それでは、どうぞご覧ください。
リムルがドワルゴンに職人を探しに行った後、僕は守護者として慣れないながらも村の立て直し作業の指揮を執り続けていた。朝はスキルの鍛錬をし……
「カノン様、ここなのですが……」
「うん、そこは―――」
「カノン様、これはどこに……」
「それは、広場の方に―――」
昼間は作業の様子を村の周辺の警戒も合わせて見て回りつつ、作業の報告を聞いたりしていた。そして夜は霊眼を使い、他の種族からの襲撃が来ないかを見張っていた。
このくらいは守護者として、当然にすべきことだろう―――そう思っていたが……
「カノン様……流石に少しお休みになっては……?」
リグルドがそう声を掛けてきたのだ。
「いや、このくらいは平気なんだけど……」
「そうは言いましても………リムル様が旅立たれてから、お休みになられていませんので……」
「本当に大丈夫だから……これくらいで僕が倒れることはないし」
この身体は人間だったときよりも便利になっていて、なんと睡眠は必要ないので休まないくらいどうということはない。
「それに今は、僕がこの村の留守を預かっているんだ。僕が一番働かないと……」
それを訊いたリグルドは……
「我らのことをそこまで……ですが、何卒お休み頂けないでしょうか。我々はもちろん、リムル様もお帰りになられた時にご心配されると思いますので……」
……それでリムルやみんなに迷惑をかけるわけにはいかない、か………それに言う通りにしないと、また―――
「………分かった。じゃあ少しだけ休ませてもらうけど、何かあったらすぐに呼んで」
「承知いたしました!」
僕は渋々ながらも、休憩をとることになった………もちろん、異変が起きたらすぐに分かるように、霊眼や魔力感知、強化六感はつけたままでだ。
◇
村を出発してから数日後、武装国家ドワルゴンに到着した俺は、有名なドワーフの職人であるカイジンやガルム、ドルド、ミルドのドワーフ三兄弟に出会うことができた。さらには、カイジンたちのピンチを助けたことで、俺は打ち上げとしてカイジンたちにエルフのお姉さんたちが接客してくれる店『夜の蝶』へと連れて来られていた………もちろん、村に来てくれる技術指導者の件もカイジンが何とかしてくれることになり、交渉の方もしっかりと成功させたのだ。
そして俺はエルフのお姉さんたちに囲まれ、味は分からないものの酒を飲みながらの会話を楽しんでいると……
「スライムさん、これやってみない?」
「え?」
褐色のエルフのお姉さんに、そう言われたのだ。
「私、これ得意なんだ。結構すごいって評判なんだよ?」
す、すごい……?それってどんな―――って……
「水晶玉……てことは、占い?」
「正解!」
少し期待と違ったけど………せっかくだし、何か占ってもらうことにしよう!
「じゃあ、お願いしようかな。それで……何を占うんだ?」
「そうね………あっ!」
「?」
「せっかくだから、スライムさんの運命の人とか?」
「えっ?」
「旦那、やってもらったらどうだ?」
「じゃあ……それで!」
「うん!任せて……!」
運命の人か………まぁ、人というか、運命のスライムだったりして―――
「あっ!見えてきたわよ」
「おっ?」
その言葉に反応し、みんなが水晶玉に注目すると同時に、何かが浮かび上がってきた………そこには、白いマントを羽織った黒髪の女性と5人の子供たちが映し出され、何処かに行こうとしてる女性を子供たちが涙ながらに引き止めているように見えた。
「!まさか……」
「何か知ってるのか?」
「その人……『爆炎の支配者』シズエ・イサワかもしれないぜ?」
「爆炎の支配者……有名なのか?」
「あぁ、ギルドの英雄で見た目は若いが、もう何十年も活躍していたんだ。今は……どっかの国で若手を育ててるって聞いたことがあるな」
というかシズエ・イサワって………この人、日本人だよな……?何処にいるかは分からないけど、今度会いに行ってみることにしよう。
「それにしても……」
「ん?」
「綺麗な人だったな?」
「!そ、そうだな……」
「……顔赤くなってるぞ?」
「え!?……って、スライムだから顔色変わんないし」
確かに美人だったけど………運命の人、か……。
「あれ?まだ何か……」
「えっ?」
「まだいるのか……?」
どうやら俺の運命の人はまだいるみたいで、今度は別のものが水晶玉に映し出される………そこに映っていたのは―――
「こりゃ、さっきの人に負けず劣らずの美人だな……!」
銀に近い灰色の髪を持ち、右目が白色、左目がエメラルドグリーンの瞳を持ったクール系の獣人の美少女だったのだ………ん?この獣人、なんだか顔がさっきの人に似ているような……?
