旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第50話:過去の亡霊

 

 

「便利な武器もあったものだな…」

 

「ジャンピエも初めてか?だろ!俺も最初は度肝抜かれたよ!」

 

 

 すっかり仲良しになったボシュとジャンピエ。

 現在、赤き炎の島に向かうべく、サチの呼び出したドラゴーンにて大海原に出ている。

 

 …の、だが。

 

 

 

「方向はこっちで合ってるのかなぁ」

「って、分かってて舵取ってたんじゃないの?!船長!」

「ヤダ、サチったら!間違ってたらどうするのっ」

 

 

 のん気に海賊船の感想を言い合っている場合ではないようだ。

 

 

「そういや詳しい場所の事聞いてなかったな。ジャンピエがやたら急ぐから」

「さり気なく俺のせいにするな」

「とか何とか言って、どうせ知ってるんだろ?」

「知るか。俺はてっきりサチが知っているものと」

 

「マジかよ…」

 

 

「おい占い師。その水晶で調べろ」

 

「はあ?アタシ占い師なんて一言も言ってませんっ。間違えるなら踊り子にしてよね?」

「でもさっ、何か見えたりしないかな!」

「サチまで?もう!何も見えないって最初に確認したっしょ…ん?地図みたいなのが見える」

 

「でかした!」

「またもミラクル発生だ。運はこっちに向いてるぜ!リリ姉、俺にも見せろ!」

 

 

 何と水晶に浮き上がって来たのは、目的の島までのルートを示す海図であった。

 

 

 

 

 

 お陰で遭難する事もなく無事に島へと辿り着く事ができた。

 

 そこでは、気取った人型の魔物が待ち構えていた。

 

 

「我が島に何ヤツ!ここはバリゲーン様にこのオ、レ、サ、マが!いただいた島。入ったものはオレのもの、餌食にしてくれる!」

 

 

「エビルソーサラー。魔物のくせに気取ったキザ野郎だ」

「その周りにいるのは何ですか?」

「使い魔だな。見た目通りの小物だ。小娘でも倒せる。アイミー、試しにやってみろ」

 

「え、私が?…分かった、落陽!」

 

 アイミーは言われるままに雨雲の杖を構え、巨大な火の塊を上空に生み出す。

 

 

 敵陣に向かって落ちたそれはしかし、使い魔だけを倒した。

 

 

「上々だ。エビルソーサラーは復活の術を使う。一発で倒せ!」

 

 

「言われなくてもやる!ギガ空裂斬!」

 

 前に躍り出たボシュが必殺技を繰り出した。

 

 

「1体相手にそれか。全く雑だな」

「何とでも言え。アイミーの落陽を受けてもビクともしなかった。アイツは斧じゃ倒せない」

「フッ。冷静になったじゃないか小僧…いやボシュ。上々だ」

「ふんっ」

 

 鼻を鳴らしたボシュを流し目で一瞥した後、サチ達に向かってジャンピエが言う。

 

「お前達も随分腕を上げたな。だが導きの英雄にはまだまだ及ばん」

「その導きの英雄っていうのは?」

 

 

 首を傾げる面々をよそに、ジャンピエが少し先に転がる赤い石を見つける。

 

「あっさり見つかったな。まずは神殿に戻るぞ」

「はいっ!」

 

 

「サチにシッポが見えそうだぜ」

「姉さま一筋なのに、浮気者だわねぇ」

「えっ、あれってそういう?」

 

「そもそもドラ姉さんへの感情も訳分かんねーし、単に熱しやすいだけかもな。おいジャンピエ、サチ、待てよ!」

 

 ボシュが前を行くサチとジャンピエに並ぶ。

 

 

「あの二人、やっぱ親子だわね」

 

「お兄ちゃん、お父さんとあんまり仲良くなかったんだ」

「ホントはああやって並んで歩きたかったと思うよ。帰ったらきっと仲良くできるって」

「どっちも意地っ張りだから。…だといいな」

 

 サチが二人の話を聞きつけてペースを落とし、会話に加わる。

 

「アイミーは?両親との仲は良好だったんでしょ」

「私は、そうだね。そう思うよ、普通に良かった」

「そっかぁ」

 

 サチの一言にリリがまたも突っ込んでしまう。

 

「何々、サチは何かありそうだわね~」

「仲良くなかったの?」

 

「母さまとは、アイミーみたいに普通、だったと思う。でも父さまとはどうかな。私、こんなだから嫌われてたと思う」

「ヤダ!こんなってどんなよ?こんな頼もしい娘なのに?お父さんの見る目なさすぎ!」

「そうだよ。それこそ帰ったらきっと上手くやれるよ」

 

 

「帰れたら、ね。魔物を全て倒し終えて、この世界が平和になったら…」

 

 

 認めてくれるだろうか。

 だがそれは生半可な道ではない。それこそ生きて帰れる保証もないのだ。

 

 それでも前を向いて進む。

 一歩一歩進んで行けば、取りあえず前に進む事はできる。

 そして苦難を乗り越える度に、人は成長できるのだ。

 

 その先にはきっと…。

 

 

 

