ワイ卿、Fate世界の円卓の騎士になる。 作:サーッ・タドコロ
ありがとうございます、震えが止まりません。
続けて、謝罪となります。
前話の描写について、敢えてそういう書き方で見せたところがあります。
どの視点から見ても、他の何かが悪かったせいだというようにしか見えない、叙述トリックのようなものを用いた文章になります。もしくは、全方位悪意のある切り抜き。
そのため、これまでと毛色が変わりすぎた作品描写に大変ご不快に思われてしまった方が多かったと思います、まことに申し訳ございません。
あらためまして、前話までの描写で「流石にこのままモヤモヤさせるのは良くない」と思い、本作の未来の歴史にすら残らなかった部分の補足を挟ませていただきます。
詳細は省きますが、結果的に醜聞となるため抹消・隠匿されたものなどがあるということになります。
今回は小説形式ではなく、説明・散文的な形式になります。
特に、幕間の話でNTR描写に見える注意がなかった(遅すぎですが、前書きに追記しました、本当にすみません)ことを問題視し、多くはその部分についての補足説明となります。
感想の内容を参考にさせていただき、本当に不明だった、本文の情報として掲載するべきだった情報を記述しております。よろしくお願いします。
※注意
・本作のネタバレを一部含みます。そのため、念の為としてネタバレ防止の大空行を空けております。
・ワイに関する説明はとにかくネタバレだらけなので、最後に掲載してます。
・ワイについて敢えて読みたくない人のために、今回は後書きもありません。本文のみとなります。
▼登場人物について
※少しネタバレを含みます。問題ないという方はスクロールしてご覧ください。
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『アーサー王の養父、騎士エクター/エクトル卿』
岩のような筋肉に包まれた巨躯の騎士。この頃は全盛期でもある。
この時代の騎士の価値観の一つ「力こそが領主たりえる証」を正しく示す、剛腕・剛力の騎士。
公私を分ける分別や理知にも長け、何より愚直すぎるがゆえに正しさに従順でもあった。
モルガンを相手にも戦えるであろう資質から、そして愚直故の取り扱いやすさから、アーサー王の養父へと白羽の矢が立った人物でもある。
その後、マーリンの思いつきにより、黒髪黒目の老け顔の子供の養父にもなる。
ワイについて。
マーリンが託したという理由も一部あるが、最も近くでその素朴な人間味を見ていたからこそ、エクトル卿だけは実の息子として扱うほど距離を近めた。
しかし従騎士や見習いたちの抱く忌避感・違和感もエクトル卿は理解しており、自分が直接耳にした場合は断固として「ワイは人間の子である」と振る舞ったが、それらの嫌悪を完全に払拭してやれる証拠というものも用意できず、意思統一は叶わなかった。
ワイに最も忌避感を示したのはエクトル卿の夫人「ローサ」であり、妻とはいえ婦人にまで手を挙げることをよしとはできなかったエクトル卿は、妻と(物理的に、なるべくその口から悪い言葉が聞こえないように)距離を取るようになった。
代わりにこれまで以上に従騎士「マイヤ」をそばに着かせた。ローサは以前からマイヤがお気に入りであったということも理解しての采配である。
この頃、すでにケイという実子がおり、体躯も力量も騎士たりえるだろうと期待できるほど優秀であったこともあり、妻の恋(遊び)についてはエクトル卿も容認とした。
主従や夫婦の分別を越えることさえなければ許そうと決めていたのだ。
そも、マイヤは女性である。そして、信頼厚きマイヤであれば任せられる。
間違いなどそもそも起こる要素がなかった、そう信じてのことである。
『従騎士、マイヤ』
女性の身でありながら、エクトル卿に実力を認められる従騎士として取り上げられるほどの怪物騎士。
ただし公然の秘密(秘密というか、「そういうことになった」という事実)として、あくまで男扱いされている。
女性のためそのままでは(結婚するなどしなければ)領地騎士にはなれないが、誰かと結婚したいわけでもなく、エクトル卿に強い恩と忠義心があるため、今のままが良いとこっそり思っている。
(実力があるなら相応の地位にあるべきと言うのがエクトル卿の考え/だからこそ従騎士にまでは取り立ててくれているので、これを口にすると怒られそうだと黙っている)
