旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第55話:期待に応えるために

 

 

 道具屋に戻ってみれば、店主は相変わらずの偏屈ぶりを見せて来た。

 

 

「おやおや驚いた。本当に持って来たのか!」

 

「ムカっ、本当にってそっちが言ったんじゃん?」

「リリ姉っ、そんな言い方は…」

「だーって何かさー、バカにされたみたいで!」

 

 

 憤慨するリリに気後れしつつも、ロイスが前に出る。

 

「ここは私が!ええと、これでハンマーを譲っていただけるのですよね?」

 

 

「やれやれ。あの木の辺りには魔物が住み着いていたはずじゃが」

「そんなのはあっさり倒した。全然手応えなかったぜ!」

「ボシュは口での応戦だったけどね。実際戦ったのはサチとアイミーだから」

「いらん事言うなっ」

 

 

「倒したとな?ではこれでいつでもブドージュを採りに行けるわい!」

「ええ。いつでもどうぞ。まだまだなっていました」

 

 

 店主がサチを見て大きく息を吐き出した。

 

「お前さん、いい顔をしとるな」

 

 

「え?」

 

「おいジジイ、黙って聞いてりゃ年甲斐もなくウチのリーダー口説いてんじゃねーぞ?」

「待て待て、そんな意味じゃない。ワシはもうそんな元気はないわい!安心せい、お前さんの恋敵にはならんでな」

 

「はぁ?俺は別にこいつにそういう感情なんてっ」

 

 途端にムキになって否定し始めるボシュであった。

 

 

「約束は約束じゃ。名工のハンマーを譲ってやろうではないか」

「偏屈でも約束は守るのね!」

「リリ姉ってば…っ」

 

「ところで、おぬしはゴルムの助手か?」

「はい。師匠をご存じなのですか?」

「ああ。ゴルムの助手のくせに、ハンマーに頼るとは情けない!」

 

 こう言われては言葉がない。ロイスは再び落ち込む。

 

 

「…だが、あやつは滅多な事では弟子など取らん。よほどお前さんの腕を買っているのだろうさ」

「そ、そうでしょうか…っ」

 

 顔を上げたロイスが期待のこもった目で店主を見るも、会話はすぐに打ち切られた。

 

 

「さあ、用が済んだら帰った帰った、早速この実で酒を造らねば!忙しくなるわい」

 

 

 

 追い出されるように道具屋を後にした一行であった。

 

 

 

 

 

 工房に戻ると、ロイスはすぐさま仕事に取り掛かる。

 

 

 また同じ工程が始まり、石を熱してはハンマーで叩きを繰り返して行く。

 

「こうして鍛えて、不純物を取り除き、丈夫な鋼を作るのですっ、えいやっ」

 

 

「ロイスの顔つきが変わったみたい」

「一人前の武具神官だわね」

 

 

 こんな言葉を掛けられ、ロイスがふと顔を上げた。

 

「私はまだまだ未熟者です…でも、そんな私を信じてくれる人のために、期待に応えたい。必ず神殿を救います!」

「やっぱ変わったじゃねーか」

「最初は助けてください、だったもんね」

 

 そう、今のロイスは自ら助けようとしている。

 

 

 

 

 しばらくして、いよいよ最後の行程だ。鍵の先端に魔法がかけられる。

 

 

「完成しました!」

 

「やったわね、おめでとう!」

「おめでとうございます!」

「これでやっと扉が開けられるな」

「すぐに向かおっ!」

 

 

 

 

 聖杯を取りに宝物庫に向かうも、こんな所にも魔物が来ていた。

 

 それはいつかどこぞの城で門番をしていた、甲冑姿の大柄な人型魔物だ。

 今回のはグレーとオレンジ色をしている。

 

 

「やはり聖杯を取りに来る者が現れたな。フォズめ、余計な入れ知恵をしてくれる!」

 

 先回りして待ち伏せしていたようだ。珍しく頭もキレる魔物らしい。

 

 

「まさかここにもいるとは…っ」

 

