それでは、どうぞご覧ください。
第12話 オーガとの遭遇
エレン、ギド、カバルの3人がここを去ってから数日後……街はカイジンたちの指揮の下、復興が進められていた。そんな中、俺はというと……
「リグルド、しばらくは誰も近づけないでくれ」
「はっ!」
リグルドに人払いを頼んでテントの中へと入っていく。ちなみにカノンはというと、今はシズさんの墓へと行っている。最近はそれが日課となっており、そこで時々鍛錬をしてくるようにもなっている。
「さて……」
完全に1人になったのを確認した俺は、身体からシズさんの形見である仮面を出す………よし、ちゃんと修復されてるな。
「見ていてくれ、あなたの願いは俺が叶えてみせるから」
それから俺は人間の姿へと変身、て五感や身体の動かし具合、新しく獲得したスキルなどを試した………それから色々と試し終わった後で、テントの外にいるリグルドからの報告を受ける。
「報告は以上です」
「あぁ、ありがとな」
「それで……」
「ん?」
「今日も……お食事はよろしいのですか?」
「え?あぁ、どうせこの身体には味覚がな―――」
ん?待てよ……人間の身体ってことは―――
「リグルド!」
「は、はい!」
「今日から俺も食事をとることにする!」
「おぉ!ならば今日は宴会ですな?」
そうだった……この身体には味覚があるんだ!それにカノンも人に近い姿になれたことだし、派手に宴会といくか!
「あぁ!準備は任せたぞ?」
「はっ!お任せを!」
そうして俺は宴会を楽しみにしながら、街の復興の様子を見て回ることにするのだった……。
◇
「……今日も来たよ、シズさん」
街を見渡すことのできる丘の上……前に話をした場所に、シズさんの墓はあった。今日も僕は、あの日から日課となっているシズさんの墓参りへと来ていた。僕は墓の前に膝を突き、手を合わせる……
『ちゃんと、幸せになるんだよ……私から、君へのお願い……』
「……幸せに、か……」
手を合わせている最中、不意にシズさんから僕への言葉が思い出される……僕自身、生きる意味を見つけるとは約束したものの、正直どうすればいいのかがよく分からない………かと言って、すぐに誰かに相談するのもな……。
その後、僕は墓から少し離れたところで鍛錬を始める。でも今日は、新しく増えたスキルの確認も兼ねていた。それが……
「!これが……」
今、僕の持っている4本の普通の矢には、氷、炎、風、水の魔法のようなものが纏わせてあった。それをカイジンさんに作ってもらった念願の弓につがえ、4つの的に向かって同時に撃ってみると……
「!」
1つ目は氷漬け、2つ目は炎に焼かれ、3つ目は1番最初に矢が命中したのと同時に風穴を空け、4つ目は真ん中にきれいな丸い穴が開いていた。
これが僕が新しく獲得したエクストラスキルの『付呪』であり、矢以外にも剣などの武器に無詠唱で様々な属性や魔法などを付与することが可能となっている。このスキルは、イフリートとの戦いで氷系や炎系のスキルを手に入れたことや、獣人態になってから弓や剣で色々と試していたことがきっかけで、手に入れることができたのだ。
もちろん、僕自身が使える属性や魔法などが増えれば増えるほど、それだけ付呪できる属性も増えていく仕組みで、ほとんどの武器に属性を付与できるようになっているのだ。
付呪以外にも、イフリートの戦いの中で観測者さんが解析してくれていたのか、イフリートの持っているスキルや魔法も手に入れることができた………そのことに対して、僕は観測者さんに礼を言ったのだが、その時に観測者さんのドヤ顔が見えた気がしたのは僕の気のせいだろうか……。
「……そろそろ時間かな」
僕はそう呟き、いつもより鍛錬を早めに切り上げる。何故そうしたかというと、これからリグルたちの狩りについていくことになっているからだ。
「……また来るね」
そうして僕は弓と剣を背中と腰に付け、約束の時間に間に合うようにリグルたちのところへと向かう………その途中で、
「……」
「え?」
何故か倒れているゴブタを見つけたのだ………何でこんなところで倒れて……?
