ワイ卿、Fate世界の円卓の騎士になる。   作:サーッ・タドコロ

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いつもお読みいただきありがとうございます。

ちょっと日常回多め進行です。
もう少しだけ続くんじゃ。




13:ワイ、トゥモロー・ネバー・カムズ

 

ようお前ら!元気にしとるか?

ワイは(ハッピージャムジャム最高)元気やで!

 

 

微妙に納得できんけども…でも、言ってることは確かに悪くない話ではあるっちゅうことで、ワイは引き続きケイ義兄ちゃんに仲介してもらいながら村の仕事を覚えていったんや。

 

ケイ義兄ちゃんが貰ってた分のお金も、ホンマに適切…というように思える量やったし、ワイが稼いでもええって許可が出るまでって約束やし、無償で働くっちゅうのも確かに問題やし、あくまで渋々納得…くらいのもんやけども。

 

 

そんで、ワイは基本的に畑仕事の手伝いをすることになったわ。

 

毎回やないけど、アルトリアちゃんも一緒に手伝ったり、ケイ義兄ちゃんが力仕事のために近い場所で働くことはあったけど、そうじゃない時は基本的に一人で黙々と作業やね。

ケイ義兄ちゃんや畑の所有者の人が見ていてくれたのはホンマに最初の1回目だけで、あとは任せるやで~♡って感じやな。

 

…で、土いじりしていて思ってたんやけど…少なくとも、ワイが手伝っとる畑は、土の状態がクッソ悪い気がする。

見てわかるだけでも、なんちゅうか、カラッカラな気がするんよな。乾燥とはちょっと違う意味で。

 

畑の状態からして、今は冬明けで何も生えとらんけど、ここって麦畑やろ?

…麦って畑の栄養をガンガン吸うって聞いたことあるし、それでこないにすっからかんになっとるっちゅうことなんかな。

 

 

ワイがこの畑の持ち主の人から教えてもらった土作りは、土をフッカフカに柔らかくすることだけやった。

 

肥料についてなんもせんもんなんか?…っちゅうのは一応聞いたけど、秋頃に刈り終わったあとの畑に、山から集めた落ち葉を土に撒いといたらしい。

それをこうして、春になったら漉き込んどるって話やったわ。なるほど、腐葉土みたいなもんってことやね。

 

いや、落ち葉のパワーを信じすぎやろ。アンパンマンの愛と勇気とはちゃうんやぞ、落ち葉やで。アンパンマンって何?

…でもマジな話、こんなに広い畑を満遍なく落ち葉で覆えていたわけでもないようやし、コレに効果があると信じたとしても、本当にそれだけでええんか…?

 

うーん、言われたこと以外を勝手にするんは良くないと思うけど、なんか妙に不安感でふわふわするっちゅうか…。

 

 

そうしてモヤモヤしながら仕事をしつつ、たまたまケイ義兄ちゃんと近くで仕事することになった時にちょっと相談してみることにした。

 

…ほんで、カクカクシカジカ~なんやけど、やっぱエクトル卿に相談するべきよな?

ただ、いつ帰ってくるかもわからんし、今できそうなことはやっておきたいって気持ちもあるんやけど…どないしよか。

 

「カクカ…?ってのは、よくわからなかったが…まあ、お前に何かいい案がありそうってのはよくわかった。…だが、そもそもなんで土の状態なんてのがわかるんだ?なんなんだ、土の状態って」

 

え?

…そういやそうやな、なんでやろ。

いや、ワイに変な記憶がいっぱい詰まってるのはわかっとるけど、だからって土の状態なんて見てわかるもんか?って話やもんな。

 

いや、「なんとなくそうかも…」って思っただけなんやけどな、いうなれば「直感(スキル)」ってやつかもしれん。

ただ、ちゃんと作物が育つには土の栄養が…ええと、状態が悪いって気がするんや。

 

「ふうん?まあ、お前がそう言うなら、そうなのかもしれねえな。…そういうことなら、俺も畑を持ってるから、そこで試してみるのはどうだ?」

 

おお!そりゃあ、ありがたい話…、…?

…ええ?!ケイ義兄ちゃん、自分の畑を持っとるんか!?農家でもないのに!?