子供たちの教育や領主としての仕事に忙しなくしているエクトル卿に代わり、エクトル卿の私兵団(見習い騎士など)の取りまとめなども行う。実力的にも、副官・補佐という役割が多い。
歴史に残れば、恋物語の主人公になっていたであろう人物でもある。
尊敬している立派な騎士エクター、そして騎士の愛を許された相手であるエクターの妻(ローサ)、その2人との板挟みの関係に真面目に応えながらも苦悩し続けた。
他人の恋バナを面白おかしく楽しみたい者にとっては、これほど美味しいネタはなかったことだろう。
ワイについて。
忌避感が強く、呪いの子という噂もあながち間違いではないと考えてしまっている。
不浄を好み(トイレ作り)、この地では失伝したもの(パンの正しい製法)を易々と復活させたそれは、どう見てもただの子供ではない。
疑心はよくないことである。
そう自分に言い聞かせながらも、その種は静かに芽吹き、宿主が気付かないままにスクスクと成長してしまった。
ワイを森に捨てたのは、私兵団の総意でもあった。
だからこそ、エクトル卿は森から出るまでその事実に気付かず、そして誰もそのことに気付かなかった…ということにできた。
全ては、怪しい術を扱う不気味な子供の術中から、エクトル卿を救うための
なお、本作のストーリー展開とは一切関係ないことであるが、この一件が原因で遠い未来で「兵士から輪姦され無理やりに子を身籠るも、それを取り上げられる(fate/zeroの「久宇舞弥/という偽名を使用してる人」)」という最悪の意趣返し/運命を辿ることを、その魂に呪いとして刻まれてしまうことになった。
その呪いが誰の仕業なのかは、ここでは語らない。
『エクトル卿の夫人、ローサ』
基本的には、秋の花を思わせるような涼やかで朗らかな雰囲気の女性。
エクトル卿と比べると細いが、比較対象となる女性が近くにいない(マイヤは例外)のでそう思えるだけで、よく見ればこちらも十分デカい。
ケイを産んだことで(そしてケイの体躯が立派で将来有望に見える)、夫人としての最大の役割を果たし終えた人という立場である。
本来ならケイの養育だけでも大変になるのに、さらにはアルトリアまで引き取り、その上で領地運営で多忙になり…。
そうして、妻の相手がろくにできなくなるエクターの元を離れ・別居して、お金だけもらって暮らすという選択もできた。
ただし、この頃からすでにブリテンの人材不足は傾向が現れていて(円卓の騎士の物語では、明らかに役者…武力という意味での騎士の数もそうだが、特にまともな文官が不足していた)、それはエクトル卿の領地でも同じであり、そのためローサ夫人は内政の一助となるよう辣腕を振るってエクターを助けることを選択した。
そも、その方が(このままのブリテンのゆく先を思えば)生活が豊かになるという算段もあってのことではある。
外向きには見えない部分の仕事とはいえ、それを押し付けるような形となってしまったエクターは、せめて少しでも楽になってほしいとして従騎士マイヤをよく世話役につけた。
特に、エクターが遠出するときにこそ、最も力量のあると認めたマイヤを自らの伴ではなく妻のそばへ置いていくのは、エクターの最大級の感謝の表れなのである。
マイヤはよく気が利いた(女性なのだから、ローサにとって気が利くことができるのは、そりゃあそう)。
役目も果たし、その上でさらに頑張る自分に、もう一度恋を楽しんだって良いのではないか?と思ってしまうほど、忙しい中でのマイヤとの日々は楽しかったのだ。
そうしてローサは、エクターに相談した上で、マイヤとの恋を楽しむことに決めた。
ワイについて。
エクターの下に預けられることになった、気味の悪い子供である。
何かと奇妙なことを言い、平然と他領との不和を巻き起こすようなことをエクターに申し出る。
そのあり方はまさしく、この地を滅ぼさんと企む者であり、エクターを懐柔しようと術を張り巡らす悪しき魔術師のようであった。
そんな呪いの子が、今度はエクターを森の奥へ連れ出そうとしていると聞く。
思うように不和を撒き散らせなかったことで、今度はエクターを謀殺しようと企んでいるのかもしれない。
そんな想像が膨らんでしまったローサは、マイヤに「絶対にエクターを守って」と泣いて縋りついた。
奇しくもこの頃、エクターの私兵団も皆あの不気味な子供を…個人差はあれどよく思っておらず、ローサに縋られた後のマイヤは「エクトル卿(そしてその夫人)のため」として、ついに行動を起こしてしまう。
後日。