「……ゴブタ、大丈夫?」
そう声を掛けてみると……
「はっ!か、カノン様?」
「大きな傷はなさそうだし……うん、とりあえずは大丈夫そうだね」
ゴブタはすぐに目を覚ました。
「それで、何かあったの?」
僕は何があったのかを訊こうとしたが……
「!いや、それはっすね―――」
「カノン、鍛錬はもういいのか?」
「ひぃ!?」
ゴブタが何かを答える前に、リムルがやってきたのだ。
「あぁうん、今日は予定もあるしね」
「ん?予定……?」
リムルが僕の言葉を疑問に思っていると……
「!お待ちしておりました、カノン様」
リグルが僕に、そう声を掛けてきたのだった……。
◇
「じゃあ、カノンも狩りに?」
どうやら予定というのは、リグルたちの狩りに同行することらしい。
「うん、僕の眼を使えば色々役に立てるかもしれないし………それに、弓の感覚も取り戻したいしね」
確かに……カノンの眼は、獲物を見つけるのに最適だろう。それに一昨日あたりに弓の腕前を見せてもらったが、さすがは全国大会無敗の王者というべき実力だったのだ。
でもリグルの話によると、森の中の魔獣の動きがいつもと違うみたいだ………なら―――
「……ランガ」
「はっ!」
俺は考えた末、影の中にいるランガを呼んだ。
「お呼びでしょうか、我が主」
「カノンとリグルたちについて行ってくれ。何かあったらその時は頼む」
「承知しました」
そう返事をするランガに、俺は思念伝達で……
『特に、カノンには怪我をさせないようにな』
『お任せを』
カノンから目を離さないように頼んでおく。そして、カノン本人には……
「カノン、これを持っておけ」
「回復薬?」
いくつか回復薬を渡した。
「怪我しないのが一番だけど、もししたときは必ず使えよ?」
「分かった、ありがとね」
そうして狩りへと出発するカノンたちを見送り、俺はスキルを確認するために封印の洞窟へと向かっていった。
◇
封印の洞窟へ行くというリムルと別れ、僕はリグルたちと一緒に今日の宴会に使う食材を狩りに来ていた。その成果はというと……
「カノン様、お見事ですね!」
「百発百中っすね!」
「いや……このくらい大したことはないよ」
順調そのものだった。僕の『霊眼』や『強化六感』は転生した時から精度が上がり続けているらしく、今回の狩りも2つのスキルを使うことで獲物を見つけ、それを僕の弓やリグルたちの連携で仕留めていた。
「ところでカノン様、カノン様の眼って一体どこまで見えてるんすか?」
「どこまでって、それは―――ん?」
あれって……。
「……」
「リエン様……?」
「どうしたんすか……?」
「……みんな、一応逃げられるように準備だけはしておいて。あとこれも」
霊眼でとあるものを見た僕は、すぐさまリグルたちにそう伝えた。それと同時に、リムルから持たされた回復薬を全て、リグルたちに渡す。
「えっ?」
「カノン様?」
「逃げるってどういう……?」
「それにこれは……」
みんなが僕にそう訊いてくるが……
「説明は……見れば分かると思うよ」
それに答える前に、そのとあるものが正体を表した。
『……』
僕らの目線の先には、頭に鬼の角が生えた魔物が6人いたのだ。その魔物たちの中には、着物のようなものを身につけていたり、刀を武器としている者もいた………というか、この世界にも刀ってあったんだ……。
「あれは……オーガ!?」
「オーガ……?」
オーガ……あれがオーガなんだ……。
「獣人とホブゴブリンだと……?貴様らもあの魔人の仲間か?」
突然、赤髪のオーガが僕たちのことを魔人(?)の仲間だと言ってきたのだ………いや、そもそもオーガの言う魔人のことなんて知らないし……。
「……すみませんが、僕たちはその魔人っていうのを知りませんし、見ての通り僕たちはただの獣人とホブゴブリンです」
「獣人のお前とホブゴブリンたちの数……なるほど、お前はあの魔人の仲間に違いないようだ」
「あの……だからその魔人って何のことで―――」
「とぼけても無駄だ!貴様らの主のいる場所を吐いてもらおうか!!」
「……」
オーガたちは僕たちに対し、何故か明らかな敵意を持っており、こちらの話を聞いてくれそうもない………仕方ないか。
『……全員、僕が合図したら走って。オーガたちは僕が相手する』
『っ!?』
思念伝達でそう伝えると、全員が驚いた表情をする。
『な、なりません!相手はオーガですよ!?それに走れって……』
『あぁ、街に向かって走るのはだめだよ?最悪の事態は避けたいし』
万が一にも、オーガのうちの誰かが街に向かい、仲間が殺されることはあってはならない………だが、
『カノン様、俺も残ります!』
『自分もっす!』
『我もです!』
リグルにゴブタ、そしてランガまでもが、僕と一緒に残ると言ってきたのだ。
