第96話:流星の正体
3人目の四天王灼爍天ブレアとの一件が落ち着いた頃。
おびただしい数の流星群が人間世界の夜空を彩った。
その翌日、サチ達一行はダーマ神殿からの招集を受け、フォズの元へ駆け付けていた。
「お待ちしていました、サチさん皆さん」
「フォズ大神官様。緊急招集はもしかして、昨夜の流れ星に関係がありますか?」
「はい。皆さんもご覧になったのですね」
「流れ星は綺麗だったんですが…やっぱりあれは良くない事の前兆ですか?」
「おっしゃる通り、あの流星群には私も不吉なものを感じました。各地でもこの世の終わりが来るといった不安が広がっております」
「それで俺達にアレの正体を調べろと」
「何だったのか分かれば、皆の不安もなくなるよ。やろうよ!」
「どうか力を貸してください」
「お任せください。フォズさんにはいつもお世話になっていますから。是非力になります。いいでしょ?ボシュ」
若干拒絶の色を見せていたボシュに確認を入れるサチ。
案の定の答えが返される。
「そういうのは俺らの仕事じゃなくねぇ?」
「お兄ちゃん。あれが魔物に関係してないって断言できるの?できるなら、その根拠も含めて言ってみて。今すぐ!」
ずずいと前に出て兄に言い放つ。本当にアイミーは逞しくなった。
「な、何だよ根拠って?ねーよ、そんなの!分かったよ、やりゃーいいんだろ、やりゃー。モノ集めたり調べたりするのは得意分野だしな!」
開き直った感満載のボシュだが、実際これまで何やらを集めるミッションを幾度もこなして来た経験は伊達ではない。
「…。よろしいのでしょうか?」
「ええ。問題ありません。引き受けます」
不安そうなフォズに、サチは笑顔で頷いた。
・・・
早速、流星群が落下した付近にやって来た一行。
辺りを捜索してみると、何かの乗り物の残骸が散らばっている。
「これは、何かの車輪みたいね」
「馬車か何かか?」
しゃがみ込んで、その車輪らしき物体を眺めながら考え込む。
そこへ人の気配を感じて同時に顔を上げる面々。
そこには全体的にグレーの色調の、銀髪ロングをフードで覆った女性が立っていた。
「私の他にもこれを調べている人がいるなんて…。あなた達はこれが何か知っているの?」
「いいえ。あなたは分かるの?」
「あの流星群の原因が予想通りなら…」
そこで口を閉ざす女性。
すると突然車輪が光り出したではないか。
「何が起きてる?!」
「まだ燃えてるとか?あっぶな!触らなくて良かったっ」
「あなたが何かしたの?」
「いいえ。私にも分からない。ところであなた達、見たところ随分腕が立つようね」
「見ただけでそれが分かるアンタだって、相当だな!」
気を良くしたボシュが即答していた。
そんなボシュをチラリと見るも、女性の視線は再びサチに向く。
「少し私に付き合ってくれる?どうしても確認したい事があるの」
「それはいいけど、あなたは誰?」
「ごめんなさい、名乗るのが先ね。私はゼアルよ」
ここで皆が自己紹介する。
「行きましょうサチ。目指すはこの先の洞窟よ」
その足でやって来た洞窟にて。
そこには過去に世界を征服しようとした皇帝が封印されているのだとゼアルが説明する。
「そんな奴がいたのか。知らなかったな」
「世界征服したがる人が多いねー。あ、サチのダンナもだっけ?」
「はぁ?誰よそれ。私は独身ですっ」
「まあまあ…!落ち着いてサチ!リリ姉も、悪ノリは良くないよ?それであの、もしかして封印したのはゼアルさんなんですか?」
「ええ。倒し切れず封印するしかなかった、というのが実情だけれど」
「そんなに恐ろしい皇帝がここに…っ」
「封印した玄室はこの奥よ」
憤慨気味のサチが率先して先に進む。
「私の予感が正しければ、封印はもう…。急いでくれて助かるわ、サチ」
怒りに任せて早足になっているだけだが、それと気づかずゼアルが礼を述べた。
着いてみれば、そこはとても嫌な空気が立ち込めている。
