転生したら弓聖になった件   作:アキ1113

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 今回は第1章の最終回となります。

 それでは、どうぞご覧ください。


第11話 少女の願いと約束

 

 イフリートの戦いから1週間が経った………あれからシズさんは、ずっと眠り続けている。俺は今日もシズさんの様子を見に来たのだが、起きる気配すらない………すると、

 

 「……リムル」

 

 シズさんの寝ているテントの中に、カノンが入ってきたのだ。

 

 「……」

 

 目を覚まさないシズさんを見て、カノンはどこか悲しそうな表情をした………そうなるのも無理はないのかもしれない。カノンはシズさんに、俺にも話したことがないことを話していたらしい。人間に対して苦手な反応を示していたカノンにとって、シズさんは素のまま接することのできる、数少ない人ということなのだろう……。

 

 「……あれ……?スライムさん?」

 

 「「!」」

 

 そんなことを考えていると、シズさんが1週間ぶりに目を覚ました。

 

 「シズさん!気が付いたのか?」

 

 「うん……ありがとう。私はまた、大切な人をこの手で殺してしまうところだった………子狐さんもありがとう。仲間を守ってくれて……」

 

 「いや……」

 

 「……ねぇ、2人とも……」

 

 「ん?」

 

 「聞いて、くれないかな……?」

 

 「シズさん、あまりしゃべらない方が―――」

 

 「……いいよ。僕もシズさんの話、ちゃんと聞くよ」

 

 「カノン……あぁ、もちろん聞くよ」

 

 「……ありがとう」

 

 それからシズさんは、これまでのこと―――この世界に召喚されてからのことを話してくれた。

 

 「狐さんには初めて話すけど……私はね、魔王に召喚されたの」

 

 「魔王……」

 

 話によると、その魔王にイフリートを憑依させられ、その力でこの世界で初めてできた友達も殺めてしまった。そして、魔王の側近として仕えて何年か経った頃、勇者と呼ばれる人物に出会って共に旅もしたのだそう……ヴェルドラを封印したのとは、また別の人間なのか……?

 その勇者も急に仮面を渡し、どこかに姿を消してしまった………その後は人々を助け続けて強くなり、英雄『爆炎の支配者』とまで呼ばれるようになった。それから何十年も頑張り続け、冒険者を引退した後は、自由学園というところで召喚された子供たちの先生となったのだ……。

 

 「でも、だんだんイフリートを抑え込めなくなってきて………私は、最後の旅に出ることにしたの」

 

 「……もしかして、自分を召喚した魔王を探して……?」

 

 「うん……」

 

 すると……

 

 「それは……復讐のため?」

 

 今まで静かに話を聞いていたカノンが、シズさんにそう尋ねる。

 

 「ううん、そうじゃないんだ………ただ、会って確かめたいことがあったの……」

 

 「そう、なんだ……」

 

 そして、最後の旅の途中であの3人と出会い、ここまで来たのだという……。

 

 「本当にいい子たち……ちょっと危なっかしいけどね」

 

 「……そうだな」

 

 「楽しかったなぁ………でも、もう……」

 

 「シズさん……」

 

 「……ねぇスライムさん、名前は何て言うの?」

 

 シズさんは深呼吸をして、俺にそう尋ねてきた。

 

 「名前?俺はリムルって―――」

 

 「本当の、名前」

 

 「!……俺は悟。三上悟」

 

 俺は、前世の名前の方を口にした。

 

 「……子狐さんは?」 

 

 「……」

 

 リエンは少し間をあけた後―――

 

 「……凪冴。天音凪冴って言うんだ」

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 「凪冴君……うん、いい名前……君にぴったりだよ」

 

 「……シズさんは?」

 

 僕は思わず、シズさんにそう訊き返した。

 

 「私は静江……井沢静江」

 

 「静江、さん……」

 

 すると……

 

 「……ねぇ、凪冴君?」

 

 静江さんはこちらを見て、もう誰も呼ぶことのないはずだった前世の僕の名前を呼んで……

 

