旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第56話:真の黒幕

 

 

 祈りの間にて、今回の黒幕と対面する。

 

 

「やはり来おったな。我が名はスノーエルダー。人間共を氷漬けにしたのは我である」

 

「…神殿を封印したのも?」

「で、テメーは何の魔物だ?」

 

 サチは何か引っかかりを覚えている様子。

 そしてボシュも首を傾げる。

 無理はない。四つ足で竜のような頭部をしており、背には羽に加えて何と木が生えているのだから!

 全体的に薄緑色で実に珍妙な姿だ。

 

「お前も謎だろ、木だぜ?木!もしかして動物じゃなくて島かも」

「…」

「サチ?」

 

 

「もし神殿を解放する者が現れるとしたら、それはお前に違いないと我が主も言っておられた」

 

 

「おい、二人して無視かよ!」

 

「あるじ、とは豪氷天の事ですね」

「それは?」

「魔王復活を企む四天王の一人です。復活の妨げとなる神殿を封じるつもりだったのでしょう。決して許されぬ行為です」

 

「謎が解けたわ。結界を張ったのはその豪氷天ね」

 

 

「お前達が神の名の元に我らを排除するならば、我らは大魔王の名の元に人間共を排除するまで!」

 

「もっともらしく聞こえるけど、要はこじつけよねぇ」

「違いねえ」

 

 

 薄緑の魔物が唸り、ゴゴゴ…と地響きが始まる。

 

 

「私もお手伝いいたします。サチさん達に神のご加護があらん事を…」

「大神官様に加わっていただけるなら鬼に金棒です!皆、できるだけたくさん攻撃して!戦いが長引けば全滅の可能性も…」

 

「ちょっと?何それどういう事さ?!」

「そんな事はさせねえ!やるぞ、皆!」

 

 

 謎が多い今回の戦い。

 

 フォズが度々回復魔法を掛けてくれたお陰で、リリも攻撃側に回る事ができ、どうにか戦いに勝利した。

 

 

「我が敗れても、豪氷天様が必ず貴様らを…っ」

 

 

「実にお見事でした」

「フォズさんの助けのお陰です。ありがとうございました」

「じゃ、広間に戻ってアタシらも他の神官達を助けましょ」

 

 

 

 

 戻ってみると、ちょうど全ての神官を元に戻したところだった。

 

 

「ゴルム様、ご無事で何よりです!」

「お前が救ってくれたのか。実に見事な働きであったな」

「いいえ…。私一人の力ではありません。私を信じてくれた皆さんのお陰です」

 

 

「あいつ、最初よりぐんと頼もしくなったな」

「いずれはゴルムの後を継いで、立派な武具神官になる事でしょう」

 

 

「ところで、どうしてフォズさんは魔王が復活するって知ってたの?」

「神のお告げにより、四天王が魔王を復活させる未来を視たのです。そもそも四天王は過去に封印されているはずなのですが…」

 

「神のお告げっ?!そんな事まで…っ」

「な?分かったろ。こっちの大神官様は特別なの。リリ姉が大神官になっても、心話やらお告げは無理って事」

 

「リリ姉、占い師とか霊媒師嫌ってたじゃない。なんでそんなにこだわるの?」

「霊媒師は初耳だけど!どうせなら神がかりたいじゃん?」

「なんじゃそりゃ?」

 

 脱線した3人だが、フォズの声を受けて耳を傾ける。

 

 

「いずれにせよ邪悪な者が迫っていると分かり、来たるべき未来に抗うため、高位職の育成に力を入れていたのですが…」

 

「そのせいで神殿が狙われてしまったのね」

「豪氷天がこのまま引き下がるとは思えません。次なる手を打って来るでしょう。ですが私は信じております。サチさんが正しい未来へ導いてくださる事を」

 

 

「どうして私なの?さっきの魔物も私の事知ってる感じだった。どうして…?」

 

 戸惑うサチに、フォズは気持ち近づき、寄り添うようにして囁く。

 

