それでは、どうぞご覧ください。
リムルがスリープモードになってから丁度三日経った頃、僕はリムルが目覚めるのを隣で待っていた。そして……
「完・全・復・活!」
観測者さんが予想した通りの時間に、リムルは回復を果たした。
「おはよう。目は覚めた?」
「カノン……あぁ、お陰様でな」
「なら良かった。あと……次からはお互いに気を付けようね?」
「そ、そうだな………そうだ、村の様子は?」
「特に変わりはないよ。ずっと見張ってたけど、襲撃とかもなかったし………でも―――」
「でも?」
「みんなが僕のことを凄い神聖視してくるのはやめて欲しい……!」
「あー………そ、それは大変だったな?俺からも言っておくから、そんな表情をしないでくれ……な?」
すると……
「あっ!おはようございます、リムル様!」
ゴブリナへと進化したハルナが入ってきたのだ。
「!お、おう……?」
「お目覚めになられて本当に良かった……」
だが、ハルナを見たリムルはどこか戸惑っている様で―――!そっか、リムルはみんなが進化したことを知らないのか……。
「今、リグルド村長を呼んできますね」
「あ、あぁ……」
リグルドを呼びにいくために、ハルナが小屋から出ていくと……
「な、なぁカノン……あんな綺麗な人、村にいたか……?」
「えっと、順に説明すると―――」
「リムル様!お目覚めになられましたか!」
「おぉ!リグルド、あの綺麗な人はだ…れ………だ!?」
小屋へと入ってきたのだリグルドを見たリムルは、僕の予想通りに驚いていた。
「だ、誰……!?」
「リグルドでございます!」
「えぇ!?」
すると、リムルは僕の方を向き……
『か、カノン?村に特に変わりはないんじゃ……?』
『あー……僕はもう慣れたから忘れてたけど、変わったことが1個だけあったんだ………』
『そ、それって……』
『……みんな名付けられたことで進化した』
『進化!?』
さらに……
「我が主!」
「!?」
「御回復、お喜び申し上げます!」
今度は嵐牙が入口を破りながら入ってきたのだ。
「その額の星………お前、嵐牙か!?」
「はい!」
リムルに名前を呼ばれた嵐牙は、二日前の時のように尻尾を振ってしまい、再び小屋が吹き飛ばされそうになる……。
「嵐牙、尻尾」
「はっ!も、申し訳ありませんカノン様……」
僕のその言葉を聞いて、嵐牙はすぐさま尻尾を振るのを止めてくれた。
「リムル様、皆にもお姿をお見せください」
「そうだな!」
僕は、外へと出て行こうとするリムルを見ていたが………
「ほら、カノンも行くぞ?」
「!分かったよ」
リムルに呼ばれた僕も、小屋の外へと出ていった……。
回復したリムルはみんなに胴上げをされ、目覚めたことを喜ばれていた。その時にも、他のみんなの変わり様に驚いていたようだけど……。
『カノン、今後のことについて話があるんだが……』
『うん、いいよ』
『さてと―――』
「よっと……俺はカノンと話すことがあるから、みんなは少し待っててくれ」
リムルはそう言い、みんなを一旦その場から解散させる。
「それで、話って?」
「嵐牙たちも加わって、俺たち大所帯になっただろ?そこでだ、これからトラブルが起きないようにルールを決めようと思ってる」
「ルール……僕も何か決めればいい?」
「そういうことだ。まぁ、もうこれっていうのは決めてるんだけど……それで俺の補佐のカノンにも意見を貰いたいんだ」
「分かった。ルールって、どんなのを考えたの?」
「ルールは大きく3つだ。1つ目、仲間内で争わない。2つ目、他種族を見下さない。3つ目―――
人間を襲わない」
この3つが、リムルの考えたルールのようだ……。
「この3つでいこうと思うんだけど……どうだ?」
「……」
その言葉に、僕は黙り込んでしまった。そっか……リムルは人間と仲良くするつもりなんだ。でも、僕は―――
「それでいいと思うよ。争いごとはない方がいいし」
「ありがとな!じゃあ早速みんなにも話しに行くか」
そう言うリムルの後をついて行くように、僕もみんながいるところへと向かって行った。
2人で外へと出た後、僕たちはみんなを広場に集めていた……
「……」
でもリムルは何故か付け髭をしていて、喋っているみんなを眺めながら切り株の上でじっとしていた………一体、何をしようと……?
「……はい、今みんなが静かになるまで5分かかりました」
そしてリムルは、みんなが静まり返ったタイミングで、そう言ったのだ……。
『……?』
『つ、通じてないだと……?』
『リムル?何してるの……?』
『こ、こっちも……!?』
疑問に思った僕がそう訊くが、何やらリムルはショックを受けてしまっていた。本当に何がしたかったんだろう……?