水晶玉に映った獣人の美少女は和装風の服を着ており、手に弓を持って腰には刀を差していた……すると、水晶玉の中の獣人は弓を構え、何かを狙い始めたのだ。だが、その狙っているものには黒いもやがかかっていて、一体何なのかが分からなくなっていた……そして、その獣人が矢を放った瞬間……
「あっ、終わっちゃった……」
水晶玉には何も映らなくなってしまった……それから話題はその獣人のことになったのだが、その獣人ことが俺は頭から離れることはなかった……。
◇
リムルが旅立ってから一週間が経った頃……
「カノン様!」
「どうかした?」
いつものようにスキルの鍛錬をしている僕に、リグルドが何かを報告しにやってきたのだ。
「それがですね……森の各地からゴブリン村の族長たちが訪れ、面会を求めているのですが……」
「面会?」
「はい。どうやら、リムル様とカノン様の噂を聞いたようでして……」
噂……ゴブリンが牙狼族に勝つなんて本来はあり得ないことみたいだから、その関係だろうか。あるいは僕の―――狐霊族のことか。でも………
「……」
「カノン様……?」
この村が牙狼族に襲われている時、今ここに訪ねてきたゴブリンたちはこの村を見捨てている………そんなゴブリンたちを仲間にしてもいいのだろうか……。
「いや、何でもないよ」
「それで……如何されますか?」
この村を見捨てたのに今更助けを求めてくるのは、僕としては少し信用できない……けど、
「……リグルドはどうしたいの?」
「わ、私……ですか……?」
「そう。ゴブリンロードであるリグルドの意見―――というよりも、正直な気持ちを聞きたい」
僕はまず、当人であるリグルドに意見を訊き、リグルドがゴブリンたちのことを許すと言うのなら、僕もそれを尊重することにした。僕の意図を察したのか、リグルドは少しの間考えてからこう言った。
「……カノン様のおっしゃりたいことは分かります。ですが、彼らもまた同胞……どうか、守護をお与えいただけないでしょうか」
そんなリグルドの言葉を聞き、僕は……
「………分かったよ。リグルドの気持ちを尊重するよ」
「承知しました!では、こちらに待機させておりますので―――」
早速リグルドについて行くと、そこには4人の村の長を先頭にした500人ほどのゴブリンの集団がいたのだ。
「初めまして、僕は狐霊族のカノン=テンペスト。今は不在のこの村の主、リムル=テンペストに代わり代理を務めている者です」
「狐霊様だ……!」
「まさか生きているうちに会える日が来るとは……!」
「お、お初にお目に掛かります狐霊様!この度、我らは―――」
村の長たちの話によると、前のこの村と同じようにヴェルドラが消えたことで、他の種族に淘汰されそうになっていた……そんな時にこの村の噂を耳にし、リグルドたちの主であるリムル、そして狐霊族である僕の庇護を求めに来たのだという……。
「どうか我らを、庇護下に加えていただけないでしょうか……!」
そう必死に頼んできたゴブリンたちであったが、僕の答えは既に決まっていて……
「分かりました。一先ずはあなたたちを受け入れます」
「!ほ、本当に―――」
「ただし、最終的な判断はリムルが戻ってからになりますから、それは承知しておいて下さい」
「も、もちろんです!感謝いたします、狐霊様!」
『ありがとうございます!』
僕はゴブリンたちを一旦は受け入れ、リムルが帰ってくるまでは保護することにした。
読んで下さり、ありがとうございます。
水晶玉に映っていた獣人………一体何者なんでしょうか……?
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いいたします。