転生したら、超次元技が存在しない世界だった件!   作:スライみゅ

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原作第4話 ドラゴンが出た!
第19話 2人(ライバル)の衝突とズルい小悪魔(こうはい)の泣き落とし


 

 

【染岡side】

 

 

尾刈斗(オカルト)高校との練習試合を明後日に控えた、放課後。

俺たち雷門高校サッカー部一同は部室に集結していた。

そして、円堂の横にいる一人の男──豪炎寺修也に釘付けになっていた。

 

 

ついこの間、正式にサッカー部に加わりやがった豪炎寺。

そいつがそこに立っている。ただそれだけの事実が、部室内に異様な熱気をもたらしていた。

 

 

「すごい……! あの豪炎寺さんが、俺たちと同じユニフォームを着てるなんて!」

 

「これで怖いものなしだね! 豪炎寺さんの加入で一気に強豪校の仲間入りだ!」

 

「豪炎寺さんが来てくれたなら百人力──いや、一億人力でやんす!」

 

 

宍戸、栗松、少林寺といった一年生たちが、目を輝かせてはしゃいでいた。

 

 

それは無理もない。

少し前まで部員不足で廃部寸前。帝国学園にはコテンパンにされて、運良く部を存続できたような弱小チームに、高校サッカー界の天才ストライカーが仲間になったのだから。

 

 

1年の連中は手放しで喜んでやがるが、俺はどうしても苛立ちを抑えきれずにいた。

 

 

「ハンッ。ンなやつになんの用があるってんだ。お祭り騒ぎしやがって。雷門には……この俺のシュートがあるじゃねぇか!!」

 

 

俺は壁に寄りかかり、腕を組んで、地を這うような低い声で吐き捨てた。

 

 

「どうしたんだよ染岡、さっきからツンケンして。もっと喜べよ!」

 

 

円堂は、俺が何故イライラしているのか不思議だと言わんばかりに、純粋な笑顔で肩を叩いてきやがった。

 

 

「豪炎寺に司場、そして染岡! これで雷門のストライカーが3人になるんだぜ? あの帝国から点を決めたメンツでもあるし、こんな心強い事はないじゃないか!」

 

 

円堂の言葉は、悪気がないだけに、余計に俺のプライドを逆撫でした。

 

 

(……確かに、帝国から点を奪ったのはコイツだ。……それは認めざるを得ねぇ。だが、俺のシュートがあれば、豪炎寺なんて必要ねぇ! あの帝国にだって負けやしねぇハズだ!!)

 

 

俺は円堂の手を荒っぽく振り払うと、苛立ちに任せて豪炎寺の前までズカズカと歩み寄った。

一年生たちの歓声がピタリと止まる。

豪炎寺の目の前で立ち止まった俺は、顎を突き出し、威嚇するように言い放った。

 

 

「おい、豪炎寺。勘違いするなよ。雷門のストライカーは、この俺と司場の2人で十分なんだ! お前の入る隙なんて、これっぽっちもねぇんだよ!!」

 

 

突然の宣戦布告。

しかし、豪炎寺はまるで子供の癇癪でもあしらうように、フッと鼻で笑って俺を煽りやがった。

 

 

「……結構つまらないことに拘るんだな」

 

「──っ! つまらないことだと!!」

 

 

豪炎寺の皮肉を含んだ冷たい一言に、俺はついに理性の糸が切れた。

 

 

「この野郎……っ!」

 

 

獣のような唸り声を上げ、俺は豪炎寺の胸ぐらを力任せに掴み上げた。

 

 

「ちょ、ちょっと染岡! 落ち着いてってば! 暴力はダメだって!」

 

 

慌てて司場が間に割って入り、俺の腕にしがみついて必死に二人を引き剥がそうとしてくる。

だが、豪炎寺は胸ぐらを掴まれたままでも、表情一つ変えず、ただ静かに俺を見つめ返していた。

その絶対的な自信に満ちた態度が、たまらなく鼻につく。

 

 

「放せ、司場! 俺はコイツが気に食わねぇんだ!!」

 

 

俺の血走った眼に射すくめられ、司場がヒッとオドオド視線を泳がせた、まさにその時だった。

 

 

「コラーーっ!!」

 

 

木野の怒声が、狭い部室内にビリビリと響き渡った。

 

 

「尾刈斗高校との試合は明後日なのよ! せっかく勝てばフットボールフロンティアに出場できるっていうのに、仲間同士で啀み合ってる場合じゃないでしょっっ!!」

 

「......チッ」

 

 

俺は忌々しげに舌打ちをして、豪炎寺の胸ぐらから手を離した。

 

 

「な、なぁ豪炎寺! 次の相手の『尾刈斗高校』について、何か知らないか? オレ達なんにも知らなくてさ」

 

 

険悪になった空気を無理やり変えるように、円堂が口を開く。

 

 

「……尾刈斗か」

 

 

豪炎寺の声に、部室の空気が少しだけピリッと引き締まった。

俺も、そっぽを向きながら円堂の問いかけには耳を傾けていた。

 

 

「なんでも、試合をした相手が次々と原因不明の高熱や金縛りに遭うとか、変な噂の絶えないオカルト学校らしいんだよ」

 

 

円堂の言葉に、一年生たちがヒッと悲鳴を上げる。豪炎寺は少しの間沈黙した後、重い口を開いた。

 

 

「……すまないが、俺は尾刈斗高校については何も知らない。初めて聞いた学校だ」

 

「ケッ、使えねぇヤツだ」

 

「染岡!」

 

 

その言葉に、部室内が静まり返った。

相手の情報が何一つない。その見えない不安に全員が言葉を失い、重苦しい沈黙が落ちた、まさにその時だった。

 

