ワイ卿、Fate世界の円卓の騎士になる。 作:サーッ・タドコロ
13話か、もしくは14話に話として入れようか迷いましたが、SS集として投稿することにしました。短編3つです。
一つ一つはあっさり薄味ですが、こんな事もあったよという話です。
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『偽物のワイ』
村で仕事をしとる最中、マーリンの(勝手な)謀略によって、ワイの代わりに厨房で働かされとった
マーリンは「ちゃんと報酬は渡したから、気にしなくていいよ」なんて言っていたが、良いわけなくない?間違いなーい!☆
そう思ったワイは、一言謝罪しておこうと声をかけたんや。
「あ、あのぉ、
…あれ?
なんや、見た目や声から女の子かと思っとったけど、男の子だったんか?
まあ、性別なんてどっちだってええねん。
それより、先日は変なことに巻き込んでしもうて、ホンマすまんかったなぁ…。
アレから、ちゃんとマーリンに報酬は渡されとるんか?誤魔化されたりされてへんかな?
「えぇ?…あ、ああ、エクター様のお屋敷の!気にかけていただき、ありがとうございます。マーリン様からは確かに…働いた分だと仰られて、頂いたものがありますが…」
その男の子は、何やら複雑そうな面持ちで「うぅん…」と小さく唸ってみせた。
なんや、その歯切れの悪い言い方は…?
もしかして、報酬が少なすぎたとかなんか?そうやったら、ワイからマーリンにキツく言っとくで?
「いいえ、そういうわけでは…むしろ、なぜこんなに頂いたのかの理由がわからず…。こう申し上げてよいのかも不安なのですが、その、頂きすぎているかと思います…」
えっ。
聞いていいもんかわからんのやけど、どのくらいなんや?
「えっと…全てを麦に替えられるなら、5ヶ月分ほどは頂いたかと思います…」
…えーっと?
麦で5ヶ月分っちゅうなら、んん?
ワイの相場感が間違っていないなら、少なくとも4ヶ月分の労働になるくらいは貰っとるってことになるんか…?
「いえ、僕のような下働きでは、その…2年以上の働きで、やっと貯められるようになるかと思います…」
んがっ…!?
ちょい待ってや…厨房で働かされとったのって、数日くらいやなかったか?
「はい、僕もそのように聞いております…ですので、これでは頂きすぎですと申し上げたのですが…マーリン様が、」
『ははは、君のような可憐な花を愛でることこそ、花のお兄さんの冥利に尽きるというものさ!』
「…などと言って、結局押し切られてしまいました…」
…は、はあ。
な、何しとんねん、マーリンのヤツ…。
お、オーケー、理解したくないけど、理解したわ。
まあ、マーリンが良いって言うんやから、それは貰っといたらええと思うで。
「はい…ですが、あの…こんなに頂いても、どうしたら良いのかわからず、そっくりそのまま父に渡そうかと悩んでいたところなんです」
ああ~、まあ、そうよなぁ。
ワイも正直、この村でのお金の使い道がよう思い浮かばんわ。
ちなみに、本当に何に使うでも良いとしたら…例えば、この村の中以外で使うとしたら、どんなことに使えそうかとかは思い浮かばんのかいな?
「え?えぇと、お金の使い道ですか…そうですねぇ…。…エクター様にお願いできるのなら、他の村から職人など呼んで頂き、何かを建てて頂いたり…もしくは、お作法など学ばせて頂けるなら、ありがたいお話だと思います」
お作法っちゅうと、ワイが普段から学ばせてもらっとるやつとかやな。
…あれ?そういえばこの男の子、やけに話し方がお上品やな…?
いや、大人の中にはこのくらい話せる人もたまにいるけど、このくらいの歳の子には珍しすぎるくらいしっかり喋れとる。
少なくとも、先日に顔合わせさせてもらったガキンチョ4人組より、ずっと大人びた話口調やな。
なんや、もしかして結構良いところのお坊ちゃんだったりするんか?
「あ、はい。ご挨拶が遅くなって申し訳ございません、村長のむす……子どもの、フレイと申します。村の皆さまと顔合わせはされていたようでしたが、僕はちょうど用事ですれ違ってしまったようで…先日に顔合わせできず、失礼いたしました」
ありゃあ!そうなんか!
いや、いや。ワイの方こそ急に訪ねて回って申し訳ない…!
ホンマに急なことやったから、そりゃあ挨拶できんも居るって、気にせんでや!
