ワイ卿、Fate世界の円卓の騎士になる。 作:サーッ・タドコロ
今朝からのお気に入り数の伸び方がバケモンで、みどりのマキバオーみたいな鼻水タレながして指が震えました。
ルーキーランキングの一桁台と、日間ランキングにも掲載されているようです。感謝…。
励みになる反面、心臓がキュウッと絞られるような気になりますが、落ち着いてマイペースで書いていきます。
ようお前ら!元気にしとるか?
ワイは…(どうした?笑えよ、ワイータ…)…げ、元気やで!
遭難2日目。天気・不明(相変わらず空が見えん)、気温・昨日よりはちょっとマシ。
ちゅうわけで、絶賛遭難中や。
流石に元気なわけ無いやろ、空元気やで。
お前が勝手に嘘ついただけ?それはそう…。
「どうした、立ち止まるな」
あ、ハイ…。
…まあ、見ての通りなんやけども。
ワイは今、絶世の美少女を背中におぶって、どこ目指しとるのかわからんけど森の中を歩き進んでる最中や。
行先は、背中の美少女が指し示してくれとるから、とにかくその方角へまっすぐに歩くだけやね。
やっぱ、この森の出口とかやろか?ハハ。
…ちなみにやけども。
薄布一枚を体にペッタリ張り付けただけっちゅう、一体どないな服やねんそれ!?ってツッコミ入れたくなるような衣装をまとった美少女を背負ってるんやで。どや、羨ましいやろ?
ちな、これモルガンなんやって(笑)
かぁーっ!
そんなに羨ましいっちゅうなら、しょうがないから代わってもええんやで!
いやあもう、別におんぶするのやめたかったなんて、そんなわけないんやけどなぁ!
まったく、しゃーないこったやで!
ハハァ、そんな遠慮せんでええよ(笑)ワイとお前らの仲やねんから(笑)
絶世に美少女を背中におんぶするワイを羨ましそうに見とったやろ?なあ?
「止まるな、進め」
あ、ハイ…。
+
──魔女モルガン。
マーリンからは「ブリテンの落とし仔(言葉の意味はよう知らん)、災禍の魔女」と。
エクトル卿からは「遠く暗き地に潜む危険な魔女」と。
そんな話だけは聞いていた。
どこか聞き覚えがあるようなその名前は、このブリテンにおいて最も有名な魔女らしい。
『森の奥深くに潜むという、
…そういう存在なんやと、エクトル卿やケイ義兄ちゃんから散々脅されまくった。そしてワイの膀胱は号泣した。まったく、泣き虫さんな体やで。
でも、ソレに対して「気をつけろ」とは教えられたことはない。
何故か?…それは、魔女モルガンと相対した時点で、「気をつける」という行為に意味がないから。
それは、人の形を持つだけの理不尽そのもの。
勇気ある者ならば、魔女が近寄ることを避けるほどに剣の腕を磨き続けるべきだろう。
賢き者ならば、自ら決して近寄ること無く距離を取り続けるべきだ。
そして、そうではない余人にできることは、ただその狂気に巡り合うことがないようにと祈ることだけである。
気をつけるのではない、ただ、出会わないべきなのだ。
……それが、なんでこないな美少女やねん。とんでもないしわくちゃのババアじゃないんかい。
そもそも、あのとき一緒に教えてくれた「老人の魔女」っちゅうやつ、どう考えたってソレのせいでミスリードになっとるやん。
当のモルガンの方は、まだお肌ツルツルのピッカピカで、目つきも性格もキッツいロリっ子美少女JC(推定)やって、ちゃんと教えといてや。
で、今のワイはそのモルガンを背負ってるわけやけど…ちゃんと状況を説明するとこうなる。
①、モルガンは脚に大怪我を負っていて、自力で歩くどころか立ち上がることすらできない。だからワイが脚代わりをやっとる。
②、モルガンが祝福・契約とやらで、ワイの心臓を魔術的に握っとるから命令を拒否できない。魔女に本名を教えるとこうなるんやて、みんな気をつけなきゃいかんで?
まあ、モルガンは「名乗られずともこの程度の縛り、私には造作もない。凡百の魔術師には必要かもしれないが、私の場合は名を得られたのだから工程を省略したというだけだ。」っちゅうことらしい。
いや、そもそも他人の心臓を勝手に握んなや。お医者様かて最終手段としてしかやらんでそんなの。
なるほど、これが『モルガンに対しては、気をつけても意味がない』ってことなんやね。ハハ…。
ところで、モルガン…様?モルガンちゃん?…モルガンさんの方がええやろか?
