旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第75話:冥王誕生秘話

 

 

 ダーマ神殿を訪れていたボシュ、リリ、アイミー。

 

 フォズから冥王の誕生秘話が明かされる。

 

 

「もう5百年も昔の事です。二つ目の太陽が世界を震撼させていたのは…」

「それ!ひい婆さんから聞いた事ある。火を噴く神殿が朝晩決まった時間に現われて、人間を焼いて回ったって。それって作り話じゃないの…?」

 

「実話です。その神殿、レイダメテスは自由に空を飛ぶ事が出来ました」

 

 

「それで太陽か。一体誰がそんなの飛ばしたんだ?」

 

「詳しい事は明らかになっていません。ただ、その神殿が人間のみならず、生物全ての魂を集めており、それによって生み出されたのが冥王ネルゲルだと言われています」

 

 

「魂でできてるって…ウソでしょ?!」

「それって思いっきり悪じゃねーか。何でそんなヤツが冥界の王様やってるんだよ!」

「怖いっ、サチが危ない!」

 

「ネルゲルは初めから冥王だった訳ではありません。彼が作り出された真の目的は、この世の輪廻転生をなくす事、とか」

 

 

 首を傾げる3人に、フォズは分かりやすく説明した。

 時として発生する生まれ変わりという現象。それが歴史を繰り返す要因となる事を。

 

 

「でも勇者の生まれ変わりとかって必要ですよね?魔王の復活とかの状況になった時に」

「それを良しとしない者もおります」

「そりゃ魔王側は邪魔に思うだろうな」

 

「はい。そのためネルゲルは魔物達によって生み出されたと考えられていました。ですが近年それを覆す証言を行なった者が現われたのです」

 

「それは?」

「勇者本人です」

 

 

「「「は?」」」

 

 

 話によれば、何代か前の勇者はとても臆病で力もなく、誰が見ても勇者の器ではなかった。

 

 だがその血筋や予言者達の主張のせいで勇者にされてしまった。

 そんな宿命を背負わされて戦うも、当然敵を討ち倒す事などできない。

 自分よりもっと適任がいたはずなのに、生まれ変わりとなったばかりにムダ死にをした。

 

 ならば初めから生まれない方が良かったのでは?と。

 

 

「まあ、どんな星の元に生まれるかは選べないし?そんな事言われたってーって気持ちは分かるわ。まさにアタシもそう!」

「でも宿命ってあるよね。本能的に自分のすべき事はこれだ!みたいになるのって」

 

「それです。それが不公平だとの証言をしたのです。向き不向きが当然ある。決めつけられるのはおかしいとの内容でした」

 

「待ってくれ、俺、頭こんがらがって来た…」

「そう?アタシは理解できたよ。それはまあ置いとこう。フォズさん、続きをお願いします」

 

 

「はい。ネルゲルはとても優秀でした。それは自らの意思を持たぬマシンです。命じられた事だけを淡々とこなし続けました」

 

「だけどアイツ、意思持ってたよね?サチの事花嫁って…」

「今話しているのは生み出された当初。勤勉な性格ゆえ長い年月の中で学習したのでしょう」

「マジメな奴ほど融通効かないんだよな。厄介だぜ」

 

「そして、どこかカリスマ的なものも持っていました」

「それを聞くと、魔物って言うより人っぽいですね」

 

 

「いやいや。あのツラで人はないだろ?あのツラで!」

 

「それまだ言うかー」

「それは分かるよ。だって紫の肌にあの太い角だよ?あんな人間はいないよ…」

 

「アタシはなかなかイケメンだったと思うけどなぁ。カリスマでイケメンって、モテ要素だらけじゃん」

「リリ姉の趣味はやっぱ変わってるわ。スライム大好き人間だもんな~」

「フンだ。なんか文句ある?」

 

 

 止まらない会話にフォズが軽く咳払いする。

 

「コホン…続けてもよろしいでしょうか」

 

 

「あっ、もちろんです!お兄ちゃん、しーっ」

「なんで俺だけ!で?転生を阻止するって事は、生まれて来たヤツ殺すとでも言うのか?」

「申し上げにくいですが、そうなります」

 

「昔はさ、生まれた日が不吉だとか双子が不吉だとか言って、案外殺してたよね」

「人柱とかもあるよ…考えたら酷い話だね」

 

「お二人のおっしゃる通りです。こんな理不尽な殺され方をしても、それが当たり前だったのです。そしてネルゲルの食料は魂」

「魂で出来てるからには、やっぱそうなるか」

 

 

 人々は不吉で邪悪な存在を制裁し、その魂を食らう事で無に帰すネルゲルを崇め始めた。

 

 そうなれば本人も自らを神格化し始めるのは必定。

 

 

「なんか恐ろしい。そうやってどんどん傲慢になって行きそう」

「ネルゲルは自分の与えられた使命を全うすべく、ついに恐ろしい事をしてしまうのです」

 

 

 ある島に住む民が、時渡りの術という能力を持っている事を知る。

 時渡り、タイムリープ現象だ。

 それを勇者に施せば、輪廻転生などでなく本人がその時代に登場する事になる。

 

