それでは、どうぞご覧ください。
「お前に託す!さっさと敵を打ち倒せ!!」
そう言った直後、リムルの目は赤く染まっていく。
「……」
ゲルドはリムルに向け、
「っ!」
僕はリムルにそれが辿り着く前に、すぐさま黒風をまとった矢を同じ数放つことで撃ち落とした。その直後、リムルは素早い動きでゲルドのところまで駆け出していき……
「……」
黒炎を纏わせた刀で、ゲルドの左腕を斬り飛ばしていく。さらには再生を防ぐために、傷口を黒炎で焼いていたのだ。それに続くように……
「っ!」
僕も間髪を入れずに黒風を纏わせた矢をゲルドの顔に放ち、その視界を奪うように援護した。その後、互いに距離を取った後で駆け出し、リムルの刀とゲルドの武器がぶつかり合うも、リムルがその武器を黒炎で包んで溶かしてしまったのだ。
「くっ!?」
ゲルドは武器の柄を手放して後ろに飛び退くと、未だに燃えている左腕を引き千切ることで再生を果たし……
「今こそお前を喰ってやろうぞ!」
リムルに向けて前後から挟み込むようにゲルミュッドの使っていた技を放ったのだ。リムルはそれを両手をスライム状態にし、捕食者で難なく吸収したものの……
「ハハハハハッ!このまま喰らってくれるわ!!」
ゲルドの狙いは最初からリムルを捕まえることだったらしく、右手でリムルのことを掴むとそのまま食べようとしていた……が、
「っ!?」
ゲルドの足元に炎の魔法陣を展開すると、イフリートがかつて使っていた技の
「ぐあああああああああああああ!?」
ゲルドは苦しそうな声を上げており、このまま焼け死ぬかと思われたが……
「ハハハハハッ!!」
「そ、そんな……!?」
「リムル様!」
どうやら炎への耐性を手に入れたらしく、この攻撃も防ぎきってしまった。僕の後ろにいるみんなは、リムルの攻撃が通用しなかった光景を見て、緊張感を走らせていた。だが、それとは逆に……
「俺には炎は通じぬようだぞ?」
「そうかよ?炎で焼け死んだ方が幸せだったかもしれないぜ?」
リムルの表情にはまだま余裕があったのだ。
「俺はお前を敵として認めた……今こそ本気でお前の相手をしてやるよ」
「ハハハハハッ!笑止!今までは本気でなかったとでも?最早、貴様には何もできぬ!このまま俺に食われるがいい!!」
「お前に食われる前に、俺がお前を喰ってやるよ……俺は――――
スライムだ」
「何っ!?」
リムルはスライムの状態に変化すると、ゲルドの身体に纏わりついて捕食しようとしていたのだ……どうやらリムルが思いついたのは、自身の捕食者でゲルドそのものを逆に喰らい尽くすというものだった。
「き、貴様……!!」
「喰うのはお前の専売特許じゃねーんだよ!お前が俺を喰うのが先か……俺がお前を喰うのが先か……相手を喰い尽くした方の勝ちだ!」
ゲルドは想定外の事態に驚愕しながらも、リムルの身体を腐食させることで喰らわれるのを回避しようと抵抗したが、段々とリムルがゲルドのことを覆い尽くしていき――――
「!ここは……」
僕の目の前には、何故か乾燥した土地が広がっていた……僕は確かにさっきまで、リムルとゲルドの喰い合いを――――
『腹が減ったのか?少し待っていなさい』
「!」
戸惑う僕の後ろに、空腹のあまり泣いている3人のオークの子供たちと、オークたちの長である王とその側近が現れた……もしかしてこの王って、昔のゲルドのことか……?
