スキルレベルしか上がらない一般身体能力学生が迷宮に挑んだら 作:石田フビト
『ご乗車ありがとうごさいました。ラビリンス前、ラビリンス前でございます』
「……ふぅ」
駅を降り、ラビリンスへ着くまで約五分。
今の時刻が七時ちょっと前だから、閉まるのには少し猶予がある。
僕は扉の前でクラウチングの姿勢を取り、その瞬間を待った。
周りの人が動物園にいる珍獣を見るような目で見てくるが、関係ない。
今の僕は自由の王様だ。
恥など道端に捨ててきたぜ。
キィィ……。
電車の速度が下降し、慣性がかかる。
横向きに押された僕は当然のように、ゴロゴロと電車内を転がった。
「な、なんだとぉ……!?」
雨夜和幸、一生の不覚……!
やめて! 見ないで!
写真撮らないでぇ!
「ふ、ふぐぅっ」
しかしいつまでも転がっている僕ではない。
瞬時に姿勢を整えて、扉を抜ける。
そのまま爆走……は他の人に迷惑なので早歩きで進み。
素早く改札を出てから走り出した。
ラビリンスは入店?する時刻は七時までと決まっている。
しかし迷宮から帰ってくる冒険者はその限りではない。不測の事態で遅れることもあり、完全に締め切られるには猶予があるのだ。
なんとしてでも、間に合わせる……!
「ふっ、ふっ、ふっ」
見よ、この迷宮で鍛えられた美しきフォーム。
一ヶ月間スライムと走りあったことは、無駄じゃなかったんだ。
思い返される青春の思い出。
スライム君……元気にしてるかな。今度お土産に塩持っていこ。
「ぜひっ、はひっ、ぉえ、きっつ……!」
あまりに体力が無さすぎる!
畜生、ポーション持ってくればよかった!
最初の華麗なダッシュはどこへやら。
近所のおじいさんみたいなヒョロヒョロとした歩き方で、道路を右に曲がる。
もう少しで着く。
ここを真っすぐ行ったら、着く……!
「はぁ、はぁ……」
帰宅するのか、ラビリンスから出てきた冒険者らしき通行人が、僕の顔を見てビクッとする。
汗だくでごめんなさいね。
気を付けてお帰りを。
家を出たときの爽快感は無く、体が酷く重い。
なんなら電車に揺られているときから重かった。
やはり人間、心だけじゃ何ともならないことがあるのだ。
「……でも、まぁ」
間に合ったことだし、万事ヨシとしようかな。
僕はラビリンスの自動ドアをくぐり、エントランスへと足を進めた。
見れば店仕舞いをしている所が沢山ある。
まぁ、そりゃそうか。こんな時間だものね。
……ほんの少しだけ気になって、左を向いた。
確かここは『みつみつポーション』が開いていたはずだが……。
「ひひっ……ひひひっ……」
「……」
よかった、ちゃんと閉店してて。
虚ろな目で痙攣しながら、ポーションを口から零している美月さんとかいなくて、本当によかった。
僕は若干歩く速度を上げて、自分がさも雨夜じゃないですよと言わんばかりの顔で通り抜けた。
美月さん……強く生きて。
「はぁ、はぁ……」
受付所へと繋がる長い通路を歩き、頭の中で文章を考える。
最初は……まずごめんなさいして。
次に、どうしてあんなことをしたのか言って。
次にもう一回謝罪して。
それで、それで……。
「……いや」
事前に作成した言葉を並べるだけじゃ意味がない。
僕の本当の言葉で、素直に言うべきだ。
たとえそれで嫌われてもいい。
いや、よくはないけど。
母さんの言ってくれたことを信じてみる。
今でも自分が優しいなんて思えないけど……母さんが信じてくれた僕を、僕は信じてみたいのだ。
「あ……」
通路を抜けた先に、白い施設が広がった。
そして視線を巡らせ……そこには、彼女がいた。いてくれた。
「よかった……まだ、帰ってなかった……」
一安心して息を吐く。
これで既に帰宅済みですとか言われたら、今度こそ一週間は寝込むところであった。
しかし時間に猶予はない。
本来なら就業時間は過ぎているはずなのだ。
僕は今一度前を向き、ポータルへ向けて歩き出した。
「……ぅ」
三、四歩程度歩いたときか。
ポータルの横で立っている空色の髪をした女性。メリアさんがこっちを向いた。
……いや、早い!
