旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第94話:サイドストーリー(1)

 

 

 女神と二度目の対面を果たしたサチ達一行は、すぐに新たな旅に出発した。

 

 

 ブレアことフェルドの弟リムゾンによれば、“記憶の欠片”を集める事で、トライドン王国でかつて何があったのかを知る事ができるらしい。

 

 

「だけど、過去を見るってどうやるんだろ」

「リムゾンさん、この目で見た方がいいって言ってたよね」

 

 

 大抵旅の道中は二手に分かれる。

 リリとアイミーが、先を行くサチとボシュに続く形だ。

 

 今回もその典型パターンとなっている。

 

 

「おっ、最後の一個見~っけ!」

「あ!私も見つけてたのにっ、ズル~い」

「先に声に出したモン勝ちだろ?」

 

「え~。そこはレディーファーストでしょう、ねえリリ姉?」

 

 サチが振り返って意見を求める。

 

 

「いいじゃん、どっちが先に見つけたって。揃えばいいんだからさ?」

「だそうだ」

「サチってば意外と負けず嫌いだよね」

 

 

 ムッと口をとがらせて立ち止まるサチ。

 

 

「その不服そうな顔もソソルんだよねぇ。ネルゲルさんもこういうとこが堪んないんだろうなぁ」

「ソソルかぁ?分からん」

「チェリー君にはまだ分かんないだろうよ」

 

 

「おいリリ姉!その呼び方禁止だ!」

 

 

 

 

 やいのやいのと賑やかに記憶の欠片を集め終え、地面に並べて置く。

 

 

「で?これをどうすればいいのさ」

「さあ」

「何か呪文とかあるのかな」

「やり方教えてもらうの忘れたな」

 

 

 並んでしゃがみ込み、並べた石を眺めながら途方に暮れる面々だが。

 

 不意に意識がぼんやりし始めた。

 

 

「何だか頭がクラクラっと…何事?」

「私も。朦朧とする…」

 

「ヤバ、クスリ盛られた感じっ」

「ってリリ姉、盛られた事あんのかよ?!」

 

「ある訳ないでしょーが!そこまでの人生経験はまだなくてよ?」

「こんな時にそんな言い合いしてる場合じゃ…」

 

 

「「あ~れ~!」」

 

 

 

 

 気が付くと、一行はどこかの国にいた。

 

 

『ここはどこなの?』

『さっきまでの場所と違うよ!』

『なになに、どゆこと?』

 

『待てよ、あの建物、見覚えがある』

 

 ボシュが少し先の建物を指で示す。

 

 

『あっ。亡霊さんがたくさんいた建物!』

『って事は、ここはトライドン王国?』

『そうか、滅びる前のトライドン王国にタイムリープしたのよ』

『マジか!』

 

 

 こうして過去へとやって来た一行。

 

 ただし自分達の体はそこにはなく、ただ傍観者として意識のみがやって来たようだ。

 向こう側が透けて見えるお互いを見やり、過去に干渉してはいけない事を察する。

 

『とにかくお芝居を観る感じで見て行こう』

 

 サチの言葉に無言で頷く3人。

 

 

 

 そこへ短髪と長髪の青年騎士が二人現われた。

 

「着いたよフェルド兄さん。ようやく王都に帰還だね」

 

「ああ。ここ最近は、辺境の地で魔物と戦ってばかりだったからな。その甲斐あって王都は安全な暮らしがもたらされている」

「この国はここまで大きな都じゃなかったのにね」

 

 周囲を見回してつぶやくように言う短髪の青年。

 

 

「今の王の才覚の賜物だろう。周辺の小国や異民族の土地を取り込んで領土を広げ、大国を築いたのだ」

「けどボクは不満だな。王は兄さんの力を過小評価してる。だって兄さんはこの国の民から英雄と呼ばれる存在なんだ。なのに魔物討伐ばかりさせて」

 

「誰かがやらねばならぬ事。我ら騎士は国のために力を尽くすのみ。行き場のない我ら兄弟を救ってくれた忠義は果たさねばならん。さあ、王が待っている。早く城に向かおう」

 

 

 まるで本物の観劇のようだと思いながら、食い入るように見守る面々。

 

