さて、またもややって来た柴崎ラーメン。
怒っているアヤネを落ち着かせるため、ノノミやホシノがアヤネのご機嫌とりをする。まあ、癇癪を起こしている小学校低学年への対応のような感じではあるが。
ちなみに、俺は皆と距離を置いたカウンター席に座っている。今回は場所を取ることが出来なかったためだ。
すると、ラーメン屋の扉が開く。扉を開けたのは見るからにオドオドした生徒だった。
…どこの…生徒なんだ?
「あ...あのう...」
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
まだバイト中のセリカが対応をしている。
「こ、ここで一番安いメニューって、お、おいくらですか...?」
「580円の紫関ラーメンです!看板メニューなので、美味しいですよ!」
「あ、ありがとうございます!」
そう言うと、彼女は店の外へ飛び出した。セリカが戸惑っていると、扉から四人の客が入ってくる
「えへへっ、やっと見つかった、600円以下のメニュー!」
「ふふふ。ほら、何事にも解決策はあるのよ。全部想定内だわ。」
「さ、さすが社長...」
「はあ...」
俺はその子達を少し観察していたが、やがてラーメンが運ばれてきたことで食べることに集中した。
…その後、大将が『誤って』特盛にしてしまったラーメンを、皆で仲良く食べていたが、俺が目を離したうちに、何故かノノミ達と仲良くなっており、コミュ力高いな…と俺は密かに感じた…
「あ、そうだ!アゼス君!」
…ノノミが呼びかけてきた…が、俺は聞こえないふりをして無視する…めちゃくちゃめんどくさそうだからだ…
この会話に入ると面倒事がある気がする…そんな予感がしたからだ…
「お〜い、アゼス〜。給料半分にしちゃうぞ〜!?」
「それはそれで俺が辞めればいいだけだろ」
「えっ!?」
「冗談だ」
先生と適当な会話を交わし、スマホをポケットに突っ込み、カウンター席から立ち上がる。そして諦めてノノミ達の元へと歩み寄った。
「んで…ノノミ…何のようだ?」
ノノミはぺかーっと笑い、
「皆で仲良くなろう、ということでして…アゼス君にも自己紹介していただこうかと!」
「何で俺も?」
純粋な疑問をノノミに投げかけると、今度はホシノが答えた。
「うへ、アゼス君はここで唯一の男子生徒だからね〜。自己紹介のインパクトとしては、抜群ってわけだよ。」
「…そういうものか…」
「うんうん、そういうものなのだよ〜」
先生に目線で助け舟を送るが、首を横に振られる…どうやら、俺をここから助け出すつもりはないようだ。
俺は4人組の知らない生徒たちに向き直る。
「はぁ…あ〜、俺は下神アゼス。アゼスでいい。今は先生の補佐をやっている。よろしく。」
…無難な自己紹介なのではなかろうか。
そしてあちらも自己紹介をしてくれた。
陸八魔アル・浅黄ムツキ・鬼方カヨコ・伊草ハルカ、という名前らしい。気軽に名前で呼んでほしい、これからよろしく、ということだ。
「補佐…ふむふむ…ムツキあたりかしら…カッコいいわね!アウトローっぽくて」
「…そうか…」
…俺とアルが話しているとき、アル以外の奴らは離れて何か話しているようだったが、まあそこまで気にしなくていいだろう。
「…あれ、男の子…だよね…もしかして…アビドス高校の生徒さんたちなのかな…?」
「…そうだろうね…残ってたヘルメット団からの情報提供もあったし…どうする?社長に伝える?」
「いや、言わないでおこう!面白そうだしね〜」
「…はぁ…」
どうやらアルたちには仕事があるらしく、このままずっと喋るわけにもいかないのでラーメンを先生が食べ終わったあたりで惜しみつつ解散となった。
ちなみに、俺はアル達のラーメンを奢っておいた。もちろんバレないようにだが。なお、先生が奢ったと勘違いさせるように仕向けておいた。
