ワイ卿、Fate世界の円卓の騎士になる。   作:サーッ・タドコロ

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いつもお読みいただきありがとうございます。

「前書き」のご挨拶について。
この部分を考えるだけで1時間くらい使ってたり(余計なこと書きまくって、消して、書き直して…を繰り返しているなど)して、「いつかエタるくらいなら、この時間を執筆に当てたいかも…」とか思いましたが、「まあ素人の二次創作だし別に何したっていいか…」という最強のマインドで、これからも前書きを書くことにしました。

ただ、もう少し文量をあっさりめにしていこう…という努力だけはしようと思います。
せめて、時間をかけすぎないという自分ルールを決めて、メリハリを付けていこうと思います。
今後は短めの文量になるかもしれませんが、お気になさらずお読みください。


※注意
・『火を付けたまま目を話して放置する』というシーンが出てきますが、絶対に真似しないでください。明らかな不注意ですが、ワイは完璧な人間ではない・ワイ自身もちょっといい加減なところ(慣れや油断など)はある、という描写としてわざと書いているものです。重ね重ね、絶対に真似しないでください。火の用心は大事です。



10:ワイ、メイク・ザ・スモーク

 

ようお前ら!元気にしとるか?

ワイは(大地を踏みしめて)元気やで!

 

 

大怪獣バトル…もとい、大魔術師バトルがワイの頭上スレスレで繰り広げられた日の、その後。

 

モルガンちゃん…お師匠様は、エクトル卿が領地に居るときにだけ訪問する約束をしたらしく、その日はそのまま帰ってもうた。

モルガンちゃんとお別れの挨拶をして、その姿が森の中へと吸い込まれるようにして消えていったのを確認した後、入れ替わるようにしてひょっこりとマーリンが現れたところや。

 

「やれやれ、やっと帰ってくれたか。いやあ、流石の私も少し肝を冷やしたよ」

 

マーリンシネワーーーーーーイ!!!!

 

「なんだい、急に。剣や格闘技の訓練というなら、ワイはエクトル卿に頼みなさい。…ああ、しばらく留守にするという話だったね」

 

ちゃうわい。

今のは純粋に、お前を一発ぶん殴りたいっちゅう、切なる願いの発露や。

 

まあ、当たるとは思っとらんかったけど。

とりあえず空振りしたって良いから、一回はカマしておかんと気が済まなかったってだけや。いったん、もうええってことにしとく。

 

 

そんなことより…そこの、ワイの偽物をいい加減にどうにかしてや。

 

この状況を見たケイ義兄ちゃんなんか、顔真っ白んなって、どっか行ったまま帰ってこんのやぞ。

ケイ義兄ちゃんでこれなら、もしもアルトリアちゃんが見てもうたら、ギャン泣きするか失神するんちゃうか?流石にヤバいやろ。

 

「ああ、そうかもしれないね。それじゃあ、キミ、ご苦労さま。もう不要になったから、もとの仕事に戻りなさい」

 

「──…んぉ…あ、あれ…な、なんだ…ぼくは…?」

 

「うん、少し仕事を手伝ってもらっただけさ。大丈夫、ちゃんと働いて貰った分の報酬は、後で届けておくからね。ほら、元の場所へお帰り」

 

「…は、はぁ…?し、しつれい…します…?……??」

 

…お……おうふ…。

な、なあ、マーリン、お前まさか…。

 

「ははは、まあ良いじゃないか、終わり良ければと言うやつだよ!」

 

……もう頼むから、これ以上余計なこと喋らんでくれ。

ホンマに、頭痛くなってきたわ…。

 

…とりあえず、朝ご飯作ろ。

 

 

 

 

せっかく竈に火が入っとる(偽物のワイが、薪を使って火を焚いてもうてた)んやから、薪が勿体ないし、朝ご飯とは別に何かしてみたいなあ。

 

そう思って、出来るかどうかはしらんけど、燻製を試してみることにした。

魔術の火でもウッドチップ的なやつさえ用意できれば作れなくはないけど、クッソ時間掛かるし。

 

ざっくり言うと、食べ物の周りを熱や煙がこもるように覆って、その中に溜まった熱でじっくり火を通して作る食べ物やね。

 

 

ワイも意外に思ったんやが、この時代に燻製肉は全く見かけん。…まあ、そもそも燻製がいつ頃の技術かなんて知らんのやけども。

 

せっかく、塩も使わずに脱水して、それなりに長期保存出来るようになる食料が作れる方法やのに…こういうのも、失伝しとるっちゅうことなんやろか?