王は自身の左腕を引き千切ると、子供たちの前に差し出し……
『さぁ、食べなさい』
それを食べて飢えを満たすように言った。
『しっかり食べて、大きくなるんだぞ』
そんなことを何度も繰り返す王に……
『王よ、もうお止めください!この状況の中、王の貴方まで失っては……我らオークにはこの先、絶望しかありません……!』
側近は心配からかそう言ったが……
『……一昨日生まれた子が今日死んだ、昨日生まれた子が虫の息だ。この身はいかに切り刻まれようと、再生するのに……これが既に絶望でなくて、何だと言うのだ……!』
『王よ……』
王のそんな言葉に、側近は悲痛な表情を浮かべた。
『……森に入り、食料を探す』
『!しかしジュラの森は、暴風竜の加護を受けし場所……』
『その暴風竜は封印されて久しい……少しばかりの恵みを――――』
オークの王はジュラの森に向かっていたが、遂には自身も空腹によって倒れてしまった。そこに現れたのが……
『お前に名前と食事をやろう』
『……貴方は……?』
『ゲルミュッド、俺のことは父と思うが良い――――』
ガビルさんのことを殺そうとした魔人、ゲルミュッドだった……こうしてゲルミュッドに名付けられたオークの王――――ゲルドはオークロードとなった……次に景色が変わると、そこにはスライムの姿のリムルとオークロードとしての姿のゲルドが、背を向き合いながらそこにいた……。
『あの方は教えてくれた……オークロードとなった俺が喰えば、飢餓者の支配下にあるものは死なない……邪悪な企みの駒にされていたようだが、賭けるしかなかった。だから俺は、喰わなければならない……お前が何でも喰うスライムだとしても、俺は喰われるわけにはいかない』
『……喰い合いは俺に分がある――――お前は負ける』
『俺は他の魔物を喰い荒らした。ゲルミュッド様を喰った。同胞すらも喰った……同胞は飢えている。俺は負けるわけにはいかない』
『この世界は弱肉強食……お前は負けたんだ。だからお前は死ぬ』
リムルは淡々と事実を告げる……この世界は弱肉強食、か――――僕にとっては、前世も同じようなものだったけど……。
『俺は負けるわけにはいかない……俺が死んだら、同胞は罪を背負うことになる。俺は罪深くともいい……皆が飢えることのないように、俺がこの世の飢えを引き受けるのだ……!』
『それでも、お前は死ぬ――――だが安心しろ。俺がお前の罪も全て喰ってやる』
『俺の罪を喰う……?』
『あぁ……お前だけじゃなく、お前の同胞全ての罪もだ』
『同胞も含めて、全ての罪を……お前は欲張りな奴だ』
『そうだな……俺は欲張りだよ』
そう言ったリムルの足元から草花が生い茂り、ゲルドも名付けされる前の姿へと戻っていく……そんなゲルドの目に飛び込んできたのは、豊かな森や綺麗な川――――そして、子供たちの幸せそうな笑い声だった……。
『強欲な者よ……俺の罪を喰らう者よ……感謝する……!俺の飢えは今、満たされた――――』
ゲルド――――ゲルドさんは満足そうな顔をしながら、光となって消えていった……その直後、僕の視界に移る景色は元の湿地帯へと戻っていた。捕食したリムルは、ゲルドさんが完全に消失した後で……
「安らかに眠れ、ゲルド」
そう呟いて、人間の姿へと戻った。それを見て、僕の周りのみんなは勝鬨を上げていた。そんな中で……
「……安らかに眠ってください、ゲルドさん」
僕はゲルドさんが消えたところを見て、静かにそう口にした……。
◇
「……終わったな」
「はっ……」
湿地帯が見渡せる場所で俺とカノン、そして鬼人たちが向き合っていた。
「オークロードを打ち倒したら、自由にしてもらっても構わないという約束だ」
「みんな、今までご苦労様」
そう……オーガ―――――鬼人たちとはオークロードを打ち倒すまでの契約だ。少し寂しい気持ちもあるが、ここは鬼人たちの選択を尊重しよう……。
「リムル様、カノン様、お願いがございます」
「何だ?」
「何卒、我らの忠誠をお受け取りください。我ら、これからも御二方にお仕えいたします」
え……それって――――
「……い、いいのか?」
予想だにしていなかった言葉に、俺は思わずそう訊き返した。カノンもその言葉に、どこか驚いた表情をしていた。
「異論はござらん」
「貴方様方に会えて、自分たちは幸運であります」
「私はリムル様の秘書兼御二方の護衛ですよ!絶対に離れませんからね!」
ハクロウ、ソウエイの順でそう言い、シオンは俺とカノンに抱きついてながらそう言ったのだ。
「我らの命、果てるまで……!」
「お、おう……!これからもよろしく頼むぞ」
『はっ!』
こうして鬼人たちは、正式に俺たちの仲間に加わることになるのだった……。
読んでくださり、ありがとうございます!
次回から新章に突入していきます。ここからカノンと原作キャラが深く関わっていきますが、果たしてどうなるのか……。
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いします。