 

「お困りのようですね!!」

 

 

扉の向こうから聞こえた明るい声と共に、部室の引き戸が『ガラガラガラッ!!』と勢いよく開かれた。

 

 

「そういうことなら、この私にお任せ下さい! 私が尾刈斗高校に行って、バッチリ偵察してきますよ!」

 

 

扉を開けて立っていたのは、自信満々な笑みを浮かべてビシッと胸を張るマネージャー、音無春奈だった。

 

 

 

✤✤✤

 

 

葦考side

 

 

突如として現れた救世主(春奈)の頼もしい宣言に、円堂や一年生たちはパッと顔を輝かせた。

 

 

「本当か!? 助かるぜ音無!」

 

「さすが元新聞部でやんすね!」

 

「よーし! お前ら、音無が情報を集めてきてくれる間に、俺たちはグラウンドで特訓だ! 行くぞ!!」

 

「「「おおーーっ!!」」」

 

 

円堂の号令と共に、部員たちがドタドタと嵐のように部室から飛び出していく。

 

 

「よし、僕も練習を──」

 

 

僕も円堂達に続いて部室を出ようとすると、鼻先スレスレのところでバタン! と扉が閉められた。

 

 

扉を閉めたのは、僕の前に立ち塞がる満面の笑みを浮かべる春奈だった。

彼女はそのままドアノブを背中でガードし、僕の退路を完全に塞ぐという完璧な陣形を敷いている。

 

 

「な、なに......?」

 

「というわけで、葦考センパイ。偵察、一緒に行きますよ♡」

 

「……はい?」

 

 

唐突な指名と、逃げ場を物理的に奪われた圧に、僕は間の抜けた声を出してしまった。

 

 

「なんで僕!? 偵察なら春奈一人で行けばいいだろ! 君、元新聞部でしょ!? 取材はお手の物じゃないか!」

 

「そりゃあ、サッカーの戦術的な細かい動きは、マネージャーの私より直接戦う選手のセンパイが見た方が良いに決まってるからです!」

 

 

得意げに腰に両手を当て、ずいいっ! と顔を近づけてくる春奈。

先ほど、彼女は得意の情報収集を駆使して、『尾刈斗高校が今日、他校と非公開の練習試合を行っている』という極秘情報を掴んできたのだ。

 

 

「正論だけど! 相手はあの『尾刈斗』だろ!? 試合した相手が次々と高熱や金縛りに遭うとかヤバいオカルト学校じゃないか!

僕は呪いとか幽霊とか大嫌いなんだよぉぉ!!」

 

 

僕はロッカーを背にして、生まれたての子鹿のようにガクガクと膝を震わせた。

もし本当に、呪いとかそういう何かで攻撃されたらどうするんだ。僕にはオカルト現象を気合いで吹き飛ばすようなガッツはない!

 

 

「……へぇ。センパイは、これを見ても、私に"一人で行け"って言うんですか?」

 

「え......ひぃぃっ!!?」

 

 

春奈の声が、スッと1オクターブ低くなった。

彼女は部室の机に置いてあったノートパソコンを開くと、カチャカチャとキーボードを叩き、画面をバンッ! と僕の方へ向けた。

 

 

画面には薄暗い背景に、血のような赤文字。

飛び交うコウモリに、おどろおどろしい雰囲気漂う尾刈斗高校の公式ホームページが映し出されていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

(これのどこが高校のホームページ!? 新入生入れる気あるのかよ!!?)

 

「セ・ン・パ・イ......?」

 

「は、はひぃ!!」

 

 

春奈はジト目で僕を睨みつけたまま、静かに言葉を紡ぐ。

 

 

「こんな……いかにも呪われそうな、不気味な学校へ、本当に、女の子を、一人で、行かせるんですか?」

 

「で......でも、僕だって怖いもんは怖いわけであって……!」

 

 

僕が目を泳がせながらごにょごにょと反論しようとした、その時だった。

 

 

「……そう、ですか......」

 

 

春奈が、ふっと寂しげなトーンで声を漏らす。

その声には、背筋が凍るような黒いオーラが渦巻いているように感じた。

 

 

「......センパイ、私と約束してくれましたよね? 『絶対に尾刈斗に勝って、フットボールフロンティアに出て、私をお兄ちゃんの前まで連れて行く』……って」

 

「あっ」

 

「勝つための偵察を嫌がるってことは……あの河川敷で言ってくれたあの言葉は、全部嘘だったってことですか......」

 

「ち、違っ……!」

 

「......嘘つき! 信じてたのに。ひどいですよ、センパイ……」

 

 

春奈はそう言って、僕を捨てられた子犬のような目で見つめてきた。その目には、今にも涙が溢れ出しそうな膜が張っている。

 

 

「わぁぁぁぁ分かった!! 分かりました!! 行く! 行きますから!! 僕が悪かったから、その捨てられた子犬みたいな目で僕を見るのはやめてくれぇぇぇ!!」

 

僕が半ば泣きながら白旗を上げると、春奈は一瞬でパァァッ! と花が咲いたような満面の笑顔に戻った。

 

 

「言質取りました! 流石センパイ、頼りになります! そうと決まれば、さっそく出発しましょう!」

 

「う、嘘泣き……!!?」

 

 

ガッツポーズをする春奈の背中を見ながら、僕は深く、深いため息をつく。

この変わりよう。

どうやら僕は最初から最後まで、春奈の手のひらの上だったみたいだ。

 

 

僕と春奈は、不気味な噂の絶えない『尾刈斗高校』への偵察に向かったのだった。

 

 

第19話fin

 

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