「やはり封印が解かれている…。暗黒皇帝、ガナサダイ!」
『誰かと思えば、出来損ないの残りカスか!』
ゼアルの言葉を受けて現われたのは魔物だ。
マンモスのような角を頭の左右から生やし、赤いあごヒゲを生やしている。
『連れの者共々、死をくれてやる!まずは貴様だ、残りカスめ。忌々しい封印なぞで我が覇道を阻みおって!』
遥かな年月に募らせて来た怨念が、ガナサダイにさらなる力をもたらしていた。
魔物は唸りながらさらに姿を変える。
足は3本となり軟体動物のような体躯となった。
不意を突かれ放たれた攻撃がゼアルに向かっている。
気づいたサチは、瞬時にゼアルの前に立ちはだかって構えた。
「サチ!危ない、ダメ!」
それをさらに庇ったゼアルの動きは早かった。もろに攻撃を受けたのはゼアルだった。
「ううっ、あああ…っ!」
その場に倒れ込むゼアル。
「ゼアルっ、どうして…!」
『ふん。不敬共は仕損じたか。まだ新たな力を上手く操れぬわ。まあよい、空駆ける星は打ち砕いた。新たな力も手にした。今こそ魔帝国ガナン復活の時ぞ!フハハハハ!』
ガナサダイは高笑いして消え去った。
「ゼアルは大丈夫?!すぐに回復呪文を…っ」
「待てリリ姉。あんな攻撃もろに受けたら即死だ、回復じゃなくザオラ…」
ところがゼアルはムクリと起き上がったではないか。
ボシュは思わず言葉を止める。
「私なら心配いらないわ」
「良かったぁー、死んじゃうんじゃないかって心配したよぉっ」
アイミーが抱きつく。
「死んだりはしないわ。私は生きている限り死なないの」
「マジかよ…一体どんな体の構造してる?」
「もしかしてっ、そういう魔法があるの?それか武器のスキルとか?」
ケガすらしていないゼアルを前に、慌てて取り出した水晶を手に困惑するリリであった。
その時、新たな登場人物が現われた。
「そこにいるのは…サチさん?」
シェントと大賢者だ。
「え、久しぶりシェント!どうしてここに?」
聞けば先日の流星群が気になり、自主的に調査していたのだとか。
続けて宙に浮いた本が言う。
「キミ達がいるって事は、とんでもない事が起きたって事かぁ。詳しく聞かせてみなよ」
「散々な言い方されてますケド」
「でも、あながち間違ってもないんだよね」
サチが一連の事を説明すると、大賢者が結論付けた。
「きっとあの流れ星が、そのガナサダイ?が言ってた空駆ける星、なんだろうね。わざわざ壊したんだから、あったら困るものなんだよ」
「困るものねぇ」
「例えば、そこにガナサダイを倒せる何かが隠されていた、とかね」
こんなコメントに真っ先に反応したのはゼアルだ。
「それよ!それがあれば倒せる。そうすれば、私の旅もようやく…」
「まあ、いずれにしろその流星?散らばってた残骸を調べるしかなさそうだな」
「だわね。でもどうやって調べる?」
「星の事を調べるなら天文台じゃないの?」
という事で天文台に向かう事となった一行。
こんな単純な発想で良いのかと首を傾げつつ目的の場所へ。
どこか追い詰められた様子のゼアルに、サチがそっと声を掛ける。
それはいつも自分が言われている、一人で抱え込むなという意味を込めて。
「私達が出会えたのは何かの導きよ。一緒に倒そう、ゼアル」
「ありがとう。改めてよろしくお願いするわ」
「ところで、ガナサダイってどっかで聞いたような気がするんだよねぇ…むにゃむにゃ」
道中、大賢者がコックリコックリと居眠りを始める。
「とんでもない事が起きたって言う割にコレよ。変わらないね~この大賢者サマは!」
とうとう寝入ってしまった大賢者を、シェントがそっと抱えて進む。
「アンタ、よくそうやって文句も言わずにいられるよなぁ」
「うん?」
「短気な誰かさんとは違うんだよ」
「そうだよ、面倒見がいいんだよ。シェントさんて、兄妹とか多いんですか?」
「僕かい?兄妹はいないよ。一人っ子なんだ」
あっさり予想は外れた。謎多きシェントと大賢者であった。