旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第70話:対決魔王の巨腕

 

 

 奥まで進むと、ドロドロした大きな物が見えて来た。

 

 

 勢い込んで進み出たアイミーがそれにぶつかる。

 

「今何かにぶつかったんだけど?」

 

 

「ちょっとアイミー!なんか付いてるよ!気持ち悪いドロドロっ」

「えっ?!ヤダ取ってぇ!」

 

 

 目を凝らせば、そこにあったのは巨大な手だ。

 地底から飛び出したそれは手の平をこちらに向けている。

 

 

「…、もしかしてこれが魔王の肉体の一部?!」

「そうみたい…キモッ」

 

 サチの一言が合図になったかのように、ゴゴゴゴ…と地面が揺れ出す。

 

 

「まずいな、巨腕が動き出したぞ!」

 

「ええ?!何さ、腕だけで動けるの?」

「外気に触れた事で魂の存在を感じ取ったのだろう。魂が肉体を欲するように、肉体も魂を欲して動き出したのだ」

 

「どど、どうしよう!このままじゃ坑道が崩れちゃうよ!」

 

 

「生き埋めになる前にここから出るぞ!お前達、俺の背に乗れ!」

「いいの?」

「お前達ごとき全員運べる。いいから乗れ!早く!」

 

「んじゃ、遠慮なく!」

 

 ボシュが一番乗りでグリザードの背中に飛び乗る。

 続いてアイミー、サチとリリは先にブレズ兄妹を乗せてから飛び乗った。

 

 

「いいか、飛ぶぞ!」

「「「お願いしますっ」」」

 

 

 

 グリザードはサチ達を背に乗せ坑道の外に向かって飛び立った。

 

 

「坑道がどんどん崩れてるぜ!グリザード、もっと早く進め!」

「兄様、乗せてもらいながら命令口調は良くありません。早く進んでください!ですよ」

 

「うるさい!黙って掴まってろ!」

 

 

 グリザードが飛び出すと同時に、山肌を突き破るようにして魔王の巨腕が地表に現れた。

 

 

「ゴゴゴゴ…」

 

 

 紫色の血管が黒い皮膚に浮き出ている。

 鋭い赤い爪を生やし、手首で光る金の腕輪には等間隔に紅蓮の竜玉が嵌め込まれている。

 

 手招きをするように揺れるその姿は、あまりにも不気味だ。

 

 

「ひぃ~デカすぎっ。あれが腕だとしたら、体はどんだけなのさ…?」

「恐れるな!魂がなければ肉体はただの器に過ぎない。今のお前達ならば必ず討ち倒せる。己の力を信じて戦うのだ!」

 

「必ず魔王の復活を止めるわ。これは冒険者である私達の仕事。他の皆は下がってて!」

 

 サチの言葉を受け、ブレズ兄妹とシェントが後退して行く。

 

 

「フォズさんがあの杖をくれたのは、アイツが強力な魔力を持っているからだったのね…」

「だわね。物凄いパワーを感じるっ」

「あの大きさからして、力も半端ないだろうな」

「防御も徹底だね。お兄ちゃんだけにガードしてもらう訳には行かない」

 

「そうよ、ボシュ、無理は禁物だからね?」

「いつも一番無理してるお前に言われたかねーよ」

 

 サチが小さく笑って肩を竦めた。

 

 

 そして呼吸を整え、前を向く一行。

 

 

「よし、行くわよ!まずは一番手、出でよドラゴーン、全速前進!」

 

「次は俺だ、ギガブレード!」

「マヒャデドス!」

「アタシは皆にマジックバリアー!」

 

 

 一ターンを終えて敵からの攻撃が襲い掛かる。

 

 大きな手がバシリとボシュに直撃。踏ん張り切れずボシュは飛ばされた。

 そして皆の足元にジバリーナという呪文が仕掛けられる。

 

 

「想像以上の威力だわ…。二人とも気を付けて、動くと爆弾が作動するよ!威力はそこまでないけど、体力がどんどん削られるっ」

 

 説明してからサチが一歩踏み出すと、足元の爆弾がボンっと破裂した。

 構わず攻撃を繰り出すサチ。

 

「そういう事ね。了解!今度はサイコストーム!凍結しちゃえー!」

「アタシは早速ボシュを呼び戻すわ。渚のベホマラー!」

 

「サンキューリリ姉!一発目でやられてマジで焦ったぜ…」

 

 

 ボシュが戻って来るなり再び敵の攻撃が始まる。

 バリアにより呪文の威力はやや落ちているとはいえ、一度吹き飛ばされた者にはイタイ。

 

 

 一気にピンチに陥ってしまう。

 

「クッソ、まだ全然攻撃してないってのに?また来るぞ!」

 

 

「きゃ~っ!うぐっ」

「マズい、アイミー!守ってやれなかったっ」

 

 今度はアイミーに攻撃が直撃。一気に瀕死状態に。

 

 

「ベホマラー!!ダメだ、全然回復量が足りない、こういう時にやまびこ発動してよっ」

「確率で発動する技は頼れない。かと言って私も全然力がないっ、ゴメン、皆…」

「まさかここまでとはっ、どうする、サチ?」

 

「サチ!アイミーがっ。きゃーっ!」

 

 

「リリ姉!今度はリリ姉が飛ばされた」

「呼び戻すヤツが飛ばされたら意味ねー!」

 

 

 そうこうする間に敵からの攻撃が続く。

 

 

「私も少しなら薬草持ってる。これ使って、ボシュ」

「いやお前が使えよ!リリ姉が戻って来るまで持ちこたえられそうなのはサチだ、俺は無理、みたいだ…、っ」

「ボシュ!そんな…っ。悔しい、何もできないなんてっ、ドラゴーン全速前進!って今?分身の術出た、も一回ドラゴーン!」

 

