ワイ卿、Fate世界の円卓の騎士になる。   作:サーッ・タドコロ

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いつもお読みいただきありがとうございます。

当時の労働環境について、一部捏造です。雰囲気でお読みください。


12:ワイ、イン・ザ・ビレッジ

 

ようお前ら!元気にしとるか?

ワイは(んばば・んばんば)元気やで!

 

 

先日、ケイ義兄ちゃんに連れ回されながら村の人達とちゃんと挨拶をして回って、その日からワイは毎日のように村のためになにか一つは仕事をするようになったんや。

 

そもそも、ケイ義兄ちゃんもアルトリアちゃんも、エクトル卿の屋敷のお仕事ばっかりじゃなくって、村でのお仕事もしとったわけやからな。

言うなれば、ワイは今までまだまだ甘やかされてたか、もしくはサボっていただけ(敷地の外へは出禁状態だったんやけども)っちゅうことでもあるわけで…。

 

ほんじゃあ、ワイも頑張るわい!

…って奮起しようと思ったんやけど、具体的に何すればいいかはわからんくてな。

普段の仕事もエクトル卿に「これやってね」って任されてたもんで、自主的にやってたってわけやないし。

 

そんで、ちょっと情けない話やけども、ケイ義兄ちゃんを頼ることにしたんや。

まあ、ワイが頼れる相手なんて片手で数える程度しかおらんし、今はさらにケイ義兄ちゃんくらいしか(一応マーリンは居るけど、気が乗らないと面倒くさがって話を煙に巻こうとするから、人選として微妙…)頼れんかっただけなんやけどな。ガハハ!

 

 

そんな流れで、ケイ義兄ちゃんとの会話しとったときのこと。

 

「まあいいが。…でも、勝手に報酬をねだったりすんなよ」

 

はあ?

 

…あ、そういうことか。

あれや、「働くからお金くれ」って話やな。

 

「ああ、お前も勉強してるから少しくらい相場感はあるだろうが…だからってここは父上の領地だ。そこを息子だからって理由で、好き勝手商売するのは許されねえ。金を払う側ならまだしも、金を貰おうって言うなら、ゲンコツどころじゃすまねえぞ。…だから、金がほしいなら、ちゃんと父上に相談してから決めろよな」

 

はえ~、そういうもんなんか。

まあ、そうじゃなきゃ変な商売がそこらじゅうで始まってもおかしくないって話やもんな。

 

…ん?ってことは、ケイ義兄ちゃんもアルトリアちゃんも、実は結構稼いどるんか。

 

「アルトリアは、直接は貰ってねえ。この村じゃそもそもそんな使い道もねえし、自衛できなきゃ金なんて持ってたところで危ねえだけだから、父上が貯めといてやってるんだと思うぞ、多分。俺は、いつか自分の領地を持つために自分で貯めてる。…あと、たまに来る行商とか、ちょっと遠出したときに使う小遣いになったりもするし、あるほど便利だな」

 

まあ、そうなんよな。

エクトル卿のとこでお世話になってる身だと、しかもエクトル卿やケイ義兄ちゃんみたいに遠出しないなら…この村の中で個人レベルでのお金の使い道ってほとんど無いし、お金がほしいと考えるほどの状況がなくて、報酬のことも思い浮かばんかったわ。

 

でも、こうして村に出るようになったし、ワイじゃあ見習い止まりがせいぜいやって今でも思うけど…ケイ義兄ちゃんみたいな立派な騎士を目指すっちゅうなら、ワイもお金稼ぎたくなってきたなぁ。帰ってきたら相談しよ。

 

「おう、そうしろ。…だが、村での仕事なんていくらでも紹介できるくらい有り余ってるし、やる気も能力もあるやつに屋敷の仕事ばかりやらせるのも惜しい。だから、今は手伝いってことにして、報酬はねだらず仕事だけやってみろ、仲介は俺がしてやるから」

 

せやせや、お金の話はともかくとして、ワイも何かの役に立てたらそれでええねん。

ちゅうわけで、仲介の方よろしくお願いしますやで!

