旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第63話:出会いは必然

 

 

 傷ついたサチ達がお互いを支え合って魔城を出ると、辺りは元の島へと戻っていた。

 

 森を抜けてどうにか浜辺に戻って来る。

 

 

 

「お~い!戻って来たぞ!大丈夫かぁ!」

 

 待ち構えていたアロンの船員達に出迎えられた。

 

「何とか歩けてるって感じですね…。でも無事に戻って来てくれて良かったですっ」

「こいつはひどいケガだ、すぐに手当てを!」

 

 

 そこへアロンが駆け付ける。無事に呪いは解けたようだ。

 

 

「皆してボロボロじゃねぇか。俺はこの通り戻った。やってくれるって信じてたぜ」

「アロ…ン、お願い、聞いて、くれる…?」

「もちろん。勝利のキスでも欲しいのか?」

 

 サチを抱き寄せ、色気たっぷりの声で囁くアロン。

 

「今すぐ…」

 

 それだけ言って薄く唇を開いたままのサチ。

 

 

 これを受けて了承されたと受け取ったアロンが顔を近づける。

 唇が合わさる寸前、ボシュがアロンの襟を後ろから掴んだ。

 

 

「っと、そこまでだ。無抵抗なウチのリーダーに何してくれてる?」

 

「おおボシュ。やけに元気になるのが早いな!」

「アイミーがたんまり薬草買い込んでてくれたお陰でね。ほら、サチも早く飲め!」

 

 アロンの腕の中からサチを取り返して、ボシュがその薄く開いた唇に薬草を押し込む。

 

「むぐっ…ニガイ」

「文句言うな。一人だけリリ姉の菓子食ったくせに?」

「だってあの時、ボシュは吹き飛ばされていなかったじゃない」

「まあ…そうだが。だってあれ、結構いけるんだよなぁ!」

 

 チラとリリを見るボシュ。

 

「残念~。あれは戦ってる時限定なので♪」

 

 

「何だ何だ、そんなに美味いのか?恋人のキスの方が甘いだろ!ほらボシュ、するならやっぱりお前とがいいよなぁ。心配すんな、俺はまだしてねーから!」

「だっ、だから俺はコイツの恋人じゃ…」

 

「アロン!お願い!」

「おお…たちまち元気になって。何より何より!積極的だな、そんなに欲しかったか、俺のキス」

 

 

「まさかサチ、本気で…。俺、邪魔したか?」

 

 どんなに奥手でも、人の恋路を邪魔するほど野暮な男にはなりたくない。

 サチの言動を受け、ボシュは途端に自分がお邪魔虫になった気がして来た。

 

 

「そんな訳ないでしょ。今すぐダーマ神殿に連れて行ってって言いたかったの!」

 

「な…」

「な~んだ紛らわしい。面白くなりそうだと思ったのに?」

「良かったぁ。サチが私のお姉さんになる未来がなくなるかと思った」

 

 

 サチ達の会話から、いつの間にか距離を置いていたアロン。

 楽し気な一行を眺めてニヒルに笑う。

 

「悪いな、俺の恋人はコイツなんだ。シーサーペント号よ!」

「キャプテン、ダーマ神殿に行くんですかい?」

「そのくらいお安い御用だぜ、合点承知。野郎ども、碇を上げろ!シーサーペント号出航だ!」

 

「ありがとう、アロン!」

 

 

 

 

 こうしてサチ達は、海を渡りダーマ神殿へと戻って来た。

 

 ブレズとフラメ兄妹の呪いも解け、元の姿に戻っている。

 

 

「サチ殿のお陰で命拾いいたしました」

「大変だったろ。悪かったな、力になれなくて」

「ううん、二人が元に戻って良かった」

 

 

「お帰りなさい、サチさん」

「ただいま帰りました。いろいろとありがとうございました」

「グリザードの結界を打ち破ったそうですね」

 