 「君はもう頑張ったんだから………ちゃんと、幸せになるんだよ?私から、君へのお願い……」 

 

 「……!」

 

 そう口にした僕を見て、静江さんは微笑んだ………この人みたいな人が、僕の近くにいたら良かったのにな……。

 

 「静江さん……僕はまだ、自分の生きてる意味が分からない……けど、見つけられるように頑張ってみる。今度は、ゆっくりとね」

 

 「!……うん、約束ね?」

 

 静江さんが右の小指を向けると、僕は右手を出してそこに重ねた。

 

 「……悟さんにも、お願いがあるんだけど……聞いてくれる?」

 

 「!いいよ、何でも言ってくれ」

 

 その言葉を聞いた静江さんは……

 

 「私を……食べて」

 

 「「っ!」」

 

 「この世界が嫌い……でも、憎めない。まるで、あの男のよう………だから……だから、この世界に取り込まれたく……ない……」

 

 静江さんは、リムルに手を触れながら……

 

 「最後の……お願い………私を君の中で、眠らせてくれないかな?」

 

 「……いいよ。男の名前は?」

 

 「……レオン=クロムウェル……最強の魔王の一人」

 

 「レオン……そいつに、何を確かめたかったんだ?」

 

 「……私という人間がいたことを、認めさせたいだけかも……しれない……それにもし、あの子たちが救われ………元の、世界に……」

 

 「!」

 

 リムルは意識が朦朧としている静江さんの手を取り……

 

 「約束しよう!三上悟……いや、リムル=テンペストの名において、魔王レオン=クロムウェルにあなたの想いをぶつけてやるよ!」

 

 そう約束をする……。

 

 「……ありがとう―――」

 

 「!………安らかに眠れ、運命の人よ……」

 

 そうしてシズさんは、リムルの中で永い眠りに就いたのだった……。

 

 

 

 

 

   ◇

 

 

 

 

 

 「そうか……シズさん、逝っちまったのか……」

 

 あの後、シズさんの着替えを持ってきたリグルドや、シズさんの様子を見に来たランガ、エレン、カバル、ギドに俺の人間姿を驚かれながらも、シズさんの最期を伝えた……。

 

 「シズさんを食べたの……?イフリートと同じように……」

 

 「……それが、俺にできる唯一の葬送だったからね」

 

 そう思うのも無理はない……仲間のこいつらにも、相談はすべきだったな……。

 

 「すまんなエレン。割り切れないかもしれないけど……」

 

 「……ううん。ただ、最後にお別れの挨拶くらい、言いたかったな……」

 

 「……シズさん、最後にお前たちと冒険出来て楽しかったって言ってたぞ」

 

 「「「……!」」」

 

 俺がそう言うと、3人はどこか嬉しそうな表情をしていた……が、

 

 「……ちょっと危なっかしいとも言ってましたけど」

 

 カノンがそう口にすると……

 

 「「あー……」」

 

 「……ん?おいコラ!何だその目は!?」

 

 「だって……ねぇ?」

 

 「あぁ」

 

 「っ……お、お前だって、この前落とし穴にはまってたじゃねえか!」

 

 「あ、あれは、姉さんが急に押すからでやす!」

 

 「ちょっと!?何で私のせいになるのよ!あの時は突然―――」

 

 それを皮切りに、3人は言い合いを始めてしまう……しんみりするよりは、こういう方がこいつららしくていいよな………というかこいつら、シズさんに頼りすぎじゃね……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして翌日……

 

 「それじゃあ、そろそろお暇させていただきます」

 

 「国に帰るのか?」

 

 「はい、自由組合支部長(ギルドマスター)に調査の結果と、シズさんのことも報告しなきゃならんからな」 

 

 「ここのことは、悪いようには報告しないぜ」

 

 「リムルさんとカノンさんのことも伝えとくね―――あっ!カノンさんが狐霊族だってことは伝えない方がいいよね?」

 

 「あぁ、そうしてくれると助かる」

 

 「ただの狐の魔物ってことにしてくれるとありがたいです」

 

 すると、3人は頷き合い……

 

 「……リムルの旦那」

 

 「何だ?」

 

 「もう一度、人の姿になってくれないか?」

 

 人の姿に……?

