神話使いの男子生徒   作:ok.ko

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駄作すぎて草


唐突に

俺達はヘルメット団の襲撃を終わらせた後、ゆっくりとアビドスの校舎へ戻っていった。

 

空は茜色に染まり、夕日が佇んでいる…綺麗な景色だと、心からそう思った。

 

俺は先生や砂狼…じゃない、シロコ達と距離を置き、ゆっくりと後ろから歩いていく…

 

夕日が綺麗に見えるのは、彼女達の影響でもあるのだろう。

 

俺の視線の先では、彼女達が輝くような笑顔で、先程の戦いについて話し合っていた…

まあ、遠いので何を言っているのかは正確には分からないが…楽しそうだ…

 

…今回の件は、俺がいなくても先生がいれば、解決は出来たのではないだろうか…先生の力があれば、俺のような足手まといなどに力を割かず、皆の指揮をもっと出来たのではないだろうか…

 

 

…本当に、俺はここにいる意味はあるのだろうか…

 

 

…いや、やめよう。この考え方をすると、先生に怒られてしまうかもしれないしな…

 

「お〜い、アゼス〜」

 

考え事をしていると、先生がこちらに呼びかけてきた…

そうか、もうアビドス校舎に着くのか…これで、俺達の役目は終わりってわけだ。

 

 

 

 

 

「ありがとね先生!これで借金返済に集中できるわ!

この恩は一生忘れないから!」

 

 

「…借金返済…?って何?」

 

「…あっ…」

 

…また面倒事が始まる予感がした…

 

だが、それは新しい楽しい物語が始まることを告げる、俺にとっての新しい刺激だった。

 

 

「借金返済って何のこと?」

 

先生がセリカに聞くと、彼女達は何やら話し始めた。

 

「そ、れは……」

 

「ま、待って!! アヤネちゃん、それ以上は!」

 

「……!」

 

「……良いんじゃない、セリカちゃん。隠すような事じゃあるまいし」

 

「か、かといって、わざわざ話すようなことでもないでしょ!」

 

…話しながらもこちらをちらりと見るホシノ…何が言いたいのかよく分からないが、まあ考え事をしているのだろう。何の意味もなくこちらを見てきた可能性だってある。 

…というか、その可能性の方が高いだろう…俺を好き好んで見る奴なんているわけがないしな…

 

そう俺が考えているうちに、シロコとホシノにセリカは言いくるめられかけていた…

 

「それにさ…アゼスは私を、助けてくれたんだよ。自分の危険を顧みず、身を呈して、私を庇ってくれたんだ。それに、先生も私を全力で心配してくれたんだ。それは、普通の人に出来ることじゃないと思うよ…」

 

「だから、おじさんは先生とアゼスは、信頼できる人だと思ってるよ〜」

 

「ん、私も」

 

「私もそう思います〜」

 

「わ、私もです!」

 

 

 

…やめてくれ…俺は…そんな人間じゃない…お前らと対等に立てる人間じゃないし、期待されるような能力も持っていない。誰かに必要とされているわけでもない。

せいぜい、周りの奴らの足を引っ張って死ぬだけだ。

 

 

俺は、そんな奴なんだ。俺はただのクソ野郎だ。俺の中身は空っぽだ。

 

力もない、頭も悪い…生きている意味がないような、そんな奴なんだよ…

 

 

その感情を隠しながら…俺は、いつも通りに

 

「…そうか…」

 

と返答する。

 

 

「……でっ、でも!」

 

 

 

 そこに、セリカが反抗するように再び口を開く。

 

 

 

「ついさっき来たばかりの、しかも片方は先生でも大人でもない、シロコ先輩やノノミ先輩の同年代でしょ!?どれだけ凄い能力があっても、できる事はたかが知れてるに決まってるじゃない! どうせ何もできずに終わるだけよ!」

 

「ちょっとセリカちゃん!それは…」

 

 

 

…セリカは怒りを露わにした顔をしていた。

だが、今の俺はそのセリカの顔を見るほどの余裕はなかった。今のセリカの言葉は、あまりにも的を射すぎていたからだ…まぁ、俺に対してだけだが…

 

「この学校の問題は、ずっと私たちだけでなんとかしてきたじゃん! なのに今更、信用できない大人と、力もない私たちと同じ生徒が首を突っ込んでこようなんて……私は認めない!!」

