旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第86話:王様の願い

 

 

 ジョニーと別れたサチ達一行。

 何やかんやと楽しく言い合いながら目的地に到着した。

 

 

「王国って聞いたから、久々美味い飯にでもありつけると思ったんだが…」

「何もかもボロボロだね」

「想像はしてたよ、遠い昔に滅んだって女神様言ってたじゃん」

 

 

 そこは朽ち果てて見る影もない状態だ。

 

 そこへムキムキの男が、どこか芝居がかった調子で独り言を言いながら近づいて来た。

 

 

「ああ!昼間だってのに薄暗くて気が滅入るったらないぜ!」

 

 それに対し、ノリ良くサチが応じる。

 

「あー全くよ。って、あなた誰?」

 

 

「名乗るほどのモンじゃねえ。ただのコソ泥だ。そういうお前さん方も、例のウワサを耳にしてここに来たクチだろ?」

「例のウワサって?」

「知らねえのか?この廃墟のどこかに、世にも珍しい宝石が隠されてるって話だぜ!」

 

「珍しい宝石?!きゃっ、テンション上がるー」

「もしかしたら、それがブレアを倒す鍵かもしれないよね」

 

 

「お、興味あるのか?だったら俺と組まねえか!」

「サチ、取りあえず、このコソ泥さんと一緒に調べてみようよ」

 

「お、そっちの青い髪の嬢ちゃん話が分かるね!見つけたら宝は山分けだからな?」

 

 

 

 

 そんな流れでコソ泥も交えて辺りを見て回る中で、古びた石碑を発見する。

 

 

「文字が彫られてる。ええと、王国を救った英雄フェルドここに眠る、だって」

「英雄の墓標か。もしコイツが生きてたら、この王国も滅びずに済んだかもな」

「でも、こんなに大きな国がどうして滅んだんだろう」

 

「俺が聞いた話じゃ、国中が炎に包まれてたった一晩で焼けちまったらしいぜ。以来ここは、呪われた地として人が寄り付かなくなり、魔物の住み処になっちまったんだと」

 

 

 そこへガイコツを持った黄緑のカラスが3体現われた。

 

「クエエエ!人間共め、何しに来た!俺達はデスフラッターさ!」

 

 

「ほ~ら来やがった」

 

「集めたドクロの記念すべき100個目にしてやる!」

「お断りよ。人を襲う悪い魔物には容赦しない!」

 

 

 コソ泥はサチの影に隠れる。どうやら図体の割に腕に覚えはないらしい。

 

 

「俺達と組みたがったのはそういう事か、でくの棒め!さっさと片付けるぞ、ギガ空裂斬!」

 

 ところがまたも思ったほどダメージが入らない。最近こんな事が増えつつある。

 

 

「ボシュ、今回はそれ使えないみたい。私の短剣使って。ボシュの方がダメージが入る」

「それはいいが、お前はどうすんだよ」

「私の眠り攻撃も毒も効かない…今がチャンス、タンバリンで行ってみる!これで皆のパフォーマンスを上げる!」

 

 シャランと軽快に音を鳴らしてサチがターンを決める。

 

 

「サチ!踊ってる場合じゃないよ、アイミーが怯えちゃった!」

「ひえええぇ~…」

 

 カラスの雄叫びを受けて、アイミーが行動不能に陥ってしまった。

 

 

「ああっ、この玉に怯えを治す力があれば…」

「っ、攻撃を防がなきゃ…。フバーハ!ボシュ!ドラゴーンやって!」

「マジでいいのか?実は一回やってみたかったんだ!よおーし、行くぜ、食らえドラゴーン!」

 

 サチの読み通り、ボシュの放ったドラゴーンはなかなかの威力だ。

 

 

「サチ、回復はアタシ一人で十分。タンバリンじゃダメだよ、意地張ってないで、冥王様の大鎌持ちなさい!」

「ヤダっ。これで戦うわ、グランゼドーラの剣よ!久々に覚醒の炎ー!」

 

 頑なに大鎌を持とうとしないサチ。

 困った末に冒険を始めた当初使っていた剣を持ち出す。

 だがしかし放った技は意外と効果があった。

 

 

 この時、密かに大鎌は勝手にサチを守っていた事に、当人も他のメンバーも気づいてはいない。

 

 

 

 こうしてどうにかこうにかカラス3体を順に倒して行く。

 

 

 そしてついに最後の1体を仕留めた。

 

「クエエやられた~。3桁の壁は高いぜっ…ぐふっ」

 

 

「お前さん方、なかなかやるな!」

 

「調子いいな、お前。ひょっこり出て来やがって?」

「当然よ。聞いて驚け、ここにおわすサチ様は英雄の生まれ変わりなのだ!頭が高いっ」

「ちょっとリリ姉、やめてよ…」

 

