サチ達一行は、リムゾンが変身した地図に従って進む。
そうして辿り着いた先は灼熱の地だ。
「暑い…倒れそうっ」
「ここがブレアの支配する世界か。ここのどこかに魂があるんだな」
「必ず見つけ出すよ、皆!」
そこへお約束の魔物が現われる。
「ほほう。その出で立ちは、お前が例の冒険者だな」
いつしか赤いターバンが外れてチェリーピンクのスーパーロング姿となっていたサチを見やり、赤紫の甲冑を着たオレンジ色のガイコツ魔物が言う。
「お前、どっかで見たわ。前に私が倒したでしょう」
「そうなのか?お前ブレアの手下だろ。人魂2匹も従えて立派なこって!」
「むむっ、バカにしておるな?我はヴァルハラー。ブレア様の世界へ土足で踏み込んで来るとは、いい度胸だ。その思い上がった根性を真っ二つに切り裂いてくれる!」
「言ってろ!サチ、一回倒してるんだろ?余裕だよな!」
「もち!それに前の私とは違う。今の私には仲間がいる!アイツ、盾で攻撃を防御してくる。隙を狙って撃って!出でよドラゴーン!」
「これぞ元祖、だわね」
「私も初心に戻って雨雲の杖で行く!ざざん波ー!追撃レインボー!」
「それも久々っ、惚れ惚れするわ、アイミー!」
その時、両サイドにいた水色の人魂の片方が自爆した。
それがアイミーに直撃し、かなりのダメージを受けてしまった。
「キャー!」
「大丈夫よアイミー、癒しの占術!」
「アイミー!クソっ、俺の大事な妹に何してやがる、自爆なんて捨て身の技使いやがって、させるかギガブレード!」
ところがボシュが倒したにもかかわらず、人魂が甦った。
「フハハハハ!ムダだ、何度でも呼び戻してやるぞ!我のお供は自由自在じゃ!」
「邪魔くせぇな。それなら何度だって倒すまで!」
倒しても倒しても甦る人魂に、ボシュが怒り狂う。
「ボシュ、アイツ倒さないとラチが明かない!」
「その通り。だが倒せるかな?ヴァルハラソードで死のカウントダウンじゃ!」
「しまった…っ」
「おい、今度は何だってんだ?」
一番体力が削がれていたアイミーにカウントダウンが設定されてしまった。
自分の体力を満タンにできれば解除できるのだが。
「リリ姉!私達はいいから、次のターンでアイミーにベホイミをかけて!」
「え、でもサチもボシュもピンチ状態だわよ!」
「アイミーの命がかかってるならやるしかねえ。俺がゴッドハンドの意地見せてやる!」
「向こうもほとんど体力残ってない、これに賭ける気だわ。リリ姉、アイミーをお願い」
皆どうか生き延びて…。
束の間、サチとボシュ、リリが目だけで思いを伝え合う。
「これで止めだ!死ぬがいい!」
「ゴッドガード!」
そして、ボシュの受け止めた攻撃は跳ね返って魔物へ直撃。
何とそれが見事に致命傷となった。
辛うじてポイントたったの1で踏み止まったボシュ。
「…バカ、野郎が」
「ぐわあああっ!これが…英雄を継ぐ者の力か。油断した!ブレア様…申し訳ありません、ぐふ」
「ボシュ!大丈夫?!今の凄かったよ、ナイス反撃ありがとう…」
「皆無事?すぐに回復させるからっ」
「皆、ありがとう…ゴメンね、私のせいでっ」
「お前は悪くない。悪いのは魔物だ。だろ?リーダーサチ」
「全くその通り。カウントダウンを解除できて良かった。よく頑張ったね、アイミー」
「うえ~~ん!」
こんな感動的シーンに水を差すように、面々の頭に声が響き渡る。
『サチよ。よくぞここまで辿り着いた。やはり侮れぬ奴だ』
「これはブレアの声!」
『だが貴様の方からわざわざやって来るとは好都合。さあ来るがいい、我が居城へ!無事に辿り着ける事を祈っている』
「この先にアイツの城がある訳ね」
「よし、行こうぜ!魂はそこだ!」
リリの驚異的回復魔法効果ですっかり力を取り戻した一行は、先へと進む。
そこへ透かさず魔物が現われる。
「ケケケ!そう簡単に行けると思うな?」
サチ達は立ちはだかる数々の魔物と戦いながら、ブレアの居城を目指した。