まあ、ワイも今まで試さなかった理由として、作るためのスペースの確保の難しさと、薪が勿体ないっちゅうのがあるから…そう考えると、この時代ではそもそも流行らん方法かもな。

 

いや、薪木にできる樹木なんてそこら中にあんねん。

ただ、伐採速度や薪木の状態に加工するまでの手間を考えると、肉なんて塩で脱水したほうが早いし楽って話なんよな。

 

 

で、燻製なんやけど…今回やってみるのは、チーズの燻製やな。

 

燻製に使えるような肉は、この厨房には置いとらん。

捕れたてのお肉を塩漬けせずに食うんは、狩猟で功績を挙げたやつとかの特権・ご褒美みたいなもんらしい。

 

あと、一番でかい獲物の頭を褒美に貰ったりするみたいな話も聞いた。

ケイ義兄ちゃんは、それくらい出来るようになってから独立したい…って、よく言うとる。

 

まあ、無い肉の話はええねん。

チーズの燻製を思いついたのは、そのケイ義兄ちゃんの食べ物の好き嫌いのこともあるんや。

 

ケイ義兄ちゃんはアルトリアちゃんとは違って、実は色々と嫌いな食べ物があるらしい。

そのため、よく厨房に来ては「今日はなんだ?」「じゃあ、アレは抜いといてくれ」とこっそり頼んできよる。そんで、ついでにつまみ食いも。

 

ただ、どうしても食卓から抜くことができん材料があって、それが乳製品や。

 

エクトル卿のお宅では、ほぼ毎食と言っていいほど乳製品が食卓に並ぶ。

というか、そうしないと、おかずや主食を絶対どれか一品は抜かなあかん。ホンマに欠かせん食材やね…。

 

そんでケイ義兄ちゃんは、しぶしぶ…と言った様子で食べはするんやけど、その時に乳製品を使った料理の臭い消しが少しでもあまいと、物凄い変な顔しながら咀嚼する。

ちなみに、実はエクトル卿…お義父ちゃんも、ちょっとわかりにくいけど、乳製品を食う時には微妙に渋い顔をする。

 

エクトル卿に好き嫌いなんかあるんか?…と思ったけど、実の親子やし、舌も似とるんかもな。

あと、なんや二人共むっちゃ露骨に麦粥以外が食べたい(パンをつくってほしい)って目をしとるし。

 

…そんなケイ義兄ちゃん(と、おそらくエクトル卿)のため、乳製品を食卓から抜くことができんのなら、せめて食べやすくできんか?って日頃から考えてたのが、今回の切っ掛けの一つってことやね。

 

 

朝ご飯は、ひとまず作ってた途中だった様子の麦粥とおかず数品をパッと仕上げてまう。

 

…よく味見してみると、微妙にケイ義兄ちゃんが苦手そうな、下処理というか苦みや臭み抜きが足りとらん感じの味具合やな…。

まあ、今日はちょっとハーブ多めにするだけで我慢してもらお…。

 

で、温かいもんは食卓に並べる直前に魔術の火で温め直すから、いったん大鍋をどけて…。

空いた竈で、燻製作りの用意を進めていく。

 

今回やるんは、冷燻っちゅうやつやな。脱水や加熱より、香り付けがメインの方法や。

まあ、そもそもそれ以上の温度で燻製したらチーズが溶けてグズグズになるから出来んって話なんやけども。

 

燻製に必要なウッドチップは、トイレの脱臭なんかにも使ってるオーク木の木屑を使う。

…いや、トイレに使ってるってだけで、トイレから直接持ってきとるわけやないで。そのためにワイが少しずつ貯めとるもんから出すって話や。

 

で、それから口の広さがほぼ同じ鍋を2つと、チーズを乗せておくための手頃な金網…は無いから、鉄串を並べて代用する。

幸い、エクトル卿は領主ってだけのことはあって、貴重な金物(かなもの)も結構な数が置かれとる。…よう考えたら、厨房って貴重品の宝庫やな…怖いからあんまり考えんようにしとこ。

 

チーズが溶けて滴り落ちんように、並べた鉄串の上に鍋の口の中にすっぽり収まる広さのトレイを置く。

流石に燃えんやろうけど…万が一のことを考えて、木製ではなく金属製のトレイにした。

 