気まずいよ流石に! そんなにじっと見つめないでよ!
「……」
「……」
どうしよう、今すぐに帰りたい。
まさかこんなにも早く補足されるとは。いや別に隠れていたわけじゃないけど。
もう少し、心の準備というか。
「……すぅ、ふぅ」
落ち着け、僕。
まだメリアさんが「うわ、また来たよこいつ」みたいな顔をしていないだけ、いいじゃないか。
焦る必要はない。
歩く速度は一定に、少しずつ距離を詰めていく。
ゆっくりと慎重に。
やがて僕は、いつも話している位置まで近づいた。
今こそ謝るべきだ。
口を開こうとして、しかしその前にメリアさんが言葉を放った。
「どうされましたか、雨夜様。何かお忘れ物や、緊急の御用がありましたか?」
「あ、いえ。……あ、その、用は、あるんですけど」
「そうですか。それでは、用とは何ですか?」
「……あの、えっと……」
……話している感じ、彼女が僕に対して怒りを覚えている様子は、ない。
もしかすれば、謝る必要はないんじゃないか?
寧ろ話をぶり返すほうが失礼なんじゃ……。
『和幸は和幸のしたいように、生きたいように生きればいいの』
「……」
「……雨夜様?」
……うん。
もういいや。色々と考えるのはやめだ。
僕は僕のしたいように、言ってやる。
「メリアさん、僕は貴女に謝らなければなりません」
「謝る……私に、ですか?」
「はい。メリアさんにしてしまったこと、ちゃんと謝らせてください」
「……?」
彼女は意図が分からぬといった様子で、首を少し傾げる。
本当にやさしい人だ。
あんなことをしたのに、怒っていないフリをしてくれるなんて。
だからこそ僕は謝罪しないといけない。
彼女と今後仲良くするためにも、絶対に。
「今日……メリアさんに僕、暴力を振るってしまいましたよね。本当にすみません。謝って、許されることじゃないんですが……」
「……暴力?」
「いいんです、メリアさん。そんな風にとぼけなくても。僕はちゃんと、罪を受け入れるつもりです」
「……???」
なおも首を傾げるメリアさん。
あぁ、全く。この人の懐の広さは太平洋並みだな。
一生ついていきます。
そんなことを考えていると、どこかで噴き出すような笑いが聞こえた気がした。
こう、ぶふって感じで。
何か面白いことがあったのかな。
まぁ、いいや。
「メリアさん。僕は貴方に……くっ。あろうことか、デコピンを……!」
「……。……? ……演算終了。成程、大まかに理解はできました。雨夜様は、本日のあれについて話していたのですね」
「そうです……僕はメリアさんに、あんな酷いことを……!」
「……相互に多大なる齟齬が存在するようですが、今は置いておきましょう」
多大なる……なんて?
あんまり難しい言葉を使わないでください、メリアさん。
目の前にいる人間はチンパンジーより少し賢いぐらいの知能なんですから。
「雨夜様、私は先の行動に対して何の……否、これは俗に言う『こーかんどちゃんす』というものでは……? しかし雨夜様が苦しんでおられる……今後のためにも、下手な行動は……」
「……め、メリアさん? あの、大丈夫ですか?」
「はい、問題ありません。もう一度申し上げますが、私は先の行動に対して何の――」
「その、本当にごめんなさい。えと、僕、
「私は酷く傷付きました。今すぐに罪を償ってください」
「はいっ、勿論です!」
くっ……!
