旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第68話:氷魔にかけられた呪い

 

 

 サチ達一行は、イフレムの兄妹とシェント、大賢者と共に氷魔の山へとやって来る。

 

 

「想像通り寒いな…。あっちの世界とまるで同じじゃねーか」

「心配すんな、あれと戯れてるうちに熱くなるぜ!」

 

 ブレズが顎で示した先には、大きな濃いグレーのクマが仁王立ちしている。

 

「あっ、クマ!野生だよね、きっと狂暴だよ…」

「ただのクマじゃねえか。クマが怖くて山に登れるかってんだ!なあボシュよ?」

「あ?…あ、ああ、そうだぜ!」

 

 若干気後れ気味のボシュだが、ここは負けじと虚勢を張る。

 

 

 するとそのクマがしゃべりかけて来た。つまりただのクマではないという事だ。

 

 

「グオー人間共め、何しに来た!オレ様の名はグリズリー。ここはオレ様の縄張り。先に進みたければ倒してから行け!」

 

「何だ魔物だったか~。俺達は急いでるんだ。ボシュ、サチ、さっさと突破するぞ!シェントと本は危険だから隠れてろ」

「は、はいっ」

 

「私も参加させて!」

 

「おお?アイミー、反応がいいな!グイグイ来るヤツは好きだぜ!」

 

 

 ブレズがアイミーに好意を寄せ始めたと勘違いしたボシュが微妙な表情となる。

 複雑な心境のまま大剣を振るうも、全くダメージを与えられず。

 

 

「ボシュ、集中して!クマだからって手を抜いたら足元救われるわ」

「言ってるそばから、ボシュ危ない!」

 

 

「くっ!そっちも、な…っ!」

 

 グリズリーが仕掛けて来た鋭い爪での一撃を寸でのところで交わしたボシュ。

 立て続けに仲間に向けて繰り出される攻撃をガードする。

 

 守りに専念せざるを得ないこの状況では、攻撃仕返す暇がない。

 

「クッソ!たかがクマ一匹に…っ」

 

 

 

「きゃあっ」

 

 

「サチがタックルされて転んじゃった!よぉし、任せて、私がやる!え~い、サイコストーム!」

 

 黒い塊が4連続でグリズリーに襲い掛かる。

 

 

「おお、すげえ…ボシュの技よりダメージ与えたんじゃねえか?」

 

「ありがとアイミー!」

「まだダメ、倒せてないっ」

 

 

 逆に怒り狂ったグリズリーが、岩石落としを仕掛けて来たからたまらない。

 

 

「皆を守らなきゃ、スカラー!」

「うおっ、ヤベ、体力が足りん、耐えられな…」

「お兄ちゃん!」

 

「私もヤバいかも…」

 

 

「サチまでっ?!」

 

 

 ボシュは仲間のダメージを引き受けていたし、サチはまだ転んだ状態だったため、上からの強烈な物理攻撃にあっさり沈んだ。

 残ったのはアイミーとリリ。今回の戦闘にブレズ兄妹は入れない。

 

 

「大丈夫、大神官リリ様に任せなさい!お裾分けでザオラルー!」

 

 

「二人が生き返った!凄いよ、リリ姉!」

「リリ姉サンキュー。今度はやられない。ジバリア耐性も盛って来たぜ。ゴッドガード発動!」

「私も復活!さあ、反撃開始よ!」

 

 

 サチの掛け声と共に、ボシュのギガブレードにアイミーのサイコストームが炸裂。

 

 そして最後にサチのドラゴーンでとどめを刺した。

 

 

「ぐわわっ…やられた、お前達やるじゃないか?今日はこのくらいで勘弁してやるぜ。あばよ!」

 

 

「どいつも口だけは達者だぜ」

 

「終わったようですね。…ホッとしました」

「あのクマよだれ凄かったね、あんなのボクに飛んで来たらテンションだだ下がりだったー」

 

「サチ、ボシュ、アイミー、いい戦いっぷりだったぜ!」

「チームワークも素晴らしく、見事な立ち回りでした。私達も負けぬよう精進しなければ」

 

 

「でもこれ、昇格していなかったら負けてたよ」

 

「俺もそう思う。やっぱ特級職は別格だな」

「私も思う。あと、この装備サマサマ」

「うんうん。そして何よりリリ姉だよ。二人一気に生き返らせてくれるなんて?最高っ!リリ姉サマサマ!」

 

「えっへ~ん。どんなもんだ!」

 

 

 

 改めて特級職の凄さを実感しながら、一行は先へと進む。

 

 

 

