旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第66話:グリザード再来

 

 

先頭を歩いていたアイミーが何かを見つけた。

 

 

「あっ、皆、見て!あそこ」

 

 

「魔物の気配ムンムンだわね」

「しっ、何か聞こえる」

 

 

 

 大きく掘られた穴の奥の方から声が響いて来る。

 

 

「エッサー!ホイサー!」

「さあお前ら!掘って掘って掘りまくれ!大魔王様のために働くのだ!」

 

 

 たくさんの魔物達が坑道を出入りしているのが見えた。

 

 

 

「例のブツを掘り出そうとしてるんだな」

 

 

「やや、そこにいるのは誰だ!人間が紛れ込んでいるぞ!捕まえるのだ!」

「イエッサー!ホイサー!」

 

 

「ボシュの声がデカいから気づかれたわよ」

「小物共なんざ何て事ねーよ」

 

「でも何か空気が怪しい…。気を抜かないで!」

 

 

 

 魔物に取り囲まれたその時、突如薄暗い土壁にグリザードの姿が現われた。

 

『誰も手を出すな。そいつは俺の獲物だ』

 

 

 

「お、お前はグリザード?!何でっ」

 

 後退るボシュ。あの死闘を思い起こし腰が引ける。

 

 

 

『やはり来たな。必ず来ると思っていた。この時を待っていたぞ、貴様と決着をつける日をな!』

 

 グリザードはサチだけを見て言い放った。

 

 

「何かがあると思ったら、そういう事か…」

 

「サチ、こいつが来るの分かってたの?」

「そうじゃないけど、何となく」

「私がやっつけるわ。もう今までの私じゃないんだからねっ!」

 

 

「アイミー、落ち着け!別人みたいに強くなったのは認めるが、闇雲に突っ込むな」

 

 

 自分の言いたかった事を全部ボシュが言ってくれた。

 サチはボシュを見て心の中で大きく頷く。

 

 

 

 サチは一歩前に進み出てグリザードと対峙する。

 

「どうせ今見えているのは実体じゃないんでしょ?ムダな戦いはしない」

 

 

『なるほど。学習したようだな』

「ええしたわ。何度やっても同じ。お前に勝ち目はないって事もね!」

 

『ほう。ならばこれはどうだ?』

 

 

 不意に寒気が一行を襲う。

 

 気づけば周りが一面雪景色に変わっているではないか!

 

 

 

「寒ぅ…っ」

「ここは…っ?」

「あん時のヤツのいた島と同じだ」

 

 

 一瞬にして、グリザードが支配する極寒の世界に引きずり込まれてしまった。

 

 

「どこかに出口があるはず」

「そうだよ、探そう!」

 

 

『ムダな足掻きだ。そこは現実世界ではない』

「だったらそんなまやかし、消し飛ばすのみ!」

 

『威勢がいいのは変わらんな。だがその世界で、お前の方向感覚は使い物にならんぞ!』

 

 

 ここで皆の目がサチに向く。

 サチが元々方向音痴だと知るのは3人のみ。グリザードは知らない。

 

「そりゃ、あんまり問題なくねー?」

「うん。だわね」

「ね」

 

 

『??』

 

 

「…いや待て、俺も何だか方向が分からなく…」

「え、マジ?実はアタシもっ。気のせいじゃなかったかー」

「私もみたい…。逆にサチが直ったりして?」

 

 今度は期待の目がサチに向く。

 

 

 訳の分からないグリザードは、会話を無視して語る。

 

『ここから出るには地図が必要だ。それを持たぬ貴様らにその術はない。せいぜい出口のない世界をさまようがいい!ここを生きて出る事はない。これが大魔王様に逆らった者の末路だ』

 

 

「どうしてそこまで魔王のために戦うの?」

『…知りたいか?ならば凍り付く前に教えてやろう』

 

 

 まさか答えが返されるとは思っていなかったサチ他一同。

 寒さに震えながらも耳をそばだてる。

 

 

『遥か遠い昔の話だ。俺の一族は導きの英雄達に滅ぼされた』

 

 

「え、マジ?そうなの…始まりそれ?」

「魔物退治して歩いてたなら、おかしくはないだろ。ヤツだって魔物だ」

「…」

 

 何か思うところがあるのか、サチは沈黙を続ける。

 

 

『一人だけ生き残った俺に救いの手を差し伸べたのが、我らが大魔王様だったのだ』

 

「魔物同士つるんだって訳だ」

「あなたの一族って、氷魔よね?」

「それは?」

 

「氷魔の一族といえば、その昔は氷の荒神なんて呼ばれ方もしていたの。そんな一族に英雄が手を出すかしら…」

 

「神様?それじゃあ、崇められてたって事?」

「よく知らないけど。恐らくは」

「どうせ何か悪さしたんだろ?その中の誰かが!」

 

 

『俺の一族を侮辱する気か。その辺の魔物と一括りにされるのは心外だ!』

 

「そうされても仕方がない。今のお前こそが一族のケガレよ。大魔王の手下に成り下がるなんて」

 

『俺は助けを受けた義を尽くしているだけ。それをケガレとは!おのれ人間の小娘、今ここで亡き者にしてもいいのだぞ?』

 

「やれるものならやってみれば?」

「サチ!そんなふうに挑発なんてしたら余計に…」

「そうよ、ケンカ吹っ掛けたらダメ!」

 

 

「助けてもらった恩返しをする魔物なんている?彼らは善悪の区別はちゃんと付けられる種族よ。…何かがおかしい」

「サチ?何ブツブツ言ってる」

 

「そんな種族を滅ぼすなんて、英雄がするはずがない。きっと何かの間違いよ!」

 

 