…けど、熱が通り過ぎんか心配やな…。

まあ、失敗も良い経験やと思って試すだけ試そか。薪木がもったいないし、チーズは溶けても食べれるし。

 

準備ができたら、下に置く方の鍋にウッドチップを入れて、ウッドチップから煙が出るようになるまで鍋に火を当てて熱する。

で、煙が出たら鍋を火からぐいーっと離して、そうして弱火の位置を保って、あとはじっくりと熱し続けておく。

 

煙が立ってる鍋の上に、事前に準備しておいた諸々の燻製用セットを乗せて・被せて、あとは薪木の火が消えるまで放置や。

ホンマは一定の火力でじっくりやるんがええんやけど…それこそワイの魔術の火なら確実やろうけども、燻製一つにそんな長時間は付き合えん。料理以外の仕事や、日々の訓練もあるし。

 

 

よっしゃ、準備完了!

 

ほんじゃ朝ご飯を温め直して、ケイ義兄ちゃんとアルトリアちゃんを呼んで、飯にしようや。

 

 

 

 

朝食後。

 

 

「…なんだか、煙臭いです」

 

「なんだ、小火(ぼや)か?」

 

アルトリアちゃんとケイ義兄ちゃんが、深刻な表情で立ち上がり、臭いの元がどこだか鋭い目つきで探している。

 

ああ、ちょい待ってや。多分ワイの料理や。

結構煙臭くなる調理法やけど、小火は起きんようにしっかり気をつけてるから大丈夫なはずやで。

 

…っちゅうても、だからって放置し過ぎも良くないわな。

こまめに確認するつもりではあったし、一回様子を見ようか。

 

「おおぉ…ワイ兄さんの料理だったのですか。それは、とても楽しみです」

 

「いや、にしても言われてみれば随分煙臭いな…本当に小火じゃないのか?」

 

せやな、注意はしとった~って言うても、こっちでは初めて作るやり方やしな。

どういうもんか見てもらったほうがええやろうし…ほんなら、一緒に確認しに行こうや。

 

 

ほんで、厨房に入ってみると…そりゃこうなるか、と言うしかない状況になっとった。

 

一応、換気のための通気穴は開いとるけど、部屋の天井に薄っすらと白い雲が浮かんで見えとる。

なんちゅうか、焼肉屋の煙みたいな感じの。

 

エクトル卿の厨房の竈には、煙が抜けていくための穴が近くに空いとる。

そっから全部抜けていくっちゅうわけでもないけど、厨房内の通気穴と合わせれば、よほどの大火力を出さん限り、ここまで煙が籠もることはない。

 

…対して、ワイが今回行った冷燻は、その竈から鍋を離して煙を籠もらせるっちゅう方法だった。

つまり、竈の近くの通気穴からは上手く煙が抜けていかなかったんやと思う。

 

換気扇なんてもんがないこの時代に、想定外の方法で煙を焚いたら、そりゃあこうなるわ…今度から、作るんなら外でやらんとアカンな。

 

 

そんな光景を目の当たりにしたケイ義兄ちゃんとアルトリアちゃんは、「なんだこれ?」という顔で困惑していた。

 

見ての通り小火でも火事でも無いんやけど…こらアカンわ、思っていた以上に煙が出すぎやね。

中止や中止。まだ時間的に早いとは思うけど、これ以上は厨房内ではやったらアカンわ。

 

まあ、なんでも上手くいく訳でもないっちゅう話やね。とほほ…。

 

 

んで、それからすぐに3人で協力して厨房内から煙を追い出し、中途半端に燻されたチーズを回収した。

 

…なんや?回収が早すぎたかと思ったけど、煙がめっちゃ出てたおかげか、チーズにそこそこ色が付いとるな。

そんで、香りもちゃんと付いとる…おお、すっごい香りやな。失敗かと思ったけど、なかなか良い感じやんけ。

 

「げ…なんだ、チーズだったのか…ちぇ、つまみ食いできると思ったのに…」

 

ケイ義兄ちゃんは相変わらずやな…でも、これはケイ義兄ちゃんでも多分食える…かもしれんで。

ほら、ちょっと嗅いでみい、嫌な匂いやないやろ。

 

「い、いい…俺はいい…ほら、アルトリア、お前食ってみろよ」

 

「はい、食べたいです。ケイ兄さんの分も全部食べます」

 

アルトリアちゃんも相変わらずやな…いや、ワイはエクトル卿に「二人ともちゃんと食べるように言いなさい、任せたぞ」って頼まれとるんや。

 

この「ちゃんと」ってのは、食べ過ぎも食べなさすぎもダメってことやで。

ちょっとくらいのつまみ食いはまだ良いけど、人のもん勝手に取って食ったり、逆に残したりするんはダメや。前に骨髄ステーキ焼いたあの日に、メッチャ説教されとったんやろ?