「吹雪が収まってきましたね。良かったです」

「ホント~助かった」

 

 

「おい、向こうに建物が見えるぜ。行ってみよう」

「なんか古そうだな」

 

 ブレズとボシュが先に向かう。

 

 

 どうやら遺跡のようだ。扉には古代文字が彫ってある。

 それをシェントが読み上げる。

 

「“我らが作り出した恐ろしき叡智と大いなる罪をここに封じる”どうやら古代人がここに何か恐ろしいものを封印したみたいだね」

「それって何だよ…」

「気になるね」

 

 

 と、そこへ謎の男が現われた。

 少し前にサチ達を遠巻きに眺めていた黒尽くめの眼帯男だ。

 

『待て、キミ達』

 

 

「誰?!ビックリさせないでよ…っ」

 

『キミ達の目的地はここじゃない。すぐに立ち去った方がいい』

 

 

 それだけ言って男は去って行った。

 

 

 

「一体誰だったんだ?」

「もう、人の耳元でいきなり声出すんだもん。いつからいたワケ?気づかなかった!」

「私も。気配はなかった。え、それって…もしかしてっ」

「魔物ではなさそうね」

 

「お化け?!ヤダ、怖いっ」

 

「足はあったぞ?」

「ジャンピエの例もあるから、足があっても亡霊の可能性はあるんだよ」

 

 

「誰だ?それ」

 

「イケボのイケオジっ」

「ボシュの父さま代わり」

「あ?何だよそれ。ちげーよ!」

 

 

 言い合う一行を眺め、ブレズ兄妹とシェントが首を傾げていた。

 

 

「で、どうする?一応ここの中、見てみるか?」

「先ほどの男性が目的地ではないと言っておりましたが、信用できるのか不明ですしね」

 

 

「う~ん。何も感じないし、スルーしても良さそう」

 

 

「サチの直感は当たるから賛成」

「俺も」

「私も」

 

「サチ殿の直感は、随分信頼されているのですね」

「じゃー先に行くか!」

 

 

 遺跡はスルーとなった。

 

 

 

 

 

 進んで行くと、大きな洞窟がある。

 

 

「お!見ろよ、あれが手記にあった洞窟に違いない」

「きっとあの中にオーブがあるはずです。入ってみましょう」

 

「皆、行ってみよう」

「おう!」

 

 

「遥か昔に、導きの英雄や炎熱の闘士もここを辿ったんだよね、そう考えると大きな歴史の流れを感じるよ…」

 

 一人感慨深げなのはシェントだ。

 

 同調する者もなく置き去りにされたのだった。

 

 

 

 さっさと洞窟の中に入って行った一行。

 中は真っ暗だ。

 

 

 その暗闇に突如光が生まれる。

 

 

『よくぞ来た…ここに人間が来るのは随分久しい』

 

 

「光がしゃべったわよ!」

「お化けだけはやめて~っ」

 

「二人、静かに!話、続きそうよ」

 

 

『我はかつて、人間達が氷の荒神と呼んで恐れた氷魔の一族の長である。魔王に滅ぼされてからは、こうして魂の存在となり山を見守っている』

 

「それなら、あなたはグリザードを知っていますね」

『もちろん知っている。あの者は一族の中で、最も強く最も勇敢な戦士だった。…だがそれ故に、魔王の目に留まり呪いで心を操られてしまったのだ』

 

 

「俺達はその呪いを解くためにここに来た」

「そのためには氷魔のオーブが必要と聞いています。どこにありますか?」

 

『残念だがここにはない。かつて英雄を名乗る者達に渡してしまった』

「じゃあどうすればいいんだよ!」

 

 

『心配はいらぬ。我に残された力で新たなオーブを作り出そう。オーブは我が一族の生命の源』

 

 光が一層強まる。そして光の中心から球体が生み出される。

 

 

『これをそなた達に託す。どうか我が一族の戦士を闇から救い出してほしい…』

 

 

「任せろ!」

「それが初代王の遺志を継ぐ私達の使命です」

「行こうぜサチ!今度こそグリザードと決着をつける時だ!」

 

「ええ。もう一度ブラキオ鉱山に行って、グリザードの呪いを解く!」

「そんでもって魔王の肉体発掘を食い止める!」

「何ならその肉体も燃やしちゃおう!」

「私の黒炎でね!」

 

 

 

「皆頼もしいなぁ。きっと昔の英雄達もこんなカンジだったんだろうな」

「こうやって歴史は繰り返されて行くのかもね」

 

 

 頼もしき冒険者達をまぶしそうに眺めて語らうシェントと大賢者であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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