 

「おう、狩りで良い成績だった時に…その時に俺が獲った猪の頭と一緒に、父上から褒美としてもらったやつだ。こういうのは、お前はこの畑を使って好きに稼いでいいぞ…っていう形での褒美だな。まあ、そんなに広いものじゃねえし、これでお金を稼げって言うより、人を雇う勉強みたいなもんとして使えって意味なんだろうけど」

 

はえ~。その狩りって、普通の大人に混ざってやったんやろ?

凄いなぁケイ義兄ちゃん、凄すぎやで。

 

「おう、俺が凄いのは当たり前だろうが。だがもっと言っていいぞ、そして俺をよく見習ってお前も同じようになれ。…それじゃあ、今日の夕飯のあとに、お前が何をしたいのか聞かせろよ。俺の畑を任せるかはそれを聞いてからだ、いいな?」

 

了解や!

モヤモヤはするけど、とりあえず村の人から任されとる畑は、お願いされた通りの仕事だけしとくことにするわ。

 

…しかし、ケイ義兄ちゃんはホンマ、手広くやっとるなぁ。

ワイよりちょっとだけとは言え年上なんやからそりゃあそうなんやけど、それにしたって人生経験が豊富すぎんか?感心しっぱなしや…。

 

 

 

 

その日の夜。

 

 

「おう、来てやったぞ、ワイ」

 

約束通り、夕食後で軽服に着替え直したケイ義兄ちゃんが、ワイの部屋にやってきた。

 

 

すっかり日が落ちとるから部屋の中はかなり暗いけど、話をするだけならオイルランプ一個でも十分やから、今はそれだけ灯しとる。

 

…ケイ義兄ちゃんがワイの部屋に来るために手に持っとった方のランプの火は、さっさと消してしもうたみたいやけど…。

流石にそこはケチやなくて節約上手って思っておいたるわ、油は結構な貴重品やしな。

 

ほんで、いきなり本題なんやけど、畑が痩せ細ってる…って言い方して伝わっとるやろか?

時代的に「栄養」って言葉が伝わらんのはしょうがないけど、その言葉を使わずに伝えるのがくっそムズい話題やな…。

 

ともかく、作物を育てるには土の状態がかなり悪い気がするんや。

恐らくやけど、野菜やら麦やらがあんまり育たんようになってる理由って、その一つはこれなんやないかと思うで。

 

「…野菜や麦が育たない、か。…それは誰から聞いた話だ?父上か?」

 

おう、エクトル卿から以前に………あっ。

待てよ、そう言えば…この話って、確か内緒の話やったような………。

 

ケ、ケイ義兄ちゃん、今更やけどやっぱこの話は聞かんかったことにしてくれへん?

 

「いや、気にすんな、父上には俺から良いように言っとく。…俺もそんな気はしてたからな。そもそも、俺に畑をくれてやった時点で、遅かれ早かれ俺なら気づくと父上だってわかってたはずだろうしよ」

 

…あ、そういえばそんな事も言っとったな。ケイ義兄ちゃんならもう気付いてるかもって。

 

う、うーん…なら、ワイもこの問題について積極的に動けそうな機会を逃したくはないし、やっぱ相談したいわ。

いきなり話が二転三転して申し訳ないんいやけども、このままワイの相談に付き合うてや。

 

「良いって言ってるだろ。さっさと話せ、油がもったいねえだろ」

 

それもそうやな。

ほな、サクサクっと話すわ!

 

 

ワイは、この時代じゃ伝わらない単語を使わず、どうにか言い換えながら、なんとか「土が悪いと作物が育たない」という話を進めた。

 

で、ワイが何をやりたいかと言うと、その土の状態を良くするために、より効果が高いであろう肥料を使うことやな。

落ち葉を肥料として認識できとるっちゅうことは、もっとちゃんとした肥料を用意したら、みんなも使ってくれると思うねん。

 

麦っちゅうと、おそらくは窒素不足…って言っても絶対伝わらんから、「油かす」や「魚かす」の肥料を使ってみたいって話をした。

多分…そういう肥料が効果的なんやないかなって思うんやけど…なんでそうだとわかるんや?ホンマに意味わからんな、ワイの前世ってやつは。

 