エクターがもはや生きているとも思えない子供を取り戻すために、魔女モルガンの元へ旅立ってしまった。
いつ戻れるとも分からない、そもそも生きて帰って来れる保証がない、そんな旅だ。
自分の想像通りに、あの子供はエクターの命を奪う運命をもたらしたのだと、激しく泣き続けた。
あの子供を、もっと早くに処分するべきだったのだと。
泣き散らす自分を、マイヤは宥めてくれた。
おかげで冷静になって、次に考えたのは、この領地の維持についてであった。
エクターの死が他領に気付かれてしまった後に立ち回るのでは、確実に遅すぎる。
マイヤは「エクトル卿の生還をお待ちするべきです」と言うが、旅立ったエクターの死がこの領地へ伝わる日が来たときには、すでに他の領地にエクターの死の話が経由してしまった後である。
それでは遅い、絶対に守れなくなる。
エクターの領地を守るために、ローサはマイヤを「男として/力として」欲した。土地を守るための役割として、その存在が必要であった。
マイヤは酷く悩んだが、ローサの言も理解できるものであり、エクトル卿のためならばと不貞の事実を結ぶことで土地を守る覚悟を決めた。
ローサは悪い想像を膨らませすぎた。
それは愚かなことであり、エクターとその土地を守るためのものでもあった。
それを呪いだというのなら、確かに呪いなのかもしれない。このブリテンでは。
『アーサー王の義兄、ケイ』
年齢一桁にしてすでに他の騎士に並ぶほどの長身を持つ子供。ノッポのケイ。
恵まれた体躯のおかげで早くから騎士教育を叩き込むことができたエクターは喜んだが、しかし子供としての楽しみが幼い人生の中で半分もなかった(この頃は年齢に対する体格差の開きが原因でろくな遊び相手すらいなかった)ケイは、表向きは真面目でも結構スレていた。
そんな中、妹分(子分)のアルトリアができたことには本当に嬉しかったし、さらにもう1人…今度はもう少し歳が近くて便利なやつがやってきて、ケイの子供らしい心は歓喜の時代を迎えた。
ワイが悪い噂の的になっていることは理解していた。
政治についてもしっかり勉強していたケイは、それらの噂が的外れではないとも思えていた。
それはそれとして、ケイにとってのワイはかけがえのない存在であった。
なんと噂されようと、問題がなければそれで良いじゃないかと、そう考えていた。
そんなワイを一時期でも失ったのは、ケイにとってはトラウマの出来事になっている。
弟分(子分)を運命などと言うもののせいで失うことになってしまったこと、そのことから運命などというものに対し苦々しい嫌悪感を抱くようになったケイは、のちにアルトリアが選定の剣を抜いてしまった際に「これは俺が抜いたものだ」と言って、アルトリアを運命というものから切り離そうとするなど、基本的にセコくて意地悪のくせに貧乏籤を引こうとするようになってしまった。
将来。
最期には、その貧乏籤を引いて死ぬことになる。
『予言の子、アルトリア/アーサー』
父王ウーサーと魔術師マーリンの謀略により、赤き竜の因子を持って誕生した「人と竜のハイブリッド/最良血統種」。
ウーサーがモルガンを裏切った証拠であり、モルガンにとって全てを奪った存在。憎悪の対象の一つ。
しかし幼少のアルトリアにはそんな自覚は全くなく、選定の剣を抜く場でマーリンに種明かし(予言)を告げられて、初めて自分の運命を知ることになる。
当然、作中時点のこの頃はモルガンとの因縁などよくわかっておらず、絶対に目と目が合わないしいつも怒ってるし怖いし、ただただ嫌な魔女であった。
ワイについて。
頼れる兄の1人である。なんならケイよりもずっと頼りになるとすら思っていた。
体格が立派なケイは表面的・物理的にアルトリアの兄貴分として頼りになったが、ケイに比べると圧倒的に貧弱で結構変なワイの方は、子供としての小さな喜びや好奇心を共感して守ってくれる人であった。
ワイが悪い噂の的になっていることは、断片的にだけ知っていた。
ワイは恐ろしい存在なのだとアルトリアなりに理解した上で、「じゃあ真っ当な道に進めるようにしてあげるべきです!(その機会を与えるべき)」と考え、アルトリアなりの方法(チャンバラなど)でワイを助けようと頑張っていた。
…この頃からすでに、アルトリアは割と的外れな解決法に取り組む人物だったようである。
その後、「大人たちの決め事により、ワイが森に捨てられた」というように見えてしまったアルトリアは、自分の実力不足のせいだと悲しんだ。