「実はまだ、グリザードを完全に倒した訳じゃないんです」

「アイツ、妙な声に連れて行かれたんだ」

「そうですか…。相手は魔王が認めた四天王、易々とは行かないでしょう」

 

 

 厳しい現実に一同が険しい表情となる。

 

 

「その、妙な声というのは3人目の四天王かもしれません。どうやらまだ、激しい戦いは続きそうですね」

「はい…。覚悟はしていますが…少し、自信を無くしかけています」

 

 本当にギリギリの戦いだった。

 自分を始めボシュもアイミーも瀕死の状態で戦い続けた。

 それができたのはリリの強力な回復魔法の力だ。

 

 だがこれだけでは勝てない。持久戦になればなるほど追い込まれる。

 

 絶対的にパワー不足なのだ。

 

 

「あなただけに託したりはしません。今回だって、イフレムの戦士や海賊の方々と、頼もしい助っ人が現れたではありませんか」

「でもそれは!アロンに関しては完全に巻き込んでしまっただけで…」

 

「いいえ。出会いは偶然であり必然です。皆サチさんが呼び寄せたもの。全てが力となるのです。次も皆と力を合わせて戦いましょう」

「フォズ大神官様…」

 

 これまでで一番の癒しスマイルがサチに降り注ぐ。

 

 

「それと、良い知らせが入っていますよ」

「何ですか?」

 

 何と、全員の経験値がマックスになっているではないか。

 つまり昇格できるという事だ。それも最上位の特級職だ。

 

 

「皆っ!気づいてた?」

 

「おお…気づかなかったぜ」

「それどころじゃなかったもんね」

「凄い、皆一緒になれるの?」

 

「おめでとうございます」

 

 

 

 サチ達の喜びの声が、神殿の外まで響き渡った。

 

 

 

・・・

 

 

 

「カンパーイ!」

 

「何か現実味がないんだよなぁ」

「お兄ちゃん、ちょっとこっち来て」

「ん?何だよ」

 

 アイミーがボシュの頬をつねる。

 

「って!何すんだ、アイミー!」

「痛いって感覚あるなら夢じゃないよ」

 

「アタシもやったげる!」

 

「いっ、リリ姉まで!いっぺんやりゃ十分だろうが!」

「じゃ私も」

「させるかっ」

 

 ボシュがひらりと身を交わした。が、どういう訳かその先にもサチが。

 

「分身の術ー!えいっ」

 

「いって!お前、もうニンジャ気取りか?」

「サチ凄い、もう習得したの?」

「それが、なかなかやりたい時にできないんだ。でもこれは使えるわっ!」

「今はできたね。気持ちの問題じゃない?」

 

「俺をつねる事にそんなに気合入れるな!」

 

 

「ねえねえ!アタシなんてさ、また踊れるようになったのよ。ハッスルダンスとか鼓舞激励とか!」

「俺はまた怒りのパワー復活だ。力がみなぎるぜ!」

「ボシュは回復魔法が使えなくなったけど、パワーは戻ったね。安心したぁ…」

 

 サチの心からの声に皆が注目する。

 

「ん?どうしたの」

 

「何か今のコメント、重かったなって」

「マジでパワー不足悩んでたもんねぇ」

「だよな。その節は何ともご迷惑を…」

 

「ううん!いいんだよ、ボシュ。だってその分、いろいろ学んだでしょ?」

「ああ。俺、ちゃんと皆を守れただろ?」

「それ疑ってたのアタシか。…ゴホン。はい、ボシュは立派に守ってくれました!」

「よろしい」

 

 

「私の大魔道士ってどうなんだろう」

「賢者の技が戻って来るよ。やまびことか」

「本当に!?そうするとまた、追撃レインボーにやまびこの3連発ができるんだ」

 

「それともう一つある。何だっけ」

 

 サチが頭をひねっていると、後ろから声がした。

 

 

「連続呪文であーる!ボヨン」

 

