旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第12章 氷の魔城
第57話:イフレムからの応援要請


 

 

『グリザードよ。例の冒険者に氷魔の結界が破られたそうだな』

 

 謎の声が暗闇に響く。

 

 

『…バリゲーンを倒したのは伊達ではなかったという事か』

 

 

 

「俺も奴を甘く見ていた。奴は俺の獲物、必ず仕留める。お前達は手出し不要だ」

 

『獲物に執心するのは構わぬが、我らの目的が大魔王様の復活である事は忘れるな』

 

 

 

「…」

 

 

 

・・・

 

 

 

 次の旅に出ようとした矢先、サチ達の元にダーマ神殿から使者がやって来た。

 

 

「良かった、まだ国を出られていなかったのですね。フォズ大神官がお話があるそうで、お手数ですが共にお越しいただけますか」

 

「分かりました。皆、いいよね?」

「「異議なし」」

「アタシも。何の話だろ」

 

 

 

 

 足を向けた神殿は、すっかり元の荘厳な雰囲気を取り戻していた。

 

 当然ながら魔の気配はどこにもない。

 

 

「神殿はこうでなくちゃ。この神聖な空気、やっぱり好き!」

「根っからの僧侶だわね。大神官はアイミーがなった方が良さそー」

「ううん。リリ姉の方がいいよ」

 

「どした?アイミー、急に。戦士に目覚めたか!」

「違う。だって私、神がかりたいとか思わないもん。ただの神官ならともかく、大、神官だよ?恐れ多くてっ!」

「「ってそこ?!」」

 

 

 こんな会話をしながら広間でフォズを待つ。

 

 

「皆さん。お呼び立てして申し訳ございません。ある国から応援要請が入り、これから出向く事になりました」

 

「応援要請?それをなぜ私達に?」

「俺達は神官でも高位職でもないぜ」

「どう考えてもアタシらの出る幕ないよねぇ」

「お留守番でもしますか?」

 

「いいえ。先方が、サチさん達冒険者の方々も是非にと申しております」

「私を指名しているのですか?」

 

「覚えておられますか、イフレムの国を」

 

 

 そこは以前、サチがドラちんと旅をしていた時に訪れていた。

 氷漬けにされたその国を助けた事がある。

 

「ブレズ王子とフラメ王女の国ですね」

 

「はい。共に来ていただけますか?」

「それは構いませんけど…」

 

 サチは困惑する。なぜドラちん達でなく自分を呼ぶのかと。

 いや、もしかすると向こうも呼ばれている可能性も…と来れば答えはこれだ。

 

「行きます!すぐにでもっ、お供します!」

 

 

「…おいサチ、急に活気づいて何なんだ?そんなにそこのヤツらと親しいのか」

「待って。この子が目の色変えるのって…」

「もしかしてお姉さん?」

「サチさんは確かご兄弟はおられないのでは?」

 

「あ、えっと…」

「尊敬してる人って意味でーす」

 

 そうですか、と微笑むフォズはやはり女神のようで、サチ以外がポーっと見惚れる。

 サチはといえば、一人別方向を向いて全く別の理由で恍惚としていた。

 

 

「姉さまに会えるかもしれない…っ!」

 

 

 

 

 こうして一行は予定を変更してイフレムの国へ向かう事となった。

 

 道中、サチが皆にイフレムについて説明する。

 

 

「イフレムは炎熱の闘士が建国したという炎の国よ」

「いいね!俺はそういうのが好きなんだ」

「今回は寒さとは無縁みたいだね」

 

「それは期待しない方がいいかもしれません」

 

「「え?」」

「そうね。以前姉さまと行った時は凍えたものっ」

「魔物に氷漬けにされてしまった時ですね。その節は大変な働きぶりと聞いております」

「私なんて何も!全部姉さま達の力ですっ」

 

 凄い勢いでサチが否定に入り、フォズが穏やかな表情をそのままにやや引く。

 

 

 今回の移動は徒歩ではない。馬車に乗っての旅である。

 大神官との旅は実に優雅だ。

 

「サチさんの言う姉さまとは、ドラちんさんの事だったのですね」

「はい!きっともう向こうに着いてますよね、姉さまっ」

「残念ですが、今回呼ばれたのは私共とサチさん達だけです」

 

「ええぇ…」

 

「サチ、ドンマイっ」

「そうだよ。今生の別れみたいな顔すんな」

 

 一気にテンションが落ち込んだサチを皆がなぐさめる。

 

 

「戦いの時だけでなく、実にチームワークに優れたパーティですね。微笑ましいです」

 

 

 これはドラちんパーティにはないものだ。

 

 今回サチ達が呼ばれた理由も何となく理解したフォズであった。

 

 

 

 

 

 