 

「セリカちゃん!?」

 

 

 

 怒りを露わにしたセリカはズカズカと足音を立てながら俺と先生の前をわざとらしく通り過ぎ、手を伸ばしたアヤネやシロコを拒絶するかの如く、部屋を出てピシャリと扉を閉めてしまった。

 

「私、様子を見てきます」

 

すぐに扉を開いたノノミが、小走りで廊下の奥へと消えていく。

 

部屋に残された…というか置いていかれたのは、俺と先生、ホシノ、そしてアヤネとシロコの五人。

 

 

「…借金問題…だっけか。」

 

「……えーと、ね」

 

何とも重苦しい空気が流れる中、普段と変わらないようにホシノが口を開いた。

 

「簡単に説明すると、この学校、借金があるんだ〜。まぁ、ありふれた話だけどさ」

 

…先生が少し驚いた顔をした…俺も初耳だったので、少し驚いてしまった。と、いうか、その額はどのくらいあるんだ…?

 

「…そうなんだ、知らなかった…ちなみに、その金額は…いくらなの?」

 

…覚悟を決めた表情をするアビドス生徒たち…

数秒後、ホシノが口を開いた。

 

「……9億円くらいあるんだよね〜……」

 

「……正確には、9億6235万円、です」

 

「…ええ…?」

 

「…マジか…」

 

俺と先生は、思わず絶句した。こんなにも莫大な借金を、ただの学生が…青春真っ只中の高校生がこんなにも深刻な問題を抱えているとは思ってもいなかったからだ。

 

「はい。これは私たち『対策委員会』が支払わなくてはならない額であり、これが返済できないと、学校は銀行の手に渡り、廃校手続きを取らざるを得なくなります……」

 

「……ちなみに…返済の目処は…?」

 

先生が恐る恐る質問する…

 

嫌な予感がしてきた…

 

アヤネは悲痛な表情で首を横に振った。

 

「完済の可能性はほぼ0%……ほとんどの生徒は諦めて、この学校と街を捨て、去ってしまいました……」 

 

…だろうな…予想通りの結果であり、最も最悪な結果が出てしまった…

これは並の…いや、一人の富豪であっても、返すのが困難なレベルの借金の額なのではないだろうか…

 

「そして、私たちが残った。」

 

「学校が廃校の危機なのも、他の生徒がいないのも、街がゴーストタウンになりつつあるのも、実は全てこの借金のせいです」

 

「…この砂のせいなのか?」

 

校舎の窓や、一部教室にまで入ってきている砂を指さしながら、俺はアヤネに問う。あまりにも、砂の量が異常なのだ。砂漠とはいえ、ここまで砂が溜まっていくとは思えない。

 

「借金の原因が、その砂です。数十年前、想像を絶する規模の砂嵐が起きたのです。学科の至る所が砂に埋もれ、それからも砂は溜まり続けてしまい。その自然災害を克服するために、我が校は多額の資金を投入せざるを得ませんでした……しかし、このような片田舎の学校に、巨額の融資をしてくれる銀行はなかなか見つからず……」

 

「悪徳企業に手を出した…ってこと?」

 

先生の言葉に、重苦しい表情で頷く三人。

 

「……最初のうちは、すぐに返済できる算段だったと思います。しかし砂嵐は毎年更に巨大な規模で発生し…学校の努力虚しく、悪化の一途を辿りました……ついには学区の半分が砂に埋まり、借金はもう私達では手がつけられない状態に……」

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

…教室が無言になる…それほどに、深刻な問題がこのアビドス高校を襲っていた…

 

「……私たちの力だけでは毎月の利息を返済するのに精一杯で……弾薬も補給品も、底をついてしまっています」

 

「…だから、私に助けを求めた…と。」

 

コクリ、と頷く三人。

 

「うん。セリカがあそこまで神経質になっているのは、これまで誰もこの問題とまともに向き合わなかったから。話を聞いてくれたのは、先生、あなたがはじめて」

 

「……まぁ、そう言うつまらない話だよ。で、先生のおかげでヘルメット団っていう厄介な問題が解決したから、これからは借金返済に全力投球できるようになったわけー。あ、別に先生は借金の事は気にしなくていいからねー。話を聞いてくれただけでもありがたいし」

 

