旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第80話:山神様の呪い

 

 

 招かれた家にて腰を落ち着けた一行は、エルシィから事情を聞かされる。

 

 きっかけは、村の子供が病気の母のために聖なる泉の水をくんだ事だったそうな。

 勝手に水をくんだ事が山神様の怒りに触れ、村に呪いが掛けられたのだとか。

 

 

「そりゃ酷い話だ。病気の母親を思ってしただけなんだろ?」

「掟を破ったのは事実です。このまま次の満月の晩までに呪いが解けなければ、妖精達は次々と命を失うでしょう。サチさん、どうか呪いを解いて村をお救いください」

 

 淡々とした口調でエルシィが言う。

 

 

 それを見ていたサンディがどこか慌てた様子で続ける。

 

「だってほら!アンタ達、あの魔王のお椀やっつけたんでしょ!楽勝よね?」

 

 

「「「オワン?」」」

 

「キョワン、ですね」

「ちょっとエルシィ。人のおみ足取らないでくれる?」

「あの戦いで、皆さんの強さは証明されています」

 

「ちょっと!無視しないでくんない?ここは揚げ足の間違いって指摘するトコでしょーが!」

「あーそうでした。これはうっかり」

「どこがうっかりよ!その顔で!」

 

 

「ではこうですか?あ、うっかり」

 

 エルシィがおかしなポーズを取りながら真顔で繰り返す。

 

 

「真面目なフリして実はバカなの?とにかくムダ話してる暇ないんですケド!時間がないんだからね?」

「それをしているのは先輩ですよ」

 

「まあまあ!時間、ないんですからっ」

 

 

「コイツら、仲がいいんだか悪いんだか分からんな」

 

 呆れ始めたボシュに気づき、エルシィが咳払いの後に言い放つ。

 

「おっしゃる通り、もう一刻の猶予もありません。呪いを解く方法もいろいろ調べたのですが、分かりませんでした」

 

「ならどうするんだ?」

「はい。砂漠の塔に、全知全能の賢者様が住んでいると言われています。その方ならご存じかもしれません」

 

「え~砂漠?お肌が乾燥しちゃうんですケド~!アンタ達で行ってくれる?アタシは残って村の人達の看病するわ」

「看病ねぇ…。先輩ったら丸投げですか。仕方ありません、私がお供します」

 

 

 

 

 お調子者に乗せられた感満載の一行は、流れでそのまま砂漠へと向かう事に。

 

 

 

「アタシも乾燥には注意しなきゃ。これ以上日焼けもしたくないしっ」

「やっぱり暑いなぁ。私暑いのは苦手…」

 

「塔は間もなくです、頑張って行きましょう」

「アイミー、そのマスク取った方がいいよ」

 

「うん、今だけ取ろっと。あ、脱いだら頭涼しい!」

 

 

 

 こんなやり取りをしているところへ、小さな生き物が3匹、これまた二足歩行で現れた。

 

「グールルル!待て待てお前達!ここは我らスモールグールの縄張りだ!干物にして美味しくいただいてやる!」

 

 

「来やがったな。そうは行くか!ギガ空裂斬!」

「私も助太刀いたします!せいやっ!」

 

 ボシュに続きブーメランを飛ばすエルシィ。

 

 

 ところがこの小宇宙人のような細い舌を出した魔物が分裂を始めたではないか。

 

 

「げっ、増えやがった」

「切ってはダメ、こいつらは分裂するの。焼き殺すか木っ端みじんに!」

 

「おいおい、怖い事言う人間がいるぞ!アイツを狙え!」

「毒で侵せ!」

「眠らせろ!」

「痺れさせろ!」

 

 魔物がサチに集中攻撃を仕掛けて来る。

 

 

「やってみなさい?どれも私の得意技よ!逆に眠れ、眠り打ちー!そんでもって分身の術でヴァイパーファングー、猛毒よ!」

 

 

 一匹は眠り一匹は猛毒に侵され、タジタジになる魔物達。

 

 

「リリ姉、雨雲の杖貸して。もう全部燃やしちゃう!えーい、落陽ー!」

 

「うひゃあ~やられた!干物にされちまう前に、逃げろや逃げろ~」

 

 

「お見事。なかなか過激になったね、アイミーも」

「あのマスクのせいじゃなかったんだな…」

 

 アイミーは今マスクを着けていない。妹がグレやしないか、兄の不安は尽きない。

 

 

「エルシィさんって強いのね。どうして?」

「このご時世、妖精も戦う時が来るかと思って。ブーメランの他にも剣術や体技、呪文などもたしなんでおります」

 

「ちゃんとしてるね~。正真正銘の優等生だわ」

「コギャルサンディとは大分違うな」

「全ての妖精がサンディ先輩のような性格と思われては困ります。ちなみに先輩はかなり特殊です」

 

「あの、どうして先輩って呼ぶんですか?」

「それは…ええと。腐れ縁と言いますか。まあ私の話はともかく、早く賢者様の塔に向かいましょう」

 

