神話使いの男子生徒   作:ok.ko

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タイトルに特に意味はありません。


color your night

俺達は、ブラックマーケットに到着した。

相変わらず、賑わっている…出来ればあまり賑わっていて欲しくはなかったが。正直、うるさいところは苦手だからな…

 

俺達はブラックマーケットをブラブラと歩いていく。色々と表では販売されていないような商品がズラーっと並んでいる。が、お目当てのものはなかなか見つからない。まあ、そうやすやすと見つかるとも思ってはいなかったが。

 

「ホシノ先輩、ここに来たことあるの?」

 

「いんやー、私も初めてだねー、でも他の学区には、へんちくりんなものがたくさんあるんだってさー。ちょーでっかい水族館もあるんだって!アクアリウムっていうの!」

 

そういや、他の学校とかほぼ行ったことないな…いつか行ってみようか…

 

と、呑気に考えていると

 

「う、うわああ!まずっ、まずいですー!!つ、ついてこないでくださいー!」

 

…何やら、聞き覚えのある声が聞こえた… 

 

声が聞こえた方向を振り返ると、見覚えのある生徒が不良に追われてるようだった…またお前かよ…

 

「悪い、皆。少し席を外す。」

 

「あ、アゼス?」

 

驚いている先生達を残し、俺は逃げている生徒の前に立ち、声を掛ける。

 

「よう、阿慈谷。久しぶり…か…?」

 

「…へ?…あ、アゼス君!?」

 

驚いたような表情を見せる阿慈谷。まあ、それもそうだろう。唐突にこんなところで見知った顔が現れたのだから。

 

「…おい、お前。」

 

「ふ、ふぁいっ。」

 

「何でここにいる…?」

 

俺が質問すると、阿慈谷は顔を少し青ざめさせながら恐る恐る口を開く…別に取って食おうってわけじゃないのにな…

 

「あ、ああああの…」

 

「なんで、『また』ここに居て、何で『また』走って逃げてるんだ?阿慈谷」

 

「あ、あぅ…」

 

俺が阿慈谷に少し質問していると、恐らく阿慈谷を追っていたであろう不良が向かってきた。

…何故ホッとしたような、残念そうな顔をしてるんだコイツは

 

「あ、おい!いたぞ!トリニティのお嬢様だ!って、なんだ?あんたら。もしかして同業者か?ならいっしょにこいつを誘拐しちまおうぜ!」

 

何を勘違いしたのか、俺とついてきていた先生達を見て、そう声を掛けてきた不良達。

その言葉に俺は表情を変えることはなく、淡々と口を開く。

 

「…コイツを攫ってどうする気だ?」

 

「あ?コイツを人質にして、身代金をもらうんだよ!もちろん、たんまりとな。どうだ、いいアイデアだろ?」

 

その言葉に顔をさらに青ざめさせる阿慈谷。

俺に回答を求めてくるかのような不良達の視線…

もちろん、答えは…

 

「…ああ、そうだな…」

 

「おっ、アンタも乗り気に…」

 

その言葉が終わる前に俺は懐にしまっていたピストルを取り出し、阿慈谷を抱えて不良の額に一発撃ち込む。

唐突な一撃を対処することができず、そいつは気絶した。

あまりの急展開に、辺りは呆然としているが、俺は構わず話し続ける。

 

「これ以上汚い口を開くな…反吐が出る…」

 

戦闘が始まった。

 

といっても、いつもの先生の超絶技巧な指示と、傭兵を相手にして撃退した俺達+阿慈谷を加えた俺達の蹂躙であった…

あの便利屋襲撃から、先生の指示はさらに磨きかかっているような気がする。

ちなみに俺は特に何もしていない。いつも通り相手の銃弾をたまに前線に来た時に切ったりはしていたが、まあ、それは何時ものことだからな。

 

「ん、制圧完了。」

 

シロコが勝利宣言をする…まあ、かなりの数を倒したし、大体の奴は逃げているから、勝ったということでいいだろう。

 

 

「あ、ありがとうございました。皆さんがいなければ、学園に迷惑を…自己紹介をさせていただきます!

トリニティ総合学園の二年生、阿慈谷ヒフミです!部活は特に入っていません。趣味はペロロ様のグッズ集めです!」

 

「よろしくお願いしますー。ところで、ペロロ様、というのはモモフレンズの事でしょうか?」

 

「そ、そうです!まさかモモフレンズを知っている人と出会えるとは...!」

 

 

「…なあ、先生、あのグッズ可愛いと思うか?」

 

「う、う〜ん…私は…ちょっと…」

 

俺達が全員を倒したと思って、気を抜いていた時…

…阿慈谷の後ろに見えた、キラリと光りに反射した…ナイフ…俺達は見過ごしていた。一人の不良生徒が気絶していなかったことに…いや、正確には気絶はしていたが、覚醒が少し早かったのだろう。そのナイフを持った生徒が標的にしているのは…背後を見ていない、阿慈谷…

 

「死ねええええええ!!!!!!」

 

 

自爆にも近い特攻をしてきた不良生徒。ノノミが反応しかけていたが、恐らく間に合わないスピードだった。それを見た瞬間、俺の体は咄嗟に動いていた。

 

