旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第8話:小さなため息

 

 

 まだまだ砂地は続く。

 前衛サチとボシュ、後衛リリとアイミー、最後尾にジョニーが付いている。

 

 

「思ったよりまともな人で良かった~」

「私、結局対面で一言も話せなかった…」

「いいんじゃない?別に。メンバーの人達には挨拶したんだし」

「そうかなぁ…」

「ねえちょっとサチ、アイミーが落ち込んでるけど」

 

 前を行くサチに声を掛けると、歩きながら振り返ったサチが声を張る。

 

「アイミー!姉さま機嫌良かったよ!怒ってたのはタイタンにだから心配しないで!」

「しかし、仲間相手に解けない術を掛けるってどうなんだ?」

「何事も試してみるのは大事よ。私もよく姉さまの練習台になってたよ?」

「マジかっ。何も仲間内でやるこたねーだろうに!」

 

 

 そこへリリが近づいて来て話に加わる。

 

「でもさ、魔物で試しても感想聞けないじゃん?」

「そうそう。どんな感じ~?ってね」

「何が、どんな感じ~?だ!アホか?」

「お兄ちゃん!今のは暴言だよ!」

 

 

 透かさずアイミーも加わる。

 

「あ~あ~、それは済まん。あまりにアホらしくてついな!」

「術をかけ合えるもの、信頼している証拠じゃ」

 

 さらにジョニーが口を挟む。

 

 

「ま、アタシはヤだけど!」

「私も遠慮したいです…」

「大丈夫、二人は掛けられる方じゃなくて、掛ける方だから」

「おいおい、それってもしかしなくても、犠牲者俺確定じゃねーかよっ」

「私だって魔法は使えないから対象だよ」

 

「お前には魔法自体が効かなそうだ」

「そんな特技があったらいいよね~」

 

 思わぬ突っ込みにも、サチは怒りも見せず即答する。

 

 

「サチって凄いよね、嫌味とか悪口言われても嫌な顔もせず受け流せて。尊敬しちゃう!」

「ってアイミー、気づいてないって線もあるよ?」

「え…。ああ…あははっ」

「ふふっ!」

 

 

「二人、楽しそうね!何の話?」

 

 

「どんな魔法試そうか相談してたの。ね?」

「え?ええ!そうなの」

「頼むから命だけは取らないでくれ?」

「やる訳ないっしょ。感想聞けなくなるもの?」

 

 

 ボシュが苦虫を嚙み潰したような顔をした。

 

 

 

 

 

 こうして順調に歩みを進める一行であったが、早速魔物の群れに出くわした。

 

 

「量が多くて面倒だわ、私の雨雲で一気にやっちゃおう」

「待って。数は多いけどどれも小物よ。最低限の力で全部潰す」

 

 前に躍り出たリリを手で制したサチは、ボシュに目配せして武器を手にする。

 

「ボシュ。行ける?」

「おおよ、いつでも!」

 

 ボシュも剣を抜いて構える。

 

「よ~し、まずは私が“覚醒の炎”を使う。取りこぼしを始末して」

「了解!なら次の群れは俺が“ウィンドスラッシュ”だ。万一残ったら魔法組よろしく」

「了解」

「分かった!」

 

 

 サチの巻き起こした光の柱から、凄まじい炎が魔物達に降り注ぐ。

 一掃できる事もあれば数匹生き残る事もある。

 今回も何匹かが残り、それをボシュが倒して行く。

 

 息を付く間もなく次の群れが現れ、今度はボシュが剣を真横に振り抜く。

 こちらも時折生き残りが発生。

 それらをリリとアイミーの呪文で止めを刺して行く。

 

 

「凄いよ、二人息ピッタリ!」

「二人もいい感じじゃない。アイミー、攻撃魔法上手くなってる」

「本当に?嬉しいっ」

「だけど、あの動きにはアタシらじゃ付いて行けないわね」

 

「斬撃組は呪文の使い手と違って、動くの基本だからな!」

 

 攻撃力、瞬発力、そういった純粋な力においては、サチとボシュは並み以上か。

 戦いぶりはなかなかのものだ。

 

 動きのムダも少なく隙がない。ジョニーも頷いてしまうくらいに。

 

 

 

「こやつら、もっともっと強くなる。ドラちんよ、のんびり構えておると追い越されるぞい!」

 

 

 

 

 こんな具合に、二人はいつの間にか魔物の群れを全滅させていた。

 

 

「終わったか…?」

 

「ええ。お疲れ様。ボシュ、なかなか上達したじゃない?剣の腕」

「まあ、お前の教え方が良かったって言っとく」

「それと、回し蹴りもやっぱりステキ。もうちょっと威力があれば、もっと使える」

「それは俺も思ってた」

 

 

「お疲れ~!カッコ良かったよ、二人とも!アタシらの出番ほとんどなかったね~」

「あんなにたくさんいたのに。疲れたでしょ、少し休んで行こう」

「いや。俺は休まなくていい。サチが大丈夫なら先に進もう」

「私も平気。じゃあ暗くなる前に、良さそうな宿のある町まで行っちゃおう」

 