「き、気を取り直して………見ての通り、俺たちは大所帯になった。そこで、なるべくトラブルを避けるためにルールを決めようと思う」
「ルール、ですか……?」
「あぁ、ルールは3つ。最低でもこの3つは守ってほしい」
リムルはみんなに向けて、さっき2人で話し合った―――僕はそれに賛成しただけなんだけど―――3つのルールを伝えた。
「1つ、仲間内で争わない。2つ、他種族を見下さない。3つ、人間を襲わない」
そのルールを告げた後、リムルは質問がないか訊くと……
「はい!」
「はい、リグル君!」
「何故、人間を襲ってはいけないのでしょうか?」
リグルが魔物からしたら、至極全うな質問をしてきたのだ。
「こ、こら!リグル!」
質問したリグルを、リグルドが咎めようとするが……
「いいっていいって……理由は簡単だ。俺が人間を好きだから、以上!」
リムルは笑ってそう言ったのだ。
「なるほど!理解しました!」
「えっ?理解しちゃった……?」
「はい!」
『ま、マジか……』
流石にこのままではいけないと思ったのか、リムルは付け加えて……
「えっとな、人間は数が多いから、こっちから襲うとその倍以上の数で反撃される。だから、こっちから手を出したらいけないんだ」
「なるほど、そういうことだったのですね」
「それに、仲良くしておいた方が何かと得だからな」
「さすがはリムル様、そこまでお考えで……!」
その理由にみんなは納得した様子でいた。それからゴブタからも質問があったが、リムルがそれに答える。すると……
『カノン、お前からも何か言ってくれないか?』
『えっ?』
質問がなくなったタイミングで、リムルが思念伝達で声を掛けてきたのだ。その言葉に反応して、みんなの方に目を向けると……
『……』
『……これ、僕の言葉を待ってるの?』
『まぁ、そうなるだろうな。みんなからしたら、お前も主の一人だからな』
『だから主じゃないんだけど……』
………今は仕方ない、か……。
「じゃあ、僕からも1つだけ……」
『……!』
「そんなに硬くならなくてもいいから………さっきのルールのことだけど―――もちろんあのルールには僕も賛成する。ただ………」
「……?」
リムルやみんなが僕に注目する中………
「3つ目の人間を襲わないっていうルール……
もし、人間の方から襲ってきたら、その時は仲間を守るために躊躇せず戦ってほしい……もしもの時の責任は、全部僕がとる」
『!?』
「もちろん、僕もそうするつもりだよ………そうならないのが一番だけど、一応頭の片隅にでも置いておいて」
◇
「さっきはありがとな。あぁ言ってくれて助かったよ」
「いいよ。別に礼を言われることのほどじゃないし」
あの後俺は、カノンに礼を言っていた。本人はこう言っていたが、あのままだと本当にそうなったときに大変なことになるから、本当に助かったと思っている………まぁ、そんなことは起きないことを願いたいが……。
「さて……お前も聞いてたと思うけど、俺はドワルゴンに行って職人を探してくる。あのままじゃ、衣食住の『衣』と『住』が問題だからな……」
というのも、早速俺はみんなを衣食住の『衣』、『食』、『住』のチームに分け、行動させることにしたのだ。その中で『食』のチームは狩りや採集などを進めており、特に問題なかったのだが……
『これは……家とは呼べないな』
『『っ!』』
ホブゴブリンたちが組み立てた小屋を見て、俺はそう呟いた………あっ、崩れた……。
『め、面目ありません……』
まず問題なのは、衣食住の『住』だったのだ……見ても分かる通り、目の前の小屋では住めるはずもなく、一刻も早く解決しなければならない問題だ。あとは衣類も問題だ………今のところ、ホブゴブリンやゴブリナたちは布を巻いているだけの状況だ。リエンも俺が布を多めに巻かせ、その上から少し大きめの布をローブのようにして羽織らせている……という感じだ。
『実は……技術を持った者が村にいないのです』
『そうなの?』
『はい……』
そういうことか……技術がないと、どのみち難しいよな……。
『じゃあ、そういう人たちに心あたりは?』
『!そういえば……リムル様、カノン様、一つ心当たりがありまして―――』
『本当か?』
その心当たりというのは、大河沿いにある武装国家ドワルゴンという国にいるドワーフたちのことだったのだ。どうやら以前も取引したことがあるらしく、魔物でも交渉は可能みたいだ………それに、ドワーフといえば鍛冶の達人だ。これは絶対に、取引を成功させないとな……!
という経緯で、ドワルゴンにいるドワーフの誰かに技術指導者として来てもらえないかを交渉しに行くことにしたのだ。
「それで……お前には村の留守を任せたいんだけど、いいか?」
「うん、いいよ。それに、僕はもともと残るつもりだったし」
「え?そうなのか?」
「村に何かあったら大変だしね。それに、僕のスキルなら村の守りに役立ちそうだし」
カノンは俺の頼みに即答し、村の留守を引き受けてくれた……確かに、カノンのスキルである霊眼や強化六感は索敵にはもってこいだし、敵が近づいてきていても先に見つけることができる。さらにあの風魔法なら、こちらから先手を打つことも可能だろう。
「ありがとな。必ずとびきりの職人を連れてくるからな」
今回はカノンに留守番してもらうことになったけど、今度は一緒に何処かに行きたいものだ。例えば………俺とカノンが人間の姿になれたらの話だけど、人間の国とかに行ってみるのもいいかもしれないな。
「よし……じゃあ、行ってくる!」
「お気を付けてー!」
「お早いお戻りをー!」
そうして俺はみんなに見送られながら、リグルや案内役として連れていくゴブタたちを含めた数人のホブゴブリンたち、さらにドワルゴンまでの足として嵐牙たち嵐牙狼族と共に、出発して行った。
読んで下さり、ありがとうございます。
今回はリグルドショックの回でしたね………この作品には「カノンパニック」という言葉が3話あたりに登場しましたが、これはカノンが狐霊族だと知ったときになどに、大勢が一斉に驚くことなどを指します。これからもその機会が増えていくかも……?
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いいたします。