やっぱりメリアさん、凄く怒ってるなぁ。何か言いかけてた気もするけど、たぶん罵倒とかだったんだろう。
善良で真面目な彼女を傷付けるなんて……ほんと、最低だ。
僕にできることなら、何だってしてあげたい。
それが唯一の償いになるのだろうから。
「言ってください。どうしたら、僕を許してくれますか?」
「……先程、何でもすると言いましたね」
「はい。僕にできることなら、全力で」
「本当ですね?」
「本当です」
「信じてよいですね?」
「こんな僕の言葉じゃ信用できないかもしれませんが、僕は本当に罪を……!」
「そういうのは必要ないです。嘘じゃないかどうかだけ答えてください」
「あ、はい。嘘じゃないです」
ふむ、と無表情ながらに頷く彼女。
その冷たい表情の中に、どれだけの憤怒が詰まっているのだろう。
今更になって恐ろしくなってきた。
どうしよう……流石に、死ねとか言われないよね。
腕一本とかなら、たぶんまた生えるからいいんだけど。
そうして、暫くの時間が経ち。
考えがまとまったのか、メリアさんが綺麗な瞳を僕に向けて、口を開いた。
さあ、来い……!
どんなことでも、僕は全力で叶えてみせる……!
「それでは、雨夜様。私にハグをしてください」
「任せてください! 僕はメリアさんに、ハグ、を……」
……?
「……あぁ、『剥ぐ』ね! 僕の爪とかを剥ぐってことですか。分かりました、今刀を持って……」
「いえ、違います。抱擁の方です。私を抱きしめてください、と言い換えましょう」
「……ほぇ?」
抱きしめ……抱擁……。
うん、なんで??
「早くしてください。私は酷く傷付いています。今にも雨夜様の指を当てられた部分が割れそうです」
「うぇえっ? そ、そんなに強くデコピンしてましたっ?」
「はい。故にハグをしてください」
「それはおかしい」
方程式が成り立ってないよ。
だって、ハグって、えぇ? おかしいでしょ。
それ、罪を償うとかじゃなくない?
「おかしくなどありません。男女のハグが拷問の一種だということは、古来より定まっていることです」
「異世界から転生してきたんですか、メリアさん?」
「……雨夜様、先程おっしゃった内容をお忘れですか。貴方は私に対し、自分のできることをすると言ったのですよ」
「い、言いましたけど……」
「であれば、こちらが提示した罰に対し、異存を唱える権利は貴方にはありません。違いますか?」
「一から十までその通りです」
一切の反論を封じ込まれる。
何でもすると言ったのは僕だ。いやしかし、しかしだなぁ……。
「……あの、メリアさん。少しだけ、僕の話を聞いてくれますか」
「抱きしめている間だけ、聞きましょう」
「……」
やだこの人隙がない。
うーん、あー、うぐぅ。
……やるしかない、か。
「では、えと、失礼します……」
「ん……」
慎重に、極めて慎重に腕を彼女の背中に回す。
これでハグ判定にならないかな、と思った矢先。
メリアさんが距離を詰めて、胸に顔を押し付けてきた。
うわ、うわ、うわ!
体ちっちゃ! いい匂い! 髪サラサラ! 可愛い!
「やばいやばいやばいこれやばいぃ……」
「……すぅ、はぁ」
深呼吸しないでくださいぃ……。
この天国のような地獄の状況。
唯一の救いがあるとすれば、他の冒険者がほとんどいないということか。
いやでも他のポータルの受付嬢さんとかいるし!
ていうか何人かこっち見てるし!
お願いだから見ないでぇ……!
「ん……」
「ひぃっ。動かないでくださいぃ……スリスリしちゃらめぇ……」
「……すんすん」
「嗅ぐのもらめなのぉ……」
頭の中がパニックになる。
確かにこれはある種の拷問といえるが、メリアさん側にメリットが無さすぎないか?
ていうかいつまでやるんだこれ。
うひぃ、早く終わってくんなましぃ。
「ふむ……それで、話とは何だったのでしょうか」
「あ」
そうじゃん、ハグしながら話すっていう約束だったじゃんね。
つまり話し終えれば解放される?
