孫悟飯は全力で飛んでいた。気を全開にした舞空術でだが、ナメック星でドドリアというフリーザの側近から逃げていた時の方がまだマシな心境であった。
「ご、悟飯!」
そのドドリアから一緒に逃げて最後は機転を効かせ、逃げるのを成功させてくれたクリリンが自分の家の前にいたが、表情からしてどうなったかを察してたようだと悟飯は理解した。顔見知りが集まっていたが、全員が重い表情をしている。
「い、行ってやれ悟飯・・・・」
ヤムチャに促されて家に入ったが、万が一の希望が絶たれた光景があった。泣き崩れる母チチと、祖父牛魔王。悟空の師である亀仙人がベッドに近くに集まっていた。そして、ベッドの上にいる父は、もう病気で苦しむ声すら出さなくなっていたのだ。
「・・・・お父、さん」
【悟空は死んだ】
ウィルス性の心臓病だった。
一日前、急に苦しみだした悟空の為にブルマが連れて来てくれた医者から告げられのは、悟空が心臓病に掛かっていた事だったが、治療法が確立されていない類い。
念の為にもらっておいた仙豆も病気には効かなかった。
今日が峠だとして、全速力で地球に散らばるドラゴンボールを集めてシェンロンを呼び出したが、告げられたのは一言だけだった。
【手遅れだ・・・・孫悟空は、もう・・・・せめて会いに行くが良い・・・・】
それなりに悟空と付き合いが長いシェンロンからは重々しい一言を告げられた。
それぞれが悲しみを胸に過ごした。悟空打倒を目指していたベジータですら目標を無くしてブルマとの間に設けた息子トランクスの父親として過ごし始めてしまう有り様であった。
そして、三年後。
南の都の近くの島に二人の怪物が現れて、住民を虐殺していたニュースが報道され、都にまで被害が及んだ。
戦士達は現場に向かったが、二人の正体こそが悲劇の始まりだった。
【人造人間】
嘗て、悟空により壊滅させられたレッドリボン軍において狂人振りで知られる科学者ドクター・ゲロの産み出した人造人間だと面白半分で告げられた。尤もゲロは気に入らないから研究所もろとも消してやったと。
そして、戦いが始まったが。悟飯は見ているか間に合わないかのどちらかだった。
ピッコロが死んだ。
【気を探る事に慣れすぎていたのだ】
例えば、暴れていたのがフリーザだとしたら地球のどこにいても戦闘力がどの程度か推測は出来た。相手のパワーが初見でどれだけのものかわからなかった代償は大きかった。
ベジータ、ヤムチャ、天津飯、クリリン、餃子、ヤジロベーも死んだ。
悟飯に対して、本来殺すべき対象だった悟空の息子だからと期待したようだが、遊び相手にもならないとしてエネルギー弾が放たれた。悟飯は魔閃光で迎撃したが、一瞬押し留めるのが精一杯で、魔閃光を消し飛ばしたエネルギー弾の直撃を受けた。
【そして、爆発痕に残った悟飯の片腕を見て、それ以外は消し飛んだと誤解されたのが運命を分けた】
それから、約一年後。
半壊した病院で悟飯は目覚めた。
「・・・・こ、此処は?」
「あ、目が覚めたよ【ビーデル】!」
「そ、そう。気分はどう?」
「ぼ、僕は・・・・え?」
左腕が無い。心配そうに見詰めてくるビーデルという悟飯と同年代の少女が事情を説明してくれた。
壊滅した南の都の残骸の中で片腕が無くなる大怪我をしているのを発見されて運び込まれた悟飯は一年間も寝た切りだったと説明された後に名前を訪ねられたが、それも重大な要素となる。
「そ、孫悟飯です」
「・・・・孫悟飯。その名前は・・・・寝顔で気になってる人が結構いたし・・・・年齢も丁度。もしかして、貴方【孫悟空の息子】なの?」
悟飯は何故そう訪ねられるかを聞いた。
あの後に人造人間は各地で暴れ回った事。
ビーデルの父であるミスター・サタンは天下一武道会の優勝者であり、前回の大会優勝者である悟空の名も、その悟空が心臓病で死んでしまった事も知っていた。
そう言えば、大会で審判を勤めた男も悟空の葬式に駆け付けて涙を流していたと悟飯は思い出した。
サタンは周りに期待されて人造人間との戦いに赴いたが殺されてしまった。
