…先生が連絡をしてこない…
俺がその違和感に気づいたのは、先生が出発してから3時間後程度だった。
先生が手紙を受け、先ほど向かったアビドス高等学校。
これは電車などを使えば、もうそろそろ着く程度の距離なはずだ。
そして、先生は
『アビドスの近くに行ったら連絡するね〜!』
と、俺に連絡することを約束していたはずだ。
…まさか…遭難したのか…?
いや、そんなはずない。だって大人だし、砂漠の恐ろしさを知らない訳が…
(…我が主よ。大変言いにくいことなのだが…)
…何だ、ヨグ。
…嫌な予感がしてきた…
(…その…だな…先生は…砂漠で遭難しているようだ…)
…おいおい…嘘だろ…
…サンキューヨグ…
さて…先生を助けに行くか
俺は一旦シャーレの外に出る。そして、携帯からモモトークを開き、先生に連絡をしてみた。
【なあ、先生。大丈夫か?】
5分後、モモトークから返信が来た……
【…たす…け…て…】
…その返信と共に位置情報が送られてきた…
俺がアビドスに向かって数時間後、先生は…確か…砂狼…だったっけな…に助けられたらしい。なので、アビドスで落ち合おうということになった。
…何か一人の女子生徒に抱えられていた…大人としての尊厳が…
おそらく、先生を背負っているのが砂狼って奴だろう…
ありがとうとしか言えない…
「あ、お〜い。アゼス…だよね…?」
「…よう、先生…と…」
…砂狼…で良いんだよな…?
「ん、あなたは誰?」
「おっと、悪い。
俺は先生の補佐をやってる助手だ。よろしく」
「…ん、砂狼シロコ。アビドス高校に所属してる。よろしく。
…ところで…」
先生も気になっているであろうことを砂狼も聞いてくる
「「その仮面は?」」
…やはり来たか…そう。俺は今、鉄で出来た仮面を付けているのだ。まあ、鉄で出来ていると言っても、軽いし耐久性はあまりないが。
まあ、隠すことでもないか。
「…あ〜…自分の学校に知り合いがいてさ…そいつが」
(外に行くときはそのお面を付けてください!防水性、機能性など、優れた一品です!…絶対に、付けてください…ね?
…………認識阻害の効果もありますしね……
い、いえ!何でもありませんよ!?)
「って言ってきたんだよな…」
…ホントに何でなんだろ…
…この場にいる全員が首を傾げているが、気にせずアビドスに向かうことにする。
ちなみに、アビドスの校舎は思ったよりも綺麗だった。
砂は大量についているが、それだけだ…と思う。
砂狼が部室まで案内してくれた。
看板に『対策委員会』と紙が張り付けられている
部室を砂狼が先生を背負いながら開ける。
部室の中に足を一歩踏み入れた。
「ただいま」
「おかえり、シロコ先輩…と…誰…?」
「お帰りなさい、シロコちゃん…そちらの方々は?」
「お帰りなさい。お疲れ様です、シロコ先輩…あなた達は?」
…三人とも同じような反応をしている。当然だろう。俺でもそんな反応をするだろう…
「ん、今日は久々にお客さんを連れて来た」
「お客さん、ですか? 来客の予定は無かったみたいですが……あ!」
「もしかして…私たちの救援要請が…先生に、シャーレに届いたんですか!?」
先生は首肯し、眼鏡をつけた女子生徒に肯定を示した。
瞬間、部室は歓喜に包まれた
「早くホシノ先輩にも伝えてあげないと! ってあれ、ホシノ先輩は……?」
「委員長は隣の部屋で寝てるよ。私、起こしてくる!」
猫耳の生徒が先生の前を走って通り過ぎた。
「自己紹介しておこうか。私はシャーレの先生。よろしくね。」
「自分は先生の助手をやってる。よろしくな」
「私が今回、お手紙を送らせていただいたアビドス高校の1年生の、奥空アヤネです。」
…真面目な生徒という第一印象だ…
「ん、最初に会ったのは私。砂狼シロコ、2年生…あ、別にマウントを取ってるわけじゃない…」
なんか照れてる…?
