旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第2章 冒険者たちの門出
第6話:ジョニーの謎


 

 

 こうしてついに、サチに3人目の仲間が加わった。

 

 

「よぉ~し、皆!急ピッチで歩くよ!」

「ねえ、何でそんなに急いでるの?」

 

 

 またも数日前と同じ問答が始まる。

 

 

「気の短いボスのため、だろ?」

「ボスって?」

「ボスじゃなくて姉さま!ドラキオ姉さま、通称ドラちんよ。ちゃんと覚えて?」

「へ~、サチにお姉さんいたんだ~」

「いいえ。この場合の姉さまは、尊敬する人、という意味らしいです」

 

 

 同じ反応をした手前、アイミーが代わりに的確に答えた。

 

 

「それよりリリ姉、一緒に来てくれてありがとう!踊りたくなるくらい嬉しいっ」

「じゃあまた一緒に踊るか!今度はちゃんと曲のテンポに合わせようね、サチ?」

 

 抱きついて来たサチに、リリはよしよしと頭を撫でながら答える。

 

「こっちはマジの姉妹みたいだな!」

「リリさんって面倒見良さそう。ご兄弟とか多いんですか?」

「アイミー、敬語いらないよ、普通に話して!兄弟はいない」

「あ、うん。そうなんだ。サチが姉って呼ぶから、そんなイメージついちゃったみたい。私も呼んじゃおうかな」

「別に構わないよ。一気に弟妹ができたみたいで楽しいし!」

 

「っておい、なぜ俺が含まれてる?」

 

 それでなくとも、想像するだに恐ろしいドラキオ姉とやらが控えているというのに。

 さらに姉が増えるのかとボシュは心で嘆く。

 

 

「そうなるとさ、私達、家族みたいね!」

「俺、イチ抜けたー」

「お兄ちゃんっ、照れないの!」

「照れてねー!」

 

 一行の最後尾にてボヨンボヨンしているジョニーを振り仰ぎ、リリが言う。

 

「そうすると、あれは爺ちゃんだわね」

「そうよ、ジョニじいって呼ぼう!」

「ジョニじいかぁ、さらにカワイくなったっ」

 

「お前なぁ、あいつに魔法教わってる身で良く言えるな。俺も含め年長者をもっと敬え?」

 

 ボシュの言い分など誰も聞いてはいない。

 

 

「えっ、ジョニー…じい、って、魔法教えてくれるの?アタシも便乗していい?これ、持て余しててさぁ」

 

 言いながらリリが杖をバトンのようにクルリと一回転させれば、ヘッドの重みからかブルリと空気が振動する。

 途端にリリの上空にだけ雲が集まって来た。

 

 

「リリ殿!その杖は無闇に振り回してはならん。特におぬしのような強力な魔力持ちの者はの」

「…もしかして、これ振り回してたから雨降ってたの?」

「どういう意味だ?」

「練習しててさ、こうやって力任せに回してたら、いきなり雨が降って来ていつもずぶ濡れ!てっきり自分が雨女なのかと」

 

 再び振り回し掛けたところを、アイミーが押さえた。

 

「ゴツいでしょ~これ!バランスも取りずらいし?アイミーのくらいがちょうどいいよね」

「そうかな。私はステキだと思うけど。貫禄があって、凄く強そうだもの」

「この年で貫禄必要?生憎アタシ、煌びやかさを求める方なの」

「それで言ったらほら、柄の所は赤系だし、リリ姉の瞳とそっくりの緑の石だって付いてるし!」

「こんなちっちゃなヤツよ?アイミーのみたいに大きかったら少しはマシなのに」

 

 

 アイミーの聖風の杖は柄の部分はシルバーだが、ヘッドに嵌め込まれた黄緑色の大きめの石は確かに目を惹く。

 言いたい放題言っていたリリに、ジョニーが釘を刺すように口を挟む。

 

 

「武器にも心がある。愛情を注いでこそ力を発揮するというものじゃ」

「そんな事言われたって~」

「これから先、その杖がリリ殿や仲間の命を救う時が必ず来る。その光景を思い描いてみるがよいのである」

「これで、命を救うですって?…何かねぇ」

 

 改めて自らの杖を見下ろすリリ。その表情には困惑しかない。

 サチはそんなリリに、自分の剣を抜いて見せる。

 

 

「私もさ、この剣を渡された時、すぐには受け入れられなかった」

 

 

 一行のペースは徐々に落ち、ついに足が止まった。

 

「いつ見ても美しい!サチ殿のその剣は、誰しもが手にできるシロモノではないぞよ?」

「っ、それ以上は言わないで!」

「サチ…?」

 

