それでは、どうぞご覧ください。
「っ!これは……!」
「何という妖気……!」
リムルが仮面を外すと、今まで隠していた妖気が解放された。そして……
「はぁ!!」
手のひらを上に向け、黒い炎の竜巻を起こす………これって……
《解。個体名:リムル=テンペストの所持するエクストラスキル『黒炎』です。既に解析・鑑定を行っています。》
黒炎………リムルもそんなスキルを……。
「あ、あれは、周囲の魔素を利用した妖術ではありませぬ!あの黒い炎を形作っているのは、純粋にあの者の力のみ……炎の大きさが、そのままあの者の力そのもの……!」
リムルの出した黒い炎に、オーガたちが驚いていると……
「見ろ!これが俺の真の力だ!」
「「「「「「っ!?」」」」」」
リムルは近くにあった岩に黒い雷を落とし、その岩は見事に粉々になる。それを見て……
「若、姫を連れてお逃げください。ここは―――」
「黙れ爺……凄まじいな。悲しいが、我らでは貴様に敵わないだろう。だが、俺には次期頭領として育てられた誇りがある!無念に散った同胞たちの無念を晴らさずして、何が頭領か!」
このオーガたち……やっぱり何か事情があって………。
「叶わぬまでも、一矢報いてくれようぞ!」
「それでは若、わしもお供いたしましょうぞ……!」
そして赤髪と白髪は、死ぬ覚悟でリムルに攻撃を仕掛けようとした……その時、
「お待ちくださいお兄様!この方達は、敵ではないかもしれません!」
桃髪が赤髪の前に立ちふさがり、攻撃をやめさせたのだ。それから桃髪は赤髪を説得し、リムルがオーガたちの探している魔人ではないことを言ってくれた。
「これ、もういらないよな?」
そう言ってリムルは、威嚇のために出していたであろう黒炎を消した。
「……何者なんだ、お前は?」
「俺か?俺はスライムだよ」
「す、スライムだと……?」
「スライムのリムルだ。ほれ」
そう言うと、リムルはスライムの姿になり、ランガの上へと飛び乗った。
「ほ、本当に……!?」
「この仮面はある人の形見なんだ。何なら、里を襲った魔人のものと同じか確認するか?」
「あ、あぁ……」
赤髪がリムルの持つ仮面を確認している間に……
《告。エクストラスキル『黒炎』並びに『黒雷』の解析が完了。解析・鑑定により、エクストラスキル『黒炎』、『黒雷』及び『黒風』を獲得しました。》
さっきの解析が完了し、リムルと同じ黒炎と黒雷、さらには黒風というスキルも獲得したようだ。その報告を聞いている間に、オーガたちからの誤解が解けたようで……
「申し訳ない。どうやら追い詰められて、勘違いをしてしまったようだ………どうか、謝罪を受け入れてほしい」
「うむ、くるしゅうない」
赤髪は膝をつき、リムルに向かって謝罪したのだ。その様子を見ていると……
「済まなかったのぅ」
「?」
先ほど僕の左腕に傷をつけた白髪のオーガが謝ってきたのだ。
「いいですよ。別に気にしてないですし」
僕はそれほど気にしてもいないため、その謝罪を受け入れていると……
「それでリムル殿………あの獣人の方は……?」
「あなた様と同じく、強いことは分かるのですが……」
赤髪と桃髪のそんな言葉が聞こえた。
「!え、えっと……」
リムルは相手がジュラの森に住む魔物であったため、僕が狐霊族であることを明かすかを迷っていたようだが………
『いいよ、言っても』
『カノン?』
『このオーガたちには言ってもいい気がするよ』
『カノンがそう言うなら……』
僕が思念伝達でそう言ったのを聞き……
「……俺の弟で狐霊族のカノンだ。あと、カノンが狐霊族ってことは、あまり他のところには漏らさないでくれよ?」
『こ、狐霊族……!?』
オーガたちが驚きながらこちらを見ると同時に、僕は子狐の姿へと戻った。
「ほ、本当に……」
「まさか、生きているうちに狐霊様に会えるとは……」
初対面の人たちのこの反応も、もう慣れたな……。
「よし、色々と訊きたいこともあるけど……立ち話もなんだし、街に戻るか。お前たちも来いよ」
『!』
「良いのか……?」
「あぁ!それに、ウチは今日宴会なんだ!人数は多い方がいいしな?」
6人のオーガたちを街に招待しようとしたのだ。その言葉に、オーガたちは顔を見合わせ……
「……では、その言葉に甘えてさせてもらうとしよう」
「決まりだな」
リムルの誘いを受けることにしたのだった……。
◇
オーガたちとの戦いはあったものの、誰も怪我せず………いや、回復薬で完全に治ったとはいえカノンが腕に傷を負ったが………とにかく、オーガを含めた全員が無事だったのは何よりだ。誤解も解けたところで、俺はオーガたちを街に招待し、事情を訊くことにした。そうして街に向かって歩いていたのだが……
「そう言えば………お前ら名前は?」
「いや、俺たちに
「そっか……」
魔物は普通、名前を持たないんだったな………。
オーガたちと一緒に街へと帰ってから少しして、俺が楽しみにしていた宴会の時間となった。
「ど、どうぞ」
今回はゴブイチというホブゴブリンが、料理を担当してくれた。俺の前に運ばれてきたのは、カノンたちの狩ってきた牛鹿の肉を串焼きにしたものだ。そのお味はというと………
「う……」
『う……?』
「うんまああああい!」
『おおおおおお!!』
いや~!食事はやっぱりいいもんだなぁ……!この街にいるみんなやオーガたちも、種族関係なく宴会を楽しんでいるようで何よりだ―――にしてもさっきからカノンの姿が見えないけど、どこにいるんだ……?