僕はメリアさんの顔を見て、いや近いなこれやっぱ駄目だ。
少し顔を逸らして、話した。
僕がデコピンをした理由。そして真なる罪の告解を。
「僕は……あのとき。覚えて、いますかね。メリアさんが、その……罰とかどうとか言ってたとき」
「はい、記憶しております」
「その時……少しだけ、えと。コートを、なんというか。はだけさせた……みたいな」
「そうですね」
「僕はあれを見て……あ、あれを見て……」
顔から火が出そうだ。
それは彼女を抱きしめているからという理由もあるが、何よりこれから話す内容の、羞恥によるものだった。
「僕は……貴女に邪な感情を抱きました。そればかりか、暴力も振るってしまって。ごめんなさい。本当に、ごめんなさい」
「そうですか」
「……そ、そうですかって」
あまりに淡々とした対応。
その姿に、またもやヘドロのような黒い何かが溢れ出す。
「気持ち悪いとは思わないんですか。こんな、僕なんかの汚い欲望を向けられて。意味も分からず、暴力を受けて。嫌だとは思わないんですか」
「特に忌避感は覚えません。雨夜様が何を感じようと、それは貴方の自由ですので」
「っ……」
僕の自由? メリアさんを気持ちの悪い目で見たことが?
あろうことか、デコピンをしたことが?
そんなはずがない。
そんなの、許されるはずがない。許していいわけがない。
「もっと危機感を持ってください。貴女は女性なんですよ? もし襲われたらどうするんですかっ」
「望むところです」
「へ?」
「……間違えました。私の戦闘能力は貴方よりも高いレベルにあります。その心配は、無用でしょう」
「……」
そういうことじゃ、ないんだ。
くそ、僕は何が言いたい。何を伝えたい。
頭の中がぐちゃぐちゃになって、考えがまとまらないまま口を開く。
「違うんです。メリアさん、そうではなくて」
「何が違うのでしょうか」
「……っ」
純粋無垢な視線。どうしてそんな目で僕を見つめる。
僕は、僕は……。
「もっと自分の体を、大切にしてください」
「……私の、体を?」
「安売りをしちゃ、駄目なんです。貴女は本当に綺麗で、尊敬できる人だから。こんな僕なんか、許しちゃいけません。貴女を汚す全てを、許さないでください」
「……」
「……でも、僕は。それでも貴女に許してほしくて。駄目なのに、もしかしたらと思ってしまって、ここに来ました」
垂れ流される言葉。それはきっと僕の本音で。
そして何よりも醜い、剥き出しの感情だった。
「ごめんなさい……こんな、勝手なことを言って」
「……」
許すなと、相手に強制する。
だのに許してほしいと宣う。
その言葉がどれほど罪深いことか。
だからこそ、僕は謝るべきだった。僕の罪を告解すべきだった。
「……雨夜様」
「……なんですか、メリアさん?」
……嫌われただろうな。
こんな身勝手な男、誰が関わりたいと思うんだ。
今度こそさようならだ。
さようなら、僕の初めての友人……。
「大変申し訳ないのですが、『貴女は本当に綺麗で』あたりから聞いてませんでした。もう一度言っていただけますか?」
「嘘でしょ?」
一世一代の罪の告解を、聞きそびれちゃったの?