にしても、村長さんのお子さんかぁ、そりゃあ利発なわけや。
そんだけよう喋れるっちゅうんなら、やっぱり、将来は村長さんの後を継ぐんか?
「…いえ、多分、それはできません。それに…できれば、僕も騎士になれたらいいなと、そう思います」
あっ…スゥー…。
いやあ…めっちゃデリケートなことを聞いてしもうたみたいや…。
ケイ義兄ちゃんみたいに、自信を持ってドンドン踏み込んで喋ってみようかと思ったけど、踏み込み具合のさじ加減も、口回しも…ぐむむ、まだまだ下手くそやな…。
…でも、騎士を目指すんか!そりゃあええなぁ!
なるほど、それでエクトル卿にお作法を習いたいっちゅうわけか…。
そうよなぁ、普通はお作法を学ぶのだって、お金がかかるもんやって聞いとるしな。
まあ、エクトル卿はいつも忙しくしていて、家庭教師とか作法教育みたいな仕事は全部断っとるっても聞いとるし、ちょっと難しそうやけども…。
ほな、ダメ元で…断られる可能性が高い話やけども、エクトル卿が戻ってきたら、フレイくんのことを紹介だけでもさせてや。
勉強ができる人とか、エクトル卿は目をかけてくれとるって話をちょうど先日に聞いたところやし、伝えるくらいはええやろ。
「ええ!?いえ、そんな、それはあまりにも…恐れ多いことです、僕のような者のことを、エクター様のお耳に入れるなど…!」
いやいや、ワイが出来ることなんて、本当にちょっと話すだけや。
申し訳ないけど、「どうにかフレイくんにお作法を教えてほしい!」とまでは言えん、エクトル卿の忙しさはよう見て知っとるからな…。
でも、すぐにはなんとかならんくても、何か良い案を出してくれることはあるかもしれん。
ワイも、フレイくんが騎士になれるチャンスを掴めそうなアイデアが思いついたら、頑張って試してみるわ!
「そ、そ、そんな!何を、そこまでしていただかなくとも…すみません、余計な話をしてしまい…ここでのお話は、どうかお忘れください…!」
いいや!何を言うとんねん!
騎士になりたいなんて、立派な話やろ!
ワイも、エクトル卿やケイ義兄ちゃんのことを見て、騎士って凄いカッコイイんや…!って、純粋に憧れとる。
…いや、騎士とか関係なく、その二人がカッコイイだけかもしれんけど。
ともかくや、もしもそのチャンスが得られたとしたら、本当に騎士になることを諦めたいんか?
自分の気持ちが…本当の気持ちが、きっと、いちばん大事なことなんやと思うで。…なあ、どうなんや?
「そ、それは…その、お答えできず、申し訳ございません…やはり、僕には恐れ多いことです…」
…そ、そうか…。
アカンな、ワイ。ケイ義兄ちゃんとの一件のこともあったから、ちょっと熱くなりすぎたみたいや…ハズカシッ!
これ以上は無理強いしても仕方ない、んかな…そうよな、あんまり強く押しても、迷惑になるだけやもんな…。
いやあ、すまんかった、別に無理強いしたかったわけやないんや。
ただ、なんちゅうか、これはワイの直感やけど…フレイくんなら、きっと凄くカッコイイ騎士になれる人なんやないかなって思うてな…。
「…!」
あー、時間取らせてもうたのに、結局お喋りしただけになってもうたな。
…マーリンから貰ったお金は、そんだけ利発で、熱い志も持っとるんやから、自分のために使ったほうがええと思うで。
ほんじゃ、またなぁ!