「タフさも半端ないってワケかぁ。アイミー、アタシらも体力もっと付けないとヤバいかもね」

「こっそり筋トレ、追加する?」

「いいかも!」

 

 

「いいアイディアじゃ!ワシがオリジナルの筋トレメニューを考えておこう。ムフフ」

「それはありがたいけど…」

 

 ジョニーの鼻の下がヒクヒクしているのに気づいたアイミー。

 不安そうにリリを見る。

 

 

「エッチなポーズで1分キープ!とかいうのじゃなければ賛成」

「そう、私も!そういう事言いたかったの!」

 

「ボヨぉぉ~ん…。っ」

 

 

 まさにそういう事を目論んでいたジョニーの夢は、儚く散ったのであった。

 

 

 

・・・

 

 

 

 その後もこんな日々が続き、時には強敵が現れてリリが雨雲の杖の本領を発揮。

 

 

「未だに慣れないわ…」

「上等じゃ。この“落陽”は巨大な火の玉じゃが、他にもこれには水による技もある」

「対極の火と水を操れるなんて、増々凄いじゃないか?」

「ホント!リリ姉最高!」

「水かぁ。名前が雨雲ってくらいだからあるとは思ったけど。けどこの技結構体力使うのよ…」

 

 

 見るからにぐったりなリリ。そのため今は休憩を取っている。

 

 

「アタシにもっと体力付けばね。ゴメン、足手まといで」

 

「そんな事ない。さっきの敵はぐれメタルは、特定の武器じゃないと倒せないの。リリ姉の杖はかなり有り難いわ」

「そうなのじゃ。メタル系のスライムは特殊なのである。ボヨン!」

「私にリリ姉を完全回復させる魔法が使えれば…」

「気にしないで!今やれる事、コツコツやってこ?」

 

 アネゴ肌リリは、アイミーの沈んだ気持ちをすくい上げて微笑む。

 

「リリ姉…。うん、そうだね!」

 

 

 

 

 

 その夜、食事を摂りながら話題は今後のポジションの話となった。

 

 

「当分は私とボシュが攻撃メインかな。ゆくゆくは魔法とかも覚えないとだけどね」

「俺は魔法は使えなくてもいい」

「そうは行かないんじゃない?武器によっては魔力を使う物もあるし」

「まあ、強制はしない。やっておいた方がいいってだけ」

 

「それ十分圧力だろ、リーダー?」

 

 

「ねえ、サチはお姉さんと同じ道を行くの?」

「そうすると、バトルマスターからの魔剣士?ならサチは武闘家の経験も必要だわね」

 

「まだ考えてない。バトマスはボシュの方が向いていそうだし」

「俺、それ目指そっかな」

「いいと思う。で、アイミーはもちろん魔法使いも可能だから、賢者でしょ」

「うん。私もそう考えてる。もう少し魔法使いとしての経験を積まないとって」

 

 

「皆ちゃんと考えてるのね~。アタシはさっぱり方向性が定まらなくて!」

「リリ姉は、はっきり言って何でもなれるよ。希望の道に進める」

「アタシったら優秀~!だったら断然スーパースター目指すわ。舞台とスポットライトが恋しくって」

 

 胸の前で両手を組み、天井からつり下がった明かりを見上げる。

 

 

「そりゃダメだろ。リリ姉は戦力だ。スーパースターじゃ発揮できない」

「うん。魔法使い仲間がいなくなるのは心細い」

「何言ってんの!いつかは皆一人前になるのよ?」

 

「サチだってお姉さんにべったりだよ?」

「そりゃ一緒にいる時の話でしょ」

「あの擦り寄り具合は尋常じゃないけどな!」

 

 飼い主に纏わりつくネコのようだと3人は思う。

 

「慕っている人がいないって寂しいのよ。思い出しただけでっ、グスっ」

 

 

「待って待って、姉さんならいるじゃん、ここにっ」

「リリ姉~、ずっといて?」

「分かったから、アンタまでくっ付くなっ、アイミー」

「今だけっ、何か私も泣きたくなって来た、グスっ」

 

「ねえ兄貴、この子泣き上戸なの?」

「知らなかった…」

 

 

 軽くでも酒が入れば、日頃口にできない事も言えてしまうというもの。

 サチやジョニーが酒の席を進んで設けようとするのは、心のうちを探るため。

 

 

 

「ウイィ~…っ、姉さまぁ、サチはどこまでも付いて行きますからぁ…」

「サチ、大丈夫?椅子からずり落ちそうだわよ」

「ジョニーが身構えてるぜ!」

「受け止め体勢は万全であるっ」

 

「サチ!今日はもう飲むの禁止!ほら、お部屋に行ってから寝よう、立てる?」

 

 

 テーブルに突っ伏して、ひたすら姉さまを連呼するサチ。

 

 

 

 一番に心情をさらしたのは本人であった。

 

 

 

 

 

 

 

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