旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第10章 砂嵐の魔城
第48話:黒い騎士の再来


 

 

 リリがスーパースターから賢者に転職する事となった。

 

 本来は喜ぶべきなのだが、リリとしては名残惜しさの方が勝る。

 

 

「パーティ編成としては賢者の方が有り難いよ」

「これでまともなカッコできるな!」

「リリ姉の賢者だったら、私の時よりも頼りになるね!」

 

「うう…ん」

 

 

「さあほら、お買物行こ!イメチェンしよ!」

 

 

 いつもは乗り気なショッピングも、今回ばかりは足が重いリリ。

 

「ああ、輝かしい日々が去って行く!」

 

 

「去ってないよ、リリ姉はいつも輝いてる。ねえお兄ちゃん?」

「何で俺に聞く?サチに振れよ」

「お兄ちゃんっ」

「ちっ…。ああ!リリ姉はいつも輝いてるよ!」

 

「言わされてる感満載なんですけどー」

 

 

 ボシュは気まずそうに頭を掻く。

 

「マジで思ってるよ。あの歌声、また聞きたい、とかもな」

 

 

「えっ、それホント?聞きたい?も~言ってよ!歌うし踊るよ、いつでもっ、ボシュ大~好きっ」

 

 こんなセリフと共にリリがボシュに抱きついたから大変。

 

 

「っ!そんな突然っ?!い、今は女と付き合うとかはだな、考えられな…」

 

 

「私もリリ姉の歌聞きた~い。一緒に踊る!」

「サチも大~好き!」

 

 あっさりボシュから離れたリリが、今度はサチに抱きつく。

 

 

「…」

 

 

「お兄ちゃん、告白じゃないから。リリ姉気づいてないみたいだから、聞かなかった事にしてあげるね」

「まぎらわしいんだよ!」

 

 

 ボシュが恥をかく事になったこんな一幕はしかし、大いに役に立った。

 通りすがりの町で賢者の衣装を入手した頃には、リリはすっかり立ち直っていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

「ど~お?」

 

 早速着替えてお披露目しているリリ。

 クルリと一回転すると、紺のロングスカートと共に背にした紺のマントがひらりと舞った。

 

「スカートはアイミーが着てたヤツだけど」

 

 

「リリ姉が着ると大人っぽ~い!似合ってる!」

「うん。誰が見ても賢者様だね」

「イメージがガラリと変わったな。俺はこっちの方が好きだぜ」

 

「ボシュ君に好きと言われましたー!告白かな?」

 

「っ!だからそういう意味じゃっ」

 

 どうやら先ほどの勘違いは気づかれていたようだ。

 その後ボシュがしばらく女子二人にからかわれたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 こんな楽し気な一行に誰かが近づいて来た。

 

 

「ん?あれって…」

「何、どうしたのサチ」

 

「アイツ、また来やがった。今度は何を奪いに来たんだ?」

 

 

 やって来たのは黒尽くめの騎士であった。

 

「人を盗っ人のようにっ…何も奪わん!バカめ」

 

 

「事実だろ。名前も名乗らず、毎回戦利品だけ持ち逃げしやがって」

「そうよそうよ!ちょっとイケボだからって?」

「リリ姉、今それ関係ないよ…」

 

 

 イケボと言われて若干機嫌を直した騎士。

 

「ああ、まだ名乗っていなかったな。俺はジャンピエだ。お前らの名前も聞いてやる」

 

「っだよ、その言い方?これだからオジンは!」

「私はサチ。こっちはボシュ」

「勝手に紹介すんな!」

「アタシはリリ。今日から賢者になったけど、特技は歌と踊りだから念のため」

 

「そこまで言う必要あるかなぁ」

「確かに俺は聞いてない。で、お前は?」

「わ、私はアイミーですっ」

 

 ジャンピエが静かに頷いた。そして視線はサチに向けられる。

 

「単刀直入に言う。サチ、これから俺と来い」

「何のために?」

 

「何のためだと?お前らの成すべき事のために決まってるだろう。忙しいこの俺が、ガキ共連れてショッピングすると思うか?」

 

 

「なあオッサン。まずはその感じ悪りィ口調をどうにかしろ」

「…一々うるさい小僧だ」

「あ?なんか言ったかオッサン」

 

 

 ケンカ勃発の予感を察知したサチが割って入る。

 

「ジャンピエさん!なぜ私達を誘うの?」

「二度も俺の行く手に立ちはだかっておいて、それを聞くのか?」

「それはこっちのセリフだ、お前が邪魔してたんだろうが!」

 

 

 今度はリリが割って入った。

 

