旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

98 / 100
第97話:ガナン帝国の秘密

 

 

 分厚い本を抱えたシェントとやって来た天文台の書庫にて。

 

 

「ところで、流れ星はどんなモノだったの?」

「これよ」

 

 ゼアルがシェントに持って来ていた車輪を見せる。

 

「って、持って来てたのかよ!」

 

 

 現物があるなら調べるのも楽だと、シェントが必死に本棚と車輪の間を往復するのだが…。

 

 

「どこにも書いてないなぁ」

 

「ねむねむ…。今その車輪眺めてて思い出したんだけどさ、それ天の箱舟っていう乗り物の部品かもよ」

「お?起きたか、本」

「ホンって言うな!」

 

「いやだって、本以外の何者でもないぞ。なあ?」

 

 ボシュの発言に反応する者はない。

 

 

 皆、ただ首をひねって考えている。

 

「テンのハコブネ、最近どーっかで聞いたような」

「う~ん、確かに」

「ちっ。皆で無視かよ!だが、その船?に、あの化け物を倒す力なんてあんのか?」

「ボクは例えばって言ったからね?取りあえず、部品を集めて復元してみれば?」

 

「それがいい、そうしよう!」

 

 

 アイミーがさり気なくボシュに近づく。

 

「お兄ちゃん、自分から敵作ってる。気を付けた方がいいと思うよ」

「あ?んだよそれ。思った事言ったら悪いのかよ」

 

「あらあら兄妹ゲンカ?珍しー」

 

 

「おいサチ、お前もそう思うか」

「え、私?」

「今の聞こえてたんだろ。お前の考え聞かせてほしい」

 

「あらま。サチに意見を求めるなんて、どういう風の吹き回し?ボシュ君」

「うるせー!リリ姉は黙っててくれ」

 

 

「心外っ、アタシの方が人生の先輩なんですケド?」

 

 リリまでもが機嫌を損ねてしまった。

 

 

 それを見ていたサチが一言。

 

「私からはこれだけよ。口は災いの元。以上」

 

「って何だよ、つまりアイミーと同意見って事か!」

「ねえサチ、それアタシにも言ってる?」

「サチ…。さらに炎上したよ。ホント、災いの元だね」

 

 

 しばし険悪ムードとなるサチ達だが、そこはここまで苦楽を共にして来た間柄。長く引きずらない性格も相まって、いつの間にか仲直りしている。

 

 

 

 部品集めも終盤となると、大賢者の記憶も徐々にハッキリして来る。

 

 天の箱舟の構造が大体判明した。

 

 

「あ、あとさ、ガナサダイの事も思い出したよ」

 

 大抵寝てしまう大賢者だが、随所で的確なコメントを述べる姿に、皆いつしか期待するようになっていた。

 

 その語るところの暗黒皇帝ガナサダイ。

 その昔魔帝国ガナンを率いて、世界を征服しようとしていた元は人間だったそうな。

 

 

「そう言えばゼアル、キミはどうしてガナサダイと戦うの?」

 

「全てを終わらせるためよ。そう…全てを、終わらせるの」

 

「ふうーん…まあいいや。ガナサダイの居城に行ってみよう。倒すヒント、あるかもよ」

「それはどこにあるの?」

「ガナン帝国城なんだからガナン帝国だろ、考えなくても?」

 

「むっ」

 

「あっ、口は災いの元!」

「まあまあサチ、抑えて!で、それってどこよ?」

 

 

「帝国自体は滅びてるけど問題ない。ボクの魔法で大地に眠る城の記憶を呼び覚ますから」

「ガナン帝国城…あの忌まわしい城へ…」

「気が乗らない人がいるみたい。やめておく?ボクは別にどっちでもいいよ」

 

「いいえ。サチ、行きましょう」

 

 大賢者にではなくサチに言うゼアルであった。

 

 

「ゼアルさん、何か嫌な思い出とかあるのかなぁ」

「本人が行く気なんだから平気っしょ」

 

 

 

 

 

 そうして辿り着いた砂漠地帯。

 

 

「それじゃ、ここに宿る大昔の記憶を呼び覚ますよ…むにゃむにゃ…」

 