「我はマジックアーマーなり。ここには入らせぬ」

「残念だったな!こっちはお前に似たヤツ前に倒してんだ」

「だからどうだというのだ。そんな事は関係ない!」

 

 

 魔物が激しく斬りかかる。

 

 それをボシュが透かさずガード。それは目にも止まらぬ早さであった。

 

 

「早いっ、いつの間に?…ボシュっ、後は私が!」

 

 その早さはサチでさえ見逃してしまうほどで、思わず遅れを取ってしまう。

 負けじと素早い動きで敵に近づき、短剣を複数回に渡り斬りつけた。

 

 

「ググ…。まさか我が破れるとは、無念なり…」

 

 

「凄い、二人とも!あっという間に決着ついたよ」

「私あんなに早く動けない、やっぱりサチは凄いね」

 

 私だけじゃない、ボシュも十分凄いとサチは言いかけた。

 だが言わなかった。

 

 

 皆で切磋琢磨しながらここまでやって来た。

 それぞれの特技や特性を生かして、随分強くなった。

 

 それはとても嬉しい事だ。

 だが半面、どこか嫉妬のような感情もある。特に異性であるボシュに対しては。

 自分がリーダーで皆を誘った手前というのもあるが、それだけではない。

 

 女だからできない、女だから弱い。そう思われる事が何より嫌なのだ。

 

 

 

 

 ロイスの手により、鍵が扉の鍵穴に差し込まれた。

 ガチャリと音がして、扉が開く。

 

 

「開かなかったらどうしようかと思いました…」

「ヤッダー、悪い冗談ー!」

 

 バシリとロイスの背を叩くリリを筆頭に、ワラワラと中に入る面々。

 

 

 

 そして手分けして探すもなかなか見つからず。

 

 

「中がこんなに雑然としてるとは思わなかったよ…」

 

「神官って、意外と片付けられない人達の集まりだったり?」

「時間がもったいないよ、リリ姉、水晶でありかを占えたりしない?」

「だからぁ~、アタシ占い師じゃないってば!」

 

「確か神秘の水晶ですよね?出来ると思います!是非やっていただきたい!」

 

 

「何で知ってんの?」

「もしかしてお前が作ったとか」

「水晶は作るものではありません」

 

 毅然とした答え方をしたロイス。

 そこに突っ込んだのはリリではなく、これまた珍しくアイミーであった。

 

「お兄ちゃん怒られたー!」

 

「あのなぁ…。お前、リリ姉に似て来たんじゃねーか?」

「そう?」

 

 

「まあいいや。じゃあ、やってみようじゃないの?」

 

 リリがガサゴソとカバンから水晶を取り出す。

 

 

「どうやれって言うのよ?チチンプイプイー、とかどう?」

 

「何か映ってるよ!」

「マジ?!」

 

 いい加減に呪文を唱えて水晶から目を離していたリリが、驚いて視線を戻す。

 

 

「ホントだ。これどこ?暗くて良く分からな…」

「奥の方にこういう棚がありました!」

 

「やけに生き生きしてるな、アイツ」

「きっと皆のお陰だよ」

 

 いやお前だろ、と皆の目が言っている事にサチ本人は気づかず。

 

 

 

 そしてついに奥の棚に目的の聖杯を発見。

 

 

「マジで見つかっちゃった」

「もう立派な占い師だな、リリ姉?」

「やめてよ~!」

 

 

 

 

 光の聖杯を持ったロイスを先頭に、神殿の門前へと移動する。

 

 

「困りました、これの使い方が分かりません…」

「貸して」

 

 サチがおもむろに聖杯を掴むと、いつもの短剣を掲げるように片手で空高く持ち上げる。

 

「さあ、邪悪な魔力を払うわよっ」

 

 クセでドラゴーン!と言いそうになるも、何とかこらえてこう叫ぶサチ。

 

 

「黒い霧よ、去れー!」

 

 

 もともとサチはオーラをまとっているため、迫力がありそれなりに聞こえる。

 

