世界は彼らを見守っている-最強の魔族と葬送の魔法使いの配信紀行   作:meiTo

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第五章:神話の残滓と、生ける魔導書――ゼーリエの「評価」

 

 

 

一級魔法使い試験の喧騒が続く魔法都市オイサースト。その中枢、大陸魔法協会本部の最上階にて。

 

黄金の揺らぎのような魔力を放つ、エルフの始祖ゼーリエは、目の前の空間に浮かぶ「アレスの配信画面」を、退屈そうに眺めていた。

 

 

「……趣味が悪いな。死者の想いを、これほどまで広範囲に効率的にバラ撒くとは。魔族の考えることは理解に苦しむ」

 

 

その傍らには、一級魔法使いのレルネンが冷や汗を流して控えている。

 

 

「……しかし、ゼーリエ様。この『配信』という術式により、魔法の一般化が加速しています。国民の魔法に対する支持率はかつてないほどに……」

 

「そんなものはどうでもいい」

 

 

ゼーリエは立ち上がり、空中を指先でなぞった。

 

 

「私が気に食わないのは、この配信を操る魔族――アレス、と言ったか。奴の【理の簒奪(オーダー・スティーラー)】だ。あれは、魔法を『努力の結晶』ではなく、ただの『情報』として扱っている。私の魔導書(コレクション)を汚す、不遜な力だ」

 

 

 

 

 

 

ーーその数時間後。ーー

 

フリーレン一行が宿屋で、ヒンメル回想回の余韻に浸りながら夕食を摂っていると(シュタルクは泣きすぎて目が腫れていた)、突如として室内の温度が数度下がった。

 

空間が歪み、一枚の金色の書状がテーブルに突き刺さる。

 

 

「……あ、ゼーリエの魔力だ」

 

 

フリーレンが、お肉を口に運ぶ手を止めて呟く。

 

書状には簡潔にこう記されていた。

 

 

『不遜な魔族アレス。貴様の「鏡」を、私の前で直接回せ。評価してやる』

 

 

「……評価、か。随分と偉そうだな。まあ、世界最強の魔法使いに『推して』もらえるなら、チャンネル登録者数も爆発的に増えるだろうが」

 

 

私は肩をすくめ、カメラを起動させ

 

 

「フリーレン、フェルン、シュタルク。……『ラスボス』がお待ちだ。準備はいいか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【 配信開始:ゼーリエvsアレスの「解析合戦」】

 

ゼーリエの玉座の間。

 

アレスが足を踏み入れた瞬間、大陸中の配信画面には《かつてない威圧感》が映し出された。

 

視聴者たちは、その圧倒的な存在感に震え上がった。

 

『誰だこの幼い女の子は!? でも、魔力が……画面越しなのに息ができない!』

『大陸魔法協会の創始者、ゼーリエ様だ……! 本物だ!』

 

 

「ゼーリエ様、本日の生配信、ご協力感謝する」

 

 

私は不敵に笑い、カメラをゼーリエの顔面数センチまで近づけた。

 

 

「……消せ、不愉快だ。お前のその『視線(カメラ)』、私の魔力回路を勝手に読み取ろうとしているな?」

 

 

ゼーリエが軽く指を弾く。

 

その瞬間、私の配信システムに、神話時代の術式による「超高度なプロテクト」が掛けられた。配信画面が砂嵐に変わる。

 

 

「ほう。……さすがは、生ける魔導書。だが、簒奪(オーダー・スティーラー)を甘く見てもらっては困る。あなたの『拒絶』という命令を、『特別出演の許可』に書き換える(オーバーライト)」

 

 

私は、ゼーリエの魔力をあえて「利用」し、配信の解像度を神レベルへと引き上げた。

 

ゼーリエの毛穴一つ、魔力の揺らぎ一筋までが、全世界に鮮明に映し出される。

 

 

「……面白い。私の術式を、その場で解析して自らのエネルギーに変えたか。アレス、貴様…本当に魔族か? その魂の形は人間の執着に酷似している」

 

 

ゼーリエは、画面の向こうの数千万人の視聴者を見渡すように視線を動かした。

 

 

「世界中の愚か者どもに告ぐ。この魔族が映し出しているものは、魔法の真理ではない。ただの娯楽だ。……だが、アレス。お前が勇者ヒンメルの映像を流した時、人々の魔力が一時的に『一つに束ねられた』。それはかつて魔王が目指し、成し遂げられなかった『統一された意思』に近い」

 

 

ゼーリエが、アレスの喉元に鋭い魔力の刃を突きつける。

 

 

「お前はこの力で世界をどう書き換えるつもりだ? 人間を家畜のように情報の奴隷にするか? それとも…魔族のいない世界でも作るか?」

 

 

私はカメラを自分の方へ向け、自嘲気味に微笑んだ。

 

 

「ゼーリエ様。私はそんな大それたことは考えていない。私はただ……このエルフの旅が誰にも忘れられないようにしたいだけだ。……魔法がいつか『お伽話』になっても、この映像だけは人の心に残り続ける。……それはあなたのような『記録者』にはできない、『共有者』の特権だ」

 

「……ふん。不合格だ、魔族。お前は魔法を安売りしすぎている」

 

 

ゼーリエは刃を消し、再び椅子に深く腰掛けた。

 

 

「だが……。お前の配信、レルネンが『見やすい』と言っていた。……今後も魔法協会の広報として、私の威厳を正しく伝えるなら活動を黙認してやらんこともない」

 

 

『ツンデレだ! ゼーリエ様、ツンデレだ!』

『まさかの公式認定!?』

 

配信のコメント欄は、神話の存在による「公認」に狂喜乱舞した。

 

 

 

 

 

 

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