旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第13章 氷魔の一族(1)
第64話:神のお告げ


 

 

 ついに特級職まで登りつめたサチ達一行。

 

 だが、激しいグリザードとの戦いの余波は思いのほか長引き、フォズの勧めもありダーマ神殿にてしばしの骨休めをしていた。

 

 

「お兄ちゃん!体を休めるためにここにいるのに」

「もう十分休んだ。だってここには大勢強い奴らがいるんだぜ?ジッとしてられるかってんだ!稽古行って来るっ」

 

「もう…」

 

 鼻息荒く去って行った兄を見送るアイミーは困り顔だ。

 

「いいじゃないの、ケガも治ったんだしさ。元気あり余ってるなら暴れさせた方がいいって。…あれ、サチは?」

「分かんない。しばらく見てないよ」

「あの子も相変わらずマイペースだねぇ」

 

 

 神殿の中庭でティータイムを楽しむのはアイミーとリリのみ。

 

 

「だけど、こうやってのんびりできるのって、今だけだよね…」

 

「あらアイミー。どした?浮かない顔して」

「だってさ、四天王とか魔王とか、凄そうな敵ばっかり。どう考えたって私なんかが太刀打ちできる訳ないよ」

 

「何言ってんの!大魔道士アイミー!アンタの呪文攻撃が一番頼りだってサチ言ってたよ?」

 

 

「頼られても!…困るよ。何でリリ姉は攻撃役辞退したの?絶対私より向いてるのに」

「まだそれ言うか?今やアタシよりアイミーの方が魔力強いんだよ?攻撃魔力の方だけどね」

「でもそれは…っ」

 

「そりゃ最初はガンガンやってたよ?でもそれってやっぱ、スターっぽくないんだよね~」

「…スターっぽ?って?」

「分かんない?そりゃ癒しに決まってるっしょ、い、や、し!」

 

 

「う~ん、意味がよく…」

 

 考え込むアイミーの視線がサチを捉えた。こちらを見て手招きしている。

 

 

「あ、サチだ。呼んでるみたい、行こうリリ姉」

「うん。フォズさんも一緒だわね。何だろ?」

 

 

 

 

「二人とも。大事な話よ。ボシュは?」

 

「高位職の人達に稽古つけてもらうって、向こうの鍛練場の方に」

「また?」

「そうなの、また!」

 

「ズルい、私も行きたい…っ」

「サチ。大事な話があるんでしょ」

 

 

「そうなの!」

 

 一瞬気を持って行かれたサチだが、すぐに向き直る。

 

 

「せっかくここにいるのですし、いろいろと学んで行ってくださいね。もう時間がないかもしれませんが…」

「お話って何ですか?」

「またフォズさんが神のお告げを聞いたって」

「また、悪い事ですか…?」

 

「まあ…良い話ではありません。申し訳ありません」

 

「あっ!いいえ、お気になさらず!大丈夫です」

「んじゃ、ボシュんとこ行こうか。除け者にしたらまた怒るしー?」

 

 

 移動しながら会話が始まる。

 

 

「皆さん、新しい職についての知識は身に付きましたか?」

「はい!このタイミングで昇格出来て良かったです。ね~」

「そうだね。でもやっぱり分身の術は難しいっ」

「ちょうど今、ここにあまりニンジャがおらずに残念でした」

 

「アタシなんてフォズ大神官様に直々に教えてもらっちゃったもんね~。鼓舞激励とかお裾分けとか!」

「リリさんは自然と技を習得しているようで、教える事があまりなかったです」

「さすがリリ姉。きっとその感じでどんな職もこなしそう」

 

「そうだよ!攻撃役だってすぐに習得しちゃうよ!」

 

 前のめりに訴えて来たアイミーに、皆が目を向ける。

 

「…と、思います」

「アイミーだってこなしてるじゃない。頼りにしてるんだからね!」

 

 サチのコメントに、ほらね?とリリがアイミーを見て目で訴える。

 

 

 沈黙するアイミー。

 

 

「アイミー?どうしたの?」

「ううん、何でもない!私もバッチリ教えてもらったよ」

「なら良かった」

 