「?…何の話だ」
お師匠様の呼び方やて。
お師匠様がお師匠様んときは…教えてもらう時はお師匠様って呼ぶけども、こういうのはメリハリが大事なんや。
普段からお師匠様って呼んで、その言葉に対して自分の中の敬意が薄れていってもうたらアカンやん。だから、普段の呼び方は分けたいねん。
脚になるのはもうこの際受け入れるとして、どう呼ぶのがしっくりくるか…。
いや、なんとなく「陛下」ってのが一番似合う気がしなくもないんやけど、流石になぁ…似合うと思った理由は知らん。
「は?…不敬だな、私は魔女だぞ?それを陛下と呼ぶなぞ…フッ、並の騎士が聞けば、即座に首を刎ねるほどの所業だろうな」
…そ、そないに、か?
ちょ、冗談ですやん…クラスのみんなには、内緒やで♡
おう…じゃあ、モルガンちゃんでええか?
歳も近そうやし、なんか口当たりが良いわ。まろみを感じる。
「どことなく敬意に欠ける響きな気がするが…呼び名など、どうでも構わん。それより、歩みが遅すぎるぞ。このままでは辿り着くまでに半月は要することになる、キビキビ歩け」
はっ、半月ぃーっ!?
どっ、どこ目指しとんねん!!エクトル卿のお宅や無いんか!?
「なぜ私がアレの居る場所にわざわざ行かねばならん。…ああ、不愉快極まる話だ。もしもう一度同じことを口にしてみろ、即座にその子栗鼠のように怯える心臓を握り潰してやろう」
あっ、スゥーーーーッ…。
あのぉ~、どっ、どちらを目指しているんでせうか…それだけでも教えてほちぃなぁって…へ、へへ…。
「私が帰るというのだ、コーンウォールに決まっているだろう」
なるほど、コーンウォール。…って、どこやねん?
エクトル卿のお宅とは直接の交易がない地域やっちゅうのは、勉強の中で出てこんかった地名やから何となく分かるけど…。
ちゅうか、このままの足取りじゃ半月もかかるって、その間に野獣に襲われたり腹減って死んだりするかもしれんやん。
…あの、やっぱ引き返さへ…あっ、いやいやいや!へへっ、歩かせていただきまスゥーーーーッ…。
──こうして、魔女モルガンとワイの小さな小さな冒険の旅が始まったんや。
+
夜。
…夜?
そもそもこの森の中だといつでも暗すぎてようわからんけど、更に暗くなって、夜行性の鳥どもがホウホウと言い出だす頃。
意外にも…というと失礼だとは思うけど、モルガンちゃんは「夜通し歩け」とは言わなかった。
ただ、夜のたびにワイに薬の作り方を教えてくれて、そのままモルガンちゃんの怪我した脚を洗っては薬を塗り直すということをやらせた。
ワイよりほんのちょっとだけ身長が高いように見えるモルガンちゃんやけど、体の厚みはワイの半分と少しくらいしかないくらい、どこもほそっこい。
そんなほっそい脚に、見るも痛々しすぎる生傷が走り、何度洗っても包帯代わりの端切れはたった一日のうちに真っ黒に滲んでしまう。
薬のお陰で化膿したり腐ったりはしてへんみたいやけど、傷が大きすぎて全く良くなっているようには見えない。
…モルガンちゃんはいつも「平気だ」と言うけど、どうしても見ていられんかったワイは、せめて失った分だけの血になるもんを食わせてあげたいと思ったんや。
でも、ワイに一人で獣を狩るような実力は、まだない。
弓矢があればギリギリなんとか…とも思うたけど、物言わぬ的には当てられても、警戒心の強い獣に当てられたことなど一度もなかったから、持ってたところで意味なかったかもな。
今ある道具も、あんまり狩りに向いてるもんではなかった。
ナイフ、片手鎌、ブラックソーンの杖。後はちょっとした、携帯式の調理道具がいくつか。
…うーん。やっぱどう考えても、運良く新鮮な死体が手に入るくらいじゃないと、肉にはありつけそうにないな…。
……いや、待てよ?罠を作って仕掛けるくらいなら、森の中にあるもんだけでもできるよな。
ただ、
チラリ。と、モルガンちゃんの様子を見る。
…相変わらず、痛がる様子は全く無い。
杞憂だ。気にしなくていいと言っているんだ。だからわざわざそんなことしなくて良いんだ。
そう思う。それらは全て正しく、すべてを肯定してまったく問題ないと理解できる。
しかし。
平気だから、良いのだろうか。
ワイの目には、ただ怪我で立ち上がることすらできないという、か細い少女が映っているだけだというのに。
+
「ピュィィーーッッ」
「ゔぉおおおおお!?!?とっ、獲ったどぉぉおおおおおっ!!!!」
「…何をやっている?」
「な、何ってっ…おに、お肉や!!ゔぉおお、暴れんなよ、暴れんな…ヌッ!」
「ピュィィイイイッッ」