 

 

 

 

村でのお仕事、その1。荷運び。

 

まあ、ケイ義兄ちゃんがいつもやってる仕事の手伝いやな。

仕事の仲介っちゅうより、完全にケイ義兄ちゃんの手伝いって形になっとる。

 

「俺の仕事が終わらねえと、お前に仲介するも何もねえだろ。手早く済ませればそれだけ仲介もできる、だろ?」

 

って言われて、まあその通りやなって納得しかなかったわ。

なんなら、手伝ってる最中に荷運びのコツとか教えてもらえたから、諸々ありがたい話やね。

 

仕事終わりに、大きさはバラバラでちょっと小さめのもんが多いけど…松の枝葉をメッチャ分けてもらって、それをエクトル卿の屋敷に運んで…そこでようやっと一区切りや。

 

松っちゅうと、いわゆる松明(たいまつ)の元になるやつやな。

樹液である松脂(まつやに)は、接着剤や防腐・防水剤として使うために集められとったりする。

 

今回もらったもんは、細すぎるし短すぎるしで松明に使うにも松脂を集めるにしても微妙やろうけど…。

でも、こういうもんでもナイフの扱いを覚えるための練習材として使ったり、焚き火で最初の着火剤として使うと便利ってことらしい。

 

それを言うなら松ぼっくりのほうが着火剤に向いとるんやないか?…って思ったけど、「なんで食いもんを燃やすんだよ」って言われて…。

そういや、この時代の松ぼっくりは「松の実」として普通に食材扱いされとるわ。

 

日本人的感覚だと馴染みがなさすぎて、普通に「雑多なナッツの一つ」としてしか見とらんかった。

あらら、思わずワイの転生人仕草が出てしもうたみたいやね…!もう、うっかりさん♡

 

 

村でのお仕事、その2。畑のお世話。

 

ケイ義兄ちゃんの言う通り、村の労働力は全く足りていない様子だった。

みんな働き者で、どこを見ても働いている人で溢れている…が、それでもなお足りていないように見える。

 

その最たるものが、農家だった。

いいや、農家の数自体は多い。しかし、畑の広さに対して、農家の数が適切というようには到底思えなかった。

 

「父上は、王にとって特に信頼厚き騎士でな。それで、ブリテンの中でも特に肥沃な地を与えていただいている。…と、いうことらしいんだが…父上の前では絶対言えんが、こんなにあっても管理しきれなきゃ、働く人が増えてくれなきゃ、ただ持て余すだけだろうに…」

 

ケイ義兄ちゃんがそう言った通りに、たくさんの馬や乳山羊を放牧できるほどの広大な牧草地の他に、凄まじい広さの畑が右に左にと見渡せる。

エクトル卿が出払っている隙を見計らってか、そしてこれだけ広ければ監視の目も届かぬだろうと目論んでか、野盗のようなものが何度か現れたりもしたそうや。

 

それらの撃退や牽制のために、マーリンが直接顔を出して脅していたりするそうな。

どこでも覗き見出来るはずのマーリンが、村のアチラコチラで顔を見かけることに不思議に思っとったけど、どうやらナンパのためだけではなかったらしいわ。…これこそ、幻術で済む話では?と思うけども。

 

「父上も、伝手を頼ってどうにか人手を集めているようだが…お前もすでに察しているかもしれんが、近ごろのブリテンは何やらきな臭くてな。人手不足はここだけの話じゃないらしく、どこも働き手が足りないらしい」

 

この村だけを見ても、若者が少ないというわけじゃない。

 

同年代ぐらいの人は4人だけだが、他に赤子もいるし、青年も居る。

夫婦の数も多いし、老夫婦まで日々の労働に励んでいて、盛大に活気があるというほどではないが、全体的に活力はあるというのがよく分かる。

 

それでも、領地の運営を支えるにはギリギリの労働力しかないようや。

ただでさえ広い豊かな土地を守るために、領内の各村に衛兵などの戦力を…生産階級ではない者たちを置く必要もあって、立派な土地ほど生産規模ばかりでなく出費もデカくなる。

 

そして、豊かで良い土地というのは、獣にも悪人にもよく狙われる。

…これはワイもエクトル卿から聞いていた話やけど、エクトル卿や私兵団の人らで、どうしても衛兵だけじゃ対処できない問題の解決のために、度々出兵・遠征して回っとるっちゅうことやね。

 

領地を守るために兵を増やせば、それを支えるためにも、もっともっと生産量が必要になる。

生産量を増やすためにも、それならばと畑の規模を広げれば、それを守るための兵がさらに必要になる。

 

そうして兵を増やしていくうちに、少しずつ労働力が畑の広さに見合わなくなっていく。

兵の増員を抑えるために、なるべくエクトル卿自身や私兵団で重要な問題の解決に出向き…それでやっと、ギリギリ、トントン。

 

「よく覚えとけよ、ワイ。身に余るモノを抱えようとすると、どこまでもドツボにハマっちまうんだ。自分に抱えられるモノまで…その範囲だけでいいんだ。それさえできれば、ちゃあんと立派なんだぜ」

 

そう語ってくれたケイ義兄ちゃんの言葉には、子どもの語るものとは思えない、凄みと実感が籠もっているような気がした。

 

…それはそうと、なんでずっとワイだけが土いじりしとるんや?