 

 

 

 一行は鍛練場に到着。

 

 そこには覚えたてのゴッドレイジ発動中のボシュがいた。

 バトルマスター時代の“怒り”激しめバージョンである。

 

 体から湧き上がる気迫が半端ない。

 

 

「お兄ちゃん…凄い!」

「いつの間にあんなに。やるじゃん?ボシュ!」

「うん、ホントに。頼もしい、私の仲間…っ」

「ヤダ、サチ!何泣いてんの」

 

 ぐずっと鼻を鳴らしたサチ。

 

「サチさん。大丈夫です、言った通りでしょう?」

「はい…っ」

「何々?また一人で抱え込もうとしてた?サチ」

 

 

「大丈夫だよ、私だって頑張るよ、サチ!皆で頑張ろうよ、泣かないで」

 

 兄の姿やサチの心境を知り、弱気だったアイミーにも火が灯った。

 

 

 

 

 ボシュも交え場所を変えてフォズのお告げを聞く。

 

 

「ついに魔王の魂が甦ったようなのです」

 

「それ、四天王達がやったって事ですよね」

「バリゲーンとグリザード以外のって事よね。まだいたかぁ…」

「そりゃいるだろ。で、詳しく教えてくれ」

 

「はい。そもそも魂は死後、肉体から切り離されて黄泉の国、冥界へと送られるのですが、何者かがそこから連れ出したと考えられます」

 

「そんな事できるの?!それじゃいくら倒しても連れ戻されたら振り出しじゃん!やってらんないっ」

「もちろん、通常ではあり得ません。冥界にも管理者がおりますから、連れ戻す事は不可能なはずなのですが…」

 

 そこでフォズが言葉を切った。

 

 

「フォズさん?何か思い当たる事でも…?」

「冥界を統べる者は、訳あって長らく不在だったのですが、ここ数百年の間に新たな王を迎え入れたと聞きました」

「ならその人が管理してるんでしょ?」

 

「そう思います。ですがその現在の冥王については良くない噂もチラホラありまして」

 

「良くない噂って…何ですか?」

「まさかそいつ、魔物の類じゃないよな!」

 

 

「それはないはずです。そんな事は神が見過ごしはしません」

 

 そう言いつつもフォズの表情は冴えない。

 

 

 これ以上踏み込んではいけない雰囲気を感じた一行は、フォズの次の言葉を待つ。

 

 

「済みません、皆様には直接関わりのないお話をしてしまいました」

「いえ。興味深いお話を聞けて光栄です」

「とにかく、魂だけじゃ復活したとは言えない。次に必要なのは肉体か」

 

「その通りです。その昔、魔王は勇者一行に倒され、その身はバラバラにして封印されました。魂はその体を求めて彷徨うでしょう」

 

「いやだぁ…っ」

 

 アイミーがリリの胸に抱きつく。優しくその背を擦るリリ。

 

 

「そんな事はさせない。必ず復活を阻止する!」

「おうよ、させてたまるかってんだ!」

 

「お二人の心強いお言葉に励まされます…。現在ダーマ神殿では、各地にある出張所と連絡を取って情報を集めています。その中に一つ気になる情報がありました」

 

 

 話によれば、ブラキオ鉱山に多くの魔物達が集まっているらしい。

 

 

「あらヤダ。何かを掘り起こそうとしてるって事は…?」

「そこに体の一部があるのかもな」

「四天王を片付ける前にそっちだね」

 

「そうと決まれば、皆、出発の準備を!」

 

 

 サチの掛け声に3人の力強い声が応じた。

 

 

 

・・・

 

 

 

 その頃、暗闇からこんな会話が漏れ聞こえていた。

 

 

 

「報告します。我らが大魔王様の封印されし肉体の一部が発見されました」

 

『忌々しい導きの英雄共め。必ずや我が肉体を取り戻すのだ』

「もちろんです。すでに配下の者を送り発掘作業が行われています」

 

 

『時に…豪氷天の姿が見えぬ。奴はどこへ行った?』

 

 

 

「そう言えば…。まさか奴め、勝手な真似を!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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