「私は2年生の十六夜ノノミと申します、よろしくお願いしますね、先生〜」
…穏やかそうな少女だ…
「あ、それと、先程いた猫耳の子が黒見セリカで、私と同じく一年生。そして、ここにいない唯一の三年生が小鳥遊ホシノ先輩で……あ、ちょうど来ましたね」
さっきの猫耳…黒見が、ピンク色の髪が特徴的な、何というか、眠そうな奴を連れてきた。
「…うへぇ〜…まだ眠いな〜」
「ほら、先輩! 早く起きて! シャーレの先生が来てるんですよ!」
「うへぇ〜……シャーレの先生ぃ〜……? ああ、この人が〜」
先生が自己紹介をする
「私はシャーレの先生。よろしくね。」
俺も続けて自己紹介する
「自分は先生の補佐をやっている。よろしく頼む」
「うへぇ〜私は小鳥遊ホシノだよ〜よろしく〜先生、と…名前は?」
とと、そういえば、俺の名前言ってなかったな…
「ああ、下神アゼスという。よろしく頼む、小鳥遊。」
「うへぇ〜…よろしくね〜」
…その瞳は笑っていなかった。なお、皆になぜ仮面をつけているのか聞かれたため、先ほどと同じ回答をしておいた。
先生が生徒と話している間、俺は暇だったので外の景色を眺めようとした。
その時、俺の視界に複数の黒い影が映った。
全員が黒いヘルメットを被った、見るからに不審者集団だった。
…なんだあれ…
「なあ、十六夜。」
ちょうど近くにいた十六夜に質問することにする。
「なんですか〜?」
「…あれは、何だ?」
俺が指差した先には、何やらヘルメットを付け、武装している集団がいた。
アビドス高校に向け銃撃…おいおい、マジかよ…
「あ、あれは…カタカタヘルメット団です!」
「…カタカナ?」
「カタカタです!」
…ダッセェ名前だなおい
黒見が窓に飛びついてきた。そして…カタカナ…じゃない、カタカナヘルメット団…だっけか?を見て炎が周りに見えるほど怒りを燃えたぎらせていた。
「あ、あいつら〜っ!! またここを襲撃に!!」
…また…?何度も襲撃されているということか?なるほど、だからシャーレに支援を要求したわけか…
…なぜ、襲撃に来ている…このアビドス高校に、何のために…?
考え事をしていると、瞬間、ダダダダダッ、と、アビドスに銃声が響いた。
「ヒャッハァ!! 撃て撃てぇ!」
「攻撃だぁ! 奴らに補給はもう無い! 襲撃だ! 学校を占領するのだ!!」
…全員咄嗟に身を隠したので助かった。まあ、俺は先生に覆いかぶさるような形になっているが。
「…先生、無事か?」
「う、うん!アゼスが守ってくれたから!」
…ひとまず安心した。周りの奴らも確認する。
…こいつらの瞳は怒りに燃えていた…
「もう許せない!ここでボコボコにしてやるわ!!」
「ん、先生のおかげで補給は十分。再起不能にする」
「弾薬を節約しなくて良いわけだし、皆好き放題にやっちゃおっか〜」
「あ、いいですね〜。私も最近あんまり撃ててなかったので、早く撃ちたいです〜」
…こいつらが戦闘狂なのかと思ったが、まあ、この襲撃を毎日弾薬を節約しながらは、神経がすり減るだろう…
つまり、鬱憤がとてつもなく溜まっていたのだ。
全員がそれぞれの愛銃を握り、立ち上がる。
その気迫は凄まじく、俺はヘルメット団に同情してしまった…
先生と奥空を残し、俺達は外に出る。
ちなみに、俺の装備は、刀と剣と迷ったが、今回は剣にした。気分の問題だが。それと、一応ピストル、それに召喚銃だ。これだけは外すことはできない。
…ポケットに手を突っ込みながら、召喚銃の感触を確認する
…最悪、これを使えば、なんとかなるだろう…
「先生、指揮を頼む。」
『うん、任せて!』
そこからは、先生の見事な指揮によって、俺達はカタカタヘルメット団に優勢に出ることができた。俺は、後方でたまに飛んできた銃撃を剣で弾いていた。
『ホシノ!そこのドラム缶に隠れて、距離を詰めて!