ケイ義兄ちゃんは一緒に働かへんのか?

 

「ああ、そりゃあ、ワイよ。お前が畑仕事の何たるかを覚えるためにこそ、俺はあえて見守ってやるだけにしてるんだ。お前の方こそ、せっかく俺が仲介してやってるんだ、ちゃあんと仕事を覚えろよな」

 

ほーん…ケイ義兄ちゃんがそう言うんなら、ほな間違いないかぁ…。

 

 

村でのお仕事、その3。大工仕事。

 

この村にも一応大工は居るが、素人の中では出来る方と言うだけで、ほとんど農夫と変わらないおじちゃんや。

そのおじちゃんから、手が付けられんっちゅう仕事を…とりあえず思いついたものから一つ、案内してもらうことになった。

 

で、そのお仕事なんやが…

 

「これなんだが、どうにか出来そうかい?」

 

それは、縄と釘でメチャメチャに括られた、丸太の巨大木柵…のようにも見えなくもない…言葉を濁さずに言うなら、「超デカい粗大ごみ」のような何かだった。

 

木柵といっても、どこかをグルリと一回りしているわけではない。

中途半端に作られて、しかもちゃんと地面に立てられずに…なんというか、仕方なく適当な場所に立てかけただけ、というように見える。

 

これは本当に柵なんか?と思っとったら、その時ちょうど、ちょっとした説明が挟まった。

 

「実は、以前に息子夫婦のためにと、新しい納屋を作ろうと思ってね。…でも、やっぱり僕じゃあ作れないみたいだ。ちょっとした修理くらいならなんとかなっても、一から建てるなんてどうしたら良いのかわからなかったよ…。これは、その時失敗してバラバラになったやつの、その一部だね」

 

納屋。

この時代の納屋は結構重要な役割があって、例えばメッチャたくさんの薪木を湿気や虫食いから防ぐ保管場所やったり、日々の仕事に必要な道具…言い換えると大事な資産を保管しておく、大型金庫みたいな場所や。

 

あと、納屋を持つっていうのは「信用の証」でもある…みたいな話も聞いとる。

立派な納屋を持っとるなら、別の土地に容易に逃げたりしない。だから、居なくなったら絶対におかしい。…って、何かあってもすぐにちゃんと探し回ってくれたりするらしい。

 

他にも、信用が置けるからこそ、大事な仕事を任せてもらえるようになったり、なんかの取引でも詐欺に遭いにくくなったりする…らしい。

虎の威を借る…ってわけやないけど、立派な納屋を持っとるやつほど箔が付いて色々景気が良くなりやすいっちゅうわけやね。

全部勉強なんかで聞いただけの、聞きかじりの話やけど。

 

ちなみに、エクトル卿は領地内での働きぶりで特に良かった人なんかに、納屋を建ててあげることがあるらしい。

…いや、まあ、領地内全部から、働きぶりで特に良かった人を選ぶ…だから、なかなか順番が回ってこないもんなんやろうけども。

 

まあ、それはいったん横に置いといて…ほんで、これ、どう見ても納屋ではないやろ。

こう言っちゃ悪いとは思うけど、せいぜいがジャングルジムの亜種やで…?

 

「う、うん、何を言っているのかはよくわからないけど…やっぱり、エクター様が大工ができる人を連れてきてくれるのを待つしかないのかもなぁ。二つか三つほど隣の村に、そういう人がいるって聞いたことはあるんだけど…。そこまで離れてしまうと、僕では尋ねるだけでも難しいしなぁ…仕事を受けてくれるかどうかもわからないし…」

 

納屋かぁ。納屋ねぇ…。

ワイかて、納屋作ってや~!なんて言われても、ぶっちゃけどうしたら良いのかはわからんわ。

 

…でも、他の既に出来上がってる納屋を参考にさせてもらえるんなら、あと手伝ってくれる人が居るんならって話やけども…もしかしたらやけど、そんなに大きくないやつなら作れるかもしれん。

 

「え、ほ、本当かい?」

 

いや、参考になるもんがあるなら、もしかしたらって話や。

 

大工道具自体は、エクトル卿から結構良いのを使わせてもらっとんねん。

木造のちっちゃい小屋みたいなのは作った経験あるし、それと似たような要領で作ってもよさげなら…まあ、めちゃくちゃに時間は掛かりそうやけどもな。

 

…しっかし、どこもかしこも石造りの建築物ばっかりしか見られへんっちゅうのに、どうしていきなり木造建築の発想が出てくんねん。

自分にできることでなんとかしようと思ったんやろうけど、だとしても普通に凄いんやないか、この人…。

 

 

…あっ、というかそもそもの話、まずエクトル卿への確認が必要やろ、これは。

 

なあなあ、ケイ義兄ちゃん。

流石にこれは、もう手伝いの範疇を超えとる気がするんやけど、こういう時はどうしたらええんや…?