「皆ゴメン、初っ端から怯えちゃった」

「気にしないでアイミー。いつも頑張ってくれてるんだからいいよ。さあ、先に進もう」

 

 

「いや待て。もうすぐ日が暮れる。今日は引き揚げた方がいい。夜になると、幽霊がうじゃうじゃ出るらしいからな」

 

 この言葉にまたもアイミー怯える。

 

「俺は退散するぜ。じゃあまた明日な!」

 

「ねえ、私達も退散しようよぉ」

「そんな悠長な事してられると思ってるのか?魔物は仕方ないとして、幽霊ごときに怯えるな。何としても今日中に鍵を見つけるぞ!」

 

 

 

 そんなサチ達を遠巻きに眺める、赤髪で赤紫色の鎧姿の青年。

 

 もの言いたげに一人佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

 次第に夜の帳が下り始め、すっかり暗くなった。

 

 

「幽霊、本当に出るのかな…」

 

 こんなアイミーのつぶやきに答えるように、たくさんの声が聞こえて来た。

 

 

『ああ…誰か、助けてくれ』

『熱い…熱い…焼けてしまう!逃げろ、皆逃げるんだ!』

『ヤツが…ヤツが来る!』

『国が燃えているわ…英雄フェルドがいてくれたら…』

 

 廃墟の至る所から声が響く。

 

 

「きゃ~、出たっ!!」

「どうやら皆、王国に住んでいた人達みたい。何があったのかしら」

 

 サチはアイミーを抱き寄せて背を擦る。

 

 

『おお…恐ろしい。火の雨が降り注ぐ…』

『ヤツは炎を操る魔物の騎士じゃ…。町も人も…焼けて行く』

 

 

 こんなセリフを受けてボシュが反応する。

 

「炎を操るって、もしかしてブレアか!」

「ここで何が起きたか、詳しく調べる必要がありそうね」

 

 一同は顔を見合わせ頷き合う。

 

 

 

 見渡せば少し先に朽ち果てた城がある事に気づく。

 

「取りあえずあそこに行ってみよう」

 

 

 

 

 

 

 城門まで来ると、そこに一人の恰幅の良い身なりの整った男が立っていた。

 またもや向こうが透けて見える。

 

 

『ここに生きた人間がやって来るのは随分と久しぶりじゃ』

 

「あなたは?」

『ワシはトライドン王国の王。遠い昔に死んでおるから元、王だな』

 

 

「ねえ王様。この国が魔物の騎士に滅ぼされたってホント?」

 

 こんな事にすっかり慣れた面々は、亡霊相手に普通に話しかける。

 

『あの日…王国では、英雄フェルドの功績を称える石碑が建てられ、式典が行なわれていた。そこへ魔物の騎士が現れ、国中に火の雨を降らせたのじゃ』

 

 王の霊が過去の光景をサチ達に見せてくる。

 

 

『貴様達に生きる資格はない!今ここで全てを焼き払ってくれよう!』

 

 

 その魔物の姿を確認しボシュは確信に至った。

 

「やっぱりここを滅ぼしたのはアイツの仕業だ」

 

『そればかりか、人々の魂がこの地から出られぬよう呪いを掛けた。以来我らは天に昇る事も叶わず、ずっと廃墟をさまよっておるのじゃ』

「だからあんなにたくさん幽霊が…可哀そうっ」

 

『見たところそなた達、随分と腕が立ちそうじゃ。どうか頼む。呪いを解いて我々の魂を解放してはくれまいか…』

 

 

「永遠に廃墟をさまようなんてあんまりだよ。サチ、皆の呪いを解いてあげよう?」

 

 幽霊に怯えていた割に、すっかりやる気になった心根の優しいアイミー。

 

『おお!やってくれるか、これはありがたい』

「だが、どうすれば呪いが解ける?」

 

『王国の辺境の地にある塔に行くがよい。最上階で恐ろしい魔物が呪いの水晶を守っておる』

「その水晶を壊せば呪いが解けるのね」

 

 

『時に、そなた達は何かを探してここへ来たようじゃが。その水晶が目当ての品やもしれぬぞ』

 

 

「じゃあ皆、すぐに向かおう」

 

「うん!必ず呪いを解いてあげますから!」

「そういや、あのコソ泥が言ってた珍しい宝石って、その水晶なんじゃねーか?」

「夜だからって動かない泥棒なんてムシムシ!山分けは、一緒に行動してこそ成り立つ契約よ」

 

 

「その宝は壊すんだし。どの道あの人の手には入らないわ」

 

「だな。そもそも、他力本願のヤツが悪い!」

 

 

 

 一行は夜の闇の中、気合十分の様子で走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

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