ちなみに、いわゆるウンチ系の肥料は、害虫やら病原菌やらのリスクがバカほど高いから、いったん今回は提案せんでおいた。

生ゴミと混ぜ込んで発酵させるコンポストっちゅう方法で発酵処理して病原菌リスクの低下はできるはずやけど、化学処理ができんから病害虫の発生を防ぐことはほぼ不可能や。もちろん、動物へのワクチンなんてもんも無理や。

こういうので大量発生してしまうやつの中に、動物に寄生する虫とか結構居るみたいやし、発酵ほっかほっかウンチのせいで村の動物たちを絶滅させかねん。

 

まあ、今はウンチの話はええねん。

トイレが普及できたら、人糞をすぐに発酵処理出来るようにして…そうすると、害虫とか病原菌のリスクとか減らせるようになるやろし、そのうち提案しよ。

 

 

ともかく、ウンチなんかよりもっと安全に使えるはずの「油かす」と「魚かす」や。

 

油かすは、油を絞ったあとに残る固形物のことやな。

ブリテンでは、あの有名なオリーブオイルはほとんど手に入らん。よく見かけるんは、とろとろのナッツ油か、獣脂やな。他には超高級品の花種油とかもあるらしいけど…まあ、村で手に入らんもんについては今回は除外や。

 

油かす肥料に使えるとしたら、このナッツ油の方やな。

豆類の中で、一応食用でもあるけど、油用としても育てられとるもんがあるやん?アレを絞ったあとの固形物が、めっちゃいい肥料になる…はずやと思うねん。あとはクルミとかでもええはずや。

 

肥料の作り方も簡単で、油かすと水を混ぜ合わせて、毎日撹拌…しっかりかき混ぜて、1ヶ月くらい発酵させたら完成や!

今頃から肥料を仕込み始めても、麦の春蒔きに間に合うかどうかって感じでちょっと微妙やろうけど…村の中だけで手に入る材料で済むし、再現性っちゅう意味でこれは絶対にやっておきたい方法やね。

 

 

ほんで、魚かすのほうは、その名の通り魚を使った物やね。

 

こっちも作り方は、手順だけで言えば簡単や。

魚をしっかり煮てから水気を拭き取り、圧搾…油を絞り出す要領で魚から水分と油をガッツリ抜いて、残った固形物を乾燥させたら…テレレテッテレ~!サ~カ~ナ~か~す~!

 

…ただ、こっちはどんな魚でもちゃんと肥料になるんか?っちゅう部分が不安で、正直ワイも効果がちゃんと出るもんが作れるのかわからん。

タンパク質…え~と…まあ、どんな魚でも持っとるもんさえあれば、窒素…うぅんと…必要な肥料にできる、はずなんやけど…。

 

ちゅうか、以前から思っとったけど、食材としての魚が全然見かけへんのやけど、それってなんでなん?

 

「そりゃあ腐りやすいからだろ。獲った直後は普通に食えるんだが、時間が経つとあっという間に臭くなっちまうからなぁ…」

 

…あっ、そりゃあそうか、冷蔵・冷凍輸送なんて、この時代にはない技術やもんな。

肉と違って、魚の油は凄まじく酸化しやすいっちゅう問題があって、肉よりすぐに臭くなってまう。酸化を防げんと、難しい食材よな。

 

「ただし、王宮では魚料理を振る舞うこともあるらしいぜ?魚だって、生きたまま運べれば腐らねえ。…まあ、わざわざ生きたまま運ぶなんて、そんなことに労力を割くくらいならもっと…って思っちまうけどな、俺は」

 

おほほぅ…。

王様への批判は重罪やってのに、ギリギリを攻めた言い方するなぁ…普通にちょっとヒヤッとしたわ…。

 

うーん、それじゃあ魚かすは難しいんやろか…。

一応、村の近くには川と、結構森に近いけど上流の方に湖もあるやん。あそこで魚が獲れたりせんのか?

 

「いや、全然獲れるぞ。明日すぐにってのは無理だが、今度穴場に連れてってやろうか?」

 

おお、ホンマか?ほんじゃ、ぜひ案内してや!

 

…ちなみに、ワイらだけで危険性はないんか?

