こうして鉱山に戻った一行の前に、待ち構えていたように再びグリザードが姿を現した。
「まだ生きていたか。さすがだなサチ。さらにイフレムの王子と王女まで登場とは?全く懲りない連中だ!」
「私達は初代王の遺志を継いで参りました」
「もういきなり氷漬けなんて手は通用しねえからな!」
「面白い。かつての戦いの再来という訳か。ならばまとめて始末してやる!」
「待って!その前に聞いて。あなたはだまされているの!」
「何の話だ?」
ここで、一族を滅ぼしたのは英雄ではなく魔王だとサチが伝える。
呪いでニセの記憶を与えられ操られているのだと。
「くだらん戯言を。俺がそんなものに惑わされると思ったか?」
「ウソじゃないの!ホントの話なの!」
「黙れ!大魔王様に逆らう者は皆俺の敵だ!例え刺し違えようとも生かしては置かぬ」
「ダメだね、聞く耳持たないってカンジ」
「こうなりゃやっぱ力技しかないな」
「お尻ペンペンだね。人の話はちゃんと聞きなさーい!」
最後のアイミーのセリフに、一同がギョッとしたのは言うまでもない。
かくしてブレズ兄妹が見守る中、グリザードとの直接対決が幕を開ける。
前回苦しんだ攻撃力を半減される技にも、焦る事無く冷静にサチが対応。
そしてやはりここでもアイミーのパワーが凄かった。
「今こそこの武器の本領発揮の時!覚悟して、グリザード!お尻ペンペン、マヒャデドスー!」
サチが使わせたくないと語っていた技がついにお披露目となった。
アイミーの背後にゾーマと呼ばれる魔物の幻影が現われる。
まるでそれに憑りつかれたように、アイミーが大技を繰り出した。
「何だあれ…あのマスクの魔物の幻が見えたぞ」
「ひい~っ、何だか体がゾワゾワする!」
「どうかアイミーがアイツの魔力に飲み込まれませんようにっ」
「どういう事だ?サチ!あれってそんなヤベーヤツなのか?!」
すると再びグリザードの体に変化が訪れる。
「変身したよ!来るよ!」
「アイミー戻って!ボシュ!」
「よっしゃ、食らえ、渾身のギガブレード!!」
そしてサチの一撃を受け、グリザードは元の姿に戻った。
それを見て叫んだのはアイミーだ。
「サチ!どうしてとどめを刺さないの?」
「今回は殺す事が目的じゃない。呪いを解いて目を覚まさせなきゃ」
「アイミー…もしかして、目的忘れてた?」
「えへっ」
小悪魔的笑みがアイミーから零れた。
「確かにマズいかも、あいつのあんな笑い方初めて見たぜ?」
「兄貴のボシュが初めてって、ヤバっ。アイミー!そのマスク没収!」
リリがアイミーの頭からマスクをはぎ取った。
「あっ、ちょっとリリ姉?」
困惑するアイミーとホッとするリリとボシュ。
チラとその様子を見た後、サチはグリザードに向き直る。
「もうお終いよ、グリザード。観念して?」
「なぜだ…俺の力では貴様は倒せないというのか」
「今だよサチさん!オーブを!」
シェントの掛け声を受け、サチがオーブを掲げる。
見る見る周囲がまばゆい光に包まれた。
「ムム…この光は?!」
光を浴びたグリザードの体が白銀に変化して行く。
「これが本当の姿なのか?…すげえな」
「なんと気高い…古代の人々が氷の荒神と呼んだのも分かります」
困惑するグリザードに対し、皆がその姿に見惚れる。
「呪いが解けたみたいね。あなたは今まで魔王に操られていた。今度は分かってくれる?」
「何と…いう事だ、今こそ全てを思い出した」
そしてグリザードが語る。
遥か遠い昔。その頃魔王は世界中の国を滅ぼし、勢力を広げつつあった。
氷魔の戦士だった自分は、力を試すため魔王に戦いを挑もうとした。
だが一足早く魔王の軍勢は一族を滅ぼしにかかっていた。
「魔王はキミが戦いを挑みに来るのを予想していたんだ」