「そうだね。先生はもう十分力になってくれた。これ以上迷惑はかけられない」

 

…その二人の言葉を聞いて、先生の顔つきが変化した。何というか、何かしらの覚悟を持った、最後までアビドスに付き合ってやる、という目をしていた…

 

「対策委員会を見捨てて、戻ることなんてしないよ。私は放っておけない。逃げないし、皆の力になりたい。」

 

俺も先生の後に続く。

 

「ま、俺も同じ意見だな。乗りかかった船だ。最大限アビドスに協力する。」

 

「そ、それって…あ、はいっ!よろしくお願いします先生にアゼス君!」

 

「……ふぅん? 二人とも変わり者だね〜。こんな面倒ごとに自分から首を突っ込もうなんて〜」

 

ホシノの瞳を見つめる。その瞳には、こちらを疑っているかのような、そんな剣呑とした光が宿っていた…まあ、無理もないだろう。今まで散々苦労してきて、今となってやっと先生という存在が来たのだから。

 

「…よ、良かった…っ! 『シャーレ』が力になってくれるなんて……! これで私達も、希望を持っていいんですよね……?」

 

「そうだね。希望が見えて来るかもしれない」

 

「あ、改めて、先生とアゼス君、よろしくお願いしますっ!」

 

「うん、よろしくね、皆。」

 

「俺はまあ、先生のオマケだと思ってもらっていい。あんまり俺には期待するなよ。俺には」

 

 

こうして先生は、アビドスの顧問になった。

俺は新しい仲間ができたことに、内心喜ぶのだった。

 

 

なお、寝所についてだが、空いている教室は自由に使っていいとのことだったので、先生に寝袋をシッテムの箱から出してもらい、もちろん別々の教室で寝ることにした。砂漠の夜は寒いと聞いたことがあったが、思ったよりも寒くなかったので、寝袋は偉大だと感じたのだった。

 

 

 

 

 

翌日、俺と先生が散歩していると、見知った顔に出会った。昨日教室から勢いよく飛び出ていった生徒…黒見セリカだ。

実は、教室の近くで俺達の話を聞いていたことは気配で分かっていたが、黙っておこう。

 

「うっ……なっ、何……!?」

 

「おはよう、セリカ。」

 

「おはよう」

 

「な、何がおはよう、よ!馴れ馴れしくないでくれる?私はまだ貴方達の事認めてないからね!」

 

…これが、ツンデレってやつなのか…いや、こいつはツンツンだな。多分。

…くだらないことを考えるな

 

「セリカちゃんは、これから学校?」

 

「…何よ!なんでちゃん付けで呼んでるのよ!私が何をしようとあなた達には関係ないでしょ!?」

 

「…セリカは…じゃない、セリカちゃんは今から学校に行くのか?」

 

「うっ…ちゃん付けやめなさいよ!」

 

顔を真っ赤にしながらこちらを否定してくるセリカ。そこまで嫌だったのなら、普通に呼ぶことにしようか。

 

「悪い。セリカはちゃん付けの方が喜ぶタイプかと思ってな。」

 

「私も!アビドスの皆からはちゃん付けだったし!」

 

「そんなわけないでしょ!?」

 

…そうなのか。嬉しいから照れを隠すために過剰に反応しているのかと思ったが…まあ、いいか。

 

「セリカはこれから学校か?なら、俺達と一緒に行かないか?」

 

「あのね、何で私があなた達と一緒に学校に行かなきゃいけないわけ?今日は自由登校日だから学校に行かなくても良いんだけど?」

 

…それなら、こいつは…セリカは、一体どこに行く気なのだろうか。何というか、少し話してみた感じこいつは詐欺に引っかかりそうな奴だから、少し心配ではある…

 

「学校に行かないなら、どこに行くの?」

 

先生が俺が言いたいことを言ってくれた。

 

「はぁ?そんなの、教えるわけないでしょ?じゃあね、バイバイ」

 

セリカは砂埃を上げながら走り去っていった…

 

「アゼス!追いかけるよ!」

 

1ミリも迷いなく、そう告げる先生。それと同時に、先生はもう走り出していた。

俺は正直(これストーカーでは?)と思っていたが、黙って頷き、先生の後を追いかけた

 