また、最終的な顛末…「エクター卿と従騎士のお話」の末路、土地を護るための不貞という最悪の出来事を知ったアルトリアは、少なからずショックを受けた。
アルトリアの中の、騎士としての正しさを量る秤が、人ではなくブリテンのものとなってしまった最初の切っ掛けでもある。
『花の魔術師、マーリン』
全ての元凶。悪ではないというだけのカス。
恋バナが好きで、エクトル卿の家庭環境を理解した上で、その物語のちょっとしたアクセントのつもりで(きっと、おそらく、良いものになるだろうという期待を込めて)ワイを生かしエクトルに預けた正真正銘のクズ。
その結果がこうなるとは予想していなかったし、邪魔されないようにモルガンに釘を刺しておいたのに直接出張ってくるなんて予想外すぎたし、マーリンとしても残念な結果である。
結果としては確かに一つの物語として編み上がったが、思っていたより楽しくない/美味しくないものに仕上がってしまい、うーん…って感じ。
この頃のマーリンとしては、予言の子が無事なら結局他のことは些事(その時の気分次第で関わるだけのもの)なので、その程度のことしか思っていない。
マーリンが反省するようになるのは、予言の結末を見届けた結果での精神構造(直接運命を弄った少女に対して、流石に申し訳ないと思った)でしかなく、そうなる前のマーリンはカスの全盛期と言っていい存在である。
誑かし/口車を回すことが異様に上手く、今でも十分カスに聞こえるがそれでも表面的にカス度が下がって聞こえているというほどの、非人間だ。
ワイについて。
それが災厄の種であることを理解しているが、同時に人間でもあることを理解している。
こんなカスでも、一般的なブリテン人よりもしっかりと、ワイをちゃんと普通の人間として扱っている存在なのである。…そのうえであの所業なのだが。
『ブリテンの落とし仔、モルガン』
狂気の魔女にしてブリテンの落とし仔、「人と妖精のハイブリッド/最良血統種」である。
ウーサーとマーリンの謀略がなければ、ブリテン島そのものが認める、ブリテンの本来の支配者だった。
(それは、アーサー王として君臨したアルトリアでも敵わず、ブリテン島の所有者としてはモルガンがずっと格上だったほど)
汎人類史モルガンは最終的に(成人する頃に)三重人格になるが、その前に嵐のように渦巻く人格分裂に苦しんだ。
管理・制御可能な人格だけに絞って残せるようになるまで…それ以外の全てを破壊・削減するまで、モルガンは頭の中には
相当時間をかけたとは言え、それを独力で調伏してみせたということになるので、流石はモルガンである。
その人格分裂の原因は、人と妖精のハイブリッドとして生まれてしまったことによる、ブリテンにおいての「役割の過積載」がまずある。
一つの体で背負うにはあまりに過剰な役割の数に対して、真面目なモルガンはなんとか頑張ろうとしていた。
だというのに、そこにウーサーとマーリンの謀略が差し込まれ、「役割があるという生命の形を残したまま、役割を果たすはずだったすべてを奪われる」という最悪の裏切りに遭う。
すべてを奪われ、果たすべきものが何も残っていない。
だから、引きちぎられそうになるほどの運命力の因果を耐えることの意味を失ったモルガンは、ふと、初めて力を抜いて、その運命の引力に身を任せてしまった。
結果、その引力のままに人格をバラバラに引き裂かれ、今もこうして頭の中でブンブンと振り回され続けている。
ただの、ほんの一瞬の安らぎすら、モルガンは得ることが叶わなかった。
少なくともこのモルガンには、「妖精」「魔女」「支配者」の他に、「少女」「親子」「正義(ただし非人間的な)」…など、など、様々な人格が暴れ狂っている。
唯一共通しているのは、もはや役割もなにもないというのに、その役割のために暴れまわるという形で、全ての人格が狂っているということだけ。
モルガンはこの現状に対し、対症療法として自身の同位体を複製し、役割を少しずつ与えて世に解き放っている。
いくつもの伝承とそれぞれに矛盾するような描写が存在するのは、実際にモルガンがいくつも存在し、そして
ただし、本体及びバックアップは、他全ての同位体のメインサーバー/データベースそのものでもあるので、これだけでは頭の中の嵐が収まるわけではない。
同位体が役割を果たし、不要になれば壊し、排除する。…こうして、自身の中に置いても管理可能な人格だけが残るよう、人格の整理/ワイルドハントの調伏を進めていった。