あと、魚が獲れるっちゅうなら、なんでエクトル卿の屋敷の食材としては入ってこないんや?ワイが知る限り、一回も見たことないで。手に入らんもんかと思っとったわ。

 

「ああ、()()()()()()って話だよ。村のやつには…無理だろうな、俺等ほど身体を鍛えてねえだろうし、漁網なんて上等なもんもねえし、釣りのやり方がわかるやつがウチの屋敷含めて誰もいねぇ。適当に即席の木槍なんかを作って、素潜りで探してぶっ刺して獲るんだよ」

 

おお!ホンマもんの「獲ったどぉぉおお!!」が見られるってことか!?

うっひょー!なんや、めちゃくちゃ楽しみになってきたわ!

 

よっしゃ、是非それでいこうや!

なんなら、美味そうなのが多めに取れたら、何匹かは夕食にできたらええなぁ!塩で焼くだけでもうんまいでぇ~!多分。

 

「…うぅん。まあ、お前が作るなら…うん」

 

…あ、その反応。もしかして嫌いなんか、魚。

 

「別に嫌いじゃねえよ。獲れたてなんか、もうメッチャ美味いぞ。…まあ、時間が経つと臭いがな…持って帰って作るにしても、俺のはハーブを多めにしといてくれ。あと、スープにはするなよ、臭いが立ち込めて食欲が失せる…」

 

相変わらず、敏感な鼻やなぁ。

…あっ、ってことはエクトル卿もそうだったり?…だから、魚が食材として入ってこんのか…。

 

 

そんな感じで、ひとまず話はまとまり、その日はお開きにしてケイ義兄ちゃんは自室に帰っていった。

 

にしても…うひょひょ!

素潜り漁かぁ、なんや、ワイの中の少年心というか、憧れみたいなんがメッチャ刺激されるわ。楽しみやねぇ!

 

 

 

 

数日後。

 

 

ケイ義兄ちゃんに案内してもらい、川の上流に位置する湖畔までやってきた。

 

そんでワイは、荷物の見張り番もあるっちゅうことで、先にケイ義兄ちゃんが潜ってるとこなんやけど…

 

 

 ──ザッバァアアッ!!

 

「オッシャアアアアアアッ!!」

 

 

ひっ、ひぃぃいいいっ!?

ななっなんっ、なんやこの怪魚ぉっ!?

 

ケイ義兄ちゃんの身体よりデカい…えぇえ?(困惑)なに?!なんやこれ?!(絶望)

鱒とか鮭っぽい顔しとるけど、デカさがモンスターすぎるやろ!!

 

そんで、何匹獲ってくんねん!!

流石に全部が全部そんなバカデカ怪魚やないけど、クッソデカい魚どもがもう6匹目やぞ?!なんなんやこの厨パぁ!!

 

っちゅうか、泳いでる速度と様子がキショすぎやろ!!

なんであの速度で水中を移動して、波も音も立たんねん?!もうお前が渚で魅惑のマーメイドでええよ♡

 

 

 ──ザッバァアアッ!!

 

「ウォオルゥラアァアアッ!!」

 

 

べへえええええっ!?

 

うわっっっキッショぉおっ!!ホンマにキッショい…クソデカうなぎぃっ?!

もうなんか、ちょっとした水龍やんこれ。あかん、ワイはいま伝説を目撃しとるんや。一周回ってむしろ感動してきた。なんでコレが即席の木槍一本で獲れんねん。意味わからんすぎてオモロ(笑)

 

「うぉええええっ…キモチワルぅ…ゲホッ、ヌルヌルしやがって、最悪だ…あー、ちくしょ、交代しようぜ…おえっ」

 

無理無理無理。

何やねんこの水中型モンスターハウスは、ケイ義兄ちゃんくらいの変態泳法ができんと、怪魚の餌になってあげるために潜りに行くようなもんやろコレ。

 

いや、もう、ホンマごめんなんやけど、ワイには無理や。試さんでもわかる、これは無理。

ホンマに意気地なしで申し訳ないんやけど、その分獲った魚の下処理とか、肥料づくりと畑の手伝い頑張るから許してや…。

 

「ぜぇ、ぜぇ…おう、そうかよ…ふぅー…よし。んじゃ、ワイよ、言ったからには獲った魚の下処理は全部ちゃあんとやっとけよ?…フッ、ちょっと休んだらもっともっと獲ってきてやるぜ…!」

 

…えっ?

