10巻 祝・追放100回記念   作:高見南純平

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第420話

「はい、質問」 サイフウがまた手をあげる。

 

 迷いのない動きだった。授業が始まってから、彼女は一度も視線を逸らしていない。壁いっぱいに映し出されている武器進化のアニメーションを見ながら、すでに次の工程を考えている目だった。

 

「その性格、冒険者向きだよ」 ゼマは感心する。

 

「その、クリスタルロッドは、今度はどういう強化を?」

 

 その問いに、ゼマが一瞬止まる。

 

「どういう、えっと、そりゃあ強く……、って全然考えてなかった」

 

 教室の空気が少しだけ揺れる。

 

 レクチャーしている側だが、当の武器の強化案は、ゼマの頭の中にほとんど存在していなかった。

 

 ララクが壁の投影をちらりと見上げる。アイアンロッドからクリスタルロッドへ進化した武器の図がまだ表示されたままだった。

 

「壊れる気配がないから全くもって考慮してませんでしたが、こうやってチャートを出すと、武器の向上をすべきですね」ララクが言う。

 

「伸びるし、固いし、充分だと思ってたけど。あんたと一緒にいるなら、もっと強くなれるべきだね。私もこいつも」ゼマが言いながらクリスタルロッドを握る。

 

 手の中の透明な結晶が、照明を受けて淡く光る。

 

 その言葉を聞いて、カライジはほんの少しだけ眉を動かした。

 

(今、伸びるっていってたか……?)

 

 疑問は浮かんだが、今は口に出さない。

 

「っお、じゃあそれを実行するのはどうかい? ゼマ先生の武器を強化、その旅にこの子たちを連れて行ってくれないかい?」学長が楽しそうに言う。

 

 完全に話をまとめに入っていた。

 

「それ希望したいです。講座だけじゃなく、実務も経験したい。このあと冒険者になるんだから、俺たちは。そうだろ、レッツタ」カライジが振り返る。

 

「……ん? っぁ、来年の気候を予想してた」レッツタがぼんやり答える。

 

 教室の空気が一瞬止まり、ゼマが小さく笑う。

 

「レッツタも賛成みたいです。サイフウさんは、当然参加したいよね?」ララクが確認する。

 

「もちろん、武器の加工なんて、得意分野だし」サイフウは即答する。

 

 迷いはなかった。むしろ最初からそのつもりだったような口調だ。

 

「レッツタくんはよく分からないけど、……学長の許可もあるなら、ロッドの強化を一緒に体験しようか」ララクが言う。

 

「うっし、なんか、気分が上がってきた! クエストしてっと、自分の事はおろそかになりがちだからな」ゼマが笑う。

 

 クリスタルロッドを軽く振る。

 

 どうやって強くするのかはまだ分からない。だが、自分の武器に意識を向けること自体が、妙に楽しくなってきていた。

 

 そしてその場で、学長が手を叩いた。

 

 壁の投影が切り替わる。

 

 簡単な依頼書のフォーマットが表示された。

 

 こうしてこのクエストもまた正式なクエストに認可される。

 

【引率・課外授業を頼んだよ】

 

冒険者志望の、カライジくん、サイフウさんにレッツタくん。きっと君たちとの冒険は、これから仕事をこなすうえで貴重な蓄積になると思うんだ。モドムくんの紹介だから心配はしていないけど、生徒たちの安全は絶対だよ。んじゃじゃ、先生たち頼んだ!

 

                  依頼主・インテグラル学院学長

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