気づいたのさ?」

「全然鼻の下が伸びないの。ほら、今の私の衣装、ちょっとアレじゃない?」

「角度によっては太股が見える!そういうのはやめろ?」

「厳し~。いいじゃん、チラリズムよ、チ、ラ、リ、ズ、ム!」

 

「エロ根性を見せないイコール、ジョニーじゃないって訳ね」

 

 

「手厳しいの~」

 

「でも他に区別のつけようがないんだよ。どうなってるの?」

「どうもこうも、性格の違いはあれ同種族の見た目は同じなのじゃ」

「って事は何か、オメーみてえなのが何体もいる訳か。おっそろしー」

「いる。アイミー殿にも申し上げたが、重々注意せよ。ワシ以外は皆敵じゃ」

 

 

「ジョニーは別なのね。信じていいのね?」

 

 サチがジョニーの目を見て改めて問い直す。

 

 

「ワシの口からイエスとは言えん。それを決めるのはサチ殿ゆえ」

「それって責任転嫁だよな。どっかの村長の、自分は責任は負わんと一緒だ。どうぞご自由にってか!」

「信頼関係を保つのは本当に難しい。踏みにじる行為をすれば元には戻れん。償えるものではないのである」

 

「別にジョニじいが何かした訳じゃないでしょ」

 

「しょせんは魔物。魔物が人間を裏切るのは常。そんな本能がワシにもあるとするなら、容易に答える事はできぬのである」

「そうね。分かった。でも私は信じる。ジョニー以外に会ったら殺していいのね?」

「もちろんじゃ。魔物討伐はおぬしらのすべき事じゃからのー」

 

 

「それで、偽物って分かってどうしたの?アイミー」

「途中でジョニじいが来てくれて」

「ならジジイが自分でやったのか?仲間を?」

「悪だくみを正して退場いただいた」

 

「でもその人、サチの事混乱させてったんでしょ?」

「初めから倒しとけよ!」

「では聞くが、ボシュ殿は容易く同族を殺せるのか?どうなのじゃ」

 

「それは…。人間と魔物一緒にすんじゃねーよ!」

 

「一緒だよ。魔物にだって心があるもの。これまで接して来て実感した」

「サチは魔物の心さえも掴んじゃうもんね~」

「ワシもその一人なのである」

「お前やっぱ、謎の女だな!」

 

 

「さて。この先の旅の共は、別の者に委ねようと思う」

 

「え、ジョニじい、一緒に来てくれないの?」

「このような事が起こったからには、もうその資格はない」

「アタシは別に気にしないよ?ねえボシュ」

「何で名指しで意見を言わせようとする?」

 

 

「自分で言うのも何じゃが、スライムジェネラルは生半可な魔物ではない。術の大半は効かんし、混乱攻撃も仕掛けて来る。ずる賢い奴らが多い」

「ホントに!自分で言ってるぜ」

「ちなみにワシは力自慢じゃ」

 

「聞いてねーわ!ってかエロ自慢じゃねえの?」

「エロとはなんじゃ。むっつりスケベの事か?」

「むっ、…はあ?」

 

「ヤだよボシュったら!その同様っぷり、まさかのむっつり?」

「そうじゃねー!」

 

 

 ここでサチはスケベ話には加わらず話題を戻す。

 

「ジョニー、もしかして姉さまの所に行くとか?」

 

 

「一度様子を見に行こうとは思っておる。が、付いて回るつもりはない。前にもわずらわしいと突っぱねられたでのー」

「断られてたんだ…」

 

「ううっ、私も姉さまに断られた…っ」

「ぼよぉぉ~ん…」

 

 サチとジョニーが揃ってしょんぼりしている。

 

 

「やっぱお前ら似てるわ」

「ね~」

 

「ねえジョニー。なら、お供じゃなくて相談役は?時々助言をくれるだけでもいいから」

「私からもお願いします、未熟な私達に忠告をしてくれる人がいたら嬉しい!ね、お兄ちゃん」

「また名指し…。ああそうだな、ここは一つ手間だろうがよろしく頼む」

「手間などではない。ワシも気に掛けておるでな。では、それで了解したのである!」

 

「良かった!これからもヨロシクね、ジョニじい」

 

 

 女子3人に詰め寄られては、この鼻の下が伸びない訳がない。

 幾分だらしない表情となったジョニーが、ご機嫌に飛び跳ねる。

 

 

「いつもの何倍も弾力ありそうだな」

「力自慢ってだけあるわね」

 

「ジャンプ力を高めるコツ、今度聞こうっ」

「サチは必要ないよ。だってドラゴーンにいつも凄いジャンプで飛び乗ってるじゃない」

「あー。あれ?自然に体が吸い寄せられるんだよね」

 

「敵を倒す目的で登場した場合、船があるじを呼び寄せるのじゃ」

 

「なら本人のジャンプ力は関係ないんだ」

「ちょっと残念っ」

「でもでも、サチ、レンジャーになってから身体能力高くなったよね!」

「そうか?元からアクロバティックな動き多いから分かんねーや」

 

 ボシュがやや拗ねている。自分も褒めてほしいのか。

 

 

 だかしかし逆のコメントが飛び出す。

 

「ボシュの動きが鈍くなったから余計に俊敏に見えるんじゃない?」

「…好きでそうなってる訳じゃねーし!」

「そうだよ。職業の特性っていうのがあるから」

 

 

 そしていつだってボシュをフォローするのはサチだ。

 サチの笑顔に励まされ、ボシュは決意する。

 

「よし。オレもジジ…ジョニーに弟子入りする!」

「ジャンプ力?」

「力自慢、なんだろ?」

 

「どうするかのー。弟子はオナゴと決めておるのである」

「なぜだ。納得の行く理由なら諦める」

 

 

 口を閉ざすジョニー。つまりよこしまな理由なのだ。

 

 

「おい。どうした、答えろ。どうせエロい事考えてんだろ?分かってんだよ、白状しやがれ!」

「そういう態度が良くないと気づかんかのー」

「相手がオメーじゃなければこんな態度は取ってねー!」

「それこそなぜじゃ?ワシがおぬしに何かしたか?男には何もした覚えはないのであるっ」

 

「アタシらにしてる自覚はあるんだー」

「ねー」

 

 この論争はしばらく続いた。

 

 

 

 こうしてサチ達に何かと絡んでしまうジョニー。

 

 当分は共に旅を続ける事になりそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

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