 

うわあっ、なんでやねん!?

おまっ、自分で下処理する必要なくなったからって、別にそんな無理にわんさかと獲る必要もないやろ!?

 

「そりゃあお前、誰も獲らないってだけで、獲れるっていうならそこそこ良い稼ぎになるんだよ。下処理とかクセぇし、干魚にするのもクセぇからやりたくねぇが、全部お前がやってくれるって言うなら話は別だ。お前の必要な分は獲ってきてやるから、俺の分は干魚にしてくれ、よろしくな!」

 

ほ、干魚って、どんだけ手間かかると思っとんねん…手間もそうやが、塩の漬け加減とかメッチャ気を使うやん…。

 

まあ、料理は好きやしそれは別にええわ。

それに、ワイが自分で獲りに行くのが無理って言うたのを、代わりに獲ってくれるって言うてくれとるんやし、流石にその条件で文句は言えんわ。ワイが悪いっちゅう話やな。

 

「おい、勘違いすんなよ。別にお前が悪いんじゃねえ、俺もお前も得意不得意があるだけだ。俺は俺の得意で働けば楽だし、お前はお前の得意で働けば苦手な仕事はしなくていい。…それだけの話なんだから、変に自分を悪く言うのはやめろ。そんなの見せてたら周りのやつだって、お前が悪いって思い始めるぞ」

 

…た、確かに…そうかも…。

 

アカンなぁ、もっとハキハキと、ケイ義兄ちゃんみたいにいつでも胸張って堂々とできるようにならんとな。

ワイが萎縮してばっかりおるから、私兵団の人らもきっと…うん、もっと意識してシャキッとせな!

 

 

…とりあえず、休憩がてら、手頃な魚を焼いて食わんか?

 

ほら、獲れたては嫌いじゃないって言うとったやろ?

実は獲れたてのやつで焼き魚でもできんかと思って、塩を持ち出してきとんねん。

 

「おおっ?…おいおい、厨房から勝手に持ち出すなんてダメじゃないか、父上に言いつけるぞ?…よし、言うことは言ったし、ちゃんと俺には特に美味しいところを食わせろよな」

 

何の小芝居やねん。ちょっとキメ顔なのオモロイからやめぇや。

 

大丈夫や、盗み出したりしない限りは、エクトル卿から持ち出しの許可を貰っとんねん。

これなら盗んだうちに入らん、野外調理の範疇や。…いやあ、パンを作った時に、厨房の外に色々と持ち出す許可を貰っといて良かったわ!

 

それに、そもそもケイ義兄ちゃんが食うと思って持ってきただけやし、好きなとこ食ってや。

ワイは焼き魚の準備できたら、ちょっと離れたところで魚の下処理しとるからな。

 

「アホ、俺一人だけが食ったら、後でアルトリアにぎゃんぎゃん喚かれるのが俺だけになるだろうが。俺なりに美味いと思う部位を教えてやるから、ちゃんとお前も食え。そしてお前もアルトリアの標的になれ」

 

あー、アルトリアちゃんには申し訳ないけど、流石に大人のいない時にこんな半分森みたいな場所まで連れては来れんし、移動距離的に獲れたてを食わすっちゅうんもちょっと無理やからなぁ…。

 

その代わり、帰ったらうんと美味しい魚料理を作ったるからな。だから許してやで♡

…エクトル卿の厨房で魚料理って、初めて作ることになるんよなぁ。失敗せずに作れるやろか…。

 

「おう、何でもやってみろ。お前が言う肥料も、魚料理も…いきなり何でも出来るようになるわけでもねえ、何もやらずに明日の自分が何か出来るようになるわけでもねえ、誰だって今日出来ることをやるしかねえんだ。…今回は俺が魚を獲ってやるが、そのうちお前もちゃんと自分で出来るようになれよ、いいな?」

 

おお…おおぉ!そうやな、何でもやってみんと!

そんで、また無意識にウジウジしてもうたけど、そのクセもはよ治さんとな!

