転生したら弓聖になった件   作:アキ1113

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 今回は、前回の続きから書いていきます。前回の最後で、トレイニーがカノンにあのような振る舞いをした理由も明かしていきます。

 それでは、どうぞご覧ください。



第16話 交渉と出陣

 

 急に僕の前に跪いたトレイニーさんは、リムルたちと接する時とは違うように僕に接してきたのだ。

 

 「えっと、トレイニーさん?急にどうしたんですか……?」

 

 「私に敬称は不要です。どうかトレイニー、と」

 

 「は、はぁ……」

 

 僕が困惑していると……

 

 「と、トレイニーさん?カノンに対してのこれって、一体どういう……?」

 

 「!失礼いたしました。順に説明いたしますわ」

 

 リムルが僕もみんなも思っていることを代表して訊いてくれた。 

 

 「我らドライアドは、昔より狐霊様を崇拝しておりました」

 

 「す、崇拝……」

 

 ジュラの森に住んでる種族って、狐霊族に対してみんなこうなのかな―――

 

 「それに加えてカノン様は、暴風竜ヴェルドラの眷属様であらせられますので、このような振る舞いとなるのは当然のことでしょう」

 

 『!?』

 

 何てことないように発せられた言葉に、リムルと僕以外は驚きを隠せずにいた。確かヴェルドラも、僕が眷属のようなものに転生したって言ってたな………そのこともトレイニーさんは知ってたのかな?

 

 「そ、それで……僕に何の用ですか?」

 

 改めて僕がそう訊くと…… 

 

 「改めまして、どうかお願いいたします。リムル様と共に、オークロードを討ち滅ぼし、我らに守護をお与えいただけませんでしょうか?」

 

 そうお願いしてきたのだ。そんなトレイニーさんを見て……

 

 「……顔を上げて」

 

 「!はい」

 

 僕はこう言った―――

 

 「そもそも僕は、最初からそのつもりだよ?それにここの守護者として、みんなを守らないといけないし、鬼人たちとも約束した………安心して、リムルやみんな、そして僕が君たちのところにオークを1匹たりとも近づけさせないから」

 

 「!……ありがとうございます」

 

 これは僕なりの決意だ。今、僕は必要とされている………この戦いから逃げることなど許されないし、したくない。だから必ず、みんなのために自分の役目を果たすという、自身への鼓舞に近いものだ。そしてその先に、僕の生きている意味があれば……。

 

 「あとさ、トレイニーさんのこと呼び捨てするのは違和感があるから、呼び方はこのままで勘弁して?それにさ、そう畏まらずにもっと気楽に僕に接してほしいかな。無理にとは言わないけど………お願いできる?」

 

 「!それがカノン様のお望みであれば、私はそれに従いましょう」

 

 「なら良かったよ。よろしくね、トレイニーさん」

 

 

 

 

 

    ◇

 

 

 

 

 

 「さて、オーク20万を相手取るとなると、リザードマンとの同盟も前向きに検討したいところだが……使者があれなんだよな……」

 

 「あれって……?」

 

 トレイニーさんのカノンへの挨拶が終わった後あの場にいなかったカノンがそう訊いてきたので………

 

 『……こんな感じ』

 

 『我が名は………ガビル!!』 ⇦ アレ

 

 『あぁ……』

 

 思念伝達で見せてやると、呆れたように納得していた………というか、普段優しいカノンのあんな声色、初めて聞いたかも……。

 

 「はぁ……話が通じるやつと交渉したいんだが……」

 

 「リムル様、カノン様、リザードマンの首領に直接話をつけてもよろしいでしょうか?」

 

 「ソウエイ……できるのか?」

 

 「はい」

 

 な、何この自信やだイケメン!!

