炎の魔城を進んで行くサチ達一行。いよいよ決戦の時がやってきた。
「リムゾンの代わりに必ず倒すわ!」
「その前に魂を見つけねーとな」
「あ」
「そうだわよ!すっかり忘れてた」
「お兄ちゃんナイス!」
「って何でそんな肝心な事忘れてんだよ、お前ら…」
体力が戻りしゃべる元気も戻った一行は、いつもの調子で玉座へとやって来た。
そこには隠しもせず魂が鎮座している。
「あれか、魂!」
「予想外に堂々と置いてるね」
「探す手間省けたじゃん」
リリのコメントに答えるように、目の前から声が聞こえる。
先ほどの辺りに響き渡るものではない。ブレアがすぐそこにいるのだ。
「大魔王様より頂いた新たな生だ。永遠の忠誠の証として、こうして大事にするのは当然の事。貴様らになど指一本触れさせはしない。今ここで始末してくれよう!」
「大魔王から生を授かった?どういう事…?」
「待ってください!あなたはかつて、英雄フェルドと呼ばれた人間だったんですよね?」
ここは説得上手のアイミーの出番だ。
「久々に聞く名だ。そんな人間はもうこの世にはおらぬがな」
「どうして?人間だったあなたが、どうして魔物の味方になんて…!」
「大魔王様こそが、この世に人間の存在しない正しき世界を創る事ができるからだ」
「人間の存在しない世界が、正しいですって?」
「人間は傲慢で愚かな生き物。己の欲望のために平気で人を殺め、屍の上に偽りの平和を築く。人間がいる限りこの世から争いは絶えぬ。いずれ世界を破滅へと導くだろう」
「妙に説得力あるな…。確かに一部は事実だ。だがそれだけじゃねーだろ、人間って」
「そうだよっ」
こちらの言葉はスルーされ、ブレアが興奮状態となって続ける。
「貴様らの女神は間違った!人間は守るべき価値などない!滅びるべきだったのだ!」
「女神さまが、人間を守ってくれた事があるの?」
「これは驚いた、英雄の割に何も知らぬとは!」
「うるさい!何だっていい、女神さまは間違えたりしない!この世には正しい人間だってたくさんいるんだから!」
英雄という言葉になぜかイラ立つサチ。
だが経緯はどうあれ、女神は正しいと信じて疑わない。
それは他の3人も同様だ。皆がサチの主張に同意を示す。
そんな様子を眺め、ブレアが会話を打ち切った。
「話してもムダなようだ。よかろう。武器を取るがよい。今度こそ貴様らに引導を渡してくれる!」
そしてついに戦いの火ぶたが切って落とされた。
けれどまたもやボシュのギガブレードが思うように効かない。
サチのドラゴーンだけでは力不足が否めず。
どうにかアイミーのマヒャデドス連発でブレアを覚醒に追い込んだのだが…。
「四天王って変身好きだね、まただわよ!」
「今までより強くなるって事?!無理だよっ」
「クッソ…ここまでか」
「悔しい…っ」
一行を火の海が襲う。
さらには全員に火種が仕掛けられ、動く度にダメージを受ける始末だ。
そして極め付きにブレアご自慢の槍での強烈な斬撃が襲い、サチ達は敗北を喫した。
「今のままでは勝てない。出直すよ、皆」
「おいサチ、諦めんのかよ!」
「ダメなの!…っ、私が、今のままでは!」
サチが思わぬ大声を出した事で3人は黙り込んだ。
決意は固いのだと納得はしたが。
「そうは言っても逃げ道ないよ?どうすんの!」
「あ、見て、大鎌が…勝手に動いてるよ!」
「まさかアイツが戦ってくれるのか?」
「違う。そんな訳ない」
サチは内心期待してしまったが、言い分は当たりだった。
大鎌はブレアではなく、空間を切り裂いた。
そして一行を誘導するように、切り裂いた空間へと進んで行くではないか。
「あれって…」
「付いて来いって言ってる?」
「行くっきゃねーだろ、急げ!ほらサチ!」
ボシュがサチの手を掴んで引っ張り、最初に空間へ飛び込んだ。
続いてリリとアイミーが飛び込む。
あっという間にサチ達の姿はその場から消え去った。
「…逃げたか。ふっ!よかろう。もっと強くなって戻って来るがいい。我はいつでも相手になろうぞ」
根っからのファイターは、自分よりも弱いと判断した者とは戦わない。
だがしかし、これは魔物にはあるまじき見逃し行為であった。