「サチさん。あなたはもう立派な冒険者なのです。魔物達のトップにも存在を知られるくらいに」

「私は別に有名になりたい訳じゃ…!」

「どうか逃げないで。あなたは一人ではありません。それに、敵すら味方にできるくらい魅力的な方です。きっと大丈夫」

 

 

「あの、それってジョニーの…」

 

 フォズはふっと微笑んでサチの背に手を当てた。

 

 

 それは本当に女神の笑みに思えて、皆を振り返る。

 

「…っ、皆!女神様はフォズ大神官だった!」

 

 

「私は女神などではありませんよ。神に仕える一神官に過ぎません」

 

「お前と違って神々しさが半端ないもんな」

「サチのは光の玉効果のオーラだもんねー」

「二人とも、サチの事ディスりすぎっ」

 

「いいの。私が目指してるのは女神じゃないもの」

「アンタのオジン・キラースマイルは神がかってるけどね~」

 

 

 

 賑やかな面々を眺めながら、フォズは未来に確かな希望を抱くのだった。

 

 

 

・・・

 

 

 

 例のごとく夜の宴が開かれている。

 

 

「ジョニじい来てくれて嬉しいっ」

「広い酒場だったからのー。ボヨ~ン…」

 

「おいアイミー、あんまりそいつに近づくんじゃねーぞ」

「だって嬉しいんだもん」

「あらら。もう酔っ払ってるみたい」

 

 グラスを片手にジョニーに寄りかかっているアイミーの顔はすでに真っ赤だ。

 

「いいじゃない。アイミー今回頑張ったもん。ねえジョニじい?活躍ぶりは、当然知ってるでしょう?」

「そうなのであるっ、労うのは当然であるっ」

「それは構わんが、その労い方が問題なんだよ」

「お触り禁止ねー」

 

 

 あまりに気持ち良さげなアイミーに、皆それ以上は目をつぶる事にした。

 

 

「それよりサチ、あの珍妙な魔物見た時、何考えてたんだ?あれが動物か島か考えてたとか?」

「あれは竜でしょ。木が生えてるから変に見えただけよ」

「って、それ考えてたのか?」

 

「違う。あの時考えてたのは、神殿に結界を張ったのが何者か」

 

 

「あの何とかエルダーじゃないの?氷漬けにしたのアイツだったんだし」

「まぁ、多少の小物感は否めないがな」

「そう、アイツじゃ小物過ぎるって腑に落ちなくて。だってダーマ神殿といえば、高位職の人達が集う場所よ?」

「サチ殿ボシュ殿、なかなかじゃな。その通り。あのような結界は誰しもが張れるものではない」

 

「豪氷天って、相当な強敵なのね」

 

 

 すっかり眠り込んでしまったアイミーを起こさないように気遣いながら、ジョニーが会話に加わる。

 四天王、という言葉が頭を過ぎり、サチ達は神妙な顔つきになる。

 

 

「まあとにかくじゃ。進む方向は間違っておらん。このまま突き進むのみ、である!であろ?ボシュ殿」

「お、おー。引き下がるって選択肢なんてねーよ!だろ?サチ、リリ姉」

「当然」

「もち!アイミーだってそう言うよ」

 

 

 最初にボシュに答えを促したのは、こういう展開を予想しての事。

 今やジョニーは、皆の性質をとても良く理解している。

 

 密かに満足げに頷くジョニー。そっとアイミーの太股に触れようと試みる。

 

 

「おい。気づかれないと思ったか?鼻の下伸びすぎなんだよ、エロジジイ!やっぱ離れろっ」

「なな、何の事じゃ?ほれアイミー殿が起きてしまうぞい、揺するでないっ」

 

 

 ボヨンボヨンと巨体が揺れる。

 

 

「何だか面白そう!アタシもやるっ、それ!」

「リリ殿までっ、やめんかいっ」

「…」

「サチ殿、黙ってないで助けてくれたまえ!」

 

「私もやるーっ」

 

 

 ジョニーに味方はいなかった。

 