あれをもう一回言うのはなんというか……えぇ……。
「すみません、冗談です」
「……ほんと御冗談がお上手になられましたねぇ」
「ありがとうございます」
「褒めてませんよ?」
なんか、力が抜けるなぁ。
「……雨夜様がおっしゃりたいことは、理解しました。つまり貴方は、私を性的な目で見たくないということですね?」
「せっ……まぁ、そうですけど」
「加えて、私の体を安売りしてほしくないと」
「それは本当に僕の願望で。どうすべきかは、メリアさんの自由、ですけども……」
「ではもし私が、雨夜様に性的な目で見てほしいと言った場合、どうしますか?」
表情は変わらぬまま、メリアさんは平然と爆弾を投下した。
「……それも冗談だったり?」
「真剣だと、仮定してください」
「えぇ……うーんと、それは……」
ぐるぐると思考を回しても答えは出ない。
メリアさんが、性的な目で見てほしい? そんなの駄目だろう。失礼すぎる。
でもそれが彼女の願いだった場合、僕はどっちを取ればいいんだ。
自分の願望か、彼女の願望か。
優先すべきはどっちだ。
僕は、どっちを選べばいい。
パンクしそうになる頭が、鈍い痛みを発し始めたころ。
ふと、腕の中にあった体温が消えた。
「……情報収集完了。大体理解できました。先の質問を答える必要はありません」
「あ、えっと」
「これにて罪を赦します。他に用件はありますか?」
「え、あの、許されたんですか? 僕の話聞いてましたよね。僕は、メリアさんに」
「それを込みで赦します。ハグをしていただいたので」
「ハグかぁ……」
僕が知らないだけで、日本の裁判での極刑はハグだったりするんだろうか。
寧ろ犯罪者数増えそうだけど。
「……本当に、もう怒ってませんか?」
「初めから怒りという感情はありません。気にせず、またお越しください」
「でも……」
「……一つ、雨夜様専属サポーターとして助言を致します」
「はい……はい?」
何か意味不明なことを言わなかったか、今。
気のせいかな。気のせいかも。
僕は気を取り直して、彼女の言葉に傾聴した。
「分析したところ、貴方は類を見ないほどのコミュニケーション不足が見受けられます。恐らくですが、友人という存在が人生でいなかったのでは?」
「ぐはぁっ。……そ、その通りです」
「それが今回の結果に繋がったのです。貴方はあまりにも、誰かと話す経験が少なすぎる」
「うっ、確かに」
僕がもっと口が達者だったり、スマートな対応ができたりしていたら、あんなデコピンなんて結果にはならなかっただろう。
やはり僕は人と関われないのか。
ぐすん。
「……そこで提案なのですが。今後こういったことが起きないよう、私と会話することで経験を積むというのは……いかがでしょうか」
「え!? い、いいんですか!?」
「はい。私は職業柄、ここで立っているだけですので。そこで偶然、たまたま、独り言に反応した。という形で特訓をいたしましょう」
「……で、でも。これ以上メリアさんに迷惑をかけるわけには」
「他に友人はいらっしゃるんですか?」
「いませぇん……!」
僕の言葉にメリアさんは一つ頷き、「それならば」と言って両手を広げた。
それは正しく……信者を救う、天使のように。
「私が貴方を、一人前のお喋りマスターにして差し上げます。誰も傷付けることがないように……私が、教育いたします」
「……ありがとうございます。ありがとうございますぅ……」
くっ、涙で前が見えないっ。
これが本当の天使の姿なのか。
朽葉さんは女神だったけど、メリアさんは天使だったんだな。
どうしよう、ラビリンス内だけで天地創造が起こってるよ。
早く伝道者にならなきゃ……。
「……これからもよろしくお願いしますね、雨夜様」
「はいっ! メリア先生!」
「良い返事ですね。しかし、今日はもう遅いです。本格的な練習は、まだ次回ということにしましょう」
「あ、ほんとだ……」
気付けば時刻は七時半を迎えようとしていた。
いつの間にこんな時間が……。
「えと……では、また来ます。今日は本当にありがとうございました。あと、すみませんでした」
「構いません。雨夜様を支え、サポートするのが私の役目ですから」
「……ありがとうございます。本当に、メリアさんと出会えてよかったです」
僕は深く一礼をして、踵を返した。
本当は朽葉さんにも謝罪をしたかったが、どうやらもう帰宅したそうで見当たらなかった。
できれば、彼女にも謝りたい。
今度はちゃんとした罰が受けれたらいいな。ドМじゃないけど。
「……とうに、不器用な人ですね……」
「……? すみません、何か言いましたか?」
メリアさんの声が聞こえた気がして振り返る。
「いえ。お気をつけてお帰りを」
「あ、はい。メリアさんも、お気をつけて」
小さく手を振って、再度踵を返す。
メリアさんとは会話の特訓の約束もしてもらったし、頑張らないとな。
目指せ、友達百人!
僕は心に新たな火を灯し、そのまま意気揚々と通路を抜けて。
まるでゾンビのような呻き声を上げる妖怪ポーション売りを無視し、ラビリンスを出た。