シロコ!ホシノのサポートをしてあげて!
セリカ、サイドに隠れてる敵がいる、注意して!
ノノミ!敵全体にマシンガン乱射しちゃって!』
「「「「了解(です)!!!!」」」」
…いやはや、見事なものだ…俺は見ているだけで良さそうだな…
…そう、気を抜いていたからだろう。俺は隣でマシンガンを撃ちまくっている、十六夜をボーッと見ていた…
だから…反応が遅れた。相手が戦車を出してきたことに気づかなかった。
そして、そのまま、砲弾は小鳥遊に向けて発射される…小鳥遊は気づいていない…
身体が勝手に動いていた。
小鳥遊の方に向かって駆け出し、声を張り上げる
「小鳥遊!」
「…うへっ?」
仲間からの方には意識を向けていなかったらしく、反応が遅れたようだ。俺は小鳥遊を突き飛ばす…その瞬間、俺に砲撃が振り注いだ…
瞬間、視界が真っ赤に染まった
「……は……?」
…誰が発した言葉かさえ分からない。庇われた小鳥遊ホシノか、それともアビドス陣営か、撃ってしまったヘルメット団か、それとも、全員か…
戦場の空気が凍りついた。無理もないだろう。ホシノを突き飛ばし、砲撃から庇った下神アゼスは、今、血塗れになって吹き飛び、壁にもたれかかっていた…
肩が吹き飛んでおり、大きく穴が開いている。その穴からは血が滝のように吹き出ている。止血は不可能と誰が見ても分かるほどにだ。…仮面は砕けているが、原型は保っているようだ。しかし、その仮面の間からも血が吹き出ている。止まる気配はない…
「アゼス!!!」
先生が叫ぶが、状況は停滞したまま。アビドスも、ヘルメット団も、微動だにしない。ただ、呆然とアゼスを見つめ続ける。
「や、やべえ!やべえって!」
「逃げ、逃げないと!人殺しになりたくない!」
ヘルメット団は逃げようとしていた。血をまともに、いや。死ぬ間際の人間を初めて見たからだ。
「…逃がすと思う…?」
シロコが冷たい…本当に冷たい声で、ヘルメット団に語りかける…言葉の端々から、殺意が溢れ出ている…
他のメンバーも同様に、冷たい瞳でヘルメット団を睨みつけている…
その中でホシノだけはアゼスを呆然と見つめていた…
「…なんで…?」
その問いに答える者はいない…そう思っていた…
先生以外は…
「…知り合い…いや、友達、だからな。」
「小鳥遊。お前を…いや、アビドスのお前らを俺が助けるのは当然のことさ。」
「さて、ヘルメット団…お前らを、逃がすと思うか?」
…ホシノが顔を上げる。絶望に染まっていた瞳が、困惑、混乱…そして、希望の瞳へと移り変わっていく。
破壊された肉体が再生していく…肩の傷はふさがり、出血していない。
最初から怪我をしていなかったかのように、傷跡は完全に消滅していた。
ヒビが入っていた仮面がボロボロと音を立て、崩れ落ちた。しかし気にした様子もなく、その生徒は顔のあたりを払い除け、仮面の跡を完全に消す。
そこに立っていたのは…
「…ヘルメット団…お前達、とりあえず…」
薄い青色の髪に、光り輝いている薄水色の瞳。見るもの全てを魅了してしまうかのような、神に愛されているかのような容姿。
彼の身体から青いオーラが立ち上っていく。そのオーラは上空までに上がるほど、天高く昇っていた。
その中央に立っている生徒にこの場にいる全員が見惚れてしまう。アビドス、ヘルメット団関係なく。
その人物は額に銃を突きつけながら言う。
「俺の友達を傷つけようとした責任、取ってもらおうか…な?」
下神アゼスは、完全に彼女らを敵と見なした。
これから始まるのは、蹂躙だ。
う〜…ペルソナ要素入れるの難しいよ〜…