 

「んん…何?地震?!」

 

「アイミー。こっち来い。それは背もたれじゃねー」

「あっ、ジョニじい、ごめんなさい、重かった?」

「ボヨン、ボヨーンっ、弾みが付き過ぎて止まれんのであるっ」

 

「何やってるの?」

「新しい遊びを発見したらしい。お前はいい子だから加わるなよ?」

 

「っ、いい子?!」

 

 

 サチとリリがジョニーで遊ぶ。

 いつの間にか酒場にいた客も混じり、店内は賑やかな笑い声で満たされる。

 

 

「あ~良く寝た!何かスッキリ。お兄ちゃん何飲んでるの?」

「水だ水。ほら、お前も飲め。酒はもういいだろ」

「ウソ!絶対水じゃないでしょ」

 

 ボシュは自分のグラスとは別のグラスをアイミーに差し出す。

 

 すぐに見破ったアイミーがボシュの持つグラスを奪う。

 

 

「あっ、こら、それは俺の!」

「ん~、これはテキーラ…」

「バカ、一気に飲み干すヤツがあるかっ、マジで水飲め!」

 

 

「だってーお兄ちゃんが水だって言うからー」

 

 そして再びアイミーはダウンした。

 

 

「あれ?アイミー起きたんじゃなかったの」

「また寝た。俺のグラス一気に飲み干しやがった」

「やるぅ~」

「済みませーん、テキーラ二つ!」

 

「…おいサチ、まさかお前も負けずに一気飲みする気か?それも二杯!」

「しないよ。ボシュのなくなっちゃったでしょ。あ、いらなかった?」

 

「っ!…いや、サンキュ」

 

 

「何々ー、二人イイ感じじゃん?アタシもテキーラ飲もっと。すいませーん、こっちにテキーラもう一つ!」

 

 

 酒豪の女二人に鍛えられたボシュの夜はまだまだ終わらない。

 

 

「だけど、豪氷天って言うからには、やっぱ氷関係だよね」

「寒いのは正直苦手だ」

「私は暑いよりもいいかな」

「って事は、ボシュは夏生まれでサチは冬生まれ?」

 

 当たり!と二人が答えた。

 

「リリ姉は?待って、当てる!う~んと、秋かな?」

「凄い、当たり!アイミーは?」

「冬だ。サチと一緒か」

「なら豪氷天との戦いも有利だわね。今やウチの戦力だから、良かった~」

 

 

 再びジョニーの背でスースーと寝息を立てるアイミーに目をやる3人。

 いつの間にかジョニーも共に夢の世界に飛んでいるらしく、寝息が聞こえる。

 

 

「おかしな光景だな。オヤジとお袋が見たら卒倒しそうだ」

「だろうね」

「いつかこうして、異種族同士も仲良く暮らせる時が来るといいな」

 

「それはどうだろうね」

 

 

「リリ姉、批判的だな。エルフと人間の時は賛成派だった気がするが?」

「そんな事ないよ。スライム達とは仲良くしたいし!そういうボシュは?魔物と見れば血も涙もないし、仲良くする気ゼロじゃないの」

「今はそうだ。魔物は敵って認識してるからな」

 

「そう。人間に悪さをするから、敵という認識になってしまってる」

「そうだよ。そうなんだよ!アタシの家族だって…」

 

 リリが途中で言葉を留める。それを受け継ぐようにサチが続ける。

 

「私の幼馴染もそう」

「そういう人間達が全て魔物を受け入れるには、相当時間がかかりそうだ」

 

「それでも、いつかそういう世界になるといいな」

「だね」

「ああ…」

 

 

 いつも賑やかなサチ達一行。宴の後半にこんなふうにしんみりとするのは稀だ。

 

 それだけ進む先が険しくなって来ているという事でもある。

 改めて目指す世界を語り合う事で、目標を再確認し己を奮い立たせる。

 

 

「姉さま、サチは頑張りますっ」

 

 

 気を引き締めるべく、テキーラを飲み干すサチであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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