「あっ…はい、また……、……」
──数カ月後。
その年の収穫を祝う、秋の祭りの折。
ワイとフレイは意外な形で再会し…その再会を切っ掛けに、ワイの従騎士となる運命を辿ることになる。
女性であったフレイが騎士になるには、いろいろな障害があったはずなのだが…その過程の一切は、どんな記録も後世に残らなかった。
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『森に潜む魔女』
魔女モルガンは、先日に発生した花の魔術師マーリンとの殺し合いの末に、…ワイは詳細を知らないが…何年かの期限を設けた上で、何かの約束をしたという。
モルガン側の果たすべき約束は一つ。
それは、『エクトル卿が領地に不在の際には、訪ねに来ないこと』というもの。
マーリン側の果たすべき約束も一つ。
それは、『モルガンが森の中を移動することを、そのまま見逃すこと』というもの。
…ところで。
マーリンが言うには、「モルガンは、契約の穴を見抜いて掻い潜るから、よく気をつけなさい」との話である。
──エクトル卿の屋敷の、裏手の森。
浅いところまでなら、薬草摘みのために子供だけでも潜り込むことがある。
野獣に襲われる可能性・危険性はあるが、最低限の自衛が出来るのであれば、深いところまで潜らない限りあまり気にすることはない。
森の外まで野獣が出てくることは、野猪や野豚を除けば、殆どないからだ。
ワイには、初めての薬草摘みでのトラウマがあるとは言え、いつまでも甘えては居られないという意識があった。
なんとかトラウマを克服し、自分一人でも薬草摘みが出来るようになりたい。
…というより、魔術薬を作るための材料集めができなければ、せっかくの技術が宝の持ち腐れとなるだけである。
というわけで、イザァ…森の中へと突入したワイ。
「
…森の中で、
「ああ、もちろん。これは私が森の中を通っている最中の、偶然のことだ」
…いや、誰に向かって話しとんねん。
それよりも、おひさし…いや、ちょっとぶり?やね、モルガンちゃん。
またこんな森の中で出会うことになるなんて…はわわぁ!ワイらってもしかして、運命の赤い糸で結ばれとるんやろか!?きゃーっ♡
「?…気色の悪い悲鳴を上げるな、不愉快だ」
あ、ハイ…。
ああ、まあ、いつものモルガンちゃんやね…。
でも、本当になんでこないなところに居るんです?
なんや、偶然通りかかったっちゅうけど、何がどうしてこんな森の中を通るんや…?
「フッ、森の中であればどこだろうと、我が通り道に繋がっている。そして、私が道を通っている最中に、偶然貴様が森に入った、それだけのことだ」
う、うん?
ようわからんけど、まあ、本当に偶然通りかかったっちゅうことか、理解した(?)わ。
いやあしかし、こうして会えたのは嬉しいけど、ワイも薬草摘みに来ただけやから、支度着を置いてきてもうとるわ…。
せっかくモルガンちゃん…いや、お師匠様の前やっちゅうのに、こんな格好ですんませんやで…。
「…フン、気にするな。もとより、貴様を訪ねに来たわけではない、格好については不問としてやる。…それより、私の移動のついでに、だ。この森で手に入る薬草の、良し悪しの見分けを教えてやろう、ついてこい」
ええぇっ!?
ありがたい話ですけど、ええんで……あっ、ハイ、ついていきます。よろしくオナシャス。
──数日後。
ワイが、村での仕事をしとる最中。
いつの間にやらマーリンがすぐ近くまで近寄ってきよったらしく、不意に声をかけられた。
「ワイ、森の中でモルガンと会っているね?」
…なんやマーリン、藪から棒に。
おう、なんでか知らんけど、たまたま出くわしてな。
おかげで、ワイの薬草の目利きがグングン上達しとる!
流石はお師匠様や!ホンマ、ありがたい話やでぇ…!
「うーん。相変わらず、この子はまた、随分と危機感が薄いなぁ…。…まあ、少々怪しいけれども、約束を破っているわけではないようだし…うん、そのままでもいいか!それじゃあ、邪魔したねワイ、そのまま仕事を続けなさい」
……えぇ?
なに…なんやったんや…?
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『アルトリアちゃん』
ワイは、エクトル卿のところで生活しとるうちに、何度も疑問に感じてたことがある。
それは別に、わざわざ晴らしたいと思うほどの疑問でもなかったんやけど…。
エクトル卿が居らん最中は、ちょっと緊張感に欠けてたこともあって、普段は口にしないことでもサラッと尋ねてしまうことが出来たんや。
──ある日の仕事中のこと。
なぁなぁ、ケイ義兄ちゃんに聞いてみるんが早いなぁと思ったんやけども。
なんで、アルトリアちゃんは女の子やのに、男と同じ教育を受けとるんや?
いや、別にそれが悪いこととは思っとらんし、エクトル卿の従騎士をしとる人も…男っちゅうことにしとるけど、アレやろ?