『黙れ!貴様はいずれ英雄を継ぐ者。我が一族のカタキだ。俺が手を下すまでもない。ここで永久に凍り付くがよい!』

 

 

 こう言い放った後、グリザードの姿はかき消えた。

 

 先ほどから吹雪いていた雪が一層激しく吹き付ける。

 

 

「寒い…体が動かなくなっちゃうよ!」

「いつまでもこんなとこにいたら危険だ。とにかくあの雪山でも目印にして前に進もう」

「いいアイディア!皆、行こう!」

 

 

 

 

 初めこそ元気よく進んでいたものの、行けども行けども景色は変わらない。

 どこまで見渡しても銀世界。目指す雪山になど辿り着けそうもない。

 

 

「あの山目指しても意味なくない?うう、さぶっ…このままじゃ凍っちゃう!どこか吹雪を凌げる場所探そうよ」

「リリ姉の言う通りだ。それが無難かもな」

 

 

 と、そこへ魔物が3体現われた。

 頭にはぐにょ~んと伸びた二本の太い黒い角。背面は白だが全体的に薄水色の体躯。

 一言で表わすなら小太りの竜か。

 

「ぐおおお~ん!そうはさせぬ!豪氷天様からこの世界を守るよう命じられた雪原竜なり!足を踏み入れた者は抹殺じゃ!」

 

 

「出やがったか。ちょうどいい、体動かせば少しは温まる。俺がやる!ギガ空裂斬!」

 

 

 まだ倒れない。

 

 

「私もやらせて!サイコストームー!」

「お、イイ感じ!あと一息よ!」

 

「よ~し、私も!ヴァイパーファング!」

「お、その技はニンジャのか!」

 

「猛毒に侵されろー!」

 

 

「一風変わった戦法だわね…」

 

「あ!一匹が毒に侵されてるよ!」

「よし、まずはアイツにとどめだ!食らえギガブレード!」

 

 

 見事1体を撃破。

 

 残る2体に3人で猛攻撃を仕掛け、やがて魔物の方が力尽きた。

 

 

「ぐおおお~ん!やられた~。猛毒卑怯なり~」

「やかましいわっ」

 

 

 ボシュが最後に回し蹴りを追加。ようやく静かになった。

 

 

 

「魔物って案外おしゃべりだよね~。しかしマジでアイミー見違えた!そんでもってニンジャは毒も使うんだね!」

「毒も眠りも痺れも幻惑も、何でもござれっ」

「この黒炎、もっと強力なのもできるみたいよ。まだやった事ないけど」

 

「マジかよ?!」

 

「できる事なら、あれはやらずに済んでほしいなぁ」

「え、なんで?何かヤバいヤツなの?」

 

 

 苦笑いのサチが言いたかった事は何ぞや。

 

 

 

 

 かくして一行は先へと進む。

 

 

 続いて現れたのはまたも水色っぽい魔物だ。

 今度はカエデ形の体をして、5本足にはゲタを履いている。

 

 

「アイツ、氷を飛ばしてくるから気を付けて!」

「ふざけたヤツだ。一気にたたっ斬ってやる!」

「私もやる!」

 

 

 アイミーは人が変わったように積極的になった。

 

 気づけば兄妹だけで倒していた。

 

 

「アイミー大活躍!私の出番なかった」

「サチはいつも一人で体力使いすぎてるから。出来る時に休んで!」

「ありがと」

 

「逞しくなったわね、大魔道士さん?」

「えへへ。何かさ、マスクしてるからか、気が大きくなれちゃうんだよね」

 

「アイミーは昔から恥ずかしがり屋だからな」

 

 

「カワイイのに顔隠したらもったいないよ?」

「リリ姉だって、そのキツネ耳カチューシャ仮面付きで顔がよく見えてないよ?」

「アタシのはいいの。ミステリアスでそそるっしょ」

 

 

 こんな会話の最中にも、猛吹雪が変わらず一行に襲いかかる。

 

 

「このままじゃ本当に凍り付いてしまうわ。早く寒さを凌げる場所を探そう」

「ああ。探そうとするたびに魔物が来やがるからな」

 

 

「ねえ!あっちに何か穴みたいなの見えない?」

「動物の巣穴だったらどうするの!」

 

「とにかく行ってみようぜ」

 

 

 

 向かってみれば洞窟がある。

 恐る恐る中を覗くも、どうやら動物の類も魔物の類いもいないようだ。

 

 

 

 

 サチ達はようやく寒さを凌げる場所に落ち着く事ができた。

 

 

「これからどうなっちゃうの?」

「何とかしてこの世界から抜け出さないと…」

 

「グリザードが言ってた地図って、あのイフレムの倉庫にあったヤツか?」

「倉庫じゃなくて神殿!でもあれって海図だったでしょ?ここは海じゃないよ」

「私達鉱山にいたんだよね」

 

 

「あれは、この世界と向こうの世界を繋ぐ位置を示す地図。仕組みは分からないけど、この場所があの地図に示されてるのは間違いない」

 

「あれってブレズ達に返したんだろ?」

「返した。まさかまたグリザードとこんなふうに関わると思ってなかったし」

「そりゃそうだ」

 

「ブレズさんとフラメさんに、何とかして連絡したいよね」

 

 

「どうやるよ?」

「リリ姉、水晶でどうにかしろ」

「できるならやってる!」

 

「大神官だろ?」

「神様に仕えてるだけ。フォズさんならともかく、アタシはもっともっと下っ端!」

 

 

「ここはもう祈るしかない。強く念じれば届くわ、ほら皆、強めに願って!」

「何だよその非科学的な…」

 

「よし!いいから祈るよ!」

 

 

 

 暗い穴の中で揃って神頼みする一行であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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