10分ほどストーカーを…じゃなく、セリカを追いかけた結果、ついに観念したセリカは、俺達に一部だけ話した。どうやらバイトをしているらしい。

 

 

そして今、俺達はアビドス校舎にいる。そこで今セリカとあったことを部室にいた4人に話すと、ホシノ達は行き先が分かったらしい。柴崎ラーメン、っていうラーメン店のようだ。

そこから何故か、皆でラーメンをその店で食べよう、という話になった。

 

さて、そんなわけでやって来た柴崎ラーメン。店の近くからは濃厚なスープの匂いが漂っている。少しお腹を刺激してくるような匂いだ。

 

ガラガラ、と。店の扉を開く。

 

「いらっしゃいませー! 何名様で……わわわっ!?」

 

「あの〜、六人なんですけど〜!」

 

「あ、あはは……セリカちゃん、お疲れ……」

 

「お疲れ」

 

「み、みんな……どうしてここを……!?」

 

「うへ〜……やっぱりここだと思ったよ〜」

 

「やあ、セリカ。お疲れ様」

 

「…お疲れ」

 

「せっ、先生とアゼスまで……やっぱストーカー!?」

 

…まあ、似たようなもんだな…

 

「うへ、セリカちゃんのバイト先って考えると、やっぱここしかないじゃん? だからみんなで来てみたの」

 

「ホシノ先輩かっ……!! ううっ……!」

 

大袈裟に頭を抱えるセリカ。それがいつものセリカのテンションなのだろう。

 

 

「アビドスの生徒さんか」

 

と、そこへ現れるのは、腕を組んだ二足歩行の柴犬の、見るからに『大将』という感じの人物(?)だった。

 

「気持ちは分からんでもないが、セリカちゃん。お喋りはそれぐらいにして、注文受けてくれな」

 

「あ、うう……はい、大将。それでは、広い席にご案内します……こちらへどうぞ……」

 

…やはり、あの柴犬は、大将だったようだ。

 

顔を真っ赤にしたセリカから席に案内される。接客態度は今までの経験で、何やかんや磨かれているようだ。

 

6人がけのテーブルへと案内され、奥にホシノとアヤネ。そしてホシノの隣にシロコ、アヤネの隣にノノミが座る。 

…スペースは二つあるが、先生はどこに座るのだろうか。

 

「はい、先生はこちらへ! 私の隣、空いてます!」

 

「あ、うん、じゃあ……」

 

「……ん。私の隣も空いてる」

 

…あの二人の間には、何故か火花が散っている気がした…

ちなみに、追い詰められた先生は、最終的に先に誘われたノノミの席側に座った。

…さて、俺はカウンターの方に座るとしよう…

…何か、背中側に視線を感じるな…気の所為…だよな?

 

「アゼス!アゼスもこっち来て食べなよ!」

 

「ん、私の隣空いてる。」

 

…しょうがないか…

 

「分かった。お言葉に甘えて座らせてもらう。悪いな、シロコ。」

 

「ん、全然問題ない。」

 

…セクハラにならないように、席の端っこの方に座るが、シロコとホシノが何故かこちらに詰めてくる…なんなんだ…?

…シロコが、俺の二の腕をペタペタと触ってきた…何で?

 

「ん…凄い筋肉…ガッシリしてる。何か運動してたの?」

 

シロコの言葉に、俺は一瞬言葉を詰まらせるが、すぐに話し始める。

 

「…あー…まあ、俺のメインの武器は剣とか刀だからな。いつも素振りとかはやってるさ。」

 

「ん…だったら、」

 

と、シロコが何か言いかける前に、セリカが来た。注文を伺うようだ。

 

「ちょっと、アゼス!シロコ先輩に何してるのよ!」

 

「…俺は何もしてないが…」

 

…理不尽だろ

 

「ねえねえセリカちゃん、そのユニフォーム似合ってるねぇ。もしかして、ユニフォームでバイト決めちゃうタイプだったりする?」

 

「ち、違うって! 関係無いし! こ、ここは行きつけのお店だったし……」

 

「ユニフォーム姿のセリカちゃん、写真撮っとけば一儲けできそうだね〜。どう? 一枚買わない?先生」

 

「…遠慮しておくよ。何かしらの法に接触しそうだからね…」

 

「…先生にしては的確な判断だ。」

 

「アゼス、何か言った?」

 

「いや、何でもない。」

 

…小声で言ったはずなのに…地獄耳か?