 そして黒い霧はどんどん晴れて行った。

 

 

「サチが使い方知ってて良かったぜ」

「魔法書に書いてあったんだね」

「アタシらよく見てなかったから」

 

「ううん。あれには作り方しか載ってなかった」

「さすがはサチ様!さあ、これで中へ入れます!」

 

 サチの答えに目を丸くする3人。ロイスだけが羨望の眼差しでサチを見続けている。

 

 

「…ま、いっか。さすがサチ、って事で」

「そうだよ、早く助けに行かないと!」

 

 

 

 

 神殿の中は何もかもが氷漬けだ。まるで時が止まったように思える。

 

 

「凄い冷気だわ」

「まるで極寒の地だわね…」

 

 ぷるぷると震える一行は、すぐに氷漬けのフォズ大神官を発見。

 

 

 駆け寄ろうとした瞬間、魔物が現われた。

 

「キッシッシ。わざわざわ入って来るとは愚か者共だ!我は死神の騎士。ここが貴様達の墓場となるだろう」

「我は悪魔の騎士。ここが貴様達の墓場となるだろう」

 

 先に口を開いたのは、丸い盾と斧を持った赤とピンク、次の1体はグレーと青で斧だけを持ったどちらも鎧姿の人型魔物だ。

 

 

 魔物の言い分に真っ先に反論したのは、珍しくアイミーだった。

 

「…神聖な神殿を墓場だなんて、バチが当たるんだからね!」

「アイミーったら、やけにご立腹だわね」

「俺らの実家教会なんだ。こいつは人一倍そういうの我慢ならない。魔物共!ムダ口叩く余裕はもうないぜ!」

 

 

 そんな凛々しい姿を目にしたロイスが密かにつぶやく。

 

「怒った顔も素敵だ…」

 

 

 幸いこの声はボシュには届かず。

 一人後方に下がったロイスは行方を見守る。

 

 

 

 戦いはいつもの展開を迎え、最後の一撃はアイミーに託される。

 

「でも待って、ここでやっつけたら、この魔物の墓場がここになるよね?」

「こまけー事気にすんな!全力で行け!フォズを助けるんだろ?」

 

 

「ええ~い、ざざん波~!加えて追撃レインボー!」

 

 

 レインボー効果のお陰で2体は同時に仲良く倒れた。

 

「2回攻撃はズルだ!…ギリ持ちこたえてたのにっ」

「うぬぬ、ここが俺達の墓場になるとは…。我が主よ、お許しをっ」

 

 

「だからっ、墓場は勝手によそで作ってください!ここはダメ!」

 

 最後までこう主張するアイミーであった。

 

 

 

 

 サチが聖杯をかざすと、氷が解けてフォズ大神官が目を覚ました。

 

 

「私の声に応えてくれたのですね。あなた方の勇気に心から感謝します」

「大変でしたね。こんな事態は初めてでしょう?」

「いいえ。前にも幽閉された事があります。もう慣れっこですからお気になさらず」

 

「さすがは大神官、肝が据わってるわ!」

 

「フォズ様はとても頼りになります」

「ロイスもご苦労でした。ですがまだ終わっていません、奥の祈りの間に、私達を氷漬けにした魔物が残っています」

 

 

「やはり…」

「そりゃあんな小物は、所詮手下だわな!」

 

「ロイスは聖杯で他の神官達を戻してあげてください。サチさん達は私と祈りの間へ」

 

 

 

 

 フォズと共に静まり返った廊下を進む。

 

 

「不意を突かれたとはいえ、多くの神官達を凍らせるほどの力を持った魔物。サチさん皆さん、くれぐれも油断なさらず」

 

「任せとけって!」

「ボシュさんはいつも頼もしいですね。それからアイミーさん、ずっと見ていましたがとても強くなられましたね」

「そうですか?ありがとうございます!」

 

 

「どうかお気をつけて…」

 

 この一行にここまで世話になるとは思っていなかったフォズ。

 迷いながらも彼らに託す事とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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