 

 『リムル……?』

 

 「!よ、よし。リザードマンたちと合流し、オークを叩く!」

 

 『はっ!』

 

 「決戦はリザードマンの支配領域である湿地帯になるだろう。これは、リザードマンとの戦線協定が前提条件だ。頼んだぞ、ソウエイ」 

 

 「お任せを」

 

 ソウエイはそう言い、リザードマンの首領の下に向かおうとしたが……

 

 「待ってソウエイ」

 

 「はっ!何か?」

 

 それを急にカノンが止めた。そして……

 

 「交渉が難しそうだったら―――いや、そうでもない時でも、狐霊族の名前出してもいいから」

 

 そんなことを言い出したのだ。

 

 「!よろしいのですか……?」

 

 「今はリザードマンとの同盟を結ぶのが先決だよ?」

 

 「!承知いたしました。必ずや交渉を成功させてみせます」

 

 ソウエイはそう言い残し、今度こそリザードマンの首領の下に向かった………首領がガビルと同じアホじゃなきゃいいけど……。

 

 「では皆様、私もこれで失礼いたしますわ。カノン様、どうかご無事で」

 

 そうしてトレイニーさんも、自身の集落に戻っていくと……

 

 「カノン様、先ほどはお見事でした!」

 

 「カノン様ならば当然ですよ、姫様!」

 

 カノンはシュナやシオンなどから、先程のトレイニーさんとのやり取りなどついて褒められていた。確かに、あれは物語の主人公みたいで、カノンの容姿も相まってカッコ良かったな………まぁ系統は違えど、見た目は俺と同じ美少女なんだけど。

 

 俺がほとんどシズさんと同じ容姿なのに対し、カノンは少しつり目になっており、クールというか少し冷たいという印象が出る………実際に本人は、凄く優しいし真面目なんだけどな。俺と同じく、ハクロウに弟子入りしていて、才能があったのか腕前をめきめきと上達させている………俺も負けるわけにはいかないな。

 

 「さっきは凄かったぞ、カノン!」

 

 「……あそこではあぁしなきゃって、思っただけだよ。それに、こんなに崇拝とかされてるとは思わなかったし……」

 

 「あー……」

 

 普通なら驚くよな………俺もトレイニーさんの変わりようにはびっくりしたし………そして会議も終わり、みんなを解散させた後……

 

 「……カノン、あぁ言ってくれた後なんだけど―――」

 

 「行くよ。それが今の僕がすべきことだから」

 

 2人きりになった時に、カノンに一応そう訊いてみたのだが、覚悟はもう決まっているようだ。まったく……まだまだ思春期の子供だろうに、大したやつだよ。

 

 「分かった。なら俺から言う事はないけど………無理はするなよ?」

 

 「うん、分かってるよ」 

 

 

 

 

 

    ◇

 

 

 

 

 

 その頃、湿地帯にあるリザードマンの根城では……

 

 「気遣いは無用だ。俺は単なる使者………我が主らの言葉を伝えに来ただけなのでな」

 

 ソウエイがリザードマンの首領に会いに行っていた。最初は警戒していたが、相手に敵意がないと判断したリザードマンの首領は、近衛たちに武器を降ろさせると……

 

 「失礼。用件は?」

 

 ソウエイに用件を訊いた。

 

 「我が主らは、リザードマンとの同盟を望んでいる」

 

 「同盟?はて……そなたの主―――いや、主たちを儂は知らんのだが?」

 

 「我が主の1人は、リムル=テンペスト様だ。ドライアドに直に要請を受け、オーク軍の討伐を確約されている」

 

 『!?』

 

 「森の管理者が、直接……!?」

 

 「オーク軍を率いているのは、オークロードだという」

 

 「オークロード……!?」

 

 「この意味を踏まえて、よく検討してほしい」

 

 「っ……」

 

 その2つの事実に、首領や近衛たちは驚いていたが……

 

 「リムルだと?聞いたこともない!どうせそいつも、オークロードを恐れて我らに泣きついてきたのだろう?素直に助けて欲しいと言えばいい―――」

 

 その話を信じられなかった若い近衛が、リムルのことを愚弄してきたのだ。

 

 「やめろ」

 

 「え?」

 

 「口を塞ぐのだ」

 

 「し、首領!そのような態度では舐められ――――っ!?」

 

 首領は止めようとしたが、その前にソウエイが若い近衛の首に糸を巻きつけたのだ。そして、そのままその首を撥ねようとしたが……

 

 「待て……同族の非礼を詫びよう。許してやってはもらえないか……これは対等な申し出なのだろう?」

 

 「……」

 

 ソウエイは首領の言葉を聞き、巻き付けていた糸を仕舞った。

 

 「うっ……」

 