(今から不良の手からナイフを叩き落とすか?いや、それは間に合わない。銃で狙うか?ダメだ。取り出すまでに時間が掛かりすぎる…)

 

…やはり、こうか…

 

「阿慈谷、悪い」

 

「…へ?」

 

先にセクハラにならないように謝ってから、俺は阿慈谷の肩を抱き寄せそのまま軽く抱え込むような体勢になり、不良に真正面から対峙する。

そして俺は左の手のひらだけをナイフに向ける。

 

次の瞬間、俺の手のひらがナイフに突き刺さった。

中指から手の下あたりまでナイフが刺さり鮮血が舞い、貫通しているが、当然のごとく痛みはない。服は汚れてしまうが、まあ仕方ないことだ。

 

「…ひっ…」

 

『っ…!』

 

不良が声を上げている。まあ、それもそうか。初めてこんなにあっさり傷ができて出血する人間と初めて対面したのだろうから。

俺は突き刺さったナイフを手の力を込め、抜けさせないようにする。相手に逃げられないように。

 

「くそっ!抜けねぇ!」

 

「抜いたら出血多量で死ぬかもな」

 

「ッ!?」

 

 

 

「…なん…で?」

 

まあ、そんなことはないんだが。相手の行動を制限するための、ただの脅しだ。相手はここまで身体が脆い相手に相対したことがないだろう。それを利用して、相手の動きを止める。

そして右手で刀を取り出し、不良に峰打ちをして気絶させる。その衝撃で不良は倒れ込んだが、その拍子にナイフが俺の腕に食い込み、さらに鮮血を撒き散らした。

 

「…終わったか…?」

 

こうして不良達との戦いは終わったのであった。

 

 

 

「あ、アゼス君!て、手が!手から血が!」

 

阿慈谷と先生達が顔を真っ青にして駆け寄ってくる。ナイフで刺されるというショッキングな光景を目の前で見てしまったのだ。そりゃあ、心配もするだろう。俺だって心配すると思う。

 

「大丈夫だ、阿慈谷。こんくらい、すぐに…」

 

俺は違和感に気づく。いつもならこの程度の怪我はすぐに完治しているはずだ…だが、今は傷が再生していない。いや、正確には再生自体は始まっているが、いつもなら3秒程度、もしくはそれ以下で終わる程度の怪我が、2分ほど経ってもまだ治っていないのだ。再生はしているが、かなりゆっくりなスピードである。まあ、ほとんど塞がってはいるが…

 

「…ん?ホシノ、どうした?」

 

顔面蒼白になっているホシノに声をかける。なにやら様子が変だ。

 

「ま…また…」

 

…ああ、そうか。俺が前ホシノを庇った時もあったが、コイツはそれがトラウマになっている可能性がある。

 

「ま…また…」

ホシノの声はかすれていた。

「また、私のせいで…」

 

拳をぎゅっと握っている。俺は少しだけため息をついた。

「…大げさだな」

 

「大げさじゃないよ」

 

珍しく、ホシノの声が低い。

 

「アゼス君、前も同じことしたでしょ」

 

……ああ、やっぱりそれか。

前にヘルメット団との戦闘で、ホシノを庇ったときのことだ。

 

「別に死ぬわけじゃないし、傷が残るわけでもない。」

 

「そういう問題じゃないんだよ」

 

ホシノは俺の手を見る。まだ血が滴っており、傷の証しとなって地面に少しづつ染み込んでいく…

 

「……」

 

ホシノは何か言おうとして、やめた。

 

代わりに、ノノミが慌てて包帯を取り出す。

 

「と、とりあえず止血しますね!」

 

「いや、もう塞がって――」

 

「ダメです!」

 

珍しく強い口調だった。

 

仕方ないので大人しく手を差し出す。

 

ノノミが手早く包帯を巻き、先生が呆れ顔でため息をつく。

 

「まったく…アゼスは本当に無茶を…」

 

「合理的な判断だっただけだ」

 

「手のひらでナイフを受け止めるのが合理的なの?」

 

「状況次第だな」

 

先生は額を押さえる。

 

「はぁ…私達が、どれだけアゼスの心配をしたのか…少しは考えてよ…」

 

「…悪かった。」

 

というか、心配してくれていたのか…この人達が優しいことを忘れていた…

 

その横で、阿慈谷はまだ固まっていた。

 

「……あの」

 

小さな声。

 

「ん?」

 

「その……」

 

阿慈谷は俺の包帯を見つめる。

 

「私のせいで……」

 

「ん?」

 

「怪我、させちゃって……」

 

声が震えている。俺は少しだけ考えてから言う。

 

「気にするな」

 

「で、でも…!」

 

「俺が勝手に割り込んだだけだ。」

 

それだけ言う。阿慈谷はしばらく黙り込んだ。そして小さく頭を下げる。

 

「……ありがとうございます」

 

「ああ、返されるならお礼のほうがいい。謝られるよりもな。」

 

そう言うと、阿慈谷は少しだけ笑って、もう一度言った。

 

「…ありがとうございます」

 

「おう。」

 

…感謝をされるようなこともやってないけどな…

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