「ひぃん、こわぁい。若干白めでフワフワなところが、ワイのトラウマを刺激するぅ~」
「…はあ、聞き直してやろう。そんな小さい野兎一匹に対して、何をそこまで怯えているのかと聞いているのだ」
──少し時間は巻き戻り。
帰路に着き、数日。
毎夜、ワイへ魔術薬の指導を行い、ワイは少しずつ着実に技術をものにしていく。
あまり優秀とは言い難い。しかし実直で、確実に進歩する。少なくとも、今日の薬は及第点をくれてやって良いものだ。
毎日毎日、不具合を起こした部位を見ては「大丈夫か?傷まないか?」と聞いてくるのは少し鬱陶しかったが、…なぜか、敢えて黙らせてやる気にもならなかった。
ワイに任せなければ、その日のうちに歩ける程度には
…そうだな、教材を用いたとは言え、限られた環境で及第点のものを作れるようになったのだ。
あの人でなしのことだ、ろくな教材も用意せず、感覚でばかり教え、どうせ何もかもいい加減だったに違いない。
私は違う。
良いのなら良いと示し、どの程度の実力にたどり着いたのかを知らせ、効率よく励むことができるよう促すことができる。
つまり、ここで師として必要な振る舞いとは、弟子の結果を認め、励みになるための薫陶する言葉だ。
「…よくやった、まだまだ最低限だが…悪くはない出来だ。これが明日からも毎日作れたなら、森を抜け出る前には私も歩くことができるようになるだろう、引き続き励むがいい」
「ほ、ホンマか!あ、いや、モルガンちゃ…じゃなくて、お師匠様の教えを疑っとるわけやのうてな…っていうか、ワイも今回は結構いい出来なんじゃないかと思っとったんや…よかったで、ホンマに…!」
「調子に乗るな。いい出来、ではない。あくまでギリギリの及第点、最低限のものとして悪くないというだけだ。貴様の今の実力など、まだ薬師としての見習いの域にすら到達していない、赤子に歯が生えはじめた程度の進展だ。…日に日に、明日は今日より良いものが作れるように、一つ作ってはまずはすぐに分析と反省をしろ。そも、“いい出来なんじゃないかと思った”とはなんだ?私の弟子でありながら薬効について憶測で言葉を垂れ流すな、間違いないと確信して使え、そうでなければ薬足り得るものではないと思え。…いや、心の髄に刻み込め。いいな?」
「あ、ハイぃ…」
…フ、結果を認め、正しく薫陶し、間違いは正す。
今まで弟子を取ったことなど無かったが…これは我ながら、なかなか良い師匠ぶりではないか?
──ピュィィーーッ!──
不意に、暗闇の奥から獣の悲鳴が聞こえてきた。
悲鳴が聞こえてきたと同時に、ワイはスッと静かに目を座らせ、暗闇の奥をジッと睨みつける。
モルガンは、ひとまずワイの挙動は無視して、すぐさま魔力捜査を走らせ、ソレが何の悲鳴だったのかを自ら確認した。
…捜査に引っかかって発見できたのは、後ろの片足が吊られる形で宙に浮き、足首の骨が折れて苦しんでいる野兎の哀れな姿である。
不自然なほど綺麗に後ろ足を括られた野兎は、宙吊りの状態から脱出しようと暴れまわるが、ただ括られた足が捩じ切れそうになるばかりで、助かる見込みはなさそうである。
このままでは、あの野兎は野犬などの餌食になって終わるだろう。
そんな野兎に対し、ワイは息を細めつつ、心音を全身に力を込めることで無理やり抑え込みながら、ソロリソロリと近づいていく。
…モルガンは、ワイの行動の意図を確認するため、その行為を黙って見届けることを選択した。
暗闇の中、命を奪う音がする。
ただただ従順で、
暗闇の中で小さな命を奪うことに、その命に怯えるようにして、全身全霊を注いでいた。
何をそこまで怯えるというのだ、そんな命の一つを奪うことに、ナイフを突き立てるだけの行為に、なぜそれほど必死になる。
ほんの小さな喜びの色を掴み取るために、心を潰すほどの焦燥を漂わせるなど、その行為と利益の天秤が釣り合っているようにはとても見えない。
なぜだかそれが…健気で、愚かしくて、可笑しくて、……。
私は、なぜそれを見て、…アレへの憎悪がこうも増すのだろうか。
今はその憎悪が…どういうわけか、今だけは、ただ邪魔なものに思えて仕方がなかった。
「…ふう、激戦やったで…」
「ピュィィイイッッ」
「…おい、ちゃんとトドメを刺してから持ってこい、煩いぞ」
暗闇から戻ってきたワイは、野兎の命を奪ったのかと思ったら、失敗して縄ごと野兎を持ってきていた。
モルガンの中に芽生え始めていた、一度は失われたはずの小さな
──その後、冒頭のやり取りに至る。
+