 

「ジョニじい!来てたの?」

「久しぶりー」

「よくこの店に入れたな」

「顔馴染みなので、特別に裏の搬入口から入れてもらったのであるっ」

 

 

 皆それぞれ声を掛けるも、サチだけがジョニーを見つめて無言だ。

 

「どうかしたかの?サチ殿?」

 

 

「ジョニー、もう来てくれないと思った」

「お呼びでなかったのなら引き返すが」

「違うっ、うえ~ん、来てくれて嬉しいよ~」

 

 サチはダムが決壊したように涙を流してジョニーに抱きついた。

 

「おーよしよし。そんなにワシに会いたかったとな。光栄であるっ」

 

「感動の再会のところ悪いが、余計なとこ触るなよ?ジジイ」

「はて。余計なとことはどこじゃろ」

 

「まーた始まった!サチ、アンタがくっつくからよ?ほら離れてっ、続き聞こうよ」

「ぐすっ、そうだった。で、連続呪文って事は×2」

「さよう。やまびこも発動すればプラス1、さらに追撃レインボーが来ると4連続かのー」

「ウソみたい…体力が持たなそうっ」

 

「もちろん、それはほとんどない。3連続は頻繁に来るじゃろうが。アイミー殿がここまで来るとは、頑張ったのぅ…ワシも泣けて来たぞよっ」

 

 

 みるみるジョニーの表情が歪んで行く。

 

 

「あー待て待て!ここで泣くと洪水になる。それよりゴッドハンドについても教えてくれよ」

 

「おお…おぬしはゴッドハンドか。なるほど、である」

「どの辺がなるほどなんだ?」

「ボシュ殿は元々武闘家。武人を極めるのは自然な流れと思ったまでじゃ」

 

「あ?ああ、そうだな」

 

「お兄ちゃん、あんまりそういう事考えてなかったでしょ」

「まあ、魔剣士にも憧れはあるけどな。俺は元々剣使いじゃなかったし」

「サチに教えてもらってたもんねー」

 

「して、そのサチ殿はニンジャか。ニンジャ装束も見てみたいのぅ…ムフッ」

 

 

「残念ながら手に入れてないの。ちょっとイイ感じの鎧があったから、取りあえずこれで」

 

 サチが身に付けているのは、全体的にダークパープル系。

 チェリーピンクの髪色にマッチしている。

 

「俺は前に買ってた鎧下と、こっちは新調した」

 

 ボシュはブルーグリーンの胴体部分をブルーからレッドへのグラデーションカラーのマントが覆う。なかなかセンスのある一品だ。

 

 

「私も紫っぽく。大魔道士って白系じゃないかなって思って」

「逆にアタシは白っぽく。偶然この下とおソロの上衣見つけてっ、テンション上がるわ~」

 

 リリは相変わらずキツネ耳カチューシャを付けている。

 新調した上衣は、各所に薄いグリーンをあしらった爽やか系だ。

 体にピッタリとフィットしたデザインが、リリのナイスなプロポーションを際立たせる。

 

 

「リリ姉のその路線は変わらずか…」

「何?そのツレない顔~。これ、ダメ?」

「いいや。似合ってる。普通に。着こなせるのはリリ姉しかいないな」

「何か棒読みなんですけどぉー」

 

「マジで思ってるって!」

 

 ボシュの顔が若干赤くなる。

 

 

「照れてるんだよ。それ以上は突っ込まないであげて」

「優し~。いい妹持ったねボシュ君?」

 

 

「これで皆パワーアップ。これなら大丈夫!」

 

「ああ。今度こそ任せろって言える」

「4連続やってみたいっ」

「アタシの出番、マジでなさそうー」

 

「リリ姉の菓子、今度は食わしてくれよな?」

「まだ言ってる。そのうちねー」

 

 

 

 賑やかな宴は始まったばかり。

 

 

 そして特級職の道も始まったばかりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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