アルトリアちゃんって、実はなんか、そういうややこしい事情を持っとるんかなって、いつもちょっと疑問だったんよな…。
いや、別に絶対に聞きたいとかではないから、ワイが聞かん方がええっちゅうなら、話さんでおいてほしいんやけど。
「…あん?父上から、アルトリアのことについて、ちゃんと聞いていないのか?」
おう、ケイ義兄ちゃんに世話係を任せとるっちゅうことと、ワイらと同じように騎士教育を受けとるっちゅうことしか聞いとらん。
せやから、ケイ義兄ちゃんならなんか知っとるんやろなぁと思ってな。
「…ああ、つまりその辺の説明も含めて、アルトリアのことを俺に任せてるってわけか、理解した。…あー、そうだな、あいつは俺達にとっては妹分だが、扱いとしちゃあ
お、おお…やっぱ、ちょっと事情がある人だったんやな。
「おい、変な態度を見せるのはやめろよな。弟ってことにはなるが…良いんだよ、あいつは俺達の妹分で。せいぜい、俺達と同じように剣を振るって、悪いことをしたら頭からゲンコツを落としてやる…ってだけだ、別に特別でも何でもねえよ」
ああ、そう言えば、ケイ義兄ちゃんはたまにアルトリアちゃんの頭にゲンコツ落としとったな。
女の子に手をあげて良いんか?って思っとったけど、弟だからってことだったんやね…まあ、妹分でもあるんだけど…んん、ちょっとややこしい話やな。
「ややこしいことなんかねえって。いいか、よーく考えてみろ?あの、チャンバラ大好きなハラペコ猪を、どうして女の子扱いしろっていうんだよ。せめて、もっと背が伸びて、お淑やかさを欠片でも見せてみろって話だぜ」
……。
うーん、言われてみたらその通りや、納得しかできん。ありゃどう考えてもガキ・わんぱく・ガキやったわ。
「だろ?まあ、変なこと考えなくて良いんだよ、お前なら普通に…お前の思う通りにあいつと付き合ってやれば、何も問題ねえはずだ。…ああ、でも、俺と同じようにこの村よりも外に出て働くようなことになったら、その時はマジで気をつけろよ。外向きには、アルトリアはあくまで弟だからな」
ほーん。了解や、しっかり覚えておくやで!
「…誰が、ハラペコ猪の、ガキ・わんぱく・ガキですって?」
えっ。
振り向くとそこには、じっとりとした眼差しでワイとケイ義兄ちゃんを睨みつける、幼い少女の姿があった。
つまり、ガキ・わんぱく・ガキがそこに居ったンャベシッッ、ケコッ…
「ケイ兄さんも、ワイ兄さんも、影で悪口とは卑劣な真似を…その性根、私がこの場で叩き直してあげます」
「いや、事実だろ。あイテっ!…くぉらっ!素手の相手に木剣なんか持ち出すんじゃねえ!つーか、今は仕事中だ、後にしろ後に!」
「仕事中だと申すなら、口より手を動かしなさい。…それなら、仕事が終わったら、訓練場に来るんですよ?私が相手になってあげます、ふふん」
「何が、相手になってあげます、キリッ…だよ、おめぇはチャンバラしてぇだけだろうが。わざわざ『チャンバラ大好きなハラペコ猪』から『チャンバラ大好き』だけ抜いて怒ったフリしやがって…そういうところがガキなんだって、ワイは言ってるんだよ」
「なっ、なっ…!ぐぬぬっ…!怒ったフリではありません、ちゃんと怒っています!」
「ああ、わかった、わかった。仕事が終わったら訓練場に行ってやるから、それで機嫌なおせよ、な?」
「わかりました、早く来てくださいね!…って、なんで私が楽しみにしているみたいな流れになってるんですか!むぅぅ!」
…こうして兄弟喧嘩が繰り広げられている脇で、不意の一撃により
▼女性騎士
円卓の騎士の一人である「ガレス」なども含め、Fateの騎士はみな男性として扱われる。(ガレスはガウェインの末弟…という扱いになっている)
また、男性という扱いで騎士になると、「身分にふさわしい妻」を娶るようにもなる。
アーサー王/アルトリアに限らず、ガレスも妻を娶っていて、その妻のためにトーナメントの優勝を狙った逸話などもある。
女性であれば、幼いうちからよく学び・よく働き、成人し結婚したら子を生み、家内を切り盛りするのが、正しい働き方だ。
そもそも、普通であれば、体格や力で普通の騎士に劣るだろう。志だけでは、騎士にはなれないはずだ。
女性が騎士になるということは、女性としての「この時代での、正しい働き」のすべてを捨て、立派な男として生きるということになる。
それらすべてを飲み込み、最後まで騎士として殉じる覚悟を持った者だけが、この世界で女性として生まれながら…いつか、騎士となるのだ。