旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第83話:英雄の資格

 

 

 ぞろぞろと村に向かうと、最初に会話をした老人と若い女性の妖精が出迎えた。

 

 

「いやー。だまして済まんかった!何しろサンディに頼まれたら断れなくてのー」

「でも無事に試練を乗り越えて、女神様に認められたなら良かったわ」

 

 

「ホントだ、みんな元気だね」

「すっかりだまされたー!」

「もういいって。別に」

 

 一人だけ盛大に謝られているだけに、ボシュはコメントしずらい。

 

 

 改めてエルシィがサチ達に向けて頭を下げる。

 

「皆さん、本当に申し訳ありませんでした。ですが、私達妖精にとっても魔王復活は由々しき事態。皆がサンディ先輩に協力したのは、新たな英雄の誕生を待ち望んでいるからです」

「ちょっと?そこはアタシの人望って言ってくんないと?」

 

「ねえ?女神様がサチに試練を与えるのは分かるけど、どうしてサンディがそれを手伝ってるの?」

「ですよね。気になります」

 

「どーしても何も、お姉ちゃんに頼まれたからに決まってるんですケドー」

 

 

 皆が同時に、お姉ちゃん?と繰り返す。

 

 

「言ってなかったっけ?女神セレシアはアタシのお姉ちゃんなんですケド!近いうちに会えると思うから、ヨロシク言っといて。んじゃ!」

 

 そう言ってサンディの姿が見えなくなった。

 

 

「女神セレシア…って誰?」

 

 

 

・・・

 

 

 

 恒例の夜の宴の席にて。

 

 

「しっかし今回はしてやられたぜ」

「アタシら出番ほとんどなかったねー」

 

「でもサチ、また強くなったんじゃない?だって女神さまの試練に合格したって!」

 

 ボシュとリリも賛同し拍手を送る。

 

 

「なってないよ、やめてよ…。今回改めて実感した。皆の力が私には必要だって。皆、いつもありがとね」

「お、今日は泣かないね、偉い偉い!」

「泣くと姉さまに叱られるもの。姉さまね、ニンジャ目指してるらしいの!」

 

 サチが目を輝かせて語る。

 

 

「って、いつの間に会ったんだ?」

「夢で会った」

「夢の話?それ現実じゃないじゃーん」

 

「そんな事ない。姉さまとは心で繋がってるからっ」

「それ何か妬けるー。ねえボシュも思うでしょ?」

「あ?…別に!」

 

「またまた強がり言っちゃって!」

「大体、姉さんに嫉妬してどうすんだよ。ヤだね~」

 

 

「皆とだって繋がってるよ。皆大好きっ!」

 

 サチが隣りに座るリリを皮切りに、一人ずつ抱きしめて行く。

 

 

「ハグ久しぶりだね、アタシも好きよ、サチ」

「私もっ!サチ大好きー!」

「っ!だからくっつくなって!」

 

 

「…ゴメン。イヤだった?」

 

 上目遣いでしどけなく問われ、ボシュは慌てる。

 

 

「べ、別にっ!」

「やじゃないのね、良かった!」

 

「よし、アンコール!」

「ぎゅっ」

 

 リリの掛け声で再度ボシュを抱きしめるサチ。

 

 

「お前らっ、また俺で遊んでるだろ!」

「お兄ちゃん、顔真っ赤ー」

「酒のせいだ、酒が回ったんだ、テキーラもう一杯!」

 

 

「ところでさ、女神さまって妖精なんだね」

 

「そうそう。サンディさんのお姉さんだもんね。まさかイケイケのお姉さん系だったりして」

「それはそれでいいんじゃない?」

「いい訳あるかよ!神様だぜ?」

 

「どんな人なんだろ。早く会ってみたいっ」

 

「だが冥王がアレだし、あり得るかもな。世の中どうかしてるぜ!」

「すべては偏見なんだって。誰がどんな姿しても自由だよ。決めつけは良くないな~。サチは分かってるよね?」

 

「まあ、何となく」

 

 

「その顔。分かってる気がしねえが?」

「むっ。分かってるってば」

「何となく、なんだろ?」

 

 

 言い合いが始まったサチとボシュを見ながら、リリとアイミーが語る。

 

「二人、やっぱ仲いいねぇ」

 

「ネルゲルさんもどっか行っちゃったし、お兄ちゃん本気でサチを奪っちゃえばいいのに」

「でもさ、波乱アリかもよ?ほら、エルシィがボシュに気があるみたいだったし!あれは間違いなく恋する乙女の顔よ」

 

「エルシィさんがお姉さんかぁ。まあ悪くはないけど…」

 

 

「けど?物足りないって?」

「そう、それ!サチとだったら楽しそうだもん」

「妹の言い分はそんなカンジね。そもそもボシュのタイプってどんななんだろ?」

 

 

「おい!また何か言ってるだろ、そこ!」

 

「え~何~?妖精の村にいいお店あったけど、サイズが小さかったね~って話してただけよ。ね?」

「あ、うんそう。妖精さんサイズだから仕方ないねって話」

 

 

 元々の目的であったショッピングはまだ果たされていないが、アイミーはすでにサチの下衣を身に着けている。

 サチはアイミーが魔法戦士時代に履いていた下衣にお着替え。

 赤マントと白の前垂れ付きに、白のニーハイブーツ姿だ。

 

 

「はい、テキーラお待ち!」

「お、サンキュー」

 

 可愛らしいコスチュームの妖精店員がテキーラを運んで来た。

 

「あっ、その服カワイイっ」

「えっ、マジ?嬉しいんですケド!」

 

 