◇
「……」
みんなが宴会を楽しんでいる時、僕は少し離れた木の上でその様子を眺めていた………僕自身、こういう場にあまり慣れていない―――というかほぼ初めてなのと、もし何かが襲ってきたときにすぐに戦える存在は必要だ………今のところは霊眼とかに何も反応はないからいいけど。すると……
「オークがオーガに仕掛けてきただと!?」
「?」
端の方で飲みながら、オーガの頭領から話を訊いていたカイジンさんの驚いたような声が耳に入ってきた。
「ほ、本当なのか?」
「あぁ……武装したオークどもが、突如我らの里に攻めてきたんだ」
頭領の話によると、全身武装したオークがオーガの里に攻めてきて、その時に約300人いたオーガたちは今の6人以外は全員殺されてしまったようだ。そんな中で僕たちと出会い、今に至るようだ……。
「なるほど、それは悔しいわけだ」
話を聞いていたらしいリムルが、オーガの頭領にそう話し掛ける。
「!リムル殿……肉はもういいのか?」
「ちょっと食休み……それにしても凄いなお前の妹は。薬草にも詳しいし、もうゴブリナたちと仲良くなってる」
リムルとオーガの頭領は、ゴブリナたちと話しているオーガの姫様へと目を向ける。
「箱入りだったからな、頼られるのが嬉しいんだろう………だがそれを言うなら、カノン殿もだ」
「カノンが?」
「あの3人をスキルらしきものも使わず、素手だけで倒してしまった。それにまだ、弓や剣などの武器の類を使ってはいないから、実力の底が見えない………相当、努力したのだろうな」
「あぁ……カノンはよく頑張ってるからな―――それで、お前らこれからどうするんだ?」
「……どう、とは?」
リムルの言葉に、オーガの頭領は首を傾げる。
「今後の方針だよ。再起を図るにせよ、他の地に移り住むにせよ、仲間たちの命運はお前の采配にかかっているんだろ?」
「知れたこと。力を蓄え、再び挑むまで―――」
「当てはあるのか?」
「……」
どうするかを訊かれたオーガの頭領は、思わず言葉を詰まらせた………今のところノープラン、か。まぁ、計画なんて考えられる余裕なんてないよね。それに………
「っ……」
……今すぐにでも、死んだ仲間の仇を討ちに行きたいだろうに。
「……提案なんだけどさ―――」
「提案……?」
そして、リムルはオーガの頭領にある提案をした。それが……
「お前たち全員、俺たちの配下になる気はないか?」
オーガたちを配下にする、というものだった。
「!配下に……?」
「といっても、できるのは衣食住の保障だけだけどな?お前たちも拠点があった方がいいだろ?」
「しかし……それではこの街を俺たちの復讐に巻き込むことに―――」
「この森で起きていることなら、俺たちも無関係とは言えないし、ここも安全とはいえない……なにより、戦力が多い方が、こちらとしても都合がいい………あと、これだけは覚えておいてくれ」
「?」
「俺たちは、仲間を見捨てない」
それから少しの間、沈黙が流れ……
「……少し、考えさせてくれ」
すぐには決められるものではないと思ったのか、オーガの頭領はそう答えたのだ。
「あぁ、構わないぞ。もちろん、強制はしない……さて、俺はもう少し肉をもらってくるかな……あと―――」
リムルは宴会場へと戻ろうとし―――ん?僕の方に来てる……?
「そんなところにいないで、お前も一緒に食うぞカノン!」
僕は近くまで来たリムルに手を引っ張られ、みんなのところに連れて行かれていった。
◇
リムルの話を聞いてから少しして、オーガの頭領は街の近くの森の中にいた。そこに……
「悪い話ではないだろう」
さっきの話を聞いていたのか、青髪のオーガが木の陰から現れた。
「……」
「どんな決断だとしても、俺たちはお前と姫様についていく」
そう言い残し、青髪のオーガは街の方へと戻っていく。そして……
「っ……俺にもっと力があれば……!」
「……」
オーガの頭領は傍にある木を殴りつけ、自身の力不足を嘆きながらそう呟いた……。
読んで下さり、ありがとうございます。
次回はオーガたちの名付けからになります。そこにカノンはどのような形で関わることになるのか……。
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いいたします。