そのまま全員で学校に戻り、雑談をしていたのだが、突然アヤネから報告が入る。
「大規模な兵力を確認!」
「まさか、ヘルメット団が?」
…恐らく違うだろう。あの俺達の襲撃により、ヘルメット団はほぼ壊滅状態に陥っているはずだ。この短期間で立て直し、かつこちらに先生がいるのにも関わらず襲ってくるとは思えない。ということは、別のナニカだろう。
とりあえず考えるのをやめ、俺達は迎撃態勢に入る。
校門で待ち構えている俺達の目の前に、大人数のヘルメットを被った少女たちが現れる
「前方に傭兵を率いている集団を確認!」
「あれ......ラーメン屋さんの......?」
先頭の少女は苦しそうにつぶやく
「ぐ、ぐぐっ......。」
そこには、柴崎ラーメンで店長にラーメンをご馳走してもらい、俺達と交友を深めた生徒…アル、ムツキ、カヨコ、ハルカだった…ああ、なるほどね…
「誰かと思えばあんたたちだったのね!!ラーメンも無料で特盛にしてあげたのに、この恩知らず!!」
「アハハ、ごめんごめん。けど、それはそれ、これはこれ。こっちも仕事でさ」
「残念だけど、公私はハッキリ区別しないと。受けた仕事はきっちりこなす。」
…俺はアル達の周り…俺達を取り囲んでいる傭兵達を見る。なるほど、相当な人数だ。この傭兵達を集めるために金をかなり持っていかれたことにより、ラーメンを一杯しか頼まなかったのか…
要するに、金欠だろう。学生で金欠は珍しいことでもないが、こんな用途で金欠になるのは、流石キヴォトスといったところか…
…戦闘が始まった…ホシノが前線、シロコが中盤のサポートかつ射撃。ノノミと俺は後方で基本的にサポートに回っていた。
戦闘と言っても、先生の的確な指示のおかげで、一人一人はそこまで苦戦はしなかった。ただ…
「…とにかく数が多いな…」
そう、とにかく多いのだ。倒しても倒しても湧いて出てくる。打開策はないか考えてはみるが、ペルソナ以外は思い浮かばない。まあ、今使うと面倒なので使わないが。…どうする…
そう、考えていたからだった。俺は遠方からの銃撃に対して注意をそらしてしまっていた。その銃弾が俺の隣のノノミに向かう。
ノノミの前に立ち、剣を構える。
「…あ、アゼス君?」
ノノミの戸惑った声にちらりと目をやるが、直に意識を銃弾に向ける。…銃弾の数は…15。全然対処はできる量だ。深呼吸をして息を整える。ノノミに当たらないように、銃弾を切り裂くのではなく、そっと横に添えるように銃弾の道を作る。一個一個確実に…全て終える。
「あ、ありがとうございます!アゼス君!」
「気にするな、当たり前のことをしただけだ…」
…こっちへの脅威はもう特になさそうだ…
「えええっ!?何よアレ!?」
「…あれ…?私の見間違い…ん…?」
「…アハッ…すご…」
「…あ、あの…ど、どうしましょう…」
…アル達便利屋はアゼスの剣術に舌を巻いていた…いや、便利屋だけではない。傭兵や味方陣営も全員がアゼスの技術に脱帽していた…
「え…カッコよ…てか、あれ男子!?何で!?」
「…ん、すごい技術…」
「うへ…頼もしい限りだなあ…」
さて、後はホシノ達が前線で押しているのをサポートするだけだ…が、数が多すぎるな…
…先生も悩んでいるようだ…
と、瞬間、学校のチャイムが鳴り響く
「...あ、定時だ。」
傭兵の一人が言うと、傭兵全員が帰り出す。
「は、はあ!?ちょ、ちょっと待ってよ!!」
アルは必死で止めようとするが、その制止も虚しく、悲痛に叫ぶかつての雇い主の声を完全に無視し帰っていった。
「こらー!!ちょっ、どういうことよ!?ちょっと!帰っちゃダメ!!」
「......。」
「こりゃヤバいね。まさかこの時間まで決着がつかないなんて...アルちゃん?どうする?続ける?」
「あ、うう...。」
完全に狼狽している便利屋達。