 

「いいえ、要らないと言うなら食べてあげるというだけです。勝手に取ったりはしません、ふんす」

 

…なんか、ちょっとマーリンの雰囲気を感じる物言いやな…。

仕方ないとは言え、マーリンがこの村の中をウロチョロしとるようやし、なんや悪影響でも受けてそうやな…。

 

エクトル卿が帰ってきたらちゃんと報告して、ちょっとマーリンと離したほうがええと思うって伝えとこ。

 

 

それはそれとして。

 

ほんじゃ、まずはアルトリアちゃんに味見してもらお…の前に。

問題ないとは思うっちゅうだけで、不味くなっとったらアカンんし、ワイから食うか。

 

「ああ!私が食べます!私が食べます!」

 

待て、待て。

多分大丈夫だろうとは言え、流石に不味いもんは食わせられん。ホントに味見するだけや、ちょっと待っとってな。

 

「むむむ…」

 

ほんじゃ、いただきます。あむっ。

 

……ほおお。

いや、大丈夫とは思っとったけど、思った以上にええやん。

 

何やこの香り、チーズに使うにはむしろ強すぎるまであるけど、お陰でチーズ臭さは完全に消えとる。

ワイに燻製の香りの違いなんてどうせあんまわからんと正直ナメとったところがあるけど、こりゃ結構な上品な香りって言ってええんやないやろか。

 

「ワイ兄さん、私の分はまだですか!」

 

あ、そやったな。

ほら、アルトリアちゃんも食べてみい、美味しいで。

 

「はむっ」

 

あ、やっべ。

こらこら、ちゃんと皿に盛ってから食べや。

エクトル卿が見てたら鉄拳が飛んでくるやつやぞ?ワイの方に。

 

いや、皿に置いて渡さなかったワイが悪かったな、うん。エクトル卿には内緒やで?

 

「もむもむもむもむもむ……」

 

…すっごいじっくり味わうやん。

いや、アルトリアちゃんなら何でも美味しいって言うてくれるとは思うけど、お味の方はどうや?お口に合いそうかいな?

 

「……んむ。はぁぁ…美味しいです。流石です、ワイ兄さん。なり方はわかりませんが…もしやワイ兄さんなら、宮廷料理人?というものにすらなれるのではないでしょうか」

 

「おお…そこまで言うほどか」

 

いや、流石に宮廷料理人は言いすぎやろ。ワイもようわからんけども。

 

でも、ケイ義兄ちゃんが苦手であろう乳臭さは、ホンマに全く感じんで。

駄目なら駄目で、まあ目的に合わんかったなってことで今後作らんってだけやし。とりあえず一口どうや?

 

「ええ?!…ケイ兄さん、ちゃんと食べてください、好き嫌いは良くないとエクトル卿にだって言われているでしょう」

 

「何だその言い方は、出されたものを残したりはしてないだろうが!…まあ、アルトリアとワイがそこまで言うなら…スン、スン……うぅん…?…はむ」

 

そう言ってケイ義兄ちゃんは、とりあえずほんの一口分だけかじり、もちゃ…もちゃ…と、もの凄く渋い顔で咀嚼を進める。

 

「…ん?」

 

片眉を上げ、不思議そうに咀嚼を進め…口の中のチーズがすっかり溶け切って無くなってしまったのだろう、今度は食べかけのチーズの半分ほどを口に含み、またゆっくりと咀嚼する。

 

口の中でじっくり転がすように味わい、不思議そうに眉と瞳もコロコロ転がす。

また、口の中が空になってしまったようで、食べかけの残りを全て口の中に放り込み、また口の中で転がすようにして味わう。

 

うん。うん。と、静かに頷きながら味わい、また口の中が空になったのだろう。

今度はワイの持っているチーズの残りから、一つ拝借しようと手を伸ばし…。

 

 

って、ちょっと待てい!(江戸っ子)

 

