旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第88話:灼熱の世界へ

 

 

 サチ達一行は、リムゾンが変身した地図に従って進む。

 

 そうして辿り着いた先は灼熱の地だ。

 

 

「暑い…倒れそうっ」

「ここがブレアの支配する世界か。ここのどこかに魂があるんだな」

「必ず見つけ出すよ、皆!」

 

 

 そこへお約束の魔物が現われる。

 

「ほほう。その出で立ちは、お前が例の冒険者だな」

 

 いつしか赤いターバンが外れてチェリーピンクのスーパーロング姿となっていたサチを見やり、赤紫の甲冑を着たオレンジ色のガイコツ魔物が言う。

 

 

「お前、どっかで見たわ。前に私が倒したでしょう」

「そうなのか?お前ブレアの手下だろ。人魂2匹も従えて立派なこって!」

 

「むむっ、バカにしておるな?我はヴァルハラー。ブレア様の世界へ土足で踏み込んで来るとは、いい度胸だ。その思い上がった根性を真っ二つに切り裂いてくれる!」

 

 

「言ってろ!サチ、一回倒してるんだろ?余裕だよな!」

「もち!それに前の私とは違う。今の私には仲間がいる!アイツ、盾で攻撃を防御してくる。隙を狙って撃って!出でよドラゴーン!」

 

 

「これぞ元祖、だわね」

「私も初心に戻って雨雲の杖で行く!ざざん波ー!追撃レインボー!」

「それも久々っ、惚れ惚れするわ、アイミー!」

 

 

 その時、両サイドにいた水色の人魂の片方が自爆した。

 それがアイミーに直撃し、かなりのダメージを受けてしまった。

 

「キャー!」

 

「大丈夫よアイミー、癒しの占術!」

「アイミー!クソっ、俺の大事な妹に何してやがる、自爆なんて捨て身の技使いやがって、させるかギガブレード!」

 

 

 ところがボシュが倒したにもかかわらず、人魂が甦った。

 

 

「フハハハハ!ムダだ、何度でも呼び戻してやるぞ!我のお供は自由自在じゃ!」

「邪魔くせぇな。それなら何度だって倒すまで!」

 

 

 倒しても倒しても甦る人魂に、ボシュが怒り狂う。

 

 

「ボシュ、アイツ倒さないとラチが明かない!」

 

「その通り。だが倒せるかな?ヴァルハラソードで死のカウントダウンじゃ!」

 

 

「しまった…っ」

「おい、今度は何だってんだ?」

 

 

 一番体力が削がれていたアイミーにカウントダウンが設定されてしまった。

 自分の体力を満タンにできれば解除できるのだが。

 

 

「リリ姉!私達はいいから、次のターンでアイミーにベホイミをかけて!」

「え、でもサチもボシュもピンチ状態だわよ!」

「アイミーの命がかかってるならやるしかねえ。俺がゴッドハンドの意地見せてやる!」

「向こうもほとんど体力残ってない、これに賭ける気だわ。リリ姉、アイミーをお願い」

 

 皆どうか生き延びて…。

 

 束の間、サチとボシュ、リリが目だけで思いを伝え合う。

 

 

「これで止めだ!死ぬがいい!」

 

「ゴッドガード!」

 

 

 そして、ボシュの受け止めた攻撃は跳ね返って魔物へ直撃。

 何とそれが見事に致命傷となった。

 

 

 辛うじてポイントたったの1で踏み止まったボシュ。

 

「…バカ、野郎が」

 

 

「ぐわあああっ!これが…英雄を継ぐ者の力か。油断した!ブレア様…申し訳ありません、ぐふ」

 

 

「ボシュ!大丈夫?!今の凄かったよ、ナイス反撃ありがとう…」

「皆無事?すぐに回復させるからっ」

「皆、ありがとう…ゴメンね、私のせいでっ」

「お前は悪くない。悪いのは魔物だ。だろ?リーダーサチ」

 

「全くその通り。カウントダウンを解除できて良かった。よく頑張ったね、アイミー」

「うえ~~ん!」

 

 

 こんな感動的シーンに水を差すように、面々の頭に声が響き渡る。

 

 

『サチよ。よくぞここまで辿り着いた。やはり侮れぬ奴だ』

 

 

「これはブレアの声!」

 

『だが貴様の方からわざわざやって来るとは好都合。さあ来るがいい、我が居城へ!無事に辿り着ける事を祈っている』

 

 

「この先にアイツの城がある訳ね」

「よし、行こうぜ!魂はそこだ!」

 

 

 

 

 リリの驚異的回復魔法効果ですっかり力を取り戻した一行は、先へと進む。

 

 

 そこへ透かさず魔物が現われる。

 

「ケケケ!そう簡単に行けると思うな?」

 

 

 サチ達は立ちはだかる数々の魔物と戦いながら、ブレアの居城を目指した。

 