 

 「あぁ……これでいいのか?」

 

 俺は頼み通りに、人間の姿へとなった。すると……

 

 「「「シズさん、ありがとうございました!」」」

 

 「!」

 

 3人が一斉にお礼を言ってきたのだ。

 

 「俺、あなたに心配されないようなリーダーになります!」

 

 「あなたと冒険できたこと、生涯の宝にしやす!」

 

 「ありがとう!お姉ちゃんみたいって、思ってました……!」

 

 そう言って抱きついてきたエレンの頭を、俺は優しく撫でる……本当に、シズさんの最後の旅仲間が、この3人で本当に良かった………が、

 

 「それにしても………お前らボロボロすぎないか?」 

 

 「「「酷い!?」」」

 

 「リムル……わざわざそれを言わなくても………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「「「こ、これって……!」」」

 

 「餞別だよ。どれもウチの職人たちの力作だ」

 

 俺は3人に、カイジンたちが作った装備をプレゼントした。その武器や防具の出来に、3人とも凄く驚いていた………製作者を知った後は、それ以上の反応だったのだが。そして、悲しみを吹き飛ばすように大騒ぎした後、3人は自分の国へと帰っていったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 シズさんの墓は、カノンの提案で村を見渡すことができる丘の上に建てた。墓標の前には、ここに来る前に摘んできた花と、シズさんが使っていた剣が置いてある。今はカノンが獣人態で、墓標に手を合わせている―――実はここに来る前、カノンは自身のスキルである霊眼で俺の人間態を解析することで、俺の人間態にあたる獣人態とも言うべき姿を手に入れたのだ。

 その姿は子狐の時と同じ色の長い髪に同じ色のオッドアイの瞳、顔はシズさんを少しクールにした感じの見事な美少女になっていたのだ。さらにはそこに、髪と同じ色の狐の耳に狐の尻尾が生えていた………ちなみに背丈は、俺と同じくらいのようだ。

 

 「……」

 

 そんなカノンを見て、俺は1週間前にシズさんと話したことを思い出していた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『スライムさん……子狐さんのこと、ちゃんと見てあげてね』

 

 カノンが外にいるタイミングで、シズさんは俺にそう言ってきた。

 

 『もちろんだけど……急にどうしたんだ?』

 

 『えっと、理由は直接スライムさんに言うことは出来ないんだけど………とにかくその頑張りを見てて欲しいの』

 

 頑張りを、か………カノンは充分に頑張ってくれてるし、何なら俺よりも真面目に自分の役割を果たしてくれている。でもカノン本人は、どこか必死になってる気がしたからな……。

 

 『任せてくれ、カノンは俺の大切な弟だからな!』

 

 『ありがとう……やっぱり、あの子が最初に会ったのがスライムさんで良かったよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう一つの約束も、必ず守らないとな……。

 

 「―ムル――リムル?」

 

 「!悪い、少し考えごとしてた」

 

 「……?」

 

 「さぁ、そろそろ行くか?」 

 

 「うん……分かったよ」 

 

 そうして俺たちは、2人で街へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃……

 

 「お前に名と食事をやろう」

 

 干からびて荒野と化した場所で、一人の魔人が空腹で倒れていたオークにそう言っていた。

 

 「……あなたは……?」

 

 「ゲルミュッド……俺のことは父と思うがいい」

 

 「……」

 

 「……このまま死ぬつもりか?」

 

 「っ……名前を……そして食事を……」

 

 そんなオークに対し……

 

 「お前の名はゲルド」

 

 「ゲルド……」

 

 「やがて、ジュラの大森林を治め……豚頭魔王(オークディザスター)となる者だ」

 

 ゲルミュッドは『ゲルド』と名付けた………これがきっかけで、ジュラの森に動乱が引き起こされることを俺たちはまだ、知る由もないのだった……。

 

 

 

 

 




 読んで下さり、ありがとうございます。

 それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いいたします。
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