 

…それはそれとして、泳ぎと素潜り漁は頑張って覚えようとは思うけども、流石にケイ義兄ちゃんみたいになれるビジョンは見えてこんのやけど。

どうやって泳げばあんな動きになるんや?実は水の精霊の加護でも受け取るんとちゃうんか?

 

…あ、待てよ?

加護で思いついたけど、もしかしてワイなら、水の魔術で似たようなこと出来るんやないんか?

今日のところは、ケイ義兄ちゃんが獲ってワイが下処理するって約束やから、試す暇もないけど…今度、ちょっと試してみたいな。

 

 

…と、そんな話をしつつ、ワイとケイ義兄ちゃんは二人だけで、獲れたての魚の美味しさをじっくり堪能したんや。

 

 

 

 

その日の夕飯時。

 

 

その日は結局、ケイ義兄ちゃん一人で巨大魚を30匹も獲ってきよって、持ち帰るのも一苦労やったわ。

 

夕飯には、せっかくこんなに立派なうなぎが獲れたんやからと思って、頑張って白焼きにでもしようかと思ったんやけど…普通に無理やった。

この時代の刃物って、刃物自体の重さも利用してぶつ切りにするためみたいな作りになっとって、そもそも魚を捌くのにあんまり適しとらんかったんや。

 

頭を切り落として、腹を切って内蔵を抜く…ってところまでは出来ても、うなぎみたいにニョロニョロで刃が滑ってまうようなやつは、もっとうんと鋭い刃物じゃないと無理や。

それに、よう考えたら骨抜き用のピンセットの用意とかもしとらんかったし、これは気持ちが逸りすぎたわ…残念やけど、うなぎは魚かす用やな。使えるか不安な魚種やけど。

 

 

夕飯の料理には、ケイ義兄ちゃんよりデカい…鱒?鮭?まあ、そのどっちかっぽく見えるクソデカフィッシュを焼いて出すことにしたわ。

 

魚の臭みの原因は、主に血合いと内臓、それと鱗や体表のヌメリにある。

それらの処理は湖でしっかりしてきたから、持ち帰ってもこの通り…いや、ほんのり臭うな…まあ、冷蔵輸送でもなかったし、魚の油の酸化はホンマに早いな…。

 

こういう時は、まずは魚の表面に薄く塩を振って身の水抜きをして、その後で酢水で洗うと臭いが落ちるんや。

最初から酢水で洗うと、魚の身がぼろぼろになるし、味もなんか変になりやすいから、必ず塩で身の水抜きするのを忘れないようにするんやで!

 

酢はそこそこ貴重品やけど、魚を洗うための酢水を作る程度なら、そんなに量も使わんしええやろ。

…まあ、遠慮せず使ってええって言われとるんやけども、それを鵜呑みにはできんよなぁ。こういう、ちょっと使うくらいでワイにはちょうどええわ。

 

魚の身からしっかり水気を拭き取って…ソォルツ(ファサァ)

そうしてほんのり塩をまぶしたら、バターとハーブでじっくり、しっとり焼く。

 

 

そうして焼き上がったのが、鮭っぽい怪魚のバター焼きや!へいおまちぃ!

 

まあ、なんかこうすると美味そうかもしれんと思って作ってみたけど、魚の油とバターの油でちょっとクドかったわ。

アルトリアちゃんは「魚とバターの旨味に、ハーブの香りがちょうどよく、いくらでも食べられそうです!」って大喜びしとったけども。

 

ケイ義兄ちゃんも、意外と悪くない反応で「ワイ、お前凄いな…魚ってこんなに美味しくなるんだな…」って素で驚いとった。

なんなら、アルトリアちゃんは当然として、ケイ義兄ちゃんまで魚のお代わりをしてくれよって、なんかメッチャ嬉しかったわ。るん♡

 

 

…でも、やっぱりワイにはどうしてもクドく感じてもうてな…やっぱ、日本人(だと思う)なら塩焼きやろ!ってことで。

パパッと手抜きで作った、鮭っぽい怪魚のハラスの塩焼きや。

 

魚の腹のうっすい部分の身で、脂が乗っててトロットロ。

その部分に薄く塩を振って、表面がカリッとなるまで、脂を落としながら焼くんや。

 

焼き加減のコツは、脂を落とし切らないようにすることと、多少の焦げは御愛嬌って思うことやね。

ほぼ確実にどっかは焦げるから、あんまり人に出せんとも言うんやけど。

 

 

ほんじゃ、いっただっきま~す!