お調子者であるが、身内やファンを心から大事にするチャンピオンとして慕われていたサタンの死は娘であるビーデルにもファンや弟子達に大きな影を落とした。逃げ延びたビーデルは学友達と一緒に医療班の手伝いをしていたのだとして、悟飯も自分の身の上を語った。
「・・・・そう、そんな事が。孫悟空さんと一緒に武道会に出たり試合した人達も皆、殺されちゃったんだ。武道会で審判やってたおじさんが言ってたよ。せめて、孫悟空さんが生きていればって・・・・ちょ、ちょっと!」
「僕は・・・・僕は【孫悟空の息子】だ。僕が、僕が・・・・アイツらを・・・・倒す!」
泣きながら録に動かない身体を起こして立ち上がるが、悟飯はまだ知らなかった。一年の間に自分にとって希望になり得る要素が全て無くなっていた事を。とにかく、一度家に帰るべきとしてビーデルに連れられて帰った。
「悟飯ちゃん!」
母であるチチは死んだと思っていた息子が帰って来た事を心底喜んだ。ブルマも丁度訪ねて来ていて有りのままを話した。
「良く生きてたわ・・・・」
「貴女がチチさん。あの第2・・・・ご、ごめんなさい!」
ビーデルが言う事はわかる。あの時、観衆の面前で結婚をしてしまった事は今もハッキリ覚えている。だが、今の現実との落差にチチは泣き崩れる。
「ぶ、ブルマさん。この一年で何が?」
そこから告げられた事は悟飯を更なる地獄に落とした。
カリン塔、その上にある神の神殿も人造人間に襲われて、カリン様。悟空に救われたウパとボラ、ミスター・ポポも死んだ。そして。
「西の都も滅茶苦茶にされて、父さんと母さんも殺されてしまった。私の家も研究所も壊されて、これじゃあナメック星の場所がわかっても行けない・・・・」
つまり、ナメック星に行ってドラゴンボールを人造人間対策に使わせてもらう手段を使えないのだ。
「うらないババもやられちゃったから、あの世から孫君を連れて来てもらって人造人間を倒してもらう手段も使えないわ・・・・」
「ぼ、僕が修行をして・・・・」
「無理よ。その身体じゃ、普通に動けるようになれるかどうかよ!」
「そう、無理よ!それに悟飯君が強くなれてもベジータやピッコロの強さに直ぐになれるってワケじゃないわ!なれたとしても話を聞いたら遊び半分な二人に殺されてたんでしょ!本気ならもっと強いハズよ、そんなん相手でどうする気よ!」
現実論に絶望する悟飯だが、やるべき事として近くの野山をビーデルに付き添われながらリハビリで歩き回る。
「く、くそおっ!くそおおっ!」
やはり、上手く動けない。驚異的な回復速度だが。片腕を失って仙豆やメディカルマシーンも使わず一年寝た切りの代償はサイヤ人でも甘くは無い、まだ問題がある。
「・・・・食事からして問題なのね」
簡単に言えば。悟空程ではないが悟飯も良く食べるのだが、一年間の間に食料すら満足に揃わなくなっている。これでは栄誉面からして悟空には追い付け無い。空腹にまで苦しめられてしまっている日々、何か無いのかとして藁にも縋る思いでビーデルは気付いた事を述べた。
「これが、世界地図よ。チェックしてある地は人造人間に襲われて壊滅状態。悟飯君、都合良い話だけど・・・・貴方のお父さんって、子供の頃にレッドリボンと戦ったりしてたようだけど、レッドリボンの何かとか力になってくれそうな人とかな場所を聞いた事は無い?」
「レッドリボン・・・・僕もそこまで詳しくは・・・・あっ!」
何か思い当たったのかとした時に悟飯はブルマに頼みに行った。
「ぶ、ブルマさん。飛行機に乗せて下さい。上手く行くかわからないけど・・・・」
「な、何よ。どうしたっての?」
「ここ、まだ破壊されていな場所の一つだけど見て下さい!【ジングル村】・・・・アイツらは自分達を人造人間の17号と18号と言ってましたけど、お父さんの言葉と僕の考えが正しければ【8号】に当たる人がいるって聞いた事があるんです!人造人間について、何かがわかるかも!」
その日、本来の歴史に抗う為の戦いが始まった。
書いたのに加えてな要素多数でビーデルがいるのが救い以外は詰んでいるかもな未来悟飯の反抗開始。