 

「変な副業はやめてください、ホシノ先輩……」

 

「バイトはいつから始めたの?」

 

「い、一週間ぐらい前から……」

 

「そうだったんですね〜。時々姿を消していたのは、バイトだったと言うことですか!」

 

偉いやつだな。借金を返そうと、全力で努力をしている。その姿には、素直に好感が持てる。

 

「も、もういいでしょっ!? ご注文はっ!?」

 

また顔をトマトのように真っ赤にしながら、セリカが叫んだ。そこに、ホシノが茶々を入れるようにセリカに言う。

 

「『ご注文はお決まりですか』でしょー? セリカちゃ〜ん、お客様には笑顔で接客しないとね〜?」

 

「ああう……ご、ご注文は、お決まりですか……」

 

ニヤニヤしながらホシノがセリカに伝えると、セリカは顔から湯気を出しながら、俺達に注文を尋ねた。

 

「私は、チャーシュー麺をお願いします!」

 

「私は塩」

 

「えっと……私は味噌で……」

 

「私はねー、特製味噌ラーメン! 炙りチャーシュートッピングで! 先生もアゼスも遠慮しないで、ジャンジャン頼んでねー。この店、めちゃくちゃ美味しいんだよー! アビドス名物、柴関ラーメン!」

 

…ふむ。そこまで美味いのなら、俺も食べてみようか。

 

「私はとりあえず塩で!」

 

「俺は醤油で頼む。」

 

「……ところで、みんなお金は大丈夫なの? もしかして、またノノミ先輩に奢ってもらうつもり?」

 

「はい、私はそれでも大丈夫ですよ⭐︎ このカードなら、限度額までまだ余裕ありますし」

 

ノノミが取り出すのは、金色のカード。クレジットカードのような見た目をしている。ゴールドカードと言うらしい。

 

 

「いやいや、またご馳走になるわけにはいかないよー。きっと先生が奢ってくれるはず。だよね、先生?」

 

 

「初耳ですけど?」

 

「…え?あはは、今聞いたから良いでしょ?」

 

先生が少し席から腰を浮かせた…逃げるつもりのようだ…が、ホシノに捕まえられ、結局奢ることになってしまったようだ。俺も奢ってもらったが、柴崎ラーメンはとても美味しく、もう一度食べに来たいと思える代物だった。

 

「いやぁー! ゴチでしたー、先生!」

 

「ご馳走様でした」

 

「うん、お陰様でお腹いっぱい」

 

「ありがとな、先生。」

 

「早く出ていって! 二度と来ないで! 仕事の邪魔だから!」

 

「あ、あはは……セリカちゃん、また明日ね……。」

 

「ホント嫌い! みんな死んじゃえー!」

 

…セリカの発した言葉が、俺のトラウマを刺激した。

…死んじゃえ…か…

 

 

 

次の日、セリカが攫われた、と明らかに取り乱したアヤネが報告して来たのは、昼頃のことだった。

 

 

…それから俺達は、先生が持っている権限を使い、セントラルネットワークに接続してセリカの居場所を特定した…つくづく、先生を敵には回したくないな…

 

ちなみに、バレたら始末書だったらしいが、

 

「セリカの安全のためなら問題ないよ!」

 

とのこと。頼りになる人だ。

 

「先生のおかげでわかったよ〜。連絡が途絶える直前のセリカちゃんの端末の場所、ここだったよ〜」

 

と、机の上に広げられた地図の一点をホシノは赤色のマーカーで塗りつぶす。

 

 「ここは……砂漠化が進んでいる市街地の端の方ですね?」

 

「住民もいないし、廃墟になったエリア……治安が維持できなくて、チンピラばかりが集まってる場所だね。」

 

「このエリア、以前危険要素の分析をした際にカタカタヘルメット団の主力が集まっていると確認できた場所です。ということは………やはり、カタカタヘルメット団の仕業……!!」

 

「なるほどねー、帰宅途中のセリカちゃんを拉致して、自分たちのアジトに連れて行ったってことかー。」

 

「学校を襲うくらいじゃ物足りなくて、人質を取って脅迫しようってことかな」

 

「考えていても仕方ありません! 急いでセリカちゃんを助けに行きましょう!」

 