「つまり!アタシ達目的が同じって事?」

「ああ。女の方がよほど賢いらしい」

 

 またも噛みつく寸前のボシュをリリが制止する。

 

「なぜ止める?コイツが敵じゃない保証はない!」

「全く頭の悪い小僧だ。正体がどうあれ、目的を同じくする人間をお前は敵と呼ぶのか?」

 

 これはジョニーに対しても言える。

 例え魔物であっても、目的が同じならば敵ではない。

 とはいえジョニーの目的の方は未だ明らかになってはいないのだが。

 

 

 一呼吸置いてからボシュは答える。

 

「いいだろう。100歩譲って敵疑惑は解除してやる。ならお前が持ってったオーブと輝石、悪用しないって事でいいんだな?」

 

「当たり前だ。何があっても阻止せねばならん事がある。そのためにお前達の力が必要なのだ」

「それは?」

「時が惜しい。説明は移動しながらする。すぐに向かえるか?」

「ここでの用は済んだわ。行きましょ」

 

 

 

 

 

 

 こうして一行は謎の黒騎士ジャンピエと共に新たな村に直行した。

 

 

 向かう村に今回の敵に繋がる魔物が目を付けているとの事。

 そこで捕まえて情報を得ようという訳だ。

 

 

 

 だが着いた先の村はすでに壊滅状態であった。

 

 

「間に合わなかったか!可哀そうな事をした。お前らなど探さず俺一人で来れば良かった」

「それどういう意味だよ。俺達のせいにしてるんじゃねーよな?」

「そう聞こえなくもないよね」

 

「ジャンピエさんも私達も悪くない。悪いのは魔物の方よ。この村に何があったの?」

 

 

「やはり女の方が飲み込みが早い。これらは、元を正せば全て暴嵐天バリゲーンの仕業だ」

「また強そうな名前…何者ですか?」

「かつて魔王に仕えた四天王の一人。倒された魔王を、復活させようとしているのだ」

 

 

 魔王は遠い過去に導きの英雄と呼ばれる勇者一行が倒したのだとジャンピエが説明する。

 

 

「その時に四天王も倒しているはずだが…何らかの力が働いたのか、封印の力が時の経過で弱まったか。いずれにせよ、魔王まで復活されては手に負えん。今のうちに潰さねば!」

 

 

 これから襲い来る凶悪な存在を感じ、一行は身震いする。

 

 一体何者が四天王を甦らせたのか。

 当然目的は魔王復活。それはつまり悪の力に他ならない。

 

 

「こうなったら別のルートで行く。サチ、輝石を発掘した場所に案内しろ」

「そんなとこに戻ってどうする?石を奪われた事に気づいた魔物共が大騒ぎしてると思うぜ」

「その場の奴らは皆殺しにしたのだろう?だったらまだ気づかれてはいないはずだ」

 

「責任逃れに逃げ出すヤツとかいるしね~」

 

 これまでの魔物達との会話を思い起こしてリリが同調する。

 情報伝達手段が絶たれれば知る術はない。それこそ自ら足を運ぶ以外には。

 実際そうして現場に現れたボス敵もいた。

 

 

 ボシュもその考えに行き着き納得する。

 

「そうか。ホンボシが現場に来るかもってか」

「そこまでは望んでいないが、何か分かるかもしれん。ようやく頭が回り出したな、ボシュと言ったか」

「意外だな!覚えてたのか、俺の名前」

「生憎、記憶力はいい方でな」

 

 

 ようやくまともな会話を始めた男二人を遠巻きに見ながら、女子3人が安堵の息を吐く。

 

「どうなる事かと思ったけど。案外気が合うんじゃない?」

「そういえばあの人、ちょっとお父さんに似てるかも」

「そうなの?二人のお父さんにも挨拶してくれば良かったっ」

「アイミーのパパってイケメ~ン!」

 

 

「何をペチャクチャやってる?おしゃべりは終わりだ、とっとと案内しろ」

 

「せっかちは嫌われるよ?ねー」

「ねー」

 

「…。お前のパーティーは教育がなってないな。お前に言ってるんだが、サチ!」

 

 そっぽを向いたまま進むサチにジャンピエが訴えるも、何も答えずただ笑みを投げかける。

 ここはオジンキラー・サチの本領発揮か。

 

 

 不覚にもジャンピエは、その天女のごとき笑みに目を奪われた。

 

 

「何ボケーっとしてるんだ?置いてくぞ!」

 

 

 無意識に足が止まりかけていたジャンピエ。

 

 ボシュの声を受けて、慌てて先頭を行くサチに追いつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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