 「失礼。脅すつもりはなかったが……主らを愚弄されるのはたまらん」

 

 『よく言う………止めねば迷わず首を撥ねただろうに……』

 

 「それと言っておくが、もう1人の我が主はリムル様の弟君にして、狐霊族であるカノン=テンペスト様だ。オークロードなどを恐れるはずがないだろう?」

 

 『!?』

 

 「こ、狐霊様が!?そちらにおられるのか……!?」

 

 「狐霊様を騙ることは、狐霊様―――カノン様に対する不敬にあたるのは、そちらも分かっていることだろう」

 

 「そ、そうであるな……失礼。動揺してしまったようだ」

 

 「構わん。俺も初めてお会いしたときはそうだったからな」 

 

 それから首領は気を取り直し、ソウエイにあることを訊いた。

 

 「それで……見たところ、そなたの妖気は南西に暮らすオーガであろう?」

 

 「今は違う。カノン様に見守られ、リムル様からソウエイの名を賜り、鬼人となった」

 

 「鬼人……!?」

 

 「オーガの中から、稀に生まれ出る上位種族……!」

 

 「ならば、そなたに名を与えた主とその名付けを見守った主は、それ以上の存在……というわけか」

 

 ここまでの話を聞いた上で、首領はこう考えた。

 

 『オークロードの出現、この局面における強者からの同盟の申し出………断る理由はないな。だが―――』

 

 「ソウエイとやら、1つ条件がある」

 

 「……聞こう」

 

 「そなたの主、リムル=テンペストとカノン=テンペストに会いたい」

 

 オークロードと戦う前に、実際にリムルとカノンに会うことを要求してきたのだ。

 

 「……分かった。では、我々は準備を整え、7日後にこちらへ合流する。その時にお目通りしていただくとしよう。それまでは、決して先走って戦を仕掛けぬよう」

 

 「承知した」

 

 「では―――」

 

 首領の条件を飲み、先走らないように釘も刺したソウエイは、リムルたちのところに戻っていった。

 

 

 

 

 

    ◇

 

 

 

 

 

 リザードマンとの交渉が成立してから少しして、丁度防具や武具ができたということで、俺たちは早速着てみることになったのだ。

 

 「リムル様、とてもお似合いです!」

 

 「ありがとな、シオン」

 

 俺が着ているのは、白のシャツに黒のズボン。そして上には濃い青のコートを着て、下にはブーツを履いている。俺の格好を褒めているシオンはダークスーツを身にまとい、秘書という感じが全面に出ており似合っていたのだ。

 

 「カノン様、とてもよくお似合いです!」

 

 「ありがとう、シュナ。これ大事にするよ」

 

 カノンが着ているのは一言で言えば和装で、弓道着のような胸当ても付いていた。さらには、左目の色と同じ系統の薄い緑色の着物を肩に掛けるように羽織っており、肩から落ちないように前の方に紐が通されていた。その和装自体には所々に風を表した模様が描かれており、カノンの狐の耳と尻尾が映えて神秘的な雰囲気が醸し出されていた。さらに……

 

 「あっ!それから……カノン様、こちらにお座りください」

 

 「え?うん……」

 

 「……これでよし」

 

 シュナが赤い紙紐で、カノンの長い銀髪をポニーテールのようにして結んでいたのだ。そんなシュナは俺たちが着替える前に巫女服姿となっており、こちらもよく似合っていた。 

 それから俺はクロベエが打った刀を、カノンは専用に作られた弓を腰の後ろに仕舞い、刀を左脇に差した。ちなみに矢はカノンのスキルで生成できるため、それは準備されていない。

 

 「お待たせしました、リムル様、カノン様」

 

 すると、俺たちのところに着替え終わったベニマルたちがやってきたのだ。ベニマルは紅い和装姿、ソウエイは濃い藍色のローブ、ハクロウは山伏の衣装を身にまとっていたのだ……こいつらもビジュアルがいいからよく似合っているな。そして……

 

 「みんな、準備はいいな?」

 

 『はっ!』

 

 「よし……行くぞ!」

  

 俺たちはオークロードとの戦いに出陣していった。

 

 

 

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます。

 カノンの服装は和装となりました。そんなカノンは、果たしてどのような戦いを見せてくれるのか……。

 それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いします。
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