旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第85話:ブレア登場

 

 

 問題の麓の村に到着すると、随分騒がしい。

 

 

「見るからに非常事態だな」

 

「あんたら、旅のお人かえ?来て早々何だが、逃げた方がええだよ!ほれ、山を見てみれ、煙が噴き出しとるんじゃあ!」

「あ、あの、詳しく教え…」

 

 サチの言葉を最後まで聞かず、村人はすたこらと逃げて行った。

 

 

「行っちまったぜ」

「何か起きてるのは確かだわね。あのカンジ、ただの噴火じゃなさそうだし」

「何か燃やしてるのかな」

 

「話を聞きたかったけど、それどころじゃなさそう。とにかく近くまで行ってみよう」

 

 

 

 

 徐々に煙の臭いが濃くなって行く。

 

 そしてついに辺り一帯が煙に包まれた。

 

 

「ゴホゴホっ、あっ、あれ見て!」

 

 アイミーの示した先には、白いモグラの魔物がおり、穴掘りをしている。

 

 

「エッサー、ホイサー!」

 

 

 そこには洞窟があり、出入りするたくさんの魔物が見える。

 

 

「この奥で発掘作業が行なわれているのね!」

 

「サチっ、声デカいよ」

「言わんこっちゃない、見つかったぞ!」

 

 

 魔物達の動きがピタリと止まった。皆がこちらを見ている。

 

「例の冒険者が来たぞ!皆の者、撤収!アラ、エッサッサー」

 

 

 どういう訳か逃げ出し、誰もいなくなった。

 

 

「え。何で?」

「これってチャンスじゃね?」

「今のうちに中を調べよう。奥に何があるか分からない、油断しないで!」

 

 

 

 その洞窟はとても深かった。行けども行けども続いている。

 

「どこまで続くの…?!」

 

 

 その時、ゴゴゴ、という音と共に洞窟の入口が崩れ、道が塞がれてしまったではないか。

 

 

「どうやら先に進むしかなくなったな」

「引き返す気はさらさらないけど?」

「っ、俺だってそんなつもりで言ったんじゃねー!」

 

「お二人さん!ケンカしないの、こんなトコで!」

 

 

 

 進んで行くと、奥は溶岩湖になっていた。

 

 

「これが山から煙が噴き出してた原因だね。それにしても暑い…っ」

 

 アイミーが額の汗を拭った時、奥から声が響いた。

 

 

「やはり来たな。待っていたぞ」

 

 

「誰だ!」

「お前が灼爍天ブレアね」

 

 そこには濃い紫色の馬に乗った同色の甲冑をまとった騎士がいる。

 良く見ればそれはガイコツだ。

 

 

「そりゃこんな場所に突如現れるなんて、生きた人間じゃあ無理っしょ」

「やっぱ、ぼんやりと見る方がいいみたい。そうすれば人に見えるもん」

 

 サチの後ろでコソコソと話す女子二人。

 

 リリはガイコツの骨格から、この人物が生前はかなりのイケメンだったと予測。

 赤紫色の美しい大槍を構える姿には、凡人にはない品も感じられる。

 

 

「この野郎、待ち伏せか!」

「残念だったな。ここに大魔王様の肉体はない。あるのは貴様らの墓場だ」

 

「つまり、アタシらを誘き出すための罠だった訳ね」

 

 

「いかにもその通り。もう逃げ場はない。貴様らはここで死ぬのだ」

「そうは行かない、私達は負けない!」

 

「自惚れるな。四天王二人を倒したからとて、我が同じように倒せると思うな?我はあ奴らとは違う。貴様らが束でかかって来ようとムダだ!」

 

 

「そっちこそ、どんだけ自惚れてんだよ!やってみなきゃ分かんねーだろ?やるぞサチ!」

「やる!良くしゃべるね。おしゃべりな男は好きじゃないの!眠っちゃえ、眠り打ちー!」

 

 

「ムダだと言っておろう?小手先の状態異常を狙うのは体力のムダだ」

 

 実際、ブレアには眠りや毒は効果がなかった。

 

 

「よし、俺が一発ぶちかましてやるぜ、ギガブレード!」

 

 ボシュの放った必殺技は弾かれてしまう。

 

 

「お兄ちゃんドンマイ!私が凍らせるよ、マヒャデドスー!」

 

「お、見事にダメージ入ったよ、お見事大魔道士アイミー!」

「まだまだ!皆、こうなったらもう力技で行くよ、ドラゴーンで押し潰す!ボシュは空裂斬放って!」

「任せろ!」

 

「よおし、リリ様がラッキータロットをプレゼントしたげる!攻撃力アーップっ!」

 

 運はボシュに味方した。ボシュに限界突破の力が与えられたのだ。

 

 

「今なら行ける!ボシュ、ギガブレードよ!」

 

「よし来た!食らえ、渾身のギガブレードー!」

 

 ボシュの強烈な一撃はブレアを直撃。馬ごと崩れ落ちた。

 半ば強引な戦いではあったが、思わぬ呆気なさで戦いが終わる。

 

 

「ふっ…ククク。さすがに英雄の試練を乗り越えただけの事はある。また腕を上げたようだな」

 

「まだしゃべる元気があるの?しつこいのも嫌いよ!」

「言ったはずだ。貴様には我を倒す事はできぬ」

「ほざけ、しっかり倒されてんだろ。もう一度攻撃する!」

 

 

 再び起き上がったブレアに向けてボシュが技を放つも、今度はなぜか弾かれてしまう。

 

 同様にサチの技もアイミーの技も弾かれた。

 

 

「…どういう事?」

「何でだ?!さっきまで効いてたのに…っ」

 

「何度やってもムダな事。サチよ、これで終わりか?ならばこちらから行こう!」

 

 

 こちらの攻撃は全く効かない。ただただ攻撃されるばかりだ。

 

 

「クッソ…どうすれば攻撃が入るんだ?」

 

 出入り口を塞がれ、逃げ場のないサチ達はじりじりとブレアに追い詰められる。

 一度倒したはずの敵に!