ウッヒョー!うんめぇーぞコマツゥ~!グルメ細胞がグングン活性化しやがるぜぇ!流石は捕獲レベル5万のバケモンフィッシュや!知らんけど!

 

「うぇ…よくそんなとこ食えるな…内臓の周りの脂身の肉なんて、相当臭いんじゃないのか?」

 

「ワイ兄さん、私も同じの食べたいです!」

 

ケイ義兄ちゃんは、やっぱ臭うもんがメッチャ嫌なんやなぁ。

エクトル卿が居るときにはここまで言わんけど、今はワイとケイ義兄ちゃんとアルトリアちゃんだけやから、遠慮なしに臭いのことを口に出しとるわ。

 

それはそれとして、そんじゃあアルトリアちゃんにも少しだけ分けたるわ。

そんなに量が多くないし、ワイの食う分が無くなってまうから、少しだけやで?

 

「ありがとうございます!おお…素朴な見た目ですが、臭いは…全然気になりませんね?焼けた魚の、美味しそうな良い匂いです」

 

表面をカリッとなるまで焼いて、脂が落ちるくらいに中までしっかり火を通しとるからな。

この魚自体がよほどの悪食でもない限り、あと下処理のときに内蔵を潰したりせんかったら、しっかり焼けば臭みは殆ど消えるんや。

 

その上、身の水分を抜いた後に追加で臭み抜きまでしとったからな、ハーブを使わんくてもそこまで気にならんやろ?

 

「ええ、とても美味しそうです。では、あむっ…んんんっ!…んむむ、んむんむ…」

 

おお、キラキラお目々で美味しそうに味わっとる…。

やべっ、嬉しみに浸っとる場合やないわ、ワイも食べよっ。

 

「よし。ワイ、俺にもくれ」

 

ず、ずこーっ!

そういうんはもっと早く言ってや!アルトリアちゃんが食べ終わってまうやろが!

 

「ワイ兄さん、お代わりをお願いします!」

 

食い終わってもうてるやん!?

まあ、そりゃあそうや。少ししか分けとらんかったからな。そんなんアルトリアちゃんなら秒や。

 

わかった、わかった、今ある分を3人で平等に分けて、それで終わりやで?

こらこら、アルトリアちゃんはワイの分まで全部食おうとしたらアカンで。なんやその猛獣の眼光は、お行儀が悪いで。

 

ケイ義兄ちゃんは、確かに美味しい部位を食べさせるって約束やけど、全部とは言っとらんやろ。

美味しい部位も、ちゃあんと一緒に食べる約束やん。流石に納得せんぞ、みんなで平等に分けて食うんや。

 

 

──そんな感じで、エクトル卿が居ない日常は、ちょっと緊張感に欠け過ぎてて、みんなどこか少しだらしなくて…日々新しい体験と発見に出会って、いつもとは違う意味で充実した毎日を過ごしたんや。

 





▼ケイの水泳上手

ケイは、円卓随一の泳ぎの名手と謳われるほどに、泳ぎが得意であったという。

円卓の騎士となってから披露してみせた泳ぎはあまりにも超人的で、「嵐の川を渡ってみせる」と豪語したガウェインや、「ドーバー海峡を横断してみせる(これはサーヴァントになってからの発言と思われる)」と豪語したランスロットが、さらにその他全ての円卓の騎士たちが、みんな揃って「円卓一の泳ぎの名手だ!」「アレは変態的だ!」と語ったほどである。

また、ケイには「泳いでる鮭に乗った/鮭と一緒に泳いだ」という意味不明すぎる逸話も存在する。
円卓の中でも高身長・巨躯であったらしいケイがどうやって鮭に乗るというんだ?という疑問に関しては、当時は「ケイが乗れるほど巨大な鮭がいた」ということだったのかもしれない。

だとしても、状況が意味不明すぎて想像が難しい絵面なのだが。
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