世界は彼らを見守っている-最強の魔族と葬送の魔法使いの配信紀行   作:meiTo

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第二章:断頭台のアウラ――「実況」される公開処刑

 

グラナト伯爵領。

 

そこはかつて、七崩賢の一角「断頭台のアウラ」によって滅びの危機に瀕していた。本来なら、街の人々は恐怖に震え、密かに事態が進展するのを待つしかなかったはずだ。

 

だが、今は違う。

 

 

「……アレス様。街の人々の視線が、怖いくらいに刺さるのですが」

 

フェルンが杖を握り直し、少し身を縮める。

 

グラナト伯爵領の広場に設置された巨大な魔力スクリーンには、今まさに街を歩くフリーレン一行の姿が映し出されていた。

 

『頑張れ、小さな魔法使いちゃん!』

『フリーレン様、あの生意気な魔族(リュグナー)をぶっ飛ばしてください!』

 

 

「いい反応だ。フェルン、今の君への『応援(マナ・フィードバック)』は、通常の三倍を超えている。魔法の威力も上がっているはずだぞ」

 

 

私は浮かび上がるコメント(魔力振動)を指で弾きながら、冷静に分析する。

 

私の配信魔法は、ただ映像を流すだけではない。

 

視聴者の「感情」を魔力に変換し、現場の仲間にバフ(強化)として付与する。

 

世界中がフェルンの勝利を願えば、彼女の放つ「一般攻撃魔法(ゾルトラーク)」は、もはや一般ではない。

 

 

「……アレス、そろそろだよ」

 

 

フリーレンが静かに告げた。

 

目の前には、数千の不死の軍勢を引き連れたアウラが立っていた。

 

 

「フリーレン……たった三人で私の前に現れるなんて、随分と舐められたものね」

 

 

アウラが「服従の天秤」を掲げる。

 

その瞬間、世界中の視聴者が息を呑んだ。

 

配信画面には、アウラとフリーレンの魔力残量が「視覚的なグラフ」として表示されている。

 

『おい、嘘だろ!? 魔力量が全然違うぞ!』

『アウラの方が圧倒的じゃないか。フリーレン様、逃げて!』

 

 

「……アレス、あのグラフ…私の魔力を低く出しすぎじゃない?」

 

「演出だよ、フリーレン。逆転劇こそが配信の醍醐味だ」

 

 

アウラが勝ち誇ったように笑う。

 

 

「私の魔力は五百年以上鍛え上げたもの。あなたの負けよ、フリーレン。……さあ、その首を差し出しなさい」

 

 

天秤が大きくアウラの方へ傾く。

 

だが、その時。私は【理の簒奪(オーダー・スティーラー)】を発動させた。

 

 

「アウラ。君の魔法は『言葉』と同じだ。強固な論理(ルール)で縛られている。だが、そのルールを書き換えたらどうなるかな?」

 

「なっ……魔力の揺らぎが……!? 天秤が、動かない!?」

 

 

私は配信を通じて、世界中の人々に「魔法の解説」を始めた。

 

 

「皆さん、見てください。これが魔族の傲慢さです。彼女は魔力を『量』でしか測れない。しかし、フリーレンが隠し続けてきた『質』の真実を、今からお見せしましょう」

 

 

フリーレンが、これまで抑え込んできた魔力を解放した。

 

画面上のグラフが、一気に限界を突破して跳ね上がる。

 

その圧倒的な光景に、大陸中の人々が、そして目の前のアウラが凍りついた。

 

 

「……あり得ない。これほどの魔力を隠し通すなんて……」

 

「アウラ、君の前に立っているのは、君がこれまでに葬ってきた魔法使いとは違う」

 

 

私はカメラをフリーレンの横顔にクローズアップさせる。冷徹で、美しく、そしてどこか悲しい「葬送」の表情。

 

 

「フリーレン、言ってやれ」

 

 

フリーレンは、感情の起伏を感じさせない声で、死刑宣告を下した。

 

 

 

 

「アウラ、自害しろ」

 

 

 

 

天秤が、音を立ててフリーレン側へ叩きつけられた。

 

次の瞬間、アウラが自身の首に刃を当てる。

 

その様子は、大陸中の子供から老人、果ては隠れ住む魔族たちまで、すべての人々の網膜に焼き付けられた。

 

『……勝った。』

『これが、勇者一行の魔法使い。』

 

配信のコメント欄が、爆発的な歓喜と畏怖で埋め尽くされる。

 

 

この日、世界は「魔族を屠る圧倒的な正義」を目撃し、同時にアレスという「魔族でありながら世界を操る観測者」への興味を深めていくことになった。

 

 

 

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