 

 

「お前の戦士としての腕は認めよう。だが我ら大魔王様に逆らった罪は重い!あの世で後悔するがいい」

 

 ブレアの槍がサチに振り上げられたその時。

 

 

 辺りにまばゆい光が立ち込めた。

 

 

「なっ…何?」

「まぶしーっ!」

 

 そしてサチ達は洞窟から忽然と姿を消した。

 

 

 

「…消えた?おのれ世界樹の女神め…」

 

 

 

・・・

 

 

 

「危ういところじゃったのー」

 

 

 目を開けると、そこは洞窟の外だった。そして目の前にはジョニーの姿がある。

 

 

「ジョニー!あなたが助けてくれたの?」

「ジョニじい!」

「かなり久しぶりじゃん!」

 

 サチがジョニーに抱きつくと、それにならってハグの列ができる。

 

「おぬしはよいぞよ?」

「誰がジジイとハグなんてするかよっ、こっちから願い下げだ。…が、助けてもらった事は感謝する」

「正確には助けたのはワシではない。あの森で女神様が待っている。早く会いに行くがよい、である」

 

 

「女神様が?」

「え、何でジョニじいが女神様の遣いっ走りしてんの?」

「パシリと言うでない、パシリと」

 

 

 

 指定された森に向かってみれば、そこに一人の女性の姿があった。

 少し前のネルゲル同様、向こう側が透けて見える。

 

 がしかし、美しい金のロングヘアを背に垂らし、月桂樹の冠を身に着けたその姿は神々しく、紛う事無く女神である。

 

 

「またまたまぶしーっ」

「何て美しいの…っ」

 

 

『サチよ。危ないところでしたね。無事で本当に良かったです』

 

「あなたが女神様…?」

『私はセレシア。事情があり、自由に動く事は叶わぬ身ですが、ジェネラルの力添えあってこうしてあなた方を助ける事ができました』

 

「何だか済みません…お手数を」

 

 

『今回は運良く難を逃れましたが、油断は禁物です。ブレアはグリザードのように操られている訳ではなく、自らの意思で魔王に従っているのです』

 

 

「その違いは大きいな、確かに…」

 

 ボシュは、ブレアの戦いにおける信念のようなものを肌で感じていた。

 

 

『いずれ必ず決着を付けねばならないでしょう』

「あの女神様、急にブレアに攻撃が効かなくなったのですが、何か理由を知りませんか?」

 

『今のあなた達には倒す術はありません。遠い昔に滅んだ、トライドン王国に向かいなさい。倒すための鍵が見つかるでしょう』

 

 そう伝えると、女神の姿はスウッと消えて行った。

 

 

 

「よし、トライドン王国に行こう!」

「ジョニじいも一緒に!」

 

「残念じゃが、ワシはお供できん」

「ええぇ…っ」

「済まぬの、アイミー殿。ワシとて名残惜しいのじゃ…」

 

 ボヨンボヨンとやって来たジョニーは、流れでアイミーに密着する。

 

 

「ジジイ、近いんだよ!話す距離じゃねーだろ、そんなにくっつくな!」

 

 サチがさり気なくアイミーを庇って間に立つ。

 

「ジョニー、わざわざ来てくれたんだよね。ありがとう。姉さまによろしくね」

「おおそうじゃ、ドラちんからサチ殿へ言伝を預かっておったのである」

 

 

「えっ、姉さまから!?それ先に言って!で何て?」

 

 今度はサチが自らジョニーに密着する。

 

「ちっ、近いのう…良いのか?ムフフ」

 

 

「ちょっとサチ、離れた方が良くない?」

「ジョニーのヤツ、真っ赤なスライム体がさらに赤くなってるぜ」

「どうでもいい!ねえジョニー、姉さま何て?」

 

 サチはそれどころではない。聞き出そうと必死だ。

 私はどうなってもいい、などとうら若い娘にあるまじきコメントを言い放つ。

 

「ねえってば!」

 

 仕舞いには、答えないジョニーの首に手を掛けて揺する。

 

「ぐええっ、首がっ、締まっとるぞえぇ…っ」

「サチ!ジョニじいが窒息しちゃうよ!」

「あっ、ゴメン。つい」

 

 サチが手を離すと、ジョニーはゼエゼエと荒い呼吸を繰り返した。

 

 

「なあ。時間が惜しいから、移動しながらでいいか?その個人的な感じの下り!」

「そうだ、その何とか王国に行かなきゃだったね」

「途中までなら構わぬ。では出発するのである」

 

 

 

 道中でサチが聞き出したのは、ドラちんが転職をしたという話であった。

 それもニンジャではなく天地雷鳴士だとか。

 

 

「元気出せよサチ。ただの夢だったってだけだろ」

「そうだよ。お姉さんは剣も魔法も極めたいと思っただけ。凄いよねーアタシには無理!」

「リリ姉が一番できそうだけど」

「まあ、アタシも天地雷鳴士には興味あるけど?」

 

 

「ううっ、姉さま、ニンジャにならないのかぁ…」

 

「お前も転職したら?力あるのにもったいないって、ずっと思ってたんだ」

「気が合うね、アタシもだよ」

「私だって。どうしてニンジャ?ってカンジだよね」

 

 

 

「皆…。せっかくヤル気取り戻したのに?」

 

 

 

 そうは言えニンジャもなかなか役に立つ。

 

 分身やら威圧やらは、戦いだけでなく日常でも使えるのだから!

 

 

 

 

 

 

 

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