「おい、お前らもこっち来いよ!ジャンピエが知ってる事話すってさ」

 

 

「行くっ」

 

「あ、待ってよサチ!」

「待ってよリリ姉!」

 

 少々距離が開いてしまっていたところを、サチが一気に詰め寄る。

 取り残された二人が慌てて追い駆けた。

 

 

「そんなに急くな、転ぶぞ女共」

 

「弱者扱い反対ー」

「右に同じですっ」

 

 

 何だかんだと楽しげなジャンピエ。ニヒルな笑みを一行に投げかける。

 

「こんな時間を過ごすのは久しぶりだ」

 

 

「ジャンピエさんは戦士なの?それとも勇者…」

「俺は勇者じゃない。分類するならパラディンだな」

「俺と一緒じゃねーか!今は、だが」

 

「ほう。その後の道は決めているのか、ボシュ」

「ゴッドハンドだ。攻めと守りを極めてやる」

「いいじゃないか。お前ならば可能だ」

 

 

「そっ、そうか?あはは!」

 

 当初よりもかなり当たりが柔らかくなったジャンピエに、ボシュも調子が狂って行く。

 頭をかいたまま照れ笑いを浮かべる。

 

 

「それで、ジャンピエさんはどうして導きの英雄の事や魔王の事を知っているの?」

「もう何百年も昔の話だ。俺は導きの英雄達と共に旅をしていた。だが魔王の城に入る直前、バリゲーンによって傷を受けた」

「仲間を庇ったんだな」

 

 ジャンピエが頷いてから続ける。

 

「俺だけ、共に戦う事が叶わなかった。その後魔王は封印されたと聞いたが、その場所も仲間の消息も分からず仕舞い。それから時は経ち、今になってまたも魔王の復活を目論む連中がいる事を知り、残された者のすべき事をするために来た」

 

 

 こんな話を聞けば、この男が亡霊の類である線が濃厚になる。

 それもただならぬ怨念を持った…。

 

 アイミーが身震いする。気づいたリリが肩を抱き寄せて擦った。

 

 

 皆あえて亡霊扱いなどはしない。

 何しろジャンピエには足もあるし、体も透けてはいないのだから。

 

 

「最初は俺だけで何とかしようと思った。だが行く度にお前達が先回りして来る。これはこいつらに託してもいいのでは、と思い始めた。この時代の人間にな。俺は所詮過去の亡霊だ」

 

 仲間もいない今となっては、ここは自分の時代ではない。

 ジャンピエは心の中だけで続ける。

 

 

「ぼっ、ぼうれ…」

「アイミー落ち着け。ちゃんと見ろ、あいつの足、あるだろ?」

「う、うん…だね」

 

 サチもアイミーを落ち着かせるべく肩に手を乗せる。

 そしてジャンピエに向けて言う。

 

「私達はただ、世界を平和に戻すために戦っているだけ。私達だけじゃなく、他にもたくさん冒険者がいます」

「他の人間じゃダメだ。お前には導きの英雄と同じオーラが見える」

 

「私に?あ、この光はそういうのじゃなくてっ」

 

 自分の体から立ち昇る光の事だと思ったサチが説明を始める。

 

 

 だがジャンピエは首を横に振る。

 

「それの事じゃない。俺には見えている。別のオーラがな」

 

 

「…ります」

 

 

「ん?」

「困りますっ」

 

「何がだ」

 

「私がそんな大それたものになったら、姉さまは?それは私じゃない。英雄は姉さまよ!ジャ

ンピエさん、姉さまに会ってください、そうすれば分かるわ!」

「サチ、落ち着いて。誰が英雄だっていいじゃない。魔王を復活させないように皆で戦えば。違う?」

「リリ姉…。そうだよね、ゴメン、取り乱した」

 

「ったく!俺が勇者と勘違いされてた時に、同じ事言ってくれたのお前だぞ?」

「そうだった?」

 

「忘れたのかよっ」

 

 

 

 

 

 

 こんな会話を繰り広げながら、移ろいの神殿に戻って来る。

 

 

「よくぞ戻られた!では早速。こちらが真実のかがり火の祭壇じゃ」

 

 神官が石を近づけると炎が灯った。

 

 

「あとは偽りのかがり火か」

「青き炎の山にある石が必要じゃ。山にはライノソルジャーがおる。おふざけ気分のそなた達に取って来る事ができるかのう?」

 

「まだ言うの?酷い、本気で戦うつもりなのに…」

 

 今回はアイミーの涙声が効いた。もちろんこれは演技ではなく本気だ。

 

 

「おお…その話は誠であったのか。それは済まなんだ、娘さん、お顔を上げてくだされっ」

「もうお遊びとか言わないでくださいね?」

 

「もちろんもちろん!わっはっはー!」

 

 

 

「何か感じ変わったな、あの神官」

 

「そう?初めからあんな感じじゃない?ねえ」

「そうだね。女の武器が通用する感じが」

「そっちの事を言ったんじゃないんだが」

 

 

「よし!すぐに向かうぞ、お前達!」

 

 いつしか全員揃って返事を返していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「神秘の水晶」に占いのスキルを追加してみました!
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