 

ワイとしては、ぶっちゃけ面白そうな話やから、やれそうならやってみたいんやけど…。

そのための、材料費とか、人足とか…そういう諸々の話を、このままエクトル卿抜きで進めるんはアカンやろ。

 

「ああ、そりゃあそうだ。…そういうことだトマソン、納屋作りに関しては俺からも父上に言っておくから、悪いがちょっと待ってろ。代わりに、もう少し手伝いっぽいやつ…ワイが一人でもできそうな仕事はないか?」

 

「おお、ケイ様!申し訳ございませんが、何卒よろしくお願いします…。そういうことでしたら、道具はお持ちとのことですし、木箱や家具の修理はどうでしょうか。あとは私が顔を繋げば、誰かしら修理してほしいものがあると思いますので」

 

「おう、それが良さそうだな。ワイ、今日のところはその仕事でどうだ?」

 

おおお…流石、ケイ義兄ちゃんや。話がホンマにめちゃんこスムーズに進むわ…。

 

なんちゅうか、相手にとって必要な情報を、頭の中の引き出しから引っ張り出すのが上手いっちゅうか…皮肉無しのホンマの意味で、ちゃんと口が上手いんよなぁ。マジで普通に憧れるスキルやわ。

やっぱ、ペン字検定よりもこういう検定があったら受けたいって思うわ。

 

ああ、そや。修理の仕事については是非やってみたいと思いますやで。

最初は慣れないこともあるやろうから、お二人共ちょっと見といてくれると助かる場面もあると思うんやけど…それでもええやろか?

 

「俺は構わねえ。仲介してやるって約束だしな、一緒にいてやる。トマソンはどうだ、問題なさそうか?」

 

「ええ、もちろん。ワイ様の様子を見て問題ないと思えてから一人での修理をお任せしようと考えておりましたので、それまでは付き添いますよ」

 

「決まりだな、早速ワイのことを案内してやってくれ」

 

「はい、かしこまりました。ワイ様、それではちょっとそこまで歩きましょう、手頃な家具があるか尋ねに回ります」

 

相変わらず、ケイ義兄ちゃんに話の主導権を任せた途端、トントン拍子に話が進む。

凄いと思う反面、その振る舞いを見習って、ワイももっとハキハキと喋らんとアカンなぁと、気を引き締めてからあとをついて行った。

 

 

 

 

空が朱く色づき始めた、夕始めの頃。

 

 

案内されるままに話を聞いていき、簡単な椅子や机、木製食器や建物の一部などの修理の相談が続々と現れた。

 

素人大工のおじちゃん…トマソンさんは、とりあえず持って帰って作業ができるものだけ受けて、トマソンさんが使用しとる作業場にワイも大工道具を持っていって、その日の残りの自由時間はそこで大工仕事をして過ごしたんや。

 

ワイは、椅子と机を直した。

…直したっちゅうか、椅子に関しては作り直さんと危ないからと思って作り直したし、机は天板が若干ふにゃっとしてたのが怖すぎて、こっちも丸ごと作り直した。

 

材料は、作業場にある分から好きに使ってええって聞いたけど、手頃な板材がなくて切り出しからになったからメッチャ疲れた。

ケイ義兄ちゃんがちょっと手伝ってくれたから助かったけど、こりゃ大工仕事は全面的にエクトル卿の許可をもらって、人足を増やせるようにならんとアカンわ。

 

ちゅうわけで、トマソンさんには申し訳ないけど、今回のお仕事だけはちゃんとやりきって、以後は後日…ちゃんと話がまとまってからってことになった。

 

それでもトマソンさんは、「これだけできれば大助かりだよ、ありがとう」と言って、大変感謝してくれた。

……ケイ義兄ちゃんに、お金を手渡しながら。

 

 

おう、ケイ義兄ちゃん。それはなんや。

 

「おう、気にするな。お前を紹介した分の、俺の報酬だ。いやー、結構儲かったな!」

 

おいコルァッ!!

ほとんどワイだけに働かせて何をこっそり自分だけ報酬貰っとんねん!!

エクトル卿に知られたらギリギリアウトかもしれんことをこっそりやんなや!!