「で、お前達はどうするんだ?」
「う、うるさいわね!!」
アルは顔を真っ赤にしながら拳を握る。
「ま、まだ私たちがいるでしょ!?便利屋68は四人でも十分やれるってところ、見せてやるわよ!」
カヨコが静かにため息をつく。
「……戦力差は明白。ここで引いておいたほうがいいと思うけど…」
「で、でも……ここで引いたら、社長としての威厳が…」
さっきまで余裕ぶっていたが、今は明らかに焦っている。
金欠で傭兵を雇い、定時で帰られ、作戦は崩壊。
……かわいそうだと思った…
「……アル」
「な、なによ!」
銃を構えながらやけに噛みついてくるアル。動揺しているのか、周りが見えていないようだ。周りの目が光るのを感じた。
「今回は引け」
「はぁ!?あなたに命令される筋合い――」
「さっきラーメンを奢ったのは誰だ?」
「っ……!」
先生が払ったことにしてあるが、それでも特に意味合いは変わらないため、そのまま続ける。
「…その恩に応じてここは引いてくれ。めんどくさいからな。俺も知人と戦いたくはない。」
「んぐ…」
言葉に詰まるアル。そして、決意を固めたように叫ぶ。
「こ、これで終わったと思わない事ね!!」
と、捨て台詞を吐いて逃げ出すアル…あれだけ自信満々に攻めてきて、襲撃を仕掛けて来た者がその言葉を言うのは…
「…下っ端悪役かよ」
俺は誰にも聞き取られないようにそう呟き、アビドス校舎に戻った。それなりに時間がかかったが、体を動かすことはできたのでまあ良しとしよう。剣の腕はまだ鈍っていないようだ。
翌日、俺、先生、アヤネの組み合わせで学校に向かう最中、今日が利息返済日ということで、早めに登校しているアヤネと会ったのだが、そこに横から便利屋の一人であるムツキがやってきたのだ。
「アゼス君、だったよね、あの剣術はどこで習ったの?」
…前世の記憶とは言えないな…
「我流だ。まあ、他の流派から取り入れている部分もあるが。」
「へぇ〜。すごーい!またあの剣術見せてよ!」
「暇ならな」
フレンドリーな態度で詰めてくるムツキ。
どうやら向こうは、仕事外ではアビドスと仲良くしたいらしく、アヤネはそれに対して「今さら公私を区別しようということですか!?」と怒っていたが、まあ落ち着きなさいと先生が宥めて、少し話しているわけだ。
「先生バイバーイ。アヤネちゃんアゼスもまた今度ね」
「また今度なんてありません!!今度会ったらその場で撃ちます!」
「…またな」
「バイバーイ!」
俺と先生は軽く手を振ってムツキを送り出した。が、俺達とは対称的に怒った様子のアヤネから質問される。
「先生は、何で昨日戦った相手と仲良くできるんですか!?」
「…そうだなぁ…それが先生ってものなんだよ…」
…この人は本当に優しい人だな…
「意味が分かりません!」
…アヤネの意見も、まあ至極真っ当ではある…が、先生という立場上、どちらかに肩入れすることはできないし、先生の性格上、それをすることも出来ないだろうな
その後、怒るアヤネを宥めながら学校に行き、会議が始まった。
議題は二つ、一つは昨日の襲撃事件の主犯「便利屋68」について。
どうやらゲヘナの部活の一つらしく、色々と悪いことをやっている問題児らしい。次にあったら問答無用で攻撃し、取り調べをする、ということで落ち着いた。
次にヘルメット団の裏にいると思われる、黒幕について。
戦車のパーツをより詳しく調べたところ、どうやらそれは「ブラックマーケット」という場所でしか手に入らないものだったとわかった。
と、いうわけで
「ブラックマーケットを、調べるわよ!!」
という結論になったのであった。
アヤネだけサポート係として置いていき、俺たちはブラックマーケットへ向かうこととなった。
風紀委員会に襲撃された時のシナリオが頭に思い浮かぶかもしれないかも