 

 そして分身も虚しくサチも力尽きたのだった。

 

 

 

 

 冒険者の特権を行使して4人とも生き返る。

 長期戦になる事が分かり、一旦その他のメンバーには解散してもらう事に。

 

 その場はサチのパーティのみとなり、しばしの作戦会議が開かれる。

 

 

「一発目の吹き飛ばしがヤバい、最初は攻撃じゃなく受け流しの構えで行こう。俺の盾とアイミーのは使えるよな。サチとリリ姉は?」

「最初の頃に使ってた親分の盾にそのスキル付いてる。一時的にそれ持とう」

 

「懐かしー!最初にお揃で持ったよね」

「持った持った!まさかあれが役に立つなんて?」

 

 

「よし。次は?」

 

 

「アイツの攻撃は呪文とジバリア系。で、私達、ジバリア耐性がほぼない」

「そう!そうなんだよ、しくじったな…。あのグリズリーと戦った時も苦戦したんだ」

 

「マズいじゃん、あんなクマより100倍強いよ?」

「私が一番打たれ弱い…ゴメン、皆」

「アイミーは凄い攻撃魔力持ってるじゃない。それ言ったら私が一番使いものになってない…」

 

 

「んだよ、辛気クサい顔すんなよ!とにかくさっきは無策すぎた。もっかい挑戦しようぜ。今度は俺のもくそうって技も使ってみたいし」

 

 一番に飛ばされ、さぞ落ち込んでいるものと思われていたボシュが最も前向きだ。

 

 

「なんか、頼りになるね、ボシュ…」

「お兄ちゃん、見違えた」

「うん。リーダーの座を譲ってもいい感じ」

 

「おいおい!おだてても何もないぜ?」

 

 

「よし、もう一回やってみよう!」

「そう来なくっちゃな、リーダー?」

 

 

 

 

 気を取り直したサチ達は再び巨腕と対峙する。

 

 

「今度はやられない。皆、受け流しの構えー!」

「サチ、アタシはマジックバリアやらせて!」

「そうだね、お願い。リリ姉は私達の影に隠れて!」

 

 

 この対策の甲斐あって、最初に吹き飛ばされる者はゼロだった。

 続いてマジックバリアの効果が多少入り体力が温存できた。 

 

「そんじゃ攻撃開始だな!食らえギガブレード!」

「ドラゴーン!」

「マヒャデドス!」

「ベホマラー!」

 

 ボシュの技は耐性があるらしく、なかなかダメージを与えられない。

 そしてニンジャサチはパワー不足感が否めず。

 唯一アイミーの黒炎が効いているが、体力は無限ではない。

 リリのお陰でダメージをリカバリーし次に備えるも、毎回攻撃できる訳ではない。

 

 

 何しろ防御しなければ死に直結するほどのダメージを受けてしまうのだ。

 

 

「威圧っ、咆哮ー!」

「サチ、敵の戦力削ぐのも大事だが、自分の身も守れよ!スカラ!」

「でもこういうの出来るの私だけだから!」

 

「きゃ~!!」

「しまった、アイミー!クッソ、またアイミーが」

「アイツ、アイミーがウチの一番の戦力って気づいてるんじゃない?」

 

 

「ただの器に意思はない」

「そうだよ。それならリリ姉が一番に標的になってるはずだろ!」

 

 

 攻撃はランダム。誰が受けるかは神のみぞ知る。

 

 そしてコツコツと積み上げた敵へのダメージが半分に達すると…。

 次の強烈な攻撃がやって来る。

 

 

「まさかの変身じゃねーだろうな?もくそう!」

「あれ以上に変身しようがないでしょうよ、ベホマラー!」

 

 そう、それは変身ではなく、怒り狂った手が大暴れして地表ごとひっくり返すのだ。

 

 

 これはたまらない。サチ達は耐え切れずここで全滅するのだった。

 

 

 

 

 

 何度挑戦してもこれに耐えられない。

 

 ある時はボシュだけが生き残りまたある時はサチが生き残るも、肝心の回復役リリがいなければ何もできずに終わる。

 運良く後半戦に持ち込むも、圧倒的にパワー不足。

 

 

 もう数え切れないほど繰り返した挑戦。

 

 時にはサチが海賊に戻ってチャレンジした。

 海賊の方がパワーがある気がしたのだが如何せん生き残れない。

 やはり特級職の生命力は圧倒的だと分かった。

 

 

「パワーだけでいいなら、俺とサチが魔人になって突っ込むのも手だぜ」

「いいじゃん、それで行こう!」

 

 魔人という職業は、冒険者ならば誰でもお試し的になれる職。

 興味本位でサチとボシュが少し前になってみた事がある。

 

 

 だがレベルの低い魔人では思ったほどパワーが出ず。

 逆にゴッドハンドのガードがなくなるため、さらに持ちこたえられなかった。

 その後も、ひたすら確率で攻撃力を落とす技を使ってみたりしたが、結果は敗北。

 

 

 

「やっぱりゴッドハンドの守りは必要だよ。私がニンジャなのがいけないのね…」

 

「サチ!弱気、ダメ、絶対っ」

「そうだよ!アタシだって攻撃できなくて歯がゆいんだからね?」

「アイツ、縛りも麻痺も効かないんだもん!」

 

「サチが水晶持ってみたらどうだ?」

 

 

「そうか、どうせ力がないなら私も回復に回ればいいのか!ナイスアイディア、ボシュ!早速やってみよう!」

 

 

 

 果たしてニンジャに回復役は務まるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 




何度も繰り返し戦うシーンの書き方が難しい…(悩)
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