 二人の会話が終わるや、幕が下りたように辺りが暗くなる。

 

 

『何だ?夜か?』

『いきなり過ぎっしょ、さすがに?』

『二人とも、しーっ、何か聞こえるよ』

 

 

 どこからともなくナレーションが入る。

 

「辺境の地から呼び戻された二人。王が直々に話したい事とは?重要な用件に違いないと、足を速める二人であった」

 

 

 場面が王国の城内に切り変わる。

 

 

「二人ともよくぞ来てくれた!民が安全に暮らせるのも、そなた達が魔物討伐をしてくれるお陰。そしてフェルドよ。そなたが民に英雄と呼ばれておる事、耳に入っておる」

 

「その名に相応しい者は他にもおりましょう。それよりも我らを呼んだ理由を」

「うむ。王国の南方に魔物使いの里がある事は承知しておろう」

 

 

 彼らが魔物を操って町や村を襲っているとの事。

 

「どうして?彼らとはお互い領地に踏み入らぬよう協定を結んでいるはずでは」

 

「一方的に破られたのだ。いずれこの王都にも攻めて来る。先方の統領ガレルは凶悪な魔物を操り、衛兵達では太刀打ちできぬのだ。そこでそなた達に頼みたい。城の衛兵を指揮し、魔物使い共を討ち取ってほしい」

 

「分かりました。すぐ南方へ向かいましょう」

「やれやれ。今度は魔物使い討伐とは!」

「これが我らの務め。王国の平穏を脅かす者は排除せねばならん」

 

 

 ここでまた場面が変わる。今度は全く別の国だ。

 

 

『話の筋からすれば、ここは魔物使いの里ね』

『魔物マスター経験者としては、悪者にされるのはいい気がしないわ!討伐だなんて?』

『あの王様、何か企んでるんじゃねーか?』

『とにかく続き見ようよ』

 

 

 (以下会話文以外ナレーション)

 辺境の地に着いてみればそこは酷い有様であった。

 

 

「焼き討ちに遭ったようだね。まだ焦げ臭いよ」

 

 衛兵が二人を出迎える。

 敵の戦力や被害状況について尋ねるも、衛兵達も到着した時はこの状況だったとの事。

 

「酷い事を…。僕達の国を思い出すな」

 

 

 二人はトライドン王国の出身ではない。かつて西方に存在したオンラッド王国の生まれだ。

 魔物の大群に襲われ、城も町もすべて破壊された王国。

 まだ幼かった二人は、視察に来たトライドンの兵士に瓦礫の下から助け出されたのだ。

 

 

「だが今回は魔物使いが元凶との事。魔物が暴れただけなら諦めも付くが、人の手が加わっているとなれば話は別」

 

 

 

 二人は魔物使いの里へと向かう。

 

 

 衛兵を率いた二人は、立ちはだかる敵と戦いながら先へ進んだ。

 

 そしてついに敵との対面となる。

 

 

「おのれ王国の者共め、これがトライドン王の答えか。ならばこちらも容赦せぬ!さあ行くのだ、

ドラゴンよ!」

 

 黄緑色の大きなドラゴンが、フェルド達に向かって火の息を吐いた。

 

 

「あのドラゴン、まさか…」

 

 目の前の魔物には見覚えがあった。

 思考に集中したため、フェルドに隙が生まれる。

 

「兄さん危ない!」

 

 フェルドを庇ったリムゾンをドラゴンの爪が引き裂いた。

 血を噴き出し倒れるリムゾン。

 

 

「リムゾン!おのれ貴様ら、許さん!」

 

 フェルドの攻撃にドラゴンが倒れた。

 それを見て息巻いた衛兵達が統領に向かう。

 

 

「「「おおー!」」」

 

 

 

 やがてフェルドと衛兵達は統領を討ち取った。

 

 

 

「リムゾン、しっかりしろ!リムゾン!」

 

「兄さん…無事だったか。僕は…もうダメみたいだ」

「なぜこんな真似をっ」

 

 

「兄さんは、王国の英雄…。こんな所で倒れたら、ダメだろ?」

 

 これからも生きてくれ、僕は兄さんをずっと見守っている。

 

 

 

 

 そう言い終えるとリムゾンは力尽きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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