 目的地に到着すると、ムッとした熱気に包まれる。

 夏を感じさせる赤とオレンジを基調とした華やかな衣装をまとった男女が出迎えた。

 

 

「久しぶりだな、サチ!そっちのチビッ子は誰だい?妹か!」

「兄様!こちらのお方はダーマ神殿のフォズ大神官、知らないのですか?」

 

 妹の王女フラメが兄の王子ブレズを、持っていた杖でポカリと叩く。

 

「いてて、杖で殴るな!」

「兄が失礼いたしました」

 

「構いませんよ。ところで何が起きたのですか?見たところ異変はないように思われますが」

 

 

 

 まずは城の中へと一行を応接の間に通し、兄妹が事の次第を打ち明ける。

 

 

「伝承によれば私達の祖先イフレム初代王は、導きの英雄と共に強大な魔物を封印したそうです」

「私もそう記憶しております」

「ええ、私も」

 

「そうなのか?知らなかった」

「右に同じー」

「同じく」

 

 

 その魔物は冷気を操り、世界を凍らせる力を持っていたとか。

 

「以前国が氷漬けにされた時は、その魔物が復活したのかと焦ったぜ」

「あれは別物だった。姉さまが仕留めてる。復活はあり得ない」

 

「サチ殿のおっしゃる通り、あの時点で封印は解けていませんでした」

「で?今回のダーマ神殿を凍らせたヤツは、その封印してた魔物と関係があるってか?」

「はい。恐らく間違いないかと」

 

「お、鋭いね!ボシュだったか。お前とは気が合いそうだな」

「ああ、俺もそう思ってた」

「後で稽古に付き合えや!」

「いいぜ、望むところ!」

 

 あっという間に意気投合したブレズとボシュ。

 

「兄様。お話がまだ途中です」

「そうだよ、お兄ちゃん」

 

 

「分かってるって。境遇が似てるから気が合うのかもな?」

 

 共に妹に指摘されこっそりボシュにこんな耳打ちをしてから、ブレズが話を再開する。

 

 

「アンタら、グリザードの事は知ってるか?」

「それはフォズさんが言っていた豪氷天の事?」

 

「はい。豪氷天グリザードは四天王の一人です」

「だがそいつは初代王が封印したんだろ?」

「封じた四天王が甦ったのです。そして主である魔王を復活させようとしている」

「そう言えば、あのバリゲーンとかいう魔物も四天王なのよね?アタシらが倒したけど」

 

「おお!お前らが倒したのか?スゲーな!」

 

 

 あの時は強力な助っ人がいた事も大きい。

 

 それは伏せてリリは得意げに胸を張る。

 アイミーはあえて口を挟まず、不安そうに成り行きを見守る。

 

 

「フォズさんが神のお告げで聞いた話と一致しますね」

「やはり現実になってしまいましたか…。神殿が封印された時に予感はしたのですが」

「ねえブレズ、フラメ、どうして姉さま…ドラちん達を呼ばないの?私なんかよりも…」

 

「それがアイツ、連絡付かねえんだよ。全くどこほっつき歩いてんだか!」

「兄様!そのような言い方はいけません。ドラちん殿は冒険者、世界中を旅して回るのが役目なのですから」

 

 こんなやり取りは確かに、ボシュとアイミーを見ているようだ。

 

 

「私に一体何が出来るの…?」

 

 

 困惑気味のサチを前に、ブレズ・フラメ兄妹は顔を見合わせる。

 かつてこの国を訪れた頃、サチの存在は確かに薄かった。

 あのドラちんのメンバーを見れは当然ではあるが。

 

 そんなサチが、今回ダーマ神殿の危機を救ったそうな。

 

 ドラちんに連絡が付かない以上、サチを頼るのは自然な流れだ。

 

 

 

「初代王は、万一魔物が甦った時のためにあるモノを遺したらしいのです」

「それがあれば俺達でも倒せる!」

 

「それは何だ?どこにある?」

「それが分からないんだ。どこかに保管しているはずなんだが」

「誰も?国の年長者の人とか知らないワケ?」

 

 リリの問いに兄妹が同時に首を左右に振る。そこで助言したのはフォズだ。

 

「長年イフレムの歴史を研究している賢者なら、何か知っているかもしれませんね」

「それなら彼が当てはまるわ、ねえ兄様!」

 

「…あ?誰?」

 

 

 全く記憶にないといった顔の兄を無視してフラメが立ち上がる。

 

 

「皆様、聖なる峰、イーフへ参りましょう!」

「よっしゃ。早速行こうぜ、山頂まで駆け足だ!」

 

 

「ホントにブレスって人、見れば見るほどボシュだわね…」

 

「アイミーさん、私達、気が合いそうですね」

「そうですね、フラメさん」

「今度お茶でもしながら、語らいませんか」

「喜んで!」

 

 

 どうやらアイミーにも良き相談相手ができたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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