 

「大丈夫、任せとけって、俺がちゃんと言っておくから。それに、そもそもだ、お前の立場で勝手にタダ働きってのも不味いんだぞ。父上に話をつける前に働いてみたいって我儘を言ったのはお前の方で、俺は適正な相場でしか貰ってねえ、だから俺は何も悪くねえ。…というわけで、このくらい目を瞑っとけ」

 

最後の一言に、ちょっと良くないことしとる自覚が滲み出とるやん。

 

でも…クゥッ…!

確かに、ワイが我儘言ったのは事実や…それを言われると、確かにワイは何も言えん…かも…。

というより、ケイ義兄ちゃんの言ってることはなんか全部間違っとらんようにも聞こえてきたし、うーん…。

 

「そうだろう、そうだろう。…まあ、悪いようにはしない。俺が立派な騎士になったら、お前にだって箔が付くだろうから、そのためのちょっとした種銭集めに協力したって思えばいい。お前がちゃんと稼いでもいいって許可が出たら、そうなったらもうこんなことはしねえしよ、それまでちょっと稼がせろ」

 

う、うーん…まあいいけど…。

 

…あ、それなら今度なんかちょっと奢ってや。

金返せ!…とまでは言わんけど、黙ってこっそり貰ったのは、やっぱちょっと納得できんわい。

安いもんでええから、なんか良さげなもん買ってや!きゃっきゃっ!

 

「はあ~?…一応聞くが、何がほしいんだ?」

 

いや、それは知らん。

ぶっちゃけ必要なもんはエクトル卿が用意してくれるから、ホンマに何も思い浮かばん。

 

ただ、せっかくやしケイ義兄ちゃんに買って貰ったもんがほしいんや。

なんか、程よく大事にできて、遠出するケイ義兄ちゃんの無事を祈れるもんとかがええわ。

 

「…………………………ウワ、キショ…」

 

ゔぉいッ!!

言うたなおい!!お前今日稼いだ分の金返せや!!オルァアアアアンッ!!

 

「うるせぇー!!仲介してやっただろうがっ!!これは俺の正当な報酬だっ…フンガァーーーッ!!」

 

 

…そんな感じで、数日ぶりにケイ義兄ちゃんとボコボコに殴り合い、その日の夕食が少し遅くなって…。

そんで、家に帰ってからすぐに、二人揃ってアルトリアちゃんにメチャクチャ怒られてもうたんや。

 

わはは!いやあ、アホやなぁ~、ワイら。

 

「アホはお前だけだぞ」

 

ンンンお前もやろがいゴルァアッ!!

 

 

──そんでもまあ、この日はホンマにいろいろ勉強になって、メッチャ良い一日やったわ!

 

 





▼労働と対価

この頃のブリテンでは、労働の報酬に金銭が用意されることもあったが、ぶっちゃけ村人には不人気だった。

そもそも、5世紀初頭から続く寒冷化の影響で、ブリテンはどんどん食料供給量の不足と、凍死者・餓死者が増えていっており、アルトリア/アーサーが成人する頃には、もはや数えるのも嫌になるほどの…村単位や地域単位というほどの数の死者が、毎年計上されるようになるのだ。

今はまだ、その途上/兆しの年。
とは言え、お金よりも現物支給のほうが圧倒的に嬉しいという時代になりつつあるのは、間違いない。

ケイが、騎士貴族の子にしては珍しく「お金を対価に労働する」ことに生々しく前向きであるのも、実際に将来の自分のためでもあるが、「村人にとってはそんなに使い道がない物・お金をもらい、労働という形で貢献して返す」というのが、ケイなりに「今の自分にできて、今の時代に本当に必要なこと」だと気付いている/考えてのことである。


ちなみに、アルトリアは無欲すぎて、普通に手伝いたいだけ。

お金は貰っておらず、それについてはエクトル卿も「まあ、それで悪いようにならないなら」程度の認識。
ケイがそれを知っていたら、多分アルトリアの分のお金もこっそりと…それがバレても口先で言いくるめてケロリとしながら貰ってたはず。ちょっとコスい。


お金を貯めて、その種銭を持って修行の旅や戦争に参加するなどして功績を挙げて、自分の力で領地を得て、自分の手の届く範囲をしっかり守ってみせる。

誇りで飯は食えないし、理想で人は守れない。
必要なのは日々の生活で、それを支えている民の営みで、それらを守るのが騎士なのだ。

それこそが、ケイ自身が望み・考えている、等身大の自分自身。
「自分が立派な騎士になったときの姿」…の、はずだった。
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