「強敵いぬ間を狙って一族を全滅させて、力のある戦士を味方につけようってか」
「やり方セコくない?」
「正々堂々って言葉は、魔物には通用しないからね」
「魔王は狡猾だ。力で制するだけじゃなくて、心まで操るんだからな」
シェントのコメントに大賢者が補足する。
「おのれ魔王め、絶対に許さん!サチとイフレムの子孫達よ。お前達には大きな借りができたな」
「なあに気にするな。それにまだ終わっちゃいない」
「こうしている間にも、鉱山では魔王の肉体発掘が進んでいます。何とかして止めなくては!」
「そうだな…。俺も手を貸そう。今こそ我が一族の恨みを晴らす時!」
「問題はどうやって現場に潜り込むかだね」
「俺は小細工は得意ではない。よって正面から突破する」
「いいねグリザード!俺もそう言おうと思ってたんだ」
「お、奇遇だな、俺もだ。案外話が合うじゃねーか」
「ボシュまで同調しちゃったわよ…。それって作戦でも何でもないじゃん?」
「全く…。ここにいらっしゃる殿方は皆、猪突猛進タイプばかりのようですね」
「まあ…手っ取り早くていいんじゃない?」
「勢い大事っ!」
「…アイミー。マスク脱がせたのにまだダメ?」
「アイミー!戻って来て!」
「…へ?」
ちょっぴり不安になる女性陣に対し、前のめり気味の男性陣であった。
主張通りに一行は現場に突っ込む。
そこでは、白モグラをこき使いながら作業が進んでいた。
「さあ働け、もっと働け!間もなく大魔王様の肉体の一部が掘り出せるぞ!」
「おい貴様」
唐突に姿を現したグリザードに、当然その場はザワつく。
「ごっ、豪氷天様?!…そのお姿は一体」
明らかに別の種族と化したその神々しいまでの体躯に驚くのも無理はない。
「…。そんな事はどうでもいい。貴様がここの指揮官か?」
「はっ。我はネクロバルサ。灼樂天様の命でここを指揮しております!」
「ならば灼樂天に報告しろ。発掘予定の肉体はグリザードが再び葬ったとな」
「なな、なんですと?!四天王でありながら大魔王様に逆らうおつもりか!者共出合え!裏切り者を捕えよ!」
「イエッサー、ホイサー!」
号令により白モグラが作業を中断して集まって来た。
さらに緑色の四つ足尾長の上半身が人型魔物も現われ、一帯はとんでもない数の魔物で溢れた。
「サチ、グリザード!ここは俺達が引き受ける、先に進め!」
「僕も微力ながら加勢します!大いなる風よ、サチ達に道をつくるんだ!」
シェントの呪文で魔物達が吹き飛ばされ、道が開ける。
「さあ、今のうちに坑道へ!」
「ありがとう、行こう皆!」
「サンキュ!必ずやり遂げるぜ」
「お前達ならできる!」
「ご武運をお祈りしております!」
そんなサチ達の前に、指揮官をしていたネクロバルサが立ちはだかる。
黒いムチを持った茶系の魔人だ。何匹かの白モグラも周囲を固めている。
「あのモグラの数増えてないか?こっちにまでいやがるぜ」
「アイツはブランマトック。仲間を呼ぶ事が出来るの。さっさと倒さないとどんどん増える!」
「よぉし、一気に行こう!任せて!」
勢い良く飛び出したはいいが、アイミーのスピードはサチとボシュには劣る。
「…ゴメン、口だけで」
「気にすんな!行くぞサチ!」
「はい!ドラゴーン!」
「ギガ空裂斬!」
「でもって私の出番っ、サイコストーム!」
こうしていつもの猛攻撃で打ち倒す事に成功。
「だがもう遅い…間もなく…動き出す…ぐふっ」
入口で戦っていたブレズ兄妹とシェント、グリザードがやって来る。
「倒したか。奴は何か言いかけてたな。イヤな予感がする。先を急ぐぞ!」
「ブレズも?私も嫌な予感がする…、急ごう」
一行はさらに奥へと足を踏み入れた。禍々しい何かは確実にすぐそこだ。