『……話聞いてた?みんなは逃げ―――』
『できません!それに、あなたに何かあれば、皆が悲しみます!』
『それはオイラたちも同じっす!』
『どうか我々も共に……!』
『……』
その言葉を聞き……
『……分かった。何かあったら援護をお願い。ただ……
殺しはしないように』
『了解です!』
『任せてくださいっす!』
『承知!』
僕の方が先に折れ、戦闘中の援護を頼むことにしたのだ。こういうとき、相手は中々折れてくれないからね………そして……
『行って』
僕が合図すると共に、リグル、ゴブタ、ランガ以外は街とは少しずれた方向へと走って行く。
「貴様らだけか?」
「……」
「……舐めるなよ?」
赤髪はそう言うと、僕に向かって刀を振るってくるが……
「っ!」
「!?」
それを難無く避けた後、そのまま黒髪のオーガの前へと素早く移動する。
「!うおおおおお!!」
それを見た黒髪は、槌を振り下ろしてくるが……
「っ!」
「!?」
僕はそれに蹴りを当てることで跳ね返し……
「ふっ!」
「ぐおっ!?」
そのまま体制が崩れたところに蹴りを入れ、奥の木まで吹き飛ばした。
「はぁ!!」
次に紫髪のオーガが、モーニングスターのような武器で攻撃を仕掛けてくるが……
「っ!」
「ぐっ!?」
「何っ!?」
僕はそれを最小限の動きで躱し、その勢いを利用して投げ飛ばした……実は前世で、僕は体術もかじっており、色々な体術を組み合わせたりしていたのだ……まさか異世界で役に立つとは思わなかったけど……。
「っ!」
チャンスだと思ったのか、背後から青髪のオーガが攻撃を仕掛けてくる。
「っ!?」
「見えてるよ」
それは霊眼で見えていたため、僕は前を向いたまま避け……
「っ!」
「ぐっ!?」
青髪がこちらを向いたのと同じタイミングで掌底を入れ、戦闘不能にする。
「す、すごいっす!」
「流石は我が主!」
残りは赤髪と白髪に……
「っ!」
「!?」
魔法を使ってくる桃髪のオーガか………桃髪は、僕の死角となる位置から放った魔法が避けられたことに対し、驚いた表情をしていた。まぁこれも、霊眼や強化六感のおかげなんだけど。
『ランガ、あの桃髪のオーガを抑えておいて。牽制だけで攻撃は絶対にしないで』
『承知!』
『リグルとゴブタは、残りのオーガたちを見張ってて』
『はい!』
『はいっす!』
そう伝えると、ランガは桃髪の前に立ちふさがり、リグルとゴブタは僕が戦闘不能にしたオーガたちに目を光らせ始める。
「あの者……目に見えたスキルを使っている様子もなく、体術のみで戦っている……まだ何か隠しているやもしれません。油断召されるな、若」
「あぁ、まだ背中の弓と腰の剣も残っているようだしな……」
「……」
赤髪と白髪のオーガとにらみ合っていると、そこに……
「リエン!みんな!無事か!」
「あ、リム―――って……」
人間の姿になったリムルが、シズさんの形見の仮面を付けてやって来たのだ。それを見た赤髪のオーガは……
「仮面の魔人……!ようやく姿を現したか!!」
リムルに向けて刀を構えた……。
「か、仮面の魔人……?」
『カノン、一体何がどうなってるんだ……?』
『……よく分からないけど、その魔人っていうのがリムルだと勘違いされてるみたい……主にその仮面が原因で』
『何っ!?』
それを聞いたリムルは、慌てて誤解を解こうとするも、赤髪がそれに耳を傾けることはなかった……。
『そ、そんな……俺はただの愛くるしいスライムなのに……!』
『……愛くるしいかどうかは置いておいて『おいっ!?』どうするの、これ?』
『っ……そうだな、とりあえずは「リムル!」っ!?』
白髪が刀でリムルの首を狙っているのが見えた僕は、すぐさま2人の間に割って入る……。
「何っ……!?」
「っ……!」
その時、僕の左腕に刃が当たり傷が付いたものの、リムルには傷一つなかった。
「カノン!?」
「ほう……そこの魔人の首を狙ったつもりなのじゃが………それに獣人に割って入られるとは、わしも耄碌したものよ……」
リムルはすぐさま、僕の左腕に回復薬をかけた。
「大丈夫か?」
「大丈夫。僕も痛覚無効はあるし」
傷を直してもらった僕は再び前に出ようとするが、リムルがそれを手で制した。
「リムル?」
「お前はもう休んでろ……
選手交代だ」
リムルはオーガたちの前へと出ながら仮面を外し、隠していた妖気を解放した……。
読んで下さり、ありがとうございます。
カノンは基本的に弓で戦いますが、今回は体術による近接攻撃でオーガたちを圧倒して見せました。弓での本格的な戦いは先になりますが、ご期待いただけると幸いです……。
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いいたします。