 

 

 こんな世間話をしながら進む事数十分。

 

 

 見えて来た塔の前に老人が一人いる。

 

「ほっほっほ。わしがこの塔に住む全知全能賢者じゃ。そなた達が来る事は分かっておったぞ」

 

「さすがは全知全能。実は…」

「いや、皆まで言うな。理由もすでに分かっておる。ズバリ!その日から効果の出るダイエット法が知りたいのじゃろ?」

 

「いや全然違うんだけどもさ」

「何、違うとな?ならば翌日まで疲れを残さない安眠法か?」

「それも違うが」

 

 

 軒並み外れて悩まし気に唸る老賢者。

 

 

「ううむ…どうやらわしの能力も衰えたようだ。年は取りたくないのう。では改めて話を聞くとしよう。塔の中に入るがよい」

 

 

 背を向けた老人に続く面々。

 

「初めから中に案内して、話しすりゃーいいのに」

「全知全能を自慢したかったのかも」

 

「逆の結果に終わりましたけど」

 

「でもアタシ、ダイエット法ちょっと興味あるな」

「それなら私は安眠法が。最近寝つきが悪いので」

「そうなんですか?私もそうなんですー」

 

「おいアイミー、何か悩みでもあるのか?俺に言ってみろ」

「お兄ちゃんにだけは言いませんっ」

 

 

「…何で?昔は良く聞いてやったのに…」

 

「ドンマイ、兄貴!年頃の娘の悩みを、男が聞いたらダメなのよー」

「私は姉さまに全部話してた。アイミーも姉さまがいたら話せたのにね」

 

 

 こんなコメントに、ちょっぴり落ち込むボシュであった。

 

 

 

 

 塔にて事情を老賢者に説明する。

 

 

「なるほど。山神の呪いを解く法とな」

 

「次の満月の晩までに何とかなりますか?」

「ならばズバリ答えよう。そなた達に呪いを解く事は、できぬ!」

 

「ええ…そんなぁ」

「遥々ここまで会いに来て、そうスッパリ言われちゃうとさ」

「泣きそうっ」

 

 うら若い女子3人からの落胆の声に、老賢者は慌てて続ける。

 

 

「まあまあ慌てるでない。そなた達では解けぬが、掛けた本人ならば解けるはずじゃ」

「つまり山神様から直接解いてもらうと?」

「いかにも。村を救うにはそれしかない」

 

「だったら今すぐ会いに行こうぜ」

 

 

「ただし!相手は神。簡単に会える訳ではないぞ。噂では、恐ろしい試練を乗り越えねば会う事はできぬと聞いておる。それでも行くかね?」

 

「妖精達のためには行くしかないでしょう。ねえ?」

「そうだね」

 

 リリの問いかけに即答するサチ。

 

 

「んじゃ、行くとするか。で、どこに行けばいい?」

 

「山神様の祠の場所なら知っています。ご案内しましょう」

 

 

 

 それは良かったと、一行は何の疑いもなくエルシィと次なる場所へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 やって来た山の入口にて。

 

 

「この山の頂上に、神様の祠があると言われています」

 

「ここは皆さんお参りしたりするの?」

「いいえ。この辺りは魔物が多いので、滅多に来る者はおりません」

「変な話だな!神様のいるとこに魔物がいるとは」

 

 

「あ、…。魔物達は場所を選びませんので」

 

「それもそうだー。神様も迷惑だろうねぇ」

 

 

 

 そこへ低音が響き渡る。

 

「おお~い人間共よ」

 

 

 見回しても誰もいない。すると鬱蒼と生える木々のうちの一本が動いた。

 

 

「木が動いた!」

「地面樹?」

 

「さよう。ワシは山神様がおわす神聖な山の番人。会いに来たなら試練を受けねばならぬ」

「それってどんなの?」

 

「祠へ続く道には3つの関所がある。全てを通過した者だけが試練を受ける事ができる」

「関所の通過って何か難しいのか?」

「通過するたび大切なものを失う」

 

 

「お金払えって事じゃない?」

「あんまり使いたくないんだけど…」

 

 これから買い物をしたい女子達。

 

 

「人間には金以外にも大切なものがあろう?ワシが言えるのはここまで。さあ行くがよい!」

 

「一体どういう意味だ?」

「アタシの玉なくなったら何も占えなくなるよ?」

「大切なものって、命じゃないよね?」

「それはないっしょ!死んだら神様にだって会えないじゃん。あ、でも天国で会えるかー」

 

 

 会話の内容が変わり始めて、エルシィが軌道修正を図る。

 

「皆さん、どうします?関所に向かいますか?」

 

 

「行くわ。皆、いいよね?」

 

「俺はいいぜ」

「アタシもオーケー」

「うん、皆が行くなら」

 

 

「案内してください」

 

 

 分かりました、とエルシィが静かに答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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