この頃のコーンウォールにあるモルガンの隠れ家は、そのための秘密の工房であり、正真正銘の本体と、本体のバックアップ(ほぼ完全な同位体)が置かれている。
そんなふうに、魔法の領域に一歩踏み込んでいるほどの魔術を理性的に使おうとするあたり、狂っていても真面目なモルガンなのである。
ワイについて。
当然の拒絶。その理解を拒んでいる。
概ね、ただ支配だけを望もうとしている。
これに対して、嵐の中で一際大きく暴れるものどもがいる。
「あの人でなしの鼻を明かす」という理由をつけて、やっと殺さずにいられているだけ。
次の瞬間には殺していてもおかしくはない。
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※下記、ワイについてになります。閲覧注意。
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『呪いの子、ワイ』
花園にて生まれ落ちた者。黒髪黒目、彫りの深い顔、歳の割に理知的に見え、言葉遣いがおかしい少年。
表面を綺麗サッパリ覆うようにして変な加護がまとわりつき、見た目がおかしく、中身もおかしい、しかし非人間ではない。
大人たちは、その「老獪に見える子供」を悪しき魔術師の生まれ変わりなのではないか(事実、マーリンの教えのおかげで、子供の身で魔術を巧みに扱う)などと噂し、個人差はあるが忌避感を持っている。
噂には徐々に尾鰭がつき、「黒い獣(人間ではない扱い、つまり差別語)」「呪いの子」などとも呼ばれたようだ。
そしてそれらの全てを、ワイは知り、理解している。
性格は、ごく普通の小心者。
そしてどこか抜けてるアホでもある。
お調子者でもあるが、力に溺れているからではなく、小心者故の自分への鼓舞や誤魔化しの意味が強い。
つまり、わざと明るく振る舞い、自分の心を誤魔化し続けているだけ。
実際は、自分が何者かもよく分からず、常に不安と焦燥に苛まれる、運命に弄ばれ現れてしまっただけの、ただの被害者と言える。
そんな中、ワイはいつも「誰かのため(ついでに自分)」を思って何かを行う。
心中の発言では「自分のため、そしてついでにみんなのため!」というようなことを言っているが、本心は順序が逆。
常に、自分は自分のために何かして良いのか?という不安を感じている。
それもこれも、マーリンが無神経に「お前ってヤバいやつだし、処分しちゃおっかな…まあ、悪くなる前に処分すればいっか…」とか言い放ったせいである。口に出すなそんな言葉。
しかも、魔術の師として凄まじい実力/圧倒的な力量差まで見せられているので、なおタチが悪い。
自分は誰かの役に立てる。
…この世界に(というより、どこでも覗き見できるマーリンに)そう示すことが、殺されないための唯一の手段だと考えているのだ。
耳にする噂を聞くに、あまり上手くいっていないようであるが。
それもそのはず、中身は所詮凡人であるし、そもそも既に出来上がった統制構造(エクトル卿の領地内だけではなく、そこから広がるもの全てが絡み合った構造体、ブリテンの運命の一部ともいう)に対して、普通は部外者ができることなど殆どないのだ。仕方のないことなのである。
ケイとアルトリアには、子供らしい純粋さといたずら心などの人間味あふれる対応をされて、とにかく心が救われている。
エクトル卿には、頭から薪割りの薪みたいにパッカリ割れるんじゃないかというようなゲンコツが落とされる場合があることを除けば、騎士というものは正直よく分からないながらも、自分の価値観から立派な人だと感じ、普通に尊敬している。
モルガンには、散々脅されまくった魔女の名前ということでビビったが、正直その見た目がかなり自分好みの女の子なので「この生活も悪くないかも…」とか思ってる。
その時々の一喜一憂の「一喜」だけで、さっきまでの不安を一瞬で忘れられるアホ。
だからこそ、どう見ても危険な場面ですらお調子に乗るのである。
マーリンに処分されかけた時、モルガンを背負っている最中、などなどなど。
野兎の命を奪うとき。
苦悩し、憔悴した。
選んだのは、そんな善悪からの判断ではなく、「それなら、少女を助けたい」という自分の本心に従うことである。
それならせめて最後くらい、自分に満足して死にたい/死にたかった。
…という、人間らしいというべきか、何かに対する諦めにも似ているような本心こそが、不安に覆い隠され道化に振る舞い表向きには見えなくなってしまっている、ワイの本当の心の形である。