なにを自然と2個目に手を付けようとしとんねん。

残りは今日の夕食に出す分でもあるんや、食っていいのはつまみ食いで済む量までやで。

 

「おお、すまん。…いや、驚いたな、本当に臭くない…というか、とんでもなく美味いな。なんだこれ、本当にチーズなのか?」

 

せやで、燻製っちゅう調理法で作った、言わば燻製チーズや。

まあ、ワイもここまで美味しくなるなんて予想外のことやったけども…。

 

…これは今気づいたことやけど、恐らく悪臭の方の()()()()も消し飛んでくれとるんが、良い要因になったんやと思う。

あえて口には出さんことやけど、ワイがなんとかトイレを作って軽減できるようになってきたとは言え、そこら中でほのかにクッサいからな…。

 

水は1日放置するだけでも結構クッサくなるからこそ、毎日の水汲みは欠かせんし。

ああ、1日置いた水は、畑の水撒きとかで使われとるから、無駄にはしとらんで。

 

それと似たようなもんで、食品のニオイ移りも酷い事が多い。

肉をすぐに塩漬けにして保存しとくのも、防臭の意味もありそうやなって、今ならちょっと思うわ。

 

で、ワイもあんまり気付いとらんかったけど、多分チーズにも結構酷めなニオイ移りがしてそうなんよな。

まあ、こんなもんか?って思って食っとったけど、これを味わった後やと、流石にこれまでのチーズが臭かったと思わざるをえんわ。

 

ただの好き嫌いの範疇やと思っとったけど、エクトル卿もケイ義兄ちゃんも、味やニオイの違いがちゃんと分かるタイプの人やったのかもしれんね。

 

「…なあ、ワイ。今度から毎食このチーズを出さないか?なんなら、ミルクなんかも同じように出来ないか?」

 

いやいや、チーズはとりあえず慣らしも兼ねて試しに使ってみただけで、流石に毎食出すのは無理やで。

いくらエクトル卿の領地では手に入りやすいからって言うても、チーズだってちょいと高級品や。

 

っちゅうか、ミルクの燻製って出来るんか…?

多分失敗する気がするけど、一応試してみるか…。

 

いや、そんなことより、チーズの製法をなんか試してみて、チーズそのものがもっと手軽になった方がええやろか?

わざわざ子山羊やらを潰してチーズ作るらしいし、それよりもっと手軽な方法を、やね。

おそらく…酵素があれば多分作れるはずやし、ワインとか使ってみるんはどうやろか…。

 

「…とりあえず、夕食までにマーリンに取られないように、ちゃんと隠しておきましょう」

 

「ああ、それは間違いないな」

 

せやな。

 

あいつにはガチで横取りの前科がある。ワイも異論無しや。

マーリンを相手にワイらごときが隠しきれるか?という問題には目をつむるとして。

 

そもそも、別に食事する必要はないって言うてたし、わざわざこっちからマーリンに食わせんでも大丈夫やろ。

仮にもし食いたいっちゅうても、まずはちゃんと以前のことを謝ってからや。食いもんの恨みは忘れたらアカンでホンマに。

 

 

──エクトル卿や私兵団などの大人たちがいない期間、ワイら子どもたちはこうして留守番がてら、いつもよりちょっとだけ自由に色々楽しんどったんや。

 





▼チーズの製法

この時代だと、基本的にはレンネットのような、「哺乳類の胃で生成される、タンパク質分解酵素(凝乳酵素)」を必要とする。
主には仔牛を潰して、その胃から回収する(第四の胃・ギアラ、そこから取れるもの)などされていた。

この酵素は、飲んだ乳を消化吸収するための酵素として発生するものなので、言うなれば「乳を吸って育つ哺乳類の胃」からなら大体似たようなものが生成されるもので、とくに胃の容量や乳の排出量が多いような、山羊や羊の胃などが向いている。

乳の凝固の原理さえ再現できれば、わざわざ哺乳類を潰さずともチーズ(とほぼ同等のもの)は作れるので…例えば、牛乳とワインでも「ワイン風味のチーズ」が作れる。
その他にも、「クエン酸、レモン汁、酢、液体塩麹」でも乳の凝固を再現できることから、似たようにチーズが作れる。

この時代でまともに手に入るのは、哺乳類を潰す方法以外なら、酢かワインくらいになるだろう。


ちなみに、いわゆるカビで長期保存を可能とするようなチーズは、この頃はまだ無い。
(もしくは、食品とみなされていない)
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