 ネルゲルはその民を危険視し、熱狂的信者らと共に皆殺しにしてしまう。

 

 さらに逃げ伸びようと散った民をも亡き者にすべく、その周辺の大陸ごと封印してしまった。

 

 

「そんな…酷すぎるっ」

「暴走し過ぎじゃねぇかよ!」

 

「はい。その姿を見て人々は目を覚ましました。その時、新たな英雄が名乗り出たのです」

「その人は生まれ変わりじゃないって事?」

「新たな勇者の誕生です。一度はネルゲルに殺されましたが、生まれ変わり再び対峙。そして勝利したのです」

 

「勝ったんですね!」

「結局生まれ変わった人が倒したのねー」

 

 

「そうすると破れたネルゲルの魂は冥界に?」

 

 フォズが頷く。

 

 そこで猛反省したネルゲルは、もう二度と殺戮を犯さないという条件で肉体を得る。

 その後持ち前の勤勉さとカリスマ性を発揮し、あれよあれよと言う間に、長らく不在となっていた王の座に就いたらしい。

 

 

「確かに、そいつに冥界を管理させれば殺しをさせずには済むからな」

「魂の段階で転生をくい止めればいいんだもんね」

 

「王座に就く人って、そんな簡単に決まるんですか?」

 

「やっぱ会議みたいの開くんじゃない?世界中の王様とか集めてさ」

「そりゃ一体どんだけの人数集まるんだ?果てしないスペースの会議室が必要だな!」

「言えてる!」

 

 また3人の会話が盛り上がってしまう。

 

 

 本当に仲のいいパーティだと、フォズは微笑ましく思う。

 

 

 本来ならばここにもう一人いたはずだ。

 ふいに3人の口が閉ざされた。サチの影が見えた気がしたのだ。

 

 

「…サチ、どうしてるかな」

 

「大丈夫、これまで何匹も怖そうな魔物と戦って来たじゃん!免疫ついてるしサチは強いから」

「そうだよ。あんな奴、尻に敷いてるかもしれないぜ?」

「サチの必殺オジンキラー・スマイルで乗り切れるって!冥王様もイチコロ。ですよね、フォズ大神官様?」

 

 

「ええと…どうなのでしょう。私には分かり兼ねますが、サチさんならきっと大丈夫だと私も信じたいですね」

 

 フォズの最後の言葉に、皆が頷く。

 

 

「話を戻します。新冥王に反対する者もおりましたが、結果的に今の体制に落ち着き、早5百年という訳です」

 

「良くない噂があるって言ってましたよね。そのネルゲルさん、冥王になってからもやっぱり問題を起こしたんですか?」

「ここまで聞いて、何もやらかさない方がおかしいだろ」

「根本的に悪の要素しかないカンジ…。悪って言えば魔物、って事はアレか」

 

 リリの言うアレとは、今問題となっているその昔に討伐したはずの四天王の存在と、大魔王の復活である。

 

 

「魂に関して言えば、アイツが許可しなければ戻って来ないってなら、もう犯人で確定だな」

「そうすると、誰がそれを依頼したのかって話になるよね。真面目にお仕事してたら、そんな事考えないもの」

 

「仰る通りです。それをしたのは四天王でほぼ間違いないでしょう。ですが、彼らが今この世に完全なる姿で存在している事も妙です」

 

 

「そうだよ。過去に勇者が倒したはずだ。肉体だって下手したら木っ端微塵」

 

「だよね。もし体が残ってたとしても、それを集めて、それこそ今の大魔王みたいに探し回って?それ誰がするって話よ」

「やらされるのは大抵下っ端の魔物共だな。アイツの信者がやったとか?仰山いたんだろ?」

 

「え、それって人間って事?」

「魔物にだって慕われてたろ、あの感じなら?」

「大魔王ならまだしも、四天王になりたい下っ端さん沢山いそう。わざわざ復活させないよね」

 

 アイミーの納得のコメントに一瞬沈黙となるも、フォズが結論を出す。

 

 

「要するに、これらは冥王の力だけでは成し得ないという事です」

「凶悪な第三勢力が絡んでるって事か」

 

「サイアク…。でも、それならネルゲルさんは、その誰かにそそのかされて利用されたんだよ!」

「お前、ずっとコメントがネルゲル寄りだが。よっぽどアイツを善人にしたいみたいだな」

 

 

「う…だって。そうでなきゃ、そうでなきゃ…っ」

 

 アイミーが次第に涙声になる。

 

 

 そんなアイミーの背に優しく手を当ててフォズが言う。

 

「アイミーさんのお気持ち、察します。私としてもそう願ってしまいます」

「え~ん!フォズ大神官様ぁ~!」

 

 

 魂を管理する存在は悪であってはならないとフォズは考える。

 そしてアイミーは、サチが悪の道に行ってしまうのではと恐れているのだ。

 

 

 

 かつて不安視されていたのは、リリの強力な魔力が魔物に利用される事だった。

 

 自分ではなくサチが目を付けられた事に、リリは複雑な感情を抱く。

 

 

 

「サチは強いんだから大丈夫…。アタシなんかより」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




書いていてだんだん訳が分からなくなってしまいました。深く考えずに流し読みでお願いします…。
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