「って、その話し方、妖精界隈で流行ってるの?」

「ねえリリ姉、この下に合うと思わない?あの服!」

「うん。露出高めだけど、かなり合うね。でも胸元平気?」

 

 

 チューブトップのようなデザインのそれを見ての指摘である。

 サチのバストは豊満ではない。

 

 前中央の合わせが紐で編まれているタイプで、そこから魅惑の谷間が惜しげもなく…。

 

 

「そこは盛るっ。あの、それって大きめサイズないですか?」

「妖精さんサイズしかないよ、きっと」

 

 

「あるよ~っ。でもただじゃ渡せないな~」

 

 

「あんのかよっ」

「えっ。どうすればいい?」

 

 

 対価は労働。サチはしばらくその酒場でアルバイトする事になったのだった。

 

 

 

 

「そこの店員!デカい店員、アンタだよ!酒はまだか?」

 

 

 店はなかなかの盛況ぶりで大忙し。

 

 店のコスチュームに身を包み、ロングヘアを赤いターバンで隠したサチ。

 トレイにジョッキを20杯も載せてオジンキラー・スマイルを炸裂させる。

 

 

「はいはいただいま~。お~っとつまづいたぁ!」

 

 

「きゃ~何してんのアンタ?!載せすぎなの!バカなの?」

「お店が狭くてっ。でも平気、それ分身の術っ!間一髪~」

 

 床に真っ逆さまのはずのジョッキは、もう一人のサチにより無事救出。

 

 何事もなく客のテーブルへと運ばれたのであった。

 

 

 

「便利な技ね…アタシにも教えてくんない?」

「妖精ってニンジャになれるのかなぁ」

 

「は?ニンジャ?ダッサ…やっぱパス」

「ダサくないっ、姉さまも目指してるのよ?」

 

「はぁ?誰?」

 

 

 店内を盛大にかき乱して、サチのバイト期間は無事に終了した。

 

 

・・・

 

 

 

「やったね、似合ってるじゃんそれ!」

「でっしょ~。あとね、こんなのも貰っちゃった」

 

 サチが見せたのは赤いタンバリン。シャラランと鳴らしてポーズを決める。

 

 

「おいおい。音楽隊でも始める気か?」

「いいね!ならアタシがあのハープを…。あれ、どこ行った?最近使ってなかったからっ」

 

 リリがゴソゴソと布袋を漁るもなかなか見当たらず。

 

 

「リリ姉のその袋、いっぱい入ってるね」

「そうなの。どんどん増えて来ちゃってー」

 

 

 皆がそれを覗き込む。そこには乱雑に薬草やら衣服やらが詰め込まれていた。

 

 

「案外整理整頓苦手なタイプだな、リリ姉は!」

「そんな事ないよ?大体どの辺に入れてるか把握してるんだから」

「にしちゃ出て来んな、ハープ」

 

「うっさいわっ」

「アイミーを見習え、大違いだ」

 

 

 実際アイミーの鞄は綺麗に整理されており、中身が一目瞭然だ。

 

 

「妹びいき反対ー!サチも何とか言ってよ」

「盛り上がってるところ悪いんだけど、音楽隊にはならないよ。これね、武器だから」

 

 

 はあ~?!という声が3つ重なる。

 

 

「攻撃の威力は期待できないけど、仲間のパフォーマンスを盛り上げたり体のリズムを整えたり、体力回復できるんだって。凄いでしょ!」

「それをサチが使うのか?」

 

「今の私は中途半端で強敵との戦いでは使い物になってない。でもこれで皆をサポートできる」

 

 

「使い物になってないって、そんな事誰も思ってないよ?」

「そうだよ。ねえお兄ちゃん?」

「いや。事実かもな。だが分かっててニンジャ目指したんだろ?」

 

 

 サチは何も言えない。

 

 思った以上にボシュとアイミーが強くなったから。

 それは嬉しい事だ。単に自分の努力不足かもしれないのに、そんな事は言えない。

 

 

「力だけが全てじゃないよ。時には小細工して敵を翻弄するのも賢い戦い方だと思うしさ」

「うん!いろんな人材がいた方が、パーティとしては上手く行くよ」

 

 二人の意見を聞いて、サチは感激する。

 

「それ、姉さまも言ってた…。ありがと二人とも、私頑張るっ」

 

「そうだよ。姉さんもニンジャ目指してんなら強気で行けるだろ?」

「姉さま…。そこなんだよね、問題は」

「問題?」

 

「ううん、何でもない!とにかくレベル50までは頑張ってみるよ」

 

 

「そうだよ!皆で一緒に50になろうよ!」

「よし。んじゃ、誰が一番先に50になるか競争しようぜ!」

「好きだねー、競い合うの。アタシ一番勝ち目ないじゃん。ハンデほしいんですケド!」

 

「あれ被れば?スライムの」

「あっ、忘れてた!」

 

「残念ながら特級職には効き目がないよ」

「え~っ、残念すぎるんですケド~」

「そのしゃべり方やめてくれ。どうにも落ち着かねー」

 

 

「何で?気になるんですケド~!」

「うんうん、なるんですケド?」

 

「だからっ、やめろっつってんだろ!便乗してくんなよ、サチまで!」

 

 

「キャハっ」

「うふっ」

 

 

 しんみりモードになろうとも、最後には皆でワイワイと賑やかな一行であった。

 

 

 

 

 

 サチは思った。あれは本当にただの夢だったのかもしれないと。

 ドラちんがニンジャになる姿は、どうしたって想像できない。

 

 

 

 くノ一美人姉妹も捨てがたいが、ドラちんには力強くあってほしいと願うサチであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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