「うん、もちろん」

 

「俺も行く。セリカが心配だしな。アイツが怪我をしていたら、最悪盾になれる。」

 

「よっしゃー、そんじゃ行ってみよー!」

 

 

 

 

…少し経ち、恐らくセリカが乗っているはずである戦車を確認した。俺達はその周りの戦車をなぎ倒しながら進んでいく。先生の的確な指示がやはり素晴らしい。

 

『よし、シロコ!戦車を吹っ飛ばしちゃって!』

 

「ん、了解!」

 

シロコが戦車に手榴弾を投げ込み、付近のドアが爆発する。すると、半泣きになったセリカが、蹲っていた。

 

 

「……ん、見つけた! 半泣きのセリカ!」

 

「なにぃー!? うちの可愛いセリカちゃんが泣いてただとー!? そんなに寂しかったの? ママが悪かったわ、ごめんねー!!」

 

「うわぁあああ!? う、うるさいっ! な、泣いてなんか!!」

 

…本当に…良かった…

 

「セリカ、無事か?」

 

「な、何であなた達までいるのよ!?」

 

『お姫様を助けに来たんだよー!』

 

「バ、バ、バッカじゃないの!?誰がお姫様よ!」

 

…くだらないことを話していると、俺は気配を察知する

…手榴弾による投擲。対象は…恐らくセリカ。それに気づいた瞬間、俺はセリカを抱き上げ、全速力で距離を取る。

 

「な、ななななっ!?」

 

「落ち着け!舌を噛むなよ!」

 

お姫様抱っこをしながら、トラックから全速力で距離を取る。数秒後、セリカがいた場所に、手榴弾の雨が振り注いだ。

俺は飛んできた破片を剣でセリカに当たらないように斬りながら、セリカに言う。

 

「無事か?」

 

「…あわ、あわあわ…」

 

俺がセリカの方を向いて話すと、顔を真っ赤にしているセリカ。熱が出たのかもしれない。ストレスと疲れが溜まっていたのだろう。

 

 

…正直、俺は今、怒っている。セリカが誘拐された時も腹の底から煮えくり返るような怒りがあったのは分かっていたが、今さっき、半泣きのセリカを見て、もはやヘルメット団には何も感じなくなっていた。アイツラはただのゴミクズだ。手加減などいらない。コイツラにペルソナを使う価値もない。

 

「…俺の仲間に…セリカに手を出しておいて、ただで帰れると思うなよ…?」

 

俺は追いかけてきたヘルメット団に向き直り、短くそう告げる。

奴らが撃ってきた銃弾を全て切り払う。線をなぞるように、見え見えの銃弾を、一つ一つセリカに当たらないように切り裂いていく

 

「ひっ…」

 

「なっ、なんだこいつ!」

 

「来るなっ!こっちに来るなっ!」

 

…奴らの言葉を無視し、接近する。反応が出来ていない奴を、一人、仕留める。

 

…あとは、アイツラに任せるとしよう。

 

「ホシノ、ノノミ、シロコ。後は頼む。」

 

俺はそれだけ言い残し、先生が乗っている車まで戻っていく。セリカにできるだけ負担をかけないように、速く、揺れないように走る。

 

到着したので、一旦セリカを先生に手渡す。

 

「先生、アヤネ、セリカを頼む…」

 

「…分かったよ…」

 

「…分かりました…お任せください…」

 

…何か怖いんだが…気の所為か…?

 

俺はボーッとしているセリカに声をかける。

 

「セリカ、お前が無事で、本当に良かった。」

 

「っっっっ…」

 

やはり、熱があるようだ。茹でダコのように、顔を真っ赤にしている。

 

…先生とアヤネは俺をジト目で見ていた…何でだよ…

 

…なお、この話をしている間に、ホシノ達はヘルメット団を蹂躙していたため、俺も加勢した。その結果、ヘルメット団は壊滅状態に陥り、俺達はセリカの敵を果たしたのだった。死んでないけど。

 

 

その後、校舎に戻るとセリカが疲れて倒れかけていたので、ギリギリ支えると、気を失ってしまった。保健室に運び、この件は一件落着、となるのだった…

 

…何故かその後、俺はお姫様抱っこを皆に希望されたのだが、その理由は言ってくれないまま仕方なくお姫様抱っこをするのだった。




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