「おい、寝たんじゃねーよな?」

「どうだろ」

「少し待って動きがなければ声掛けよう」

 

 

 待つ事数分。たまり兼ねたボシュが口を開く。

 

「お…」

 

 

「えいっ!」

 

 大賢者が唐突に声を発した。

 すると目の前に不気味な城が見えて来たではないか。

 

 

「凄いっ、これって幻?」

「ちゃんと中に入れるよ。懐かしいなー!」

「懐かしいとは?」

 

「だってボク、元々はこの城の本棚にいたんだ」

 

 

「そうなの?!ビックリなんですケド!」

「それは初耳だね」

 

「マジかよシェント?その程度の仲なのか?」

「大賢者様は大抵寝ているからね。ほとんどプライベートな話はした事がないんだ」

 

「何か納得ー」

 

 

 

 早速向かった書庫にて。

 

 たくさんの蔵書を前にウキウキのシェントの方へ、見るからに禍々しい目玉の付いた分厚い本が近づいて行く。

 

 

「キサマ何者だ。イタズラに静謐を乱す事は、この悪魔の書が許さぬ!」

 

「わあっ、ゴメンなさい、あなたもしゃべる本なんですね」

 

 

 意外と冷静に応対するシェントに、本の魔物も怪しく思ったのかこんな事を尋ねて来た。

 

「あなたも?キサマ。吾輩の他に言の葉を操る本を知っているのか?」

 

 そう言われ、シェントは振り返って大賢者を呼ぶ。

 

「ねえ、この人…人じゃないか。知り合いかい?」

「むにゃむにゃ…知ってるような知らないような。覚える必要もなかったような?」

 

 

「キサマはっ!よくも抜け抜けと我の前に…仲間諸共討ち滅ぼしてくれる!」

 

 

「何だか分からないけど、凄く怒ってるよ。サチさん、どうしようか」

「無益な争いは避けたいけど、気が済むまで付き合おう」

 

 そんな訳で本と戦う事と相成った。

 

 

 そして当然あっさり勝利するサチ達。

 

 

「おのれ…。キサマから受けた屈辱を晴らす機会であったのに…無念」

 

 ドサリ、と音を立てて床に落ちた悪魔の書。

 

 

「何か可哀そうな事したかな…。大賢者、この人に昔何かしたの?」

「さあ。でも悪魔の書なんてタイトルなんだったら、きっと有害図書だよ。それよりガナン帝国の記録が載ってる本を探そう」

 

「そうね。探そう!」

 

 

 あっさり悪魔の書の話題は消え去り、運良く目当ての書物も見つかる。

 

 それを読み進めるうちに、悲しい歴史が明らかとなる。

 

 

「この地では、天使を生け捕りにしてその力を抽出していた、か…。でも天使なんて存在するのかな。作り話だよね?」

 

「いいえ。それは本当の事よ。今はいないけれど、天使は昔、存在した」

「神様が創り出したって聞きました」

「フォズさんにね」

 

 書物によれば、ガナン帝国は世界征服のために、天使達の力を兵士や魔物に与え力を増強していたとの事。

 

 

 沈黙を貫いていたゼアルが口を開いた。

 

「この国は滅ぶべくして滅んだ。だからその諸悪の根源たる皇帝も、滅ぼさなくてはならない」

「その言い方…。ゼアルさんとガナサダイ、どんな因縁があるの?」

 

 

「先に進みながら話しましょう」

 

 

 

 

 一行は書庫を出て地下へ足を向かわせる。

 

 

「地下ってのはどこも陰気クサいな」

 

「見て、牢屋だよ」

「ここに天使達が囚われていたのね」

「ねえ、壁に張り紙がある。この先実験室、関係者以外立ち入り禁止、だって」

 

「なら問題ない。ボクはこの城の元、蔵書。立派に関係者、いや関係書さ」

 

 

 表情の冴えないゼアルに気づき、アイミーが声を掛ける。

 

「大丈夫?無理してない?つらかったらやめようか」

「いいえ。過去と向き合ういい機会よ。私は目を背けない」

「ゼアル、事情は分からないけど、この先に何が待ち受けていても、私達は味方よ」

 

 サチも声掛けに加わりゼアルを気遣う。

 

 

「ありがとう…さあ行きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。