片足の骨が捻じ折れて手負いとなった野兎一匹を相手に、バカバカしいとしか言えないほどの時間をかけて、最後の一瞬まで気を張り詰めながらその命を奪った。
額にうっすら滲む脂汗。
焦りを抱いた人間が放つ独特の臭気。
極度の緊張から解き放たれた直後の筋肉の微細な振動。
その何もかもが、この男の存在が特別ではないのだと訴えている。
…これは、アレの持つ気色の悪い純粋さとはかけ離れている。
これには、命を奪うことへの後悔がある。
なのに、命を食えるということへの喜悦がある。
そして、命を奪った後の…その手に絡みついていた生命の息吹がほどけていくことに気づいたのだろう。…それを感じてしまったことによる、憔悴がある。
それらが混ざり、その上に飾られた、そんな不格好なだけの…、…私に向けられた、笑み。
……見れば見るほど、なんとも情けない男ではないか。
こんなものをアレに与えて何になるというのか…。
フッ、いいや、あの人でなしの考えることを一々気にするなど、それこそ時間の無駄というものだろう。
これがアレに与えられることの意味など無い、これでは何の役に立つはずもない、一笑に付すだけで良いという、それだけの出来事だ。
…だが、だからといってアレに返してやろうなどという気持ちは、“当然/なぜか”、微塵も湧かない。
確かに奇妙な気配ではあったが、その正体は思っていたよりずっと陳腐な存在だった。
この光景は、この出来事は、ただそれを確認しただけのものだ。
だから、私はこの男がほしいなどと、思っているはずがない。
だからこそ、
これはその一つに過ぎない。
それだけのことだ。
「よっしゃあ!今日の食事はちょっとだけ豪華やで~!わはは!」
愚かだ。/健気だ。
だが、才能は認めよう。/だが、私は認めない。
ならば、もう少しだけ。/こんなもの、断じて違う。
貴様の師匠でいてやろう。/こんなものが欲しいはずがない。
だから、/だから、
「これは自慢じゃあないが、ワイはちょっとばかし料理が上手いらしくてなぁ…ふっ、モルガンちゃんに美味しいお肉の焼き加減ってやつを見せたるわい!」
まだ、殺さ、ない。/そんな顔で、私を見るな。
▼宝具:今はただ暗き祝福の杖/ブレッシング・ル・フェ
ランク:B ~ A++
種別:契約宝具
レンジ:1
最大補足:1
ワイ卿の幼年期の手記にも残る、伝説の魔術杖。妖精の祝福/ブレッシング・ル・フェ。
妖精モルガンと出会い、祝福を授けられた際に手にしていた、ワイ卿とモルガンとの契約の証。
ワイ卿がどのような旅へ向かうときでも手放さず、生涯持ち歩き続けた杖であり、実際に魔術触媒としても用いていた痕跡がある。
杖に使用されている主たる木材は、相当に古くはあるが普通のブラックソーン(スピノーサスモモ/トゲスモモ、とも)であり、現代でも杖として加工されるような優秀な木材である。
ただし、ワイ卿の魔術杖には決して消えることのないモルガンの祝福が今も残されており、魔術触媒として使用するだけでも超一級品となる。(通常の魔術触媒として使用する場合は、推定ランクB~Aとなる)
この杖の真の効果は、その杖そのものに貯め込められた魔力と因果の開放によって発現する。
持ち歩いた所持者の魔力を微量に、かつ無尽蔵に吸収し溜め込み続け、それと同時に所持者の心臓に魔力根を因果として張り巡らせる。
そして、開放と同時に所持者に結びついた全ての契約を無効化し、その瞬間に因果の網が所持者の心臓を握り潰す…つまり、絶対確実な自殺のための宝具である。
この自殺は、推定では「神との契約」に類するようなものや、さらに高次元の契約までも無効化し、必ず所持者を殺すものと考えられる。
このため、モルガンとの契約というものがいかに狂気に満ちたものであるかを証明する貴重な証拠として、魔術界の論文などで資料の一部としてよく利用される。
なお、何のために魔力を貯蓄するのか、なぜ因果を網として心臓を握り潰すという特異な殺害方法となっているのか、それらすべてが謎となっている。
何か解明できていない隠された効力があるのではないかと研究されていた時期もあったが、現在は研究が凍結されている。
これは、ワイ卿の手記などに残る逸話やその他のフォークロアに由来しない、「現存し、効力が残ったままの魔術礼装/宝具」という、魔術史的に極めて貴重な一品であり、現在はその実物を時計塔が厳重に管理している。
この杖の真の効果をワイ卿自身が開放し使用した痕跡があるものの、これを何のために使用したのか、その後にワイ卿がどうなったのかは判明しておらず、まだ発見されていないワイ卿の手記の発掘と解明が多方面から期待されている。