「それにしても暑いわ。アイミー、大丈夫?」
「あんまり。体が溶けちゃいそう…」
「この暑さで随分体力が消耗してる。このままじゃ城に着く前に倒れちゃうわ」
「そうね。どこかで一休みしよう」
『ふ!休んでいる暇などない。後ろを見てみろ』
またも声が響く。振り返ると来た道は炎に包まれている。
『貴様らは我と戦うために来たのだろう?ならば逃げ道は必要あるまい。間もなく足元に火が回るぞ。その前に我が居城を目指すのだ』
「火が追って来る!」
「どうやら先に進むしかねーみてえだな」
そうしてどうにか城までは辿り着いたのだが。
「ヤバい、アタシもう体力の限界…」
「私もー…、もう立ってるのもツラい」
「アイミーっ、しっかり!」
よろめいたアイミーをサチが抱き留めた。
こんな状況で新たな魔物の登場だ。
「待っておったぞ!英雄を継ぐ者よ!」
腕が4本の真っ赤な体躯の一つ目大男だ。
「大きな魔物が…立ちはだかってるっ」
見上げてうんざりするアイミー。
暑さが一番の苦手だ。こんな時にさらに暑苦しい魔物を見てどっと疲労が襲う。
「オレ様はこの城の門番メガトンケイルである!ブレア様から、人間は1匹たりとも通すなと命じられておる!」
「つまりアイツ倒さないと中に入れないって事か」
「その腕前、見せてもらおうか、英雄を継ぐ者よ!」
「英雄英雄ってうるさい…ムカつく!」
サチの疲労は、イライラのせいで怒りのパワーに変換された。
目の前をプカプカと浮いていた大鎌ではなく、愛用の水竜の短剣を手にする。
「おおお。サチから久しぶりにメラメラが出てるぞ」
「これって体力に関係しなかったよね?」
「もうこの際、見た目だけでも頼もしくて◎!」
「ボシュ、やれるよね?アイミーは休憩しながらでいいから。やれる範囲でやって。リリ姉はどう?」
「アタシは草もたくさん持ってるし、力なくなってもやれるよ」
「俺もまだまだやれる!」
「オーケー。じゃあ行く!食らえドラゴーン!」
「さっきまでの疲労を感じさせない戦いっぷり、さすがリーダー、どこまでも付いてくぜ!食らえギガブレード!」
ボシュの攻撃がかなり効いたようで、敵が放って来た強烈な一撃がミスとなる。
「ぐぬぬ、吹き飛ばすはずがしくじった…」
「それは残念、ついでにアタシの魅力でメロメロにしたげるっ、久々のクレセントムーンよ、しおさいのセレナーデ!」
「うおおお…麗しき!俺の魅惑のマッスルポーズを先に見せたかったが。もうどうでもいいやー」
「成功!でかしたわリリ姉!今よボシュ、一気に叩き込むよ!」
その後も魔物は散々調子を狂わされ、あっさりと地に沈んだ。
「ぬおおぉ…!これが、お前の力か…。それを愚かな人間のために使うとは…実に惜しい…ぐふ」
「勝った…」
「最後まで鬱陶しいヤツだったな。何が魅惑のマッスルポーズだ、キモすぎだっつーの。なあリリ姉?」
「全くよ。見せられずに済んでホッとしたわ」
「見て!門が開くよ」
鈍い音を響かせながら、目の前の城門が開く。
「楽勝だったぜ!さあ行こうか…っておいサチ、大丈夫か!さっきまでの元気はどこ行った?」
サチが一歩踏み出したと同時に、ガクリと膝を付いたのだ。
「サチ!大丈夫?!」
「しっかり!今の戦いで体力使い果たしたのね」
「妙に怒り狂ってたからな」
「サチ、立てる?」
「一度ここから退避しよう」
「だな。リーダーがこんな状態で戦っても勝ち目はねえ」
そこへ再びブレアの声が降って来る。
『無様だな、サチよ!決戦を前に我を失うとは。英雄としてあるまじき失態。されど、ここまで辿り着いたのは大したものだ。特別に褒美をくれてやる』
突然体が軽くなるのを感じる面々。
「…何だ?疲れが吹き飛んだぞ」
「私も!」
「アイツがやったの?」
「…」
『疲れ果てた相手を討つなどという姑息な真似はしたくないのでな。立つのだサチよ。我は逃げも隠れもせぬ。城の中へ進むがよい』
サチは静かに立ち上がり、姿を見せないブレアを無言で睨み据えるのだった。