 

「それにしても暑いわ。アイミー、大丈夫?」

「あんまり。体が溶けちゃいそう…」

「この暑さで随分体力が消耗してる。このままじゃ城に着く前に倒れちゃうわ」

「そうね。どこかで一休みしよう」

 

 

『ふ!休んでいる暇などない。後ろを見てみろ』

 

 またも声が響く。振り返ると来た道は炎に包まれている。

 

『貴様らは我と戦うために来たのだろう?ならば逃げ道は必要あるまい。間もなく足元に火が回るぞ。その前に我が居城を目指すのだ』

 

 

「火が追って来る!」

「どうやら先に進むしかねーみてえだな」

 

 

 そうしてどうにか城までは辿り着いたのだが。

 

 

「ヤバい、アタシもう体力の限界…」

「私もー…、もう立ってるのもツラい」

「アイミーっ、しっかり!」

 

 よろめいたアイミーをサチが抱き留めた。

 

 

 こんな状況で新たな魔物の登場だ。

 

「待っておったぞ!英雄を継ぐ者よ!」

 

 腕が4本の真っ赤な体躯の一つ目大男だ。

 

 

「大きな魔物が…立ちはだかってるっ」

 

 見上げてうんざりするアイミー。

 暑さが一番の苦手だ。こんな時にさらに暑苦しい魔物を見てどっと疲労が襲う。

 

 

「オレ様はこの城の門番メガトンケイルである!ブレア様から、人間は1匹たりとも通すなと命じられておる!」

「つまりアイツ倒さないと中に入れないって事か」

 

「その腕前、見せてもらおうか、英雄を継ぐ者よ!」

 

 

「英雄英雄ってうるさい…ムカつく!」

 

 サチの疲労は、イライラのせいで怒りのパワーに変換された。

 目の前をプカプカと浮いていた大鎌ではなく、愛用の水竜の短剣を手にする。

 

 

「おおお。サチから久しぶりにメラメラが出てるぞ」

「これって体力に関係しなかったよね?」

「もうこの際、見た目だけでも頼もしくて◎!」

 

「ボシュ、やれるよね?アイミーは休憩しながらでいいから。やれる範囲でやって。リリ姉はどう?」

「アタシは草もたくさん持ってるし、力なくなってもやれるよ」

「俺もまだまだやれる!」

 

 

「オーケー。じゃあ行く!食らえドラゴーン!」

 

「さっきまでの疲労を感じさせない戦いっぷり、さすがリーダー、どこまでも付いてくぜ!食らえギガブレード!」

 

 ボシュの攻撃がかなり効いたようで、敵が放って来た強烈な一撃がミスとなる。

 

 

「ぐぬぬ、吹き飛ばすはずがしくじった…」

 

「それは残念、ついでにアタシの魅力でメロメロにしたげるっ、久々のクレセントムーンよ、しおさいのセレナーデ!」

「うおおお…麗しき!俺の魅惑のマッスルポーズを先に見せたかったが。もうどうでもいいやー」

 

 

「成功!でかしたわリリ姉!今よボシュ、一気に叩き込むよ!」

 

 

 その後も魔物は散々調子を狂わされ、あっさりと地に沈んだ。

 

「ぬおおぉ…!これが、お前の力か…。それを愚かな人間のために使うとは…実に惜しい…ぐふ」

 

 

「勝った…」

「最後まで鬱陶しいヤツだったな。何が魅惑のマッスルポーズだ、キモすぎだっつーの。なあリリ姉?」

「全くよ。見せられずに済んでホッとしたわ」

 

「見て!門が開くよ」

 

 

 鈍い音を響かせながら、目の前の城門が開く。

 

 

「楽勝だったぜ!さあ行こうか…っておいサチ、大丈夫か!さっきまでの元気はどこ行った?」

 

 サチが一歩踏み出したと同時に、ガクリと膝を付いたのだ。

 

 

「サチ!大丈夫?!」

「しっかり!今の戦いで体力使い果たしたのね」

「妙に怒り狂ってたからな」

 

「サチ、立てる?」

「一度ここから退避しよう」

「だな。リーダーがこんな状態で戦っても勝ち目はねえ」

 

 

 

 そこへ再びブレアの声が降って来る。

 

『無様だな、サチよ!決戦を前に我を失うとは。英雄としてあるまじき失態。されど、ここまで辿り着いたのは大したものだ。特別に褒美をくれてやる』

 

 

 突然体が軽くなるのを感じる面々。

 

 

「…何だ?疲れが吹き飛んだぞ」

「私も!」

「アイツがやったの?」

 

「…」

 

 

『疲れ果てた相手を討つなどという姑息な真似はしたくないのでな。立つのだサチよ。我は逃げも隠れもせぬ。城の中へ進むがよい』

 

 

 

 サチは静かに立ち上がり、姿を見せないブレアを無言で睨み据えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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