 珍しくサチが切羽詰まった声を上げた。

 アイミーが心配して近寄る。

 

 

「今でもまだ迷いがある。だから本領を発揮できていない。いつか心から受け入れる事が出来たら、もっと成長できるのかも」

「かも、ではなく、できる。それを学ぶための旅であろう?」

「学ぶため…」

 

 ドラちんが自分に冒険の旅をさせようとしているのはそういう事なのか。

 サチは複雑な気持ちになる。

 

 

 しばしの沈黙を破ったのはリリであった。

 

「そっかぁ、そりゃ皆何かしら抱えてるよね。自分だけじゃない!甘ったれだった、改めるわ。ジョニじい様、アタシに正しい魔法の使い方、教えてください」

 

 リリが年長者を敬ってジョニじいに様を付けた事に、ボシュはいたく感心する。

 

「おお…って事は、剣術をサチから教わってる俺は、サチ様って呼ぶのか」

「お兄ちゃん?何を一人でブツブツ言ってるの」

「なっ、何でもない!ほら聞いたか?リリ姉はジョニーに様付けて呼んだぞ。お前も見習え!」

「ねえねえ!今の聞いた?お兄ちゃん今どさくさに紛れてリリ姉って呼んだよ!」

 

 一気に場の雰囲気が明るくなった。

 

「なになに、やっと受け入れてくれたか!カワイイ弟よ!」

「っだから、弟じゃない!」

 

 

 

 3人の楽し気な会話を聞きながら、サチは剣を定位置に戻すと、ジョニーに向き直る。

 

「敵のはずのスライムを従えたあなたは一体何者?何でも知りすぎてて、ちょっと疑う」

 

 

 ジョニーには全てお見通し。

 自分の出身どころか、ドラキオとの関係や生い立ちまで言い当てられそうだ。

 

「なぁに、それだけ長く生きとるという事じゃ。ところで、向かっておるのはドラちんパーティの所じゃろ?」

「そうだけど。何かあるの?」

「いいや。楽しみじゃのう、美しいオナゴを見るのが生き甲斐なのでな!ああ、サチ殿も十分に美しいぞよ?」

「それはどうも!ならリリ姉入れて大正解ね」

「で、ある!さあ、先を急ぐのである!」

 

 

 そう言って追い抜きざまにサチの尻を一撫でして行った。

 小さく悲鳴を上げたサチだが、軽くため息を付いてから呟く。

 

「酔ってなくてもエロジジイじゃない!…ん?姉さまが美しいって、何で知ってるんだろ」

 

 

 

・・・

 

 

 

 道中の稽古にリリの雨雲の杖取扱講座も加わり、出くわした魔物瞬殺率はさらに上がった。

 それもアイミーの聖風の杖を遥かに超えるパワーだ。

 

 

「この辺の小物に使う魔法じゃないわね、これは。二次被害が出そう!」

「そうである。大物出現に備えて、リリ殿は極力小手先の魔法で対応するべし」

「小物なら任せて!私のでいい感じに倒せるわ」

「なかなかサマになって来たな、アイミー」

「でもアイミーもあまり戦わなくていい。体力は取っておかないと」

「だな。回復魔法を使ってほしい時に消耗してたら困る。ま、俺はそんなヘマはしないが?」

「ヘマは困るけど、誰だって戦い続けてたら消耗する。敵は回復まで待ってはくれない」

 

 今でこそ大した数ではないが。

 これから本格的な討伐の旅に出たなら、そうは行かないだろう。

 

「サチ殿の言う通りじゃ。ムダな動きは命取り。効率よく動くには、チームワークが要じゃな」

「その点では、このパーティはかなりいいと思う」

「いや。俺がもっと戦力にならないとダメだ」

「その意気よ。向上心は常に持って。そうすれば必ず成長する」

 

「いい事言うね~、ウチのリーダーは!」

「そうなの。でも次の瞬間つまずいて転んだりするから、って、ほら!サチ、ちゃんと前見て歩いて!」

 

 言った側から、後ろ向きで歩いていたサチが小石に蹴つまずいた。

 

「わあっ!」

「ボヨヨ~ン!」

 

 透かさず最後尾にいたジョニーがサチの背後に回り受け止める。

 その動きは誰にも追えないほどの俊敏さであった。

 

 

「ありがと…」

「気を付けるのである。サチ殿の尻を受け止めるのは大歓迎だがの?」

「気を付けますっ!」

 

 

 ちょっぴり鼻